8ページ

 

 

9月3日


 今日私は16歳になった。


 おめでとう私!

 ありがとう私!


 今日も一人で夕飯だ、万歳。

 デザートにケーキが付いてたのは、シェフの優しさなんだろう。


 当然ながら家族からのお祝いは無い。父も。


 ──と、一年前の日記をそのまま書いてみたけれど、本当に何も変わらないのだ。


 日付がそろそろ変わりそうだけれど、バルトは来そうにない。


 噂で、隣国との戦が始まるかもしれないと聞いた。一触即発の状況だと。


 バルトは大丈夫だろうか。

 誕生日なんてどうでもいい。ただ貴方の無事な顔が見たい。




10月8日


 今日はフレアリアの誕生日。案の定、凄い数の招待客だ。


 仮にも私は王太子の婚約者なのに放置されて、その妹であるフレアリアの誕生日には王太子もやって来るとか、それどうなの。


 と普通なら思うのだろうけど、私にはどうでもいい話だ。

 このまま私とは婚約解消になって、フレアリアと婚約してくれたらいいのだけれど。


 そうしたら、私は迷わずバルトに付いて行くのに。


 とにかく王太子の問題をどうにかしなければ。

 最悪の場合、家出も考えなくちゃね。




12月15日


 今日は王太子の18歳の誕生日だそうだ。


 当然我が家にもパーティの招待状が届いている。


 が、どうやら私は病に臥せってるそうです。なのでフレアリアが代役として王城に向かいました。


 何というか……呆れると言うかようやると言うべきか。


 せいぜい王城でイチャイチャしてくるといい。周りへ不貞を見せつけてくるがいい。そしたら、私との婚約はすんなり解消となるのかもしれないのだから。




12月18日


 国王に呼び出された。なぜ。


 父と二人で登城すると、思ったより優しい顔の王に出迎えられた。


「そなたがリンティアか。先日の王太子の誕生パーティには風邪で来れなかったと聞いたが、もう体調は良いのか?」


 と、私の体を気遣ってくださる優しい王様だ。

 どことなく──誰かに似ているような?と思ったのはその金髪碧眼のせいだろうか。


 特別何か重要な話があったわけではなかった。ただ、一度顔を見てみたかったとのこと。一体なんだったのだろう?フレアリアと王太子がいちゃつく様を見て、何か思う所があっての呼び出しと思ったのだけれど、拍子抜けだ。


 ──婚約解消の話を期待したのに、残念……。


 とにもかくにも、とても緊張して疲れた。

 とてつもなく眠い。今日はもう寝よう。




12月28日


 今日は雪がよく降る。


 心配されていた隣国との関係は改善の兆しが見られ、戦争は回避となりそうだ……と、父が来客と話してるのを聞いた。


 それではバルトは無事に仕事を終えたということだろうか。もうすぐ帰ってくるんだろうか。


 またも外は大雪で、どのみち当分会えそうに無い。結局今年は一度会えただけだった。


 それでも私の中のバルトへの思いは消えることは無い。


 王太子との婚約が解消されたなら、共に行っても良いか聞いてみよう。


 俺のものになってとバルトは言ってくれた。それが本心であるなら──そう信じてるからこそ、受け入れてくれると思いたい。


 今は雪が激しくて学院も無い。雪が溶ける頃には、またフレアリアと王太子はイチャイチャし始めることだろう。


 そうして春になれば王太子は卒業だ。

 きっとそれまでにケリがつくと思う。


 その日が早く来ることを願いながら。


 ただただ雪の季節が終わるのを私は待つんだ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る