反射的に目が覚めた。習慣で目覚ましいらずだったが

寝坊する時もあるのでアラーム音だけは設定していた。

画面の右端を見ると時刻が目に入った。

『10:29』

出社時間がとっくに過ぎている時間だった。慌てて、立ち上がろうとして

匂いに、触感に気づいた。何かがおかしいと。


自分の部屋はこんな心地よい香りがしたか?


いい値段のしたゲーミングチェアはこんなに固かったか?


何かが起きたらしい。そう思ってVRを外そうと、手を頭に持って行くがVR機器に触れることはできなかった。

頭が混乱している中、唐突に横から声をかけられ、さらに驚くことになる。


「陛下、いかがされました?」


視線を動かすと、そこには不思議そうな顔をした金髪の美女がいた。

今まで混乱していた頭の中は一瞬で消え去り、疑問で埋めつくされていく。

だが、まずは答えなければならない。

(なんと答えようか、いや今彼女は何と言った?陛下?もし、俺がそうならばここは・・・)

そこまで考えたとき、自分が立っていることに気づいた。

周囲には侍らかそうとして集めた美女たちがいる。

男は険しい目つき(できたかどうかわからない)で口を開く。


「何かが起きたようだ」


周囲の空気が変わっていくのを感じた。


「敵でしょうか?」

「わからん。だが、知る必要がある」


そう答えると男は周りのキャラに指示を出すことにした。

「ミア、イレインは外の様子を見てこい。ロレイン、アリナは城内に異常がないか確認を」


「「わかりました!」」


「エヴァは私を守れ。その他の者は不測の事態に備えて待機だ」


「「はっ!」」


指示を出したキャラ達が、散っていくのを見つつその場の椅子に座ると頭がだんだんと冷静になり始めた。

とっさに、あんな命令をしたがゲーム内ではこうはならないということも

きづいてしまった。

(そうだ。通常ならマップで探索エリアを指定しユニットと部隊を選んでいかせるはずだ。つまり、システムで動かす。だが、今俺は口頭でそれを行った?ゲーム内ではないのか?)

確認を兼ねてUIを表示させる。それは正常に表示された。

(ゲームのシステムはある。マップはどうだ?)

マップを選択すると、周辺地図の表示がされが、自分のアイコン以外は黒いもやがかかっており全体を確認することはできなかった。

マップを拡大させていくと、青色のアイコンが徐々に自分の周囲が明るくし、周辺の地形がわかるようになっていった。

そのアイコンを触ると、簡単なユニット情報がでた。


〈ミア〉偵察ユニット

レベル66


(なるほどな。ここは変わらないのか)


続いて、自分がいる拠点を確認する。

(拠点レベル1?スタート時に戻っているのか)

その他も色々いじり確認していく。

(一度整理しよう)

・自拠点のレベルは初期

・資金はクリアデータロードのもの

・建築資材は初期

・武器や防具、その他アイテム類はクリアデータのもの

(つまり、強くてニューゲーム状態?)


「ただいま戻りました!」


命令したもの達が帰ってきたことで思考は中断された。

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