アルファノア戦記

@cho26

序①

ある男がいた。何の取柄もなく、何もない。

寝て、食べ、仕事に行く。毎日その繰り返し。退屈な日々か、否。

そんな毎日でも、一つだけ楽しみがあった。生きる意味だ。

「紅暁の空」

男はそのゲームにはまっていた。


「紅暁の空」はタイトルとパッケージ絵だけ見ると恋愛アドベンチャーや

エロゲーのようなノベルゲームと思われてしまい知名度は非常に低かった。

パッケージ絵も美男美女が並んでおり、まさにその通りだと思うのも仕方ない。

だが、フタを開けてみると、中身は非常に凝った戦略シュミレーションRPGであり時を経つにつれ知名度と評価が上がってきた。

パッケージ絵のキャラも詐欺ではなく、そのキャラ達を指揮することができ、

自分だけの城を都市を国を作ることができた。

対人戦はなかったものの、クリア済みのデータをロードすることで

強くてニューゲームができたり、お前それはチートだろと思うような

相手と戦うことができた。

開発元も非常に熱心で何度もアップデートを行いバランス調整や修正などを

ユーザーの声を応えるように行った。


ある日、男が日課になっている公式HPの閲覧をしたところ、大型アップデートの

大きな文字が飛び込んできた。

「リアルな体験」を非常に強調しており、今までなかった屋内の内装の設定や

アイテムの実装、販売が書かれていた。

しかし、それ以上に目についたものがある。

「VR対応?シュミレーションRPGで?」

何度その文を読み返したかわからないがとにかく実装するらしい。しかも、

VR機器はゲーム機本体メーカーのものではなく、

開発が独自に作ったもののようだった。

新たな体験をと謳う公式の言葉を信じ、決して安くはないそのVR機器を

購入することにした。


男は初めてのVRだったため、上がるテンションを抑えつつも説明書を読み、

注意事項はあまり深くは読まなかった。

そのため、注意事項の『装着したまま寝ると脳に障害が起こる恐れがある』

と書かれていたのに気づかなった。

VRを装着し、ゲームを起動すると、眼前にゲームの内部が綺麗に映し出された。

今まで、建物の内部は描かれなかったため内側が見れると興奮したが

それも束の間。

内部実装は今回からのためか、外装に拘った城の内部は無機質で何もない空間が

広がっていたからだ。


男はすばやく、システム画面を開き内装設定の項目を選択した。

『紅暁の空』は装備や建築、外装アイテムなどは

自分の資源を使い作ることができる。 (一部課金アイテムもある)

そのため内装アイテムも作ろうとしたのだが、

資源で作れるアイテムは種類が圧倒的に少なく、ほとんどが課金だった。

ため息をつきつつも、男は自分の理想の城を作るために課金をしまくった。

そして、それは完成した。

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