第5話あなたに傘を差しだしたから
●あなたに傘を差しだしたから
「結城、カッコいいね」
校舎では、勇が待っていた。
うるさい、と結城は勇を睨む。
「小学生が傘を忘れてたら、貸すだろ。顔をしらないってわけじゃないんだし」
「うーん……そうかもね」
だが、迷惑がっている相手にもそうするだろうか、と勇は考える。
きっとこういうのをお人よしと言うのだろう、と勇は思った。
「ところで、君は傘がなくなったけど……これからどうするんだい?」
勇が尋ねると、結城は「走って帰るさ」と言った。
「先輩!」
壱の弾んだ声。
「格好良かったですよ。はい、これ」
壱が差し出したのは、折り畳みの傘である。
「私、大きいのを持っているので。そっちをお貸ししますよ」
壱の言葉に、結城は助かったと思った。
だが、壱の傘に手を伸ばしたのは結城だけではなかった。
「俺も忘れたんだよな」
勇もだった。
結局、二人であいあい傘をして帰ることになった。翌日には、噂の三角関係に勇も追加されたが、もうどうにでもなれと結城は思うようになっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます