第8話デートの付きそい

●デートの付き添い


「ついてきてください」


 結城は、壱と勇に頼み込んでいた。


「氷ちゃんとのデートにどうして俺たちが付いていかないといけないの?」


勇の言葉に、結城は拳を握る。


「メイド服を着て、学校にくるような奴だぞ。今度は、どんなことをしでかすか」


 結城は、すっかり氷を恐れているようだった。


 勇としては「あんな美少女に迫られているんだから、あと十年ぐらいは待てば」という気持ちになってしまう。いわゆる、光源氏計画だ。


「つまり、先輩は氷ちゃんと二人っきりのデートをするのが不安なんですね」


 壱は、分かったという顔で頷いた。


「協力してあげたいのはやまやまなんですが、私は男子と一緒にお出かけするのを家族に禁止されているんです」


 壱の言葉に、結城と勇は首をかしげる。


「壱ちゃんのお父さんって、そんなに厳しい人なの?」


 勇は、そう尋ねた。壱は部活も普通にやっているので、家に門限があるようには思えなかったからである。


「お父さんじゃなくて、兄が厳しいんです。ほら、三年生の双子の」


 壱の言葉に、結城と勇はそろって「あっ」と声を上げた。三年生の双子は、結構な有名人である。双子であるが二卵性のために、顔はそれほど似ていない。それでも彼らが有名人なのは、その度を過ぎた妹へのブラコンぶりであった。なにせ、休み時間のたびに妹にラインを送っているらしい。


 そのくだんの妹が壱だったらしい。


「登下校も兄さんたちと一緒ですから、知っていると思ったんですけどね」


 そういえば、壱はいつも上級生と一緒に帰っていたことを結城と勇は思い出す。

 

 その壱の兄である愁と陸が、壱が男子と出かけることを禁止しているらしい。えらく過保護な兄たちである、と結城は苦笑いした。


「ですから、兄たちを納得させないと私は一緒に行けません」

 

「じゃあ、兄さんたちも誘っていいから」


 もはやにっちもさっちも行かなくなった結城は、壱にそう迫る。結城に気圧された壱は、さっそく兄たちに連絡をつけた。


「兄さんたちが同席するならOKってことになりました」

 

 壱とその兄弟が、氷とのデートに参加することに決定した。


 結城は、勇にも視線を向ける。


「……分かった。俺も一緒に行くよ」


 勇も了承した。


 結城は、安心した。


「これで、何が来ても安心だ」


 果たして本当そうなのだろいうか、と勇は考えた。


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