3

自分に劣等感はあった。

自分の顔が声が体が嫌いだった。

年を取るにつれて、後退していく髪の毛。

目は生まれつき悪く、メガネなしでは何も見えない。

同僚の女性すらもあまり声をかけてこない顔のつくり。

筋肉をつけようとしてもなかなかつかず、腹は出ていく一方。

だが、今の自分はどうだ。すらりとした長身に3時間かけて作った整った顔。

鏡を見て思う。別人だと。自分の思っていた容姿とは遥か高みの存在だ。

しかし、本来の自分の名前を思い出そうとしても思い出せない。そもそも、

以前何をしていたかなどと思い出そうとすれば頭に激痛が走る。

自分は何者なのか、それを表示する情報を探してシステム画面を見続け、

それは見つかった。


国名:アルファノア

国王名:ジン・ユードリック・アルファノア


(ジン・ユードリック?アルファノアは王族だからか。だが、)


口に出すとしっくりくる。元から自分はこうだったんだという感覚。

自分が王であるという自覚、覚悟、威厳。様々なものが全身を駆け巡った。

自分という存在を噛みしめていると、システムの建築項目が点滅し始めていた。

触れてみるとどうやら、いつの間にか建設に必要な資材が集まっていたらしい。


(最初は人口を増やさないといけないから農場と家だな)


家は城の近くに、農場はなるべく外側に建設する。


(あれ、これっていったいどうなるんだ?)


不思議に思い自室から外を見ると、土台、骨組み、壁、屋根の順に

家が作成していくのが見えた。


(一瞬!?大工いらずってやばいな)


家と農場が建設終わるとオプションが出てきた。


〈種族を選んでください〉

人間

エルフ

ゴブリン

ホブゴブリン


(種族はホブゴブリン一択)


迷いなく種族を選択する。


(どうなる?)


すると、家の周りにホブゴブリンが4体出現した。


(住人もその場で生えるのか。いや、ゲーム内でもそうだったが

現実になると違和感が若干あるな)


ホブゴブリンの仕事を農場に設定する。一国の王が、民の仕事の世話までするのはおかしいと思うが、そもそも現状、国民は強力な臣下を除いて

今作った4人しかおらず、国というより村以下である。

それにこういう要素がゲームの面白いところでもある。


家と農場を交互に置いていく。農場の働く上限は2人までなので、

家一つにき畑二つという間隔だ。

(おっと、果樹園も植えなきゃな。あとは炭焼き小屋、倉庫、食料庫、

パン工房・・・、木材が足りないな。木を多くとるには伐採所が便利なんだけど

作るのには鉄がいる。探索のほうはどうなっているのかな?)


マップを開くと、周囲を覆っていた黒いもやは消え、山までの地形が分かる。

山の付近には石のアイコンと金属インゴットのようなアイコンが見つかった。

石のアイコンを触り、採石場を作成する。金属のほうにも触り採掘所を作成した。


〈種族を選んでください〉

人間

ドワーフ

ホブゴブリン


採石場はホブゴブリンを採掘所にはドワーフを選ぶ。炭焼き小屋と製錬炉、

採石所と採掘所の近くに倉庫を建てる。生産施設より離したところに家を建て、

空き小屋にすれば鉱山労働者たちがここに住むはずだ。

ふと、窓の外を見ればすっかり夜になっていた。

他にも色々やりたかったが資材も足りないし、作るのにも時間がかかる。

ジンはそのまま自室で眠りにつくことにした。

次の日、このゲーム感覚で進めていたことをジンは後悔することになる。



【補足】

種族の特性

人間:温暖な気候を好み、寒暖の激しさに弱い。繫殖能力は平均的。

   元々の知能が高く欲求度が高い。雑食性。平均的寿命。上昇志向。


エルフ:温暖な気候を好み、寒暖の激しさに弱い。繫殖能力は低い。

    元々の知能が高く欲求度は平均的。草食性。長寿。

    周辺の木々や植物の影響を受ける。居住地に木が必須。

    緑がないと欲求度が低下する。


ゴブリン:どんな気候でも生きる。繫殖能力は驚異的。

     知能は低く複雑な作業はどんなに知識レベルを上げても無理。

     雑食性だが生肉をよく好む。短命。


ホブゴブリン:どんな気候でも生きる。繫殖能力は平均的。知能はそこそこ。

       パワーがあるため、力作業などに向いている。雑食性。

       欲求度と寿命は平均的。


ドワーフ:どんな気候でも生きる。洞窟などの暗闇を好む。繫殖能力は低い。

     知能は平均的。力はそこそこ。金属類の採掘時にボーナス。


       

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