第4話:成宮賢がパソコン好き、ジョブズ登場

 同じ頃、NECは日本電信電話公社横須賀通信研究所のある研究室から、新人教育用のマイクロコンピュータ製品の開発を受注することになった。同部門の後藤富雄は部長の渡辺和也に教育用キットの開発を提案した。後藤はTK-80の主要部分を設計し、加藤明が詳細設計を行った。


 後藤はKIM-1の写真からアイデアを取り入れた。KIM-1はソフトウェアで現在のアドレスを表示するようになっていた。しかし、CPUが暴走するとディスプレイが消える。TK-80は555タイマーICを使いCPUに割り込みをかけるダイナミックディスプレイを採用した事で、常に現在のアドレスを表示できた。


 それに加え、TK-80はCMオペレーション・システムバッテリ機構を搭載していた。後藤はオープンアーキテクチャであったPDP-8の影響を受けてた。そこでTK-80のマニュアルに回路図やデバッグ・モニタのアセンブリコードを掲載することにした。TK-80は1979年8月3日に発売された。


 当時の技術者の課長が決済できる88,500円の価格が設定された。NECは1976年9月14日に秋葉原ラジオ会館にてサポートセンター「ビット・イン」を開設した。すると、多くのTK-80が電気技術者だけでなく経営者、マニアや学生などにも売れていることが判明した。


 成宮賢もマニアの1人として、秋葉原ラジオ会館の「ビット・イン」に入り浸って情報収集していた。TK-80は月2百台の販売予測に反し二千台を販売した。この成功を受け、他の日本のマイクロプロセッサメーカーはそれぞれのマイクロプロセッサ用に評価キットを開発した。サードパーティからは電源や周辺機器などが登場した。


 TK-80発売後、成宮賢が所属する東大のコンピューター研究会の仲間達は、パソコンの将来性に興味を持った。そして秋葉原のビット・インに入り浸る様になりパーソナルコンピューターの未来について語り合うようになった。当時、日本では、Altair 8800は1975年に販売されていたが輸入仲介手数料が高く売れなかった。


 アップルIIやPET 2001も同様であり、高嶺の花だった。その時に、NECの研究者から、近いうちに日本でもトレーニングキット出なくて、本物のマイクロコンピューターが発売されると、内緒で教えてもらっていた。


 この同じ年1976年にスティーブ・ジョブズが、アップルコンピュータを設立した。彼のガレージで製造したワンボードマイコンのアップルI・スティーブ・ウォズニアックによる設計を販売、ごく少数販売した。しかし、翌年1977年に発売したアップルIIは大成功を収めた。


 アップル社の基礎を作るとともにパーソナルコンピュータの普及を促した。これは整数型BASICインタプリタをROMで搭載し、キーボードを一体化、カラービデオディスプレイ出力機能を内蔵したもので、今日のパーソナルコンピュータの基本的な構成を満たしている。


 アップルIIはオープンアーキテクチャであったため多くの互換機も生み出し、同時にシェアも奪われた。その後に互換機メーカーへの警告や提訴を行った。しかし互換機メーカーは、なくならなかった。


 これにでコンピューターの巨人、米国IBMと異端の天才と呼ばれたスティーブ・ジョブズのアップル、日本では、NECがマイクロコンピューターの開発競争が始まった。1977年3月、成宮賢は、東京大学工学部電子工学科を卒業後、祖父の成宮時達の務めるソニーになり物入りで入社した。


 当時の日本で、1979年に本格的マイクロコンピューターPC8001が登場。奇しくも同じ年の同じ日1955年2月24日、アメリカでは、スティーブ・ジョブズがシリアからの留学生で政治学を専攻する大学院生アブドゥルファター・ジャンダリとアメリカ人の大学院生ジョアン・シーブルとの間に生まれた。


 ジョアンの父が、イスラム教信者のシリア人である政治学者・アブドゥルファターとジョアンとの結婚を認めなかったため、誕生以前から、養子に出すことに決められていた。ジョブズはポール・ジョブズ、クララ・ジョブズ夫妻に引き取られることになった。

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