第8話:ジョブズのわがままと禅への傾注

「スタンフォードへ行くのは、自分のやりたいことがわかっている学生だ」

「そんなのアートじゃない。僕はもっとアートな事、面白い事がやりたい」

「結局ジョブズが行ってもいいと思ったのは、リード・カレッジのみであった」


 学費が高い事で有名な私立大学で両親は反対したが、リードに行けないのなら大学には行かないとジョブズは突っぱねる。1972年リード大学に入学する時、両親がポートランドまで車で送ってくれた。しかし、両親に反発していたジョブズは二人がキャンパスまで来ることを拒んだ。


 それどころか、いってきますとも、ありがとうとも言わなかった。

「この件に関しては後に、珍しく後悔したと認めた」

「あの時は本当に恥ずかしいことをした」

「思いやりのない言動で両親を傷つけてしまった」

「あんなことはすべきじゃなかった」


「あそこに入れるよ様にと、いろいろと骨を折ってくれたのに、親と一緒にいたくないと思った」

「親がいると知られたくなかった」

「無賃乗車で放浪する孤児が そこに来たというイメージにしたかったんだ」

「故郷もなく天涯孤独な孤児が。ZEN大学に入って、すぐ、ジョブズはダニエル・コトケと出会う」



 やがて、コトケと、そのガールフレンド、エリザベス・ホームズと、つるむようになった。ヒッチハイクで海に出かけたり、若者らしく人生の意義について語り合ったり、クリシュナ教寺院における愛の祭典に参加したり、といった具合だ。ジョブズは図書館に通い、コケトと一緒に禅の本をたくさん読むようになる。


 鈴木俊隆の「禅マインド ビギナーズ・マインド」などに強く影響受けた。ジョブズは禅と深く関わり、大きな影響を受けている。ギリギリまでそぎ落としてミニマリスト的な美を追求するのも、厳しく絞り込んで行く集中力も皆、禅から来ている。


 また、フランシス・ムア・ラッペの「小さな惑星の緑の食卓ー現代人のライフ・スタイルを変える新食物読本」を読んでベジタリアンになった。あのとき以来、僕は肉をほとんど口にしなくなったと言う。それだけでなく、この本に影響された。


 浄化や断食、または、にんじん、りんごで1~2種類の食べ物のみで何週間も過ごすといった極端な食事をすることが増えていった。また、コケトとふたり、一週間リンゴだけで暮らすことにもトライした。いかにも僕らしく、クレイジーだったよ。


 一週間断食するとすごくいい気分になれる。食べ物を浄化する必要がないのだから体調は最高だった。いつでもサンフランシスコまで歩いていけるきがした」と語っている。ジョブズはすぐに大学に飽きてしまった。興味のない必修単位を取らなければならないことが嫌だったのだ。


 ウォズが訪ねてくると時間割を見せながら文句をぶつけた。これを全部取れっていうんだぜ。ジョブズは 必修の講義をさぼり、自分が出たいと思うものに出席する。創造的だし、女の子と出会うチャンスのあるダンスのクラスなどだ。この時の気持ちはスタンフォード大学卒業式でのスピーチでこう語っている。


「両親は汗水たらして働き、貯めたお金で私を大学に行かせてくれた」

「そのころ私は、何がしたいかわからなかった」

「それに、大学に通ったからってそれがわかるとは思いませんでした」

「なのに、両親が一生かけて貯めたお金をみんな使ってしまう」

「そう思ったから中退し、あとはなんとかなると思うようにしました」


 ジョブズは取りたくない単位を取ることが嫌だっただけでリード大学自体は嫌いではなかった。だから中退した後も興味ある授業だけ出席した。

「その1つがカリグラフィーで、リード時代にあの授業に出なければ、マックに複数種類のフォントが搭載しなかっただろう」


「ウィンドウズはマックのコピーで結局、パーソナルコンピュータにそういうフォントが搭載されることがなかった可能性は高いとジョブズは言う」

 結局ジョブズは18ヶ月をリード大学で過ごした。1974年ジョブズはロスアルトスの実家に戻って仕事を探すことになった。


 「楽しく金を儲けよう」というキャッチコピーに惹かれ、ビデオゲームメーカー、アタリ社を訪問し、サンダル履きでぐしゃぐしゃの髪とよれよれの服に驚く人事部長に対して「雇ってくれるまで帰らない」と宣言した。このときジョブズに対応したのは当時のチーフエンジニア、アル・アルコーンであった。

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