恋愛経験皆無の私に、逆ハーレムはハードルが高すぎる!

@otukimiudon

第1話

『ねぇ、──は僕を選んでくれるよね?』

『おい、こんな腹黒じゃなくて、幼馴染みの俺にしろよ!──に何するかわかったもんじゃねえ』

『え、えーっと……』

『『僕/俺だよね/な?』』

『ごっ、ごめん、私……』


「いい加減に起きなさい、梨菜!」

「はっ、はい!」

 お母さんの怒鳴り声が聞こえて、夢心地の状態から一気に目が覚めた。

 あぁ、せっかくいい夢を見ていた気がしたのに……。

 って、そんなことを言っている場合じゃない!

「ああああっ、寝坊したぁ……!」

 ベッドから飛び起き、七時半近くを指す時計を見ては、そう叫んで急いで身支度をする。

 私は 御城梨菜みしろりな、十七歳の高校二年生。絶賛オタクライフ中。

 昨日は、推しのLIVE配信をリアタイで見るために徹夜したんだけど、そのせいで寝坊しちゃったよ……。

「早くしなさい!」

「い、今行くから!」

 お母さんに急かされつつ、急いで部屋を飛び出し、リビングへ向かう階段を駆け下りる。

「ごめん、お母さん!時間ないからご飯食べないで行くね!」

「梨菜、大丈夫?お弁当に何か増やす?」

「大丈夫だよ、ありがとう!」

 そう言って、制服についた胸のリボンを直しつつ玄関で慌ただしく靴を履く。

 お母さんはまだ少し心配そうな顔をしていたけれど、「大丈夫だから」ともう一度笑って言うと、「わかったわ」と頷いた。

「行ってきます!」

 そう言って、私は走って家を出る。

 スマホを出して時間を確認すると、もう七時五十分頃になってしまっていた。

 うちの学校のHRホームルームが始まるのが八時。私の足の遅さで間に合うだろうか。

 そんな事を考えつつ、更に足を速める。

「あっ、そうだ、近道……」

 ふと、学校まで少し早く行けるがあったのを思い出し、私はそちらの方向へと進む向きを変えた。

 コンビニ横の細い道へと曲がり、見通しの悪い路地を次々と走り抜けて行く。

(ここ、暗いし曲がって来る車が見えないから怖いんだよなぁ……)

 そう、出会い頭で車とぶつからないかなどと頭の隅で考えては、頭を振ってそれを追い出した。

(早く抜けちゃおう)

 そう思い、更に足を速める。

 そして、もうしばらく走っている内に路地を抜ける道が見えて来た。

(ここを抜けたら、あとはすぐに着くよね)

 そう少しホッとして、最期の十字路に差し掛かった時、


キキーッ


唐突にブレーキ音が鳴り響いた。

左の道から止まりきれずにこっちに来る自動車。

(あ、やば)

そう思った時には、私の体は跳ね飛ばされていた。

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