序②

「完成だ!完璧だ!」

深夜に壁の薄い狭いアパートに住んでいることも忘れ、男は大興奮で叫んだ。

眠りから起こされた隣人の壁を殴る音が聞こえてくるが無視だ。

視線を動かすと自ら手掛けた、内装が目に入る。

寝る間も惜しみつつ、何週間、何万円とかけたその作品に大満足だった。

そのうちに、今までの疲れが押し寄せてきたため、

VRを外しその日は死んだように眠った。


その日の仕事は上の空だった。

頭のなかはゲームの内装のことばかり考えていたからだ。

受け答えも適当に返事をし、部下や同僚に押し付け、自分の仕事も

適当に済ませて早々に帰った男はゲームを起動した。

視線を動かすと自分の作った内装が目に入る。

他のところを見るためにマップを開き移動しようとして

変わっていることに気づいた。

「動けるようになっている?」

どうやら、出勤中にアップデートが来たらしい。

以前は視線を動かすのみであり、移動もマップを開いて行きたい場所に触れることで移動ができていたのだが、今は歩くように移動ができるようになっていた。

そこからは、ゲームの本質を忘れ城内を歩き回り、気に入らないことがあれば

その都度修正を加えた。


数時間後、自分の最高傑作である玉座の間で天井を眺めていると着信音が鳴った。上司からだった。上司は非常に怒っていた。どうやら、仕事を適当にやり過ぎて、

重要な案件のいくつかにミスがあったらしい。嘘の体調不良を装い、

明日朝一番に出社し修正する約束を取り付けることに成功した。

気分を害された男は、再びゲームに戻ろうとし面白いことを思いつく。

玉座に座った自分と周りに美女を侍らかせてスクリーンショットを撮り、

それを公式HPのスクショ掲示板に貼ろうと考えたのだ。

幸い?なことに、同じようなことをやっている人はいなく、皆綺麗に作った内装や外装、景色などを上げている人しかおらず、自分がやれば先駆けになるだろう。

自分の最高傑作と共に、ハーレムっぽさを見せれば面白いだろうと思ったのだ。


人事画面を開き、内政などを色々考えた配置をすべて自分好みの女キャラに変え

玉座の間に集合させた。内装が綺麗に入るように何度も撮り直しやポーズを変更し最高の一枚が撮れた時、男は満足しそのまま寝てしまった。








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