第2話:成宮時達が戦後、ソニーの前身・東京通信に就職

 1946年に会社設立当時20数人で、旗揚げした東京通信工業の設立趣意書で、代表取締役専務の井深は「技術者の技能を発揮できる理想工場の建設」や「不当なるもうけ主義を廃し、いたずらに規模の拡大を追わず、大企業ゆえに踏み込めない技術分野をゆく」とその企業理念を謳っている。これが技術のソニーの原点だった。


「ソニーの人事管理の出発点は、社員が仕事をする事に喜びを感じるような、楽しくて仕方がないような活気ある職場づくり」

「明るくオープンで働きやすい会社のカルチャーづくりをしようという姿勢」

「当初より外部から優秀な人、やる気のある人を引っ張り戦力にし成長を遂げた」

「その後、要員募集を行い、入社後も、こだわりハンディなどがない」



「それどころか、その日からすぐに仕事ができ活躍してもらえるという事で、かえって重宝された」

「定期的に新入社員を採用し始めてからも、この文化は、一層、大切にされた」

「井深は、人事開発室の新設にあたり社員にこう呼びかけた」

「部長、課長、あるいは人事開発室が皆さん方を引っ張り上げるのではない」

「ソニーでは、社員、一人ひとりが自分でエンジンをかけて前進する」


「役目は、自らを啓発し成長したい強い意志がある人に道しるべを与える事」

「障害物があれば取り除き、能力と適性に応じて仕事を決めていくことだけ」

「人事開発室は、単なる触媒に過ぎないと述べた」


「もともと、井深や盛田には、やりたい人、やれる人がその仕事をやる」

「自分で自分の能力を発見し、適所を見いだしていける人が、本当に実力を発揮し成長していくと考えた」

「そこで、向上心と意欲に支えられた能力を持った人に対して、会社が常にチャンスを提供して、制度として支えようという姿勢を貫いた」



「実際に仕事をやり遂げていく過程の繰り返しで、人間の能力は高まるという考えの下に、少々乱暴でも実際に仕事をやらせてみる」

「新入社員に対しても異動者に対してもこの考え方が一貫して行われた」

「成宮時達も今迄、日本の会社制度と真逆に近い会社に入社し戸惑った」


「しかし、実力主義という考え方に賛同した」

「そして、自分の部下にも、最初に、仕事に対する情熱があるどうか、次に、その仕事を完成させる能力があるかどうかと言う順番で、担当者を決めた」

「日本伝統の学歴主義ではなく、学力主義、実力主義だった」


「これには、最初、成宮時達が東大卒業という自負があり、なじめなかった」

「情熱のある者が、寝る間も惜しんで目標を達成するのを見た」

「逆に、能力がありながら、合理的に見て無理だと早く、あきらめるインテリ連中を見て、強く教えられた気がした」


「確かに実力の世界で切磋琢磨していくべきである」

「そうしなければ、素晴らしい商品を世に出すことが出来ない」

「こういう現実が、社員たちの言動、行動を見て、身にしみた」

「そして1955年、優秀なスタッフが、他社から続々と集まり素晴らしい技術開発集団が出来上がっていった」


「成宮時達は、1955年4月1日にソニーの取締役に就任」

「開発本部長を任され、その時、ソニー株を50万株割り当てられた」

「1955年8月、ソニーが東京証券取引所で、店頭株として上場し初値21円となり、持株の評価額が105万円となった」


「成宮時達は、その年、人事開発部取締役になり優秀な人材を発掘する仕事をした」そう言う事もあり自分の息子にも期待したが、残念な事に、一人っ子の成宮豪気は、小さい時から特徴のない子であった。新しもの好きで、特に猛勉強をする事もなく洋楽ばかり聞いて努力しない現代っ子に育ってしまった。


 そして銀行員をめざして東京都立大学を卒業し埼玉銀行に入社。1952年6月17日、同じ銀行の後輩の成宮桂子と結婚。翌年、1953年10月21日、長女・照子が誕生。その2年後、1955年2月24日に長男・成宮賢が誕生。成宮時達は、自分には、子供が1人しかいなかったので2人の孫が出来て非常に喜んだ。そして、息子で果たせなかった夢を孫達にと考え教育費に投資を惜しまなかった。

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