その78 オッサン哀歌の1

  プロローグ


突然陥った

煩悶と苦闘

その陥穽から

脱け出せるか

オッサンの

パーソナルで

プレシャスな

アドベンチャー


 1 買物哀歌


フラフラと自転車に乗って

オッサンが行く

夕食の材料を買いに


カアチャンがくれる金は

限られているから

数百円の買物だ


カゴを提げて

野菜売り場を回り

肉屋も覗く


経験に乏しいことで

途惑いも多い


知人にあったら

と思うから

人の顔は見ないで歩く

バツが悪いじゃないか


オッサンの食事を

カアチャンは作らなくなった

自分のメシは自分で作れ

重いご託宣だ


笑いごとじゃない

嘆いてもいられない

飢え死にが待っているんだ

とオッサンは深刻だ


フコウフコウと

オッサンの胸が泣いている

これがオレの人生なのか

こんなことになるとはな

ガーンとやられた

まだ頭が痺れている

視界も揺れている

六六歳になって

こんな人生にコケ落ちるとはな


フラフラと自転車を漕いで

オッサンが帰っていく


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