第11話:IBMパソコンの調査指令

 そのジョブズを一目で気に入り、姉の成宮照子に、是非、アップルの株を買いたいと話した。どの位、買いたいのと、言われ、3百万円位と言い、俺、今回、大金を持って来てないので、1万ドル程、貸してくれないかと言うと、さすがの成宮照子も、そんな大金どうするのと聞くので、アップルを買うというと、あんたは、日本人だから買えないわよと言われた。


 そこを何とかして欲しいと頭を下げると仕方ないわね、1万ドルわかったと言い、実は、私もアメリカに来て、旦那と一緒に株投資していると話し、直ぐ、貸した金は返してよと言い、了解してくれた。成宮賢は、できるだけ早く返すと言い、実は、もう一つのお願いをしたいと言った。


「アップル株を安い所で、1万ドル分、買って欲しいと伝えた」

「あんた、意外に図々しいねと笑ってわかったわよと了解しくれた」

 1980年10月8日成宮賢が久しぶりに会社で成宮時達の部屋に呼ばれた。成宮時達が、成宮賢に、おまえは、マイコンのマニアだったよなと言われた。


 はい、そうですと答えると遂にソニーでも発売しろと指令が出たんだが、その開発に加わってくれと言われ了解した。その当時、日本においてのマイコンでは、NEC8001の一人勝ちの時代だった。ソニーの社命で日本電気の真似ではなく一歩進んだ、ソニーらしいマイコンを製造せよとの指令が下った。


 その当時、小さなで高密度のフロッピーディスクもやっていたので記憶媒体には、3.5インチ・MFDを採用しようと考えた。1981年となりNEC8001はグラフィック表示 160 × 100ドット デジタル8色。ソニーのマイコンはグラフィック表示320×200ドットのモードで16色の表示を可能にしたいと考えた。


 そして、試行錯誤の日々が続き、成宮賢の会社から帰りが遅くなった。ある夏の日などは、ソニーの研究の連中と激論が始まり、徹夜する日もあったほど熱を帯びた開発の日々だった。成宮賢は、ソニーらしい、あっと言わせる、画期的なマイコンを作りたいと言う革新的な気持ちが強った。


ところが、先輩には、無理しすぎてエラーを起こさないようにと言う保守的な考えの人が多かった。そんな時、IBMで新しいマイコンが1981年8月12日に発表されたとニュースが飛び込んできた。すぐに成宮賢と同じ新製品開発エンジニア2人の3人で調査して来いとの指令が下り、1981年8月19日、デトロイト経由でフロリダ州ボカラトンに飛んだ。


 8月21日について、翌日、IBMパーソナルコンピューター5150のパンフレットを入手し成宮賢が日本語に翻訳した。カタログ上の機能・性能においては傑出した所はなく平凡で期待外れだった。IBM5150はマイクロソフトBASIC・IBMカセットベーシックをROMに搭載しモノクロディスプレイを利用できる標準的なテレビを利用できるCGAビデオカードが選択できた。


 標準記憶装置はカセットテープで、フロッピーディスクはオプションでハードディスクは利用できない。5つの拡張スロットを装備し、IBM純正の最大拡張メモリ容量は256KBで、メイン基板上の64KBと3本の64KBの拡張カードという構成であった。CPUは4.77 MHzの8088で1978年 初期バージョン。


 日本電気 ・NEC・ V20と交換することで若干高速化できた。また8087コプロセッサを追加することで計算処理能力を強化できた。IBM、最大64KBのRAMをプリインストールした構成で販売した。最終的にはより多くの拡張ボードスロットを搭載し、同時にハードディスクを搭載可能な拡張筐体 IBM5161をリリースした。


 これを見た、成宮賢と仲間達は、拍子抜けした。IBM5150で見るべきと所と言えば8087コプロセッサを追加できる事、最大64KBのRAMまで拡張できる事。多くの拡張ボードスロットを搭載し、ハードディスクを搭載可能になること位だった。ただ、IBMは世界の巨人で、これがオフィス用パーソナルコンピュータのひな形になるかの可能性が強いと成宮賢と仲間達は考えた。


 そこで、すぐレポートを書いて帰国し、8月26日、ソニー開発部に提出。その予想通りIBM5150がPC市場の標準の設計仕様となった。IBM PC向けアプリケーションソフトウェアの品揃えが短期間で豊富になり、オフィス用パーソナルコンピュータの標準機となっていった。そうしているうちに、1982年を迎えた。

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