十五
十五
「辛いかも知れないけど、まずはゆいちゃんから調べよう。僕はあまり触らないようにするから、気になったとことかあったら宗田さんお願いするよ」
「はい、分かりました。あと、別に真琴でいいです」
「ん?うん、じゃあ真琴ちゃんにしようか」
早速、ゆいの亡骸の横に座って状態を調べた。囲炉裏には火がついていたらしく、服がかなり燃えていた。少し焦げたような嫌な匂いもする。
「右手は……酷いな、こりゃ」
「うっ……」
ゆいの右手は囲炉裏に突っ込まれた状態で、中の肉が見えるほど燃えて爛れていた。
「辛いよね、あまり無理しないで」
「だ、大丈夫です」
「意図的に右手を囲炉裏に入れたように思えるな……犯人がやったか、本人かはわからないけど」
「なんでですかね……?」
「さあ、さっぱりだ。でも、何かしらの意味があったんだろうね」
右手だけを燃やす意味なんてあるのだろうか……想像がつかなすぎて、ただ混乱した。いつもの悪い癖が出て、ぼうっとしそうになる頭を揺すって気合を入れる。
「あ、これは……」
「どうしました?」
「首のところ、見てみて」
夜鷹に言われるまま、彼が指さしている首筋のところに目をやると、赤い歪な線……というより何かで絞めたような跡が残っていた。
「これって、首を絞めたあとかな」
「だと思う。ってことは絞殺か」
だとすると、さっきの疑問は一つ解消される。
「そうするとゆいの右手は犯人がわざと燃やしたことになりますね」
「ん?ああ、そうか、そうだね。確かにここで絞殺された訳ではなさそうだから」
「囲炉裏に横たわったまま絞殺されたなら、暴れて灰が周りに散乱するはずですもんね。ゆいの周りにはそれはない。だから、他の場所で殺された後にここに運ばれて、右手を犯人に燃やされたんだ」
「いいね、素晴らしい推理だ」
しかし、ここで忘れていた素朴な疑問が浮かぶ。一番最初に浮かぶべきだった疑問だ。
「そういえば、なんで夜鷹さんは殺されなかったのかな」
「ちょ、ちょっと真琴ちゃん。物騒なこと言わないでよ」
「いや、そうかも知れないけど。だって、犯人としては夜鷹さんは邪魔な存在そのものですよ」
「まあ確かに……起きられて反撃されても危ないし、万が一顔を見られたらまずいはずだよね」
「それに、手間暇かけて何重にも縛り上げる必要は無かったと思うけどなあ」
「それもそうだね。なんでだろう」
ううん、と唸って顎に手を当てて考え込む夜鷹。
「それはのちのち考えよう。多分関係してくると思うから」
「ですね、今は情報を集め……」
バタン、と家の扉が勢いよく開かれる音がした。そこにはゆいが話をしていた警察官を先頭に、栄吉、太一、光也、ナツ、貴美子が震えて立っていた。
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