2

城外の偵察から戻ってきたミアとイレインが、

城内を見て戻ってきたロレインとアリナが目の前で跪く。


「ミア、報告を」


ミアと呼ばれた猫耳の獣人が顔を上げ、口を開いた。


「はっ!城の外は深い森と山に囲まれていました。魔獣のようなもの姿も見かけました」


「魔獣?倒せそうか?」


「問題なく可能かと」


「ふむ。アリナ、城内の様子は?」


アリナと呼ばれた鎧を着た騎士は顔を下げたまま報告した。


「城内に異常は見られませんでした」


「そうか・・・。」


(深い森と山に魔獣?神立地とはいかないが・・・。いや、そもそも紅暁の空では立地条件を選べるはず。本当にゲーム内ではないということか?)

再び、考え事に没頭し始めようとした時、ミアが声をかけてきた。


「陛下。次のご命令をください」


(命令?)


周りを見ると、多くのキャラが自分に視線を向けている。

普段の男であればこういう場合、慌てて適当な指示を出しあとで修正するのが

いつものことだったが、この時はなぜか気持ちが非常に落ち着いていた。


(序盤の流れは資源の確保と拠点レベル上げに城下町の作成だが、

どう言えばいい?木を切ってこいと?違うな、そもそもゲームシステムは

操作できるんだ。いつも通りやればいいんじゃないか?)


システムを呼び出し、編成を行いマップで指示する。


(まずは資源の確保だ。石材に鉄と魔結晶。周囲の偵察はミアをリーダーに残りを偵察能力が高いキャラを編成して出撃。城の周りは、うわ!本当に木しかないじゃないか。怪力のヴァルトをリーダーに伐採は獣人系でいいか。これでどうなる?)


出撃ボタンを押して数秒、目の前のミアが口を開いた。


「ご命令受け取りました。ただちに、部隊と共に出撃します」


そう言い、すばやく立ち上がると去って行った。

しばらくすると、外から木を切る音や倒れる音が聞こえてくる。

システム画面の資材数の木材の数がゼロからどんどん増えていった。


(口に出さずともいけることがわかったが、これは色々試す必要がありそうだ)


そう思い、立ち上がる。目指す場所は自室だ。


護衛役のエヴァを部屋の外に置き、部屋の中に一人籠る。

それから色々試した結果、それはゲーム内と現実の融合だった。

まず、出撃などはゲームシステムを使ったほうが早くわかりやすい。

口頭で、一々キャラ名を呼び出撃させるなんて時間の無駄だ。

命令はなぜか命じたキャラの脳内に直接伝わるらしい。

以前ゲームでできなかったこと。例えば紙に文字を書かせるとかはシステム上

見当たらないので口頭で伝える必要があった。

この世界のシステムがわかったことで、男は最大の疑問に直面することになる。


(俺は誰だ?)

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