第5話:成宮賢と同世代のジョブズの人生

 母であるジョアンはジョブズ夫妻が大学卒でないことを知り養子縁組を躊躇していたが、ジョブズ夫妻がジョブズを大学に進学させる事を約束したために養子縁組が成立した。スティーブジョブズは自分が養子だと小さい時から知っていた。両親はそのことについてとてもオープンだったという。


 6歳か7歳のころ向かいに住む女の子に「本当のお父さんとお母さんはあなたをいらないって思ったの?」と聞かれ泣きながら家に駆け込んだことがある。とジョブズは語る。そのとき両親は真剣な表情で「私たちはあなたを選んだの」とゆっくりと繰り返し語りかけた。


 捨てられた。選ばれた。特別。この様な観念は、ジョブズの血肉となり自分自身の捉え方に大きな影響を与えたと友人は語る。「生まれたときに捨てられた」この事実はジョブズの中の傷となって残っていると同時に環境をコントロールしたい、製品は自分の延長だと考えることに繋がっているのだろう。


 ポール・ジョブズとクララ・ジョブズを養親だと言われたり本当の両親でないと言われるとスティーブは、2人は1000%僕の両親だと怒った。これに対して、血のつながっている両親の扱いはひどい。僕を生んだ精子銀行と卵子銀行さ、別にひどい表現だとは思わない。事実そうなんだからと言い切った。


 育ての親であるポールはシリコンバレーで機械工作や車の修理の仕事をしていた。そのためジョブズは父親の影響を強く受けて育った。当時の父親についてジョブズはこう語る。

「親父はデザインの感性が鋭いと思ったね。なんでも作れたんだ」

「戸棚が必要なら、親父が作ってくれ、柵を作った時、金槌で打たせてくれた」


「戸棚や柵を作る時は見えない裏側までしっかりと作らなければいけない」

「この父親の教えが後にジョブスが開発する製品に生かされているのだろう」

「シリコンバレーで育ったジョブズは、ポールだけでなく周囲の大人からも影響を受け、この頃から自分も参加したいと考えるようになった」


「太陽電池とか、バッテリーとか、かっこいい仕事をする人がたくさんいて、そんな人達に質問しながら僕は大きくなっていったんだとジョブズは語る」

「そんな中、ジョブズにとって忘れられない事件が起こる」

「カーボンマイクとアンプの関係についてジョブズは父親の間違いに気づいた」


「それ迄ジョブズは父親は何でも知っていて知識を単純にすごいと思っていた」

「ジョブズはこの事件を今でもはっきりと覚えているという」

「父親はなんでも知っているわけではないと知った瞬間であり自分は両親よりも頭がいいと気づいた瞬間でもあったからだ」


 この事件についてジョブズはこう語る。

「あれは重大事件として僕の心に焼き付いてる、両親より頭が良いとわかり」

「そんな事を考えるなんてと、恥ずかしく感じ、あの瞬間は忘れられない」

「しかし、そう思っていたのは、ジョブズだけでなく両親も同じだった」



「両親はジョブズを愛して。同時に、頭が良く我の強い息子に自分たちが合わせなければと考えた」。

「そのため両親はジョブズが必要とするものは全て与え特別な人間として扱おうと様々な努力をした」

その事にジョブズ自身も気づいていたがジョブズは当時についてこう語っている」


「両親は2人とも僕を理解してくれた」

「僕が普通の子じゃないとわかって大きな責任を感じたんだ」

「新しいものに触れられる様にいろいろと工夫をしてくれた」

「良い学校に行ける様に努力をしてくれ、僕のニーズを尊重してくれた」 


「この様にジョブズは、捨てられたという感覚だけでなく自分は特別だという感覚も持って成長した」

「ジョブズの為に決して裕福とは言えない家庭であったがポールは必死に働いた」


「ポールは走らなくなった車を50ドルで買い、何週間かかけて直して250ドルで売ってジョブズの学費を稼ぎジョブズは小学校に入学」

 自宅から4ブロックはなれたモンタ・ロマ小学校だ。文字は小学校に上がる前に母親に教えてもらっていたせいか、低学年のころは退屈でいたずらばかりする問題児であった。

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