第9話Yの勘違い劇場2

●Yの勘違い劇場2


 雄二は、ドキドキしていた。

 

 隣の席に座っている氷が、可愛すぎて。


 雄二は、自分は氷が好きなのだと自覚する。自覚したが、どうしていいのか分からない。氷はこんなに可愛くて、自分にアプローチもしてくれているのに。


「雄二君」


 氷に話しかけられた雄二は、顔を真っ赤にしていた。


「どうしたんだ?」


 氷はファッション雑誌を握り締めながら、雄二に尋ねる。気のせいなのか、氷の顔もほんのりと赤い。


「あのね、初デートのときの服ってどういうのがいいかな?」


 雄二は、思った。


 これは、自分との初デートの時に着る服を選定しているに違いない。


 初デートはどこなのだろうか。


 どこでも楽しいだろうが、遊園地とかが一般的なのかもしれない。桜色のワンピースなんかを着た氷と二人っきりの遊園地。手作りのお弁当を「あーん」と食べさせてもらったりできるのだろうか。


 雄二が幸せな妄想をしていると、氷は「この服なんかどうかな」と雑誌を指さす。その雑誌に載っていたのは、背中が大きく開いたニットセーターであった。雄二は思わず、鼻を抑える。鼻血が出そうだったからである。


 表はタートルネックになっていてつつましいのに、背中は大きく開いた服。そんな大胆な服を氷が着ると思うだけで、雄二の頭は爆発しそうになってしまった。


「もうちょっと大人しいのが良いと思う」


 まだ外は寒いし、と雄二は言った。

 

「今度こそ写真をとってくれるかな?」


 氷はそう呟いた。


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