その55 台車を押して

体育館ほどの広さを

百貨が埋めている

ディスカウントの店


ここに来ると

活力を覚える


見栄はいらない

一円でも安く

一つでも多く

何であれ

オイシイことには

与りたい!


本音を顔に出しても

咎める奴はいない

俺もアンタも

ビンボー人だよ


くたびれたトレーナー姿で

髭も剃らず

発泡酒の箱を重ねた

台車を押して

人前を行けば

ことさらシズシズと

歩いてみたくなる


〈むさくるしいジジイ〉


その通り

それでいい

それで寛ぐ


このまま首を傾げて

摺り足で歩くぞ

俺の時代が来るまで


ハハハハ

今が俺の時代なんだって

もうこのまんまで


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