邂逅
其処は、茶色い、焦げたような、岩に囲まれた、砂と岩の荒野だった。どうにも、人が住めるとは、思わらないような、場所だ。このような、土地に、作物など、育つのだろうか。荒野の中を、ずっと、メノスの射瑠間 縁と、一二三 晏由美、一ノ本 恋唄は、歩いていた。LLLコーポレーションは、この辺りに有るらしい。史畏莫国の首都、雲浜市から、1000km程、離れた、処に有る、
北燧から、更に、西に、行けば、史畏莫国の、少数民族の住む、ライアン区、西に進めば、エントン区が、ある。史畏莫国では、宰民族が、力を持っており、その他の民族は、冷遇される場合が、多い、中でも、ライアン族は、一度、史畏莫国のやり方に反対し、デモを起こしてから、虐殺、ジェノサイドが、行われてきている。強制的に、再教育キャンプと、冠づけた、牢屋で、洗脳教育を施されている。まるで奴隷以下である。其れ等の、民族は、殺され、その臓器は、高値で、裏では、取引されている。
考えても見て、くれ、死にそうな、自分の家族が、友人が、助かると、言うのだ、その、ライアン族を含む少数民族の命と引き換えに、其れは、商売になっている、さらに、働けるうちは、給料も、殆どない、状態で、働き続かされる。
「史畏莫国は、宰民族以外の、民族を人間と、思っていない。」
一二三は、憤怒した。
「そりゃ、アルダーが、イリマエル地方の過激派の人間を、虐殺するのと、変わらない事さ。また、かつて、東陣営に、回った、ネーダでの、再教育も、其れさ。」
一ノ本は、冷静に
「しかし、此の戦争を期に、新たに、アルダー国の、大統領に就任した、パラス・ダイムリーヒルトは、この様な、状態を。見過ごす事は、しない、でしょうね。」
射瑠間は、今回の戦争が、今回の戦争が起こる事を、十年以上前から、予測し、裏組織、ゼウスを作り出し、史畏莫国、中央政府を、制圧し、その、首席の首をとり、傀儡として、首席に変装した、部下を、首席にでっちあげ、ゼウスのリーダは、アルダー国の大統領に就任した。
「少しづつでも、変わっていってくれるといいんだが、民族差別は、嫌いだ。」
晏由美は、戦争を嫌っていた。
「其れは、綺麗ごとさ。残念だけれど、差別は、無くならないよ。其れに、世界人口が、多くなり過ぎたんだよ。だから、選ぶしかないのさ。この世界は、残酷で、強いものが生き残る世界だからね。」
「確かにそうね。分かっているわ。只、虐殺され、自分の優位を誇示しようと、必死、な民族を見ていると、滑稽で、哀れにさえ、思えてくるわ。」
晏由美は、民族差別の愚かさを理解していた。頭では、理解していも、その歴史、本能は、無意識に、他の生物と、して、他の種族を差別するのだ。
「ま、確かに、生物学的にも、私達は、別の種族に対して、嫌悪を示す、という、科学的な、研究が或る。嫌悪を示す、丁度、蟲を見て、そう思うようにね。けれど、ま、我慢すれば、いいだけの事さ。忍耐が、必要なんだ。」
射瑠間が、そういうと、沈黙が続いた。
ある町で、購入した車に乗り、北燧迄、其れで、向かった。その、一日後、三人は、到着した。
北燧は、都市部と、そうで無い、処で、天と地の差がある、国だ。
「それで、北燧の、」
射瑠間が、持ってた地図を開ける。LLLコーポレーションのある、処に、×印を付けておいた、地図だ。
「天仙の、山に、印が、付いているが、、、果たしてこの様な処に、人が住めるのか・・・。」
其処は、荒れ果てた、地を抜けた先にある、山だった、山の麓には、小さな集落がある。
「この集落にあるのだろうか。」
「さあ、な、わかららん。」
集落に着くと、其処には、特に、目だった建物も、無く、LLLコーポレーションの事を知るもんものなど、一人もいなかった。
しかし、
「山の伝承か。」
山には、古くから、修行にくる、者が、あり、其処に、籠った、人間の中には、有名な、人間が、幾らかいるようだった。
「恐らく、誰も近づけないように、山の上に、会社を建てたのだろう。」
「この、山、寅が、出るらしいですよ。それと、熊も。」
晏由美と、恋唄は、畏れた。
「そりゃ、そうさ。」
射瑠間は、其れを鼻で笑っていた。
「ああ、そうか、射瑠間が、いれば、八咫烏か、月兎でも、出て来ない限りは、大丈夫、か。」
恋唄は、我に返ったように、言った。
「と、言っても、この辺りの猛獣は、異常ですよ。銃で撃ってもなかなか、死んでくれない
。」
山を登った。
山は、標高2000メートル程度で、あったが、その中は、険しい。樹々が高く、聳え立ち、水が、上から流れている。
その下には、小さな水たまりが或る。
猛獣が、そこらへんを闊歩している。
頂上に着くと、其処には、死骸が、集められ、ていた。墓がいくつも建っていた。
そして、看板が、建ててある。
「登頂おめでとう。」
一体誰が、何の為に建てたのだろうか。」
頂上を更に進んでいくと、前方から、人が近づいて来た。
女だ。目じりのつり上がた、紫色の長髪の女だった。
「ああ、君たち、来てたんだね。モニターから、ずっと見てたよ。なかなかに、ユニークだね。其れに、月兎人まで、入るようだ。ま、しかし、忠告だ。LLLコーポレーションには、近づくな、殺されるぞ。」
女は、そういったきり、何処かへ行ってしまった。
「なんだありゃ。」
恋唄は、困惑していた。
「ま、ああ、言っては、入るが、言ってみるしかない。」
射瑠間は、胸に一抹の不安を感じつつ、LLLコーポレーションを探す。
何処を探しても、LLLコーポレーションは、存在しなかった。
「本当に、此処であっているのか。」
恋唄は、最早、限界だった。帰ろうと、していた。
「まだ、捜索していない、処が、あるかも、分からない。」
「そうだね。その可能性が、あるよ。」
古い、小屋を見つけた。其の小屋は、寂れて、壁に穴が開いてゐた、木造の小屋だ。木からは、茸や、コケが生えている。
気になって近づいてみる。
何だか、罠の匂いがした。どうしてかは、分からないが、これ以上近づいては、ならないような、そんな、胸騒ぎが、した。
しかし、恋唄は、中に入って終った。
「待て、恋唄さん、其れは、罠かも知れません。」
いった時には、もう、遅し、地面から、檻が、出てきた、射瑠間は、恋唄を助け出そうと、檻へ、飛んだが、間に合わなかった、ついでに、射瑠間まで、檻の中に入って終ったのだ。
「ちょっと、あんたら、何仲良く、罠に、引っ掛かか、ってんのよ。動物を捕まえる奴でしょこれええ。」
晏由美が、そう言って、私達を交互にみる。
次の瞬間、檻は、地面に沈んだ。
「え、何、どういう事、何処にいったの。」
地面に沈み込んだ、性格には、この山の、中に、LLLコーポレーションは、あったのだ。そう、文字どうり、山の中、つまり、内部に。
地下に落とされると、其処には、誰も居なかった。檻が、開いた。山の中だが、山のどのあたりなのかも、皆目見当がつかなかった。山の内部は、完全に、人工的な、壁で、覆われて、機械が、置いてあった。
「何だ、よ。ここは。」
恋唄は、起きた。
「捕まったんだ。只、檻は、開いた。敵は、一体、何が目的なのでしょうか。」
奥に進んでいく。
何もないぜ、人の気配もしねえ。
長細い道を歩いて行くと、大広間い出た。
壁に沿って、二階が、観覧席が、付いている。
「何だ此処。」
「吹き抜けになってるね。」
上から、弓矢が、飛んで来る。
「なんだ。なんだ。」
上を見ると、先ほど迄、いなかった、が、吹き抜けの、壁沿いの、道に、ぎっしりと、弓を持った人が、立って居る。
「こんな、事で、僕を、倒せると、でも、思った。」
射瑠間は、即座に二階に飛び、反撃をしようと、身体が重い。
何だ。此処は。
体の重さが、百倍にも、感じる。
思い。
恋唄は、人間だ、恐らくこのままでは、死んで終うだろう。
恋唄を抱えて、逃げる事しか、出来ない。
どうして、身体が重い?。どうして、なんだ。
考える。
石が、落ちるのが、速かった。弓の落ちるスピードが、速い。
重力だ、重力が、操作されている。そんな事可能なのか。
兎に角、この場から離れなければ、広間から、離れようと、入り口を目指すが、入り口の扉は、閉まっていた。
そんな・・・。
考えろ、何か、生き残る方法は、ないか。
制御装置だ。装置を破壊すれば、身軽になるはずだ。
制御装置を探すが見当たらない。
二階に上がり、辺りを、走り回ると、其れは、あった。モニター越しに、合図を出している、男がいた。
こいつが、装置を動かしているのか。
思い脚を、上げ、蹴る。
そして、装置を、止める。
装置は、レバー式のスイッチと、重さを調整する、モニターで出来ている。本部と、連絡する為の、モニタータブレットが、あった。
「あああああああ、大丈夫か。恋唄さん。」
恋唄は、起き上がった。
「何があったんだ。身体が重くなって、呼吸も苦しかった、内臓が潰されるような、苦しさを覚えて、意識を失っていた。」
周りは、囲まれていた。
弓矢を構えた、兵士に囲まれていた。
先ほど蹴り倒した兵士を見ると、人では無かった。機械だ。
「機械人形なわけですか。」
機械人形の、頭の塗装が剥がれ、内部の配線が、見えていた。
「しかし、こりゃ参ったねえ。」
射瑠間は、抵抗するが、この数相手に、切り抜けられると、思えなかった。
敵の使っている、弓矢は、速すぎるのだ。
「光の速さで、飛ぶ矢か、何処の、科学技術だよ。」
正確には、光の速さに極限まで近い速さだ。
その速度を見切れるのは、月兎人である、射瑠間 縁だけ、だ。
射瑠間は、恋唄を守りつつ、この状況を切り抜けるしか、無かった。
感じ取るのは、弓が放たれる動作の観察と、音、空気の振動だ。
この先に、通じる道は、何処だ。
道は・・・。
出口を見つけ、必死に、其処へ、走る。
扉を、タックルで、壊し、先へ進む。
「危機一髪だったな。」
「ああ、人間のあんたには、この先は、厳しい。」
「その様だな。あの場所じゃ、透明マントも、無効化されるようだしな。狙撃手としては、厳しいぜ。」
と、言っても、帰る手立ても無いのだ。
通信機器で、外部と、接続する事も出来ない。
「どうなってんだ。こりゃ。」
LLLコーポレーションのロゴが、刻まれた壁の、道で、考える。
前方から、紫色の長髪の、山の頂上で、出会った女が、近づいて来た。
「ドジを、踏んだみたいだね。あんな。罠に引っ掛かるなんて、あんたら馬鹿だよ。」
女は、黒い笑みを浮かべた。
「あんたらの事は、全て調べさせてもらってる。工藤家、よく分からんんが、その一族の家臣らしいな。ははは。其れが、こんな辺境の地に、何のようだ。ま、訊かずとも、分かるがな。LLLコーポレーションの、調査とか、だろ。あたしは、ソフィ・エルドラド。数学者さ。」
二人は、得体の知れない、この女の事を警戒した。
「なあ、に警戒する必要は、ないさ。そんなに、震えなくても、大丈夫だ。危害は加えない。ただし、君たちが生き残る保障もできない。なんせ、この研究所には、イカれた、科学者が、多いからね。君たちが、嵌った罠は、王 満平の作ったものだよ、ずっと、監視されてたみたいだね。月兎人が、掛ったと、大喜びだったよ。ははは。普通だったら、あり得ないからね。」
恋唄は、自分のせいだと、反省した。自分が中に入れなければ、射瑠間は、この罠に引っ掛かる事は、無かった。
「そう、自分を責めるなよ。君。君は、悪くない、悪いのは、満平の奴さ。汚い、おっさんだよ。見ているだけで、吐き気がする程ね。」
ソフィは、意を決したように言った。
「君たちに、とても、残念・・・。な あ、ま、いいや。其れは、後にしよう。兎に角、君たちは、此れから、生き残るのならば、まず、この研究所に居る、日月 月日と接触する必要がある。彼奴は、力になってくれるはずだ。工藤 美香子の友達だと、言っていたからな。日輪人らしいし。訳アリみたいだ。研究が、無償で好きなだけ出来ると、訊いて、LLLに入ったらしい、そして今は、機械工学、医学、数学、情報工学に、おいて、すばらしい、研究成果を残した、天才さ。有名な、者に、仮想現実機の実用化が、ある、認識を折り曲げる技術は、彼女が、最初に、見つけたんだ。」
何か、気になる処は、あるが、兎に角、素性は、分かった。
「嘘を言っているとは、思えないな。にしても、どうして、ソフィさんは、私達を助けようと、してくれるんだ。」
「王 満平が、嫌いだからよ。彼奴の思い通りに成る事が、癪なの。害虫よ。アレが史畏莫国に技術を渡し続けてる。LLLコーポレーションは、独立したハズなのに、彼奴が、何時までも、パイプを・・・。閃光だって、もともとは、此方の者なのよ。ま、彼奴らじゃ、まともに、閃光と、対話する事も出来ないでしょうけどね。」
射瑠間は、考えた。敵は、誰なのか、と。
「李 陳、エリンコ・ルーミ、アルベルト・フォン・マックス、ション・アイザック・サートンは、そんなに、悪い奴らでは、無いわ。ま、残酷では、あるけれどね。彼等も、LLLが、特定の国に、加担する事を嫌っている。」
「それじゃあ、どうして、王 満平は、追い出されないんですか。」
恋唄は、質問する。
「表立った証拠が無いからよ、汚い男だわ。」
「暗殺しましょうか?。私、得意ですよ。暗殺。」
射瑠間は、そう言って、刃物を振ってみせた。
「それも、いいわね。けれど、あなた、先ほどので、わかったでしょう。此処は、危険な場所なのよ。生き残って、此処を出る事だけを考えた方がいいわ。日月 月日の研究室は、此処の道をずっと真っすぐいった処にあるわ。日月研究室の標識があるから、直ぐにわかるわ。」
「ありがとう、ございます。」
「私は、監視カメラと、其れを制御する、システムを、細工してくるわ。今も偽の映像を映す様に、しているわ。それじゃあねえ。」
嵐のように、其の場から、去っていった。
「至れり、付くせり、だね。」
射瑠間は、腰を抜かした。
其処迄の、道のりは、特に、別段変わった処は、なかった。
其処は、其の道を歩いていると、唐突に表れた。
「あ、此れ、日月研究所って、書いてあるよ。」
「あ、本当だ。」
中に入る。
「失礼しまーす。」
すると、中から女が、出てきた。
「失礼だと、思ってるんだったら、入ってくんじゃ、ねーよ!!!」
中から暴言が、聞こえ来る。
困った、どうしよう。
しばらくすると、
「冗談だよ、入んな、あんたらのことは、モニター越しから、見てたから、知ってるよ。」
水色の髪をした、白衣の、女だ。煙草を吸っていた。
「失礼しまーす。」
中に入る。
整えられた、研究室だ。
実験器具が、しっかりと、整理されている。
黒板が、あって、理科室を彷彿させた、
巨大な機械コンピュータや、重力装置の機械、情報データテレポートシステム装置の様な、次世代の、科学技術品が、置かれている事を、除いては。
「ふーん。月兎人ってこんな、なんだああ。初めて見たよ。実在したんだねえ。耳の匂いを嗅いでいた。何だか、獣臭くていいねえ。ま、なんだ、座んなよ。工藤家のモンなんだろ。」
いきなり、射瑠間の帽子を取って、耳をさわり始めた。兎の耳だ。
「うーん、じっくり、研究材料に、できればと、思うが、君たちにも、精神や、心の作用は、あるだろう、だから、辞めておくよ。其れに、美香子の処の者だと、いうし。証拠を見せてくれないか。お前等が、工藤家のものだという、証拠を。」
射瑠間と、一二三は、服を脱いで、背名を見せた。
「ほう。此れは、工藤家の紋章か。こりゃ、実物だな。此れでも、見る目はある。偽物ではなさそうだ。」
工藤家の者には、美香子本人の手で、入れ墨を入れる習わしだ。
「ま、そうだな。御前ら、ニュースは、見たか。」
「ニュースですか・・・。」
「そうだ。その様子じゃ、みてねえ。みてえだな。」
美香子は、テレビのリモコンを付けて、録画していたと、いう映像を流した。
「これは・・・。」
工藤家が、燃えていた。
「何者かに、襲撃されたんだとよ。美香子の奴死んでなきゃ、いいけどな。」
大丈夫だろうか。
射瑠間は、不安になった。
「ま、友達と、しては、何だが、俺には、何もできねえ。のよ。だから、おめえらを助ける事で、力になれねえかなあ、と思ってよお。」
そういう事か。
「直ぐにでも、工藤家に戻り、一家の復興に尽力しなくては、なりません。力をお貸しください。」
「ほう、気風が、あんね。やっぱ、、工藤家だ。」
日月 月日は、感心した様子、で見ていた。
「ま、LLLの事は、自分たちで、調べてくれや。私もよく分かっていない事が、多い。内部で、分裂が起きてる。この一連の事件に、LLLが関わっているのは、確かだろうな。高校生自殺事件、知っているとは、思うが、あれに圧力をかけていたのは、LLLだどうして、LLLが、圧力をかけたのか、時折審議が、行われるが、誰一人と、して、アリバイが、ある。その後、その技術によって、世界は、変わった、勿論、LLLも変わった。知っているのは、このくらいさ。」
私達の知らない話だ。
高校生自殺事件なんの事だろうか。
まあ、そんな事は、どうだっていい。
とっとと、此処から、出るのだ。
工藤 美香子の友達だったら、どうして、連絡先を知らないのだろうか。連絡を取れたはずであ、ないのだろうか。
「どうして、美香子さんに、連絡を取らないんですか。」
「ああ、その事か。しようと、思えば、簡単にできるんだがな。どうしてだろうな。美香子の奴は、俺が、この仕事をする事を反対していた、史畏莫国なんかに、行くなってね。けれど、俺は、其れを無視して、研究に眼がくらんで、この国に入った。だから、意地を、張っているんだろうね。成功して、風の噂で、知ってくれればいいみたいなね。」
「はーーーん。けどよ、こんな場所から連絡とれねえだろ、其れに、外に出たと、しても、山の中、史畏莫国の中じゃあ、捕まるしよ。」
「まあ、ね。手の込んだ対策が必要になるね。できるかもわからない。失敗して、捕まるリスクの高い仕事だ。」
「それだったら、連絡しない方がいいね。私達も、した事ない。」
「あんたら、此処から出る出口の場所知らないだろ。此処は、四階だ。頂上に出る出口と、100メートルおきに、出口は、20ある。けれど、君たちは、0メートルの出口から、出るんだ。そして、直ぐに、この国から、立ち去れ。月兎人だったら、其れくらいできるだろ。ま、人間の方は、後から、飛行機か、舟で、帰国すればいいさ。」
ソフィは、机の上に置いてあった、紙を持ってきた。
「辺り一帯の地図だ。」
不思議な紙だった。
「この赤い粒が、機械人形、青が、研究者だ。隠し通路を使って、帰るんだ。その道は、緑の線でしるしてある。随時、その緑の線が、方向を教えてくれる。」
自動で、敵を索敵し、最短ルートを教えてくれる機能のある、紙だった。
「どうなっているんだろう。」
「繊維に、回路を組み込んだ、紙さ。売れば、億万長者は、くだらないだろうね。」
あと、此れを着ていきな。
「機械人形に化ける事の出来る、服だよ。此れを着ている内は、襲われる事は、殆どない、健闘を祈るよ。」
部屋から、出ると、二人は、出口を目指して、走り始めた。
アテリー国、首都、アンゴラ。
私は、調査に来た。
もともと、この調査には、目的など無かった。大義名分としては、アテリー国内部に、テロ行為が、活発化している現状において、あの一連の事件との、繋がりが無いのか、と言う事だった。其処で、私が、調査に出向く事になったのだ。
こういった、スパイ任務は。得意中の得意で、ある。
しかし、何度来ても、この辺りの国々は、治安が悪い、人が死ぬのが、日常茶飯事のような場所だ。
アルヨル過激派は、幾つかの、組織に分かれるが、中でも、ベルナードという組織の中の、デバットという指導者が、アルダー国に、惨殺されて後、一時期は、勢力を縮小したとも、思われていたが、アルダー国を含む、西側への、恨みと、反感を更に加速化させたのみで、更に、治安は、悪化し、デルタや、ヤーム、ベルナードの子供、大人は、今日も、自爆テロに明け暮れている。
「また、か。」
首都で、自爆テロが、あったそうだ。
二十五名が死亡、三十名が、重症だそうだ。
そのような、辺境の地で、聞き込みを行ってゐた。
その、結果、大した情報は、得られなかった。
が、ベルナードの幹部だと、いう男を知っていると、いう、女に会った。その女の言う事には、ベルナードっていうのの、目的は、領土を取り返す事なのさ。その昔、アルヨルは、広大な土地を支配していたが、今じゃ、この有様だろ。其れを許せない奴らが、争いを起こすのだと、言った。
其れは、誰もが知っている事だ。
「その、ベルナードの人達と話せませんかね、調査があって。」
「ああ、そりゃ、命が欲しくないんだったら、あたしが、斡旋してあげてもいいけれど、あなた、死ぬわよ。観て見れば、日輪人じゃない。ベルナードは先進国の事を嫌っているわ。アルダーと仲良くする国もね。」
「大丈夫です、死にはしませんよ。少し、気になる事があるだけですから。」
女は、志郎を見て、この男は、並々ならぬ、男だと、悟った。
「わかったわよ。じゃ、付いてきなさい。アジトまで、連れってたげるわ。」
アジトの前には、ベルナードの人間が、銃を持って物騒な服装で、警備していた。
「誰だ、そいつは。」
「私の知り合いよ。アオギリ・アッタフィに、話を通して、彼に話があるそうよ。」
警備の男は、その女を見ると
「アル姉さんか。どうぞ、お入りください。」
この組織の中じゃ、権力と信用があるらしかった。
「なんだ、アルファ、用事って、その男が何か俺に用があるのか。」
「そうみたいね。何考えてんのか分かんないわ。」
「はじめまして、神崎 志郎です。」
あの、後、ベルナードの人間と話をして、聖地に行き、祈祷をした。ピラミッド神殿の地下に行き、王の、仮面を見た。壁画を見た。
そして、戻って来た。
わかった事は、古代に、人間以外の種が存在した事と、その末裔についてだった、大量絶滅と、天変地異により、活動範囲を狭められ、絶望した種族の事、遠い星に帰っていった、仲間の事だった。
羽子は、その話を聞いて、遂に、志郎も頭が、いかれた様だ、困っていた。
「此れは、過激派の思想だにゃ。そまっちゃってるにゃ。」
「いいや、そんな事は、ないさ。真実をいっているだけだよ。」
どうやら、志郎は、ベルナードの人間と、パイプを持っているようだ。更に、古代遺跡や、古代人の事まで、話始めた。それらの歴史は、未だ、公には、知られていないそうだ。確か、美香子もかつて、そんな事をいっていたな。月兎人や、八咫烏とも、何か、繋がりが、あるのかもしれない。
美香子さんは、死んだ。何の手掛かりも掴めずに、私達は、のこのこ、とあの工場から戻って来た。
此、一連の事件の犯人。思い当たる、人物は、いる。
けれど、其れが、真相なのか、どうかは、分からない。確証が、もてないのだ。
探偵事務所の、お風呂ば、から、湯気を立て、小さな子供が、扉を開けて出てきた。
「ぷはあ、いい湯じゃたのお。」
雨傘 皧だ。
どうして、こんな処に出てくるのか。まさしく神出鬼没である。
「おお、羽子。朱未も、蘇ったのだな。余を育ててくれた事、感謝しておる。」
「ええ。まあ、あはは。」
朱未は、照れていた。
正直に、嬉しいのだろう。
「それで、犯人は、分かったのかね。」
「いいえ。未だ・・・。」
「そうであろうな。そうであろう。しかし、真相には、だいぶん、近づいておる。犯人を逮捕できるかどうか、は、御前の推理に、よる、処が、大きいがね。」
雨傘 皧は、そういったきり、倒れ込んで、しまった。
奇妙だ。一体どう、したと、いうのだろうか。
「如何した、んだ、璦。」
その数秒後、急に、璦が、立ち上がった。しかし、様子が、おかしい。
誰かに、精神を乗っ取られているかのようだ。何か、リズムに乗って揺れている。
ゆらゆらと、揺れている。
璦は、奇妙な、音頭で、謳い始める。
えいや、えいや、えいや。
生命に於ける分子解剖の危険
あそれ
ウイルスの真相
未解明どっこいしょ
生命の作り方と進化に必要な刺激
ビリビリ ビリビリ
肉で或る、有機物(タンパク質、アミノ酸、神経、神経伝達物質、血・・・)と、
よっこしょ
そのイオン、電子の、酸化。還元による、アルゴリズムの分離。
魂のアルゴリズムという愚かな過ち。
どっすん、どっすん。
人工知能の発明。
ピコリンリン。
脳の中にある、記憶のアルゴリズムの保存メモリの開発。
脳データの行方不明。
どこいったああ!!!、どこいったああ!!!
快楽チップによる、人間兵団の襲来。チップによる、国民の統制を行う、独裁体制の国家の登場と、その権力者に立ち向かう反乱因子との闘い。
おっそしやああ、おっそろしやああ。ほれ!!!
半永久に死なない身体が、開発される。
ズドン。
体の取り合いで戦争。
どっこん、どっかん、どっこん、どっかん。
動物に、ヒトの脳細胞を与える実験により、猿や、犬。猫・・・が、人語を理解し、文明を城築はじめる。
ゴゴゴゴゴゴゴ、ズううんん。
人と対等の知性を有する、動物の大量虐殺が起こる。
何て、こちょ、うひゃああ、何て事、うわあ。
知性の高い動物種の権利が一部に認められる(人間時代の終わり)
あそれ。
知性の高い動物の内から、人より、優れた種が現れる。
どっこいしょ、よいしょ。
人は、其れ等により、支配されるようになる。
(バッドエンド)
デデン。どっこい。
進化し続ける生命体となる(ようような、生き物の誕生)
しゃきーん。ぐるぐる。
特性を遺伝し、進化する。細胞移植による、個性の進化。
ドクンドクン。よらあああ。
知能アルゴリズムを、別の身体に移す技術の発明。
くるよ。くるよ。
精祖細胞卵祖細胞のキメラによる、受精卵の発明。
ほら、きた。ほらきた。
ゲノム編集による、デザイナーベイビーの発明。
さようなら、おわり。
雨傘 皧の目は虚ろだ。
虚ろな目で、口ずさむ、不可解な、歌。
一体、何の歌なのだろう。気味の悪い事だ。
「今の歌は、一体何なの。」
朱未が、恐る恐る、訊いてみるが、雨傘 皧は、気絶して寝込んでいた。
「そう言えば、この前も、似た様な、事が、あったな。その時も、確か、気味の悪い、
羽子は、その時の、雨傘 皧の狂気の様を思い出していた。
あの時から、いいや、渋川 栄一郎が、冤罪を掛けられた時、から、ずっと、分かっていた。この事件の鍵を握っているのは、雨傘 皧なのだと。
しかし、証拠がない。其れに、此奴が犯人では、ないだろう。何かを知っているのだ。しかし、其れを教えては呉れない。
射瑠間と、一二三は、山の麓に出ると、一ノ本 晏由美に、連絡を取る。
「もしもし。晏由美、無事ですか。」
「無事です、此方こそ、冷や冷や、しましたよ。良かった無事だったんですね。今何処ですか。」
「山の麓です、直ぐに、国を出ましょう。事件なんです。事情は、後で説明します。」
「わかった。今から麓へ向かう。」
おそらく、久里ヶ幸さんも、この事を知ったはずだ。
今現在八月二十二日。
まさか、こんな事になるだなんて、舐め過ぎていたのだ、敵は、はるかに、周到だ、そして、恐らく人間ではなかった。
あの、美香子さんをやれる奴など、人間のなかには、いないのだ。
どうしてかって、そりゃあ、工藤さんは、月兎人の細胞移植により、特異体質を手に入れた、そして、身体の中を機械で、改造して、強化した改造人間に、して、あらゆる武術を、修行し、会得したまさに、超人で、おられる、お方。更に、彼女の一番の家臣、茅野 葦夜も、強化人間の実験の成功者だ。
其れ等が、いながらにして、あの、惨状である。最早、詰んでいるのだ。
額に手を当て、この先の事を思いやる。
「考えても見るがいいさね。」
考えてみるねえ。何を考えろと、言うのかね。
「こんな、事に成ったのが、何が元凶か、と言う事さ。」
恋唄は、そう言って、思案した。
誰が、犯人なのか。
「八咫烏か。強化人間か。」
「ま、そんなとこだわな。工藤家を、邪魔な、勢力と考えていたやつだぜ。きっとな。そりゃ、あれかもな、史畏莫国は、工藤家を厄介がっていた。だから、何度か、暗殺部隊に襲われる事が、あったし、事実、巻き込まれた事もある。けれど、史畏莫国の裏には、其れを動かした、もう一つ別の存在が、考えられる。」
「そりゃ、なんだ、なんなんだよ。」
「恐らく、科学技術の成長と、人間の技術革新を快く思わない、人智を越えた種族による、
警告と、捕らえるのが妥当だな。工藤家は、力をつけすぎたし、人類もしかりだ。」
しばらくすると、一二三 は、麓の方へやって来た。
「来たようだな。」
恋唄は、一二三に手を振って合図する。
一通りあった事を、説明すると、晏由美は、驚きは、したが、やがてその事実を受け止めた。
「そんな、事だ。一体誰が・・・。無事だといいけれど。」
射瑠間は、其の後、一足先に、日輪国に帰国、し、その惨状に驚いた。
この国も、史畏莫国と、アルダー国との戦争に巻き込まれたのだ。焼け野原となった、場所が幾らかあった、今は、復興中だった。
「絶望なのさ。弱い奴に、生き残る術なんて、無かった。」
恐怖の相を浮かべ、射瑠間は、絶望した。
もはや、平和な時代は、終焉を迎えた。
とっくの前から、その兆候は、見えていた。
民主政と、自由主義の終焉は、アルダー国の終了を意味する。
独裁社会の幕開けか。
監視独裁の始まりか。
世界は、デジタルに支配されていく。
エネルギーを、作り物の光に、吸い取られていくように。
脅威に、恐怖する。日々を送る。
平和的に、市民の安全が、保障されている。
そんな、ありがたき、世界に、終わりがくる。
其れは、少しづつ、少しづつ、やってくる。不足した世界が、弱きものが、保障されなくなる世界が、やってくる。
「そう、独断と偏見の時代がな。権力で、押しつぶされる。市民革命の繰り返し。其の度に、自由を失い、戦ってきた。」
こんな事が、かつてにもあったのだ。
故郷で、聞いた事が或る。其れは、月兎が、創られた、歴史だ。
幾度となく、行われてきた、寡占との、戦いだった。
占有するものから、平等を求める戦いであった。
平等に成るたびに、占有者が、占有を始める。
その、利害関係の調整の歴史であった。其れ迄は、野蛮な、殺戮の時代であった。
「残虐な、人の部分を良く知っているでは、ないか。食べ物を占有し、山川を独占し、土地を我が物とする、あの、恐ろし、残虐な微笑みを。」
天罰だ。
誰かが、天罰を与えようと、したのだ。
愚かしい人間への、警告だ。
「此の羽は。八咫烏の羽だ。」
そう、太陽の鳥の、成敗だ。
って、何、思索に耽っているんだか。
気が付けば、日も暮れていた。恐らく、私は、死すべき存在であった。其れがどうした訳か、生きている。あの国のとある場所に、おいて、自分は死す運命であった。その運命から、逃れたのだ。
あの時、弓矢で、一二三 恋唄を庇って、死ぬのが、正常な運命の流れだったのだ。
「あら、射瑠間、帰ってきてたの。」
メリーナだ。
最愛の人が、死んで悲しかろう。
「美香子さま、は、、もう、いないんだな。」
美香子の墓に祈り、追悼の眼差しを向け、下をみて、うつむく。
「はい。おどろきました、受け入れませんでした。」
「そうだろうよ。」
・・・・・・・。
「残ったのは、御前だけか。」
「はい。」
「ま、その内、賑やかになるさ。もうじき、久里ヶ幸の奴らが、返ってくるからよ。」
「左様でございますか。」
やはり、何時ものメリーナの様には、いかない。もう、変わって終ったのだ。
此れは、運命の通りなのだろう。
「ま、時期に、僕も居なく成る事でしょう。」
「はあ、何を言っているのだか、さっぱり。」
手相を見ればわかる。死相が出ているのだ。
作者は、私を殺すつもりだ。
どうして、こんなに、酷い事が出来るのか、どうして、美香子さんを殺したのか。
憎い。
私を殺しそびれた、作者は、必ず始末しにくる。
邪魔な存在なのだ。
私を造った、月兎族の祖先の話だ。
かつて、月に住んでいた我が祖先は、望を紡ぎ進化による、この力を手に入れたと、言われている。
作者は、予め、そうなるように、物語を紡ぎ続けている。私の人生観をそうだった。だから、あがいた処で駄目なのだと、思っていた。
夢で見たのだ、私が、弓矢に撃たれて死ぬ夢を、其れが、作者のお告げだと、思っていたが、私は、一命を取り留めた。偶然見た、予知夢に救われたのかも知れない。
しかし、美香子は、死に、そして、工藤家は、この有様だ。
無能だった。
悔しい。
私は、赤羽和志、探偵事務所に向かった、何か、知っているのではないだろうか、あるいは、犯人の手がかりをつかんだのは、無いだろうかと、思ったからだ。
我ながら他力本願な、考えで、厭になる。
けれど、何か、していなければ、不安になるのだ。
メリーナは、フードを被った男にやられた、と言っていた。
そして、美香子もその男にやられたと、羽子が、いっていたそうだ。
おそらく、そいつは、八咫烏なのだ。
八咫烏の誰かがやった。そいつが主犯だろう。
ふざけた、奴だ。
事務所に、つくと、相変わらずの様子で、探偵たちは、考えて居た。
「ああ、射瑠間さん、生きていたんですね。」
よかった、射瑠間さんは、無事だったらしい。
「はい。しかし、こんな、事に成るだ、なんて、予想外でしたよ。」
「そうだね。あの、フードの男に、狙われれば、もう、終わりさ。」
羽子は、死んだ美香子を思い浮かべつついった。
「美香子さん。知らないと思いますが、美香子さんは、月兎並の戦闘力があるんです。」
「そうだろうな。戦いの名残を見れば、分かったよ。山が、真っ二つさ。」
まるで、戦争のあとの様な、惨状を思い出して、いた。
「この国も、世界も、大混乱さ。何が、起こっているのか、一体。」
「ふざけた、野郎の、犯罪行為さ。人間を憎んでいる、奴のね。」
朱未は、そう言って、八咫烏の資料を開いた。
「近年、八咫烏の目撃情報が、増えてきている。やはり、可能的にも、八咫烏が、犯人な説は、濃厚だが、そもそも、この世界に、八咫烏を捕まえられた人間は、存在しない。もしくは、其れを畏れた八咫烏は、人類を死滅させる事を計画していたのかもしれない。急速に成長する人類の文明科学を畏れたのだ。」
朱未は、持ってきた資料を配って話す。
「仕事が、速いな。朱未さん。」
「朱未って死んだんじゃ、なかったんですか。軽井沢 朱未 」
射瑠間は、驚いた様子で、見ている。
「そうだな。話すと長くなるが・・・。」
一通りの出来事を話終えると、射瑠間は、その工場に興味を持っていた。
「へええ、そんな事が、しかし、よく無事で、帰って来られたものだ。其の場所は、月兎人の間でも、魔の境界線と呼ばれ、何故だか分かりませんが、忌避されている場所ですよ。」
「そうなのか。」
「ええ、昔からの伝承だ、そうですが、その真意は、もう忘れ去られたようです。理由は、分かりませんが、あの場所は、かつて、月兎人が、文明を築いていた聖地らしく、神聖場所らしいのです。」
「ほう。」
しかし、今では、何かの施設に成っている。
そうこう、話していると、雨傘 皧が、起きた。
「ふむふむ。おはよう。諸君。」
雨傘 皧は、傘をさし、何処かへ、消えてしまった。
「何だったんだ、一体。」
消えてしまったのだ。
「今のなんだったんですか?。羽子さん。」
「ああ、あれね。あれは、雨傘 皧、謎の多い、人物さ。」
そう、謎、あれは、何か、秘密を持っている。其れは、この事件の手が掛かりと、成るのだ。
「ふうん、なるほどねえ。謎かあ。」
その後、他愛もない、世間話をしていると、探偵事務所の、インターフォンの鳴る音が、聞こえる。
ピンポーン。
「あの、はじめまして、相談が、あって、来ました、夜分遅くにすみません。」
「はい。上がってください。」
こんな、時間に、仕事の依頼か、今は、八月二十三日、二十時三十一分である。此処は、あくまで、探偵事務所、客が、来るのは、当然だ。
玄関の前に立って居る、女は、この国の、人間では、無かった。赤毛の、女で、目が大きく、鼻筋が、通っており、骨格が、角ばっていた。
「ああ、此れは、どうも。」
「私は、北ヨルーダ地方の、カンザス出身の者です。」
「カンザスから。」
カンザスは、日輪国から、遠く離れた国で或る。
「私、実は、あの、ネット放送を見た人間の一人なんです。あの、ふざけた、反政府組織の、ガスマスクを付けた、あの男の配信です。」
ふーん。嘘を言っている様には、見えないが。
「あの、信じてください。警察に言うのも、身の危険を感じますし、外部に漏れると、大変だと、思いまして、世界中の探偵事務所を調べて、色々当たってみたんですが、何処も、偽物だ、インチキだ、と、取り合ってくれませんでして、そんな時、ネットで、赤羽和志探偵事務所が、この事件に真剣に取り組んでおり、幾らかの実績があると、聞いたものですから、縋る思いで、飛んできたのです。」
はあ、なるほど。確かに、この事件について、追っている、探偵は、多いが、此の事務所は、世界的に見ても、多くの、実績を残している、竹本 廉一郎の件といい、渋沢 栄一郎の件といい、ま、幾らか、公開していない、事実もあるが。
「そういう事ですか。そりゃ、まあ、大変ですね。」
「ま、命が惜しいので、迷いました。けれど、私、彼方の国では、検事をしておりまして、仕事の関係、悪を許せないのです。」
「ま、立派な。」
女は、アンと言った。向こうで検事だという、証拠にバッチと、手帳を見せてきた。
どうやら嘘ではないらしい。
「どうしたんだ、羽子。」
朱未が、様子を見に来た。
一連の話を聞いて、朱未の目は、輝いていた。
「ふーん。私が死んでいる間に、そんな、配信があったのかあ。どんな内容だったのかな。其れが、何かの、手掛かりになるかも、しれない。」
「ああ、そうなると、いいが・・・。」
外は、雨が降っており、女は、傘を差していた。
「あ、この傘、途中で、妙な、子供に、貰ったんですよね。あの子、迷子かな。」
「ああ、其れは、恐らく。」
雨傘 皧だ。
「あの、子は、大丈夫ですよ。」
「ああ、知り合いだったんですか。」
「あい。まあ、色々と、複雑でしてね。今回の事件と無関係と、いう訳でも、有りませんしね。」
「はあ・・・。」
女は、きょとん、としていた。
何も知らないのだ。公になっていない事が、多い。
世間一般には、LLLの事も、雨傘の事も、ノヨラの事も、知らされては居ないのだ。
話さない方がいいだろう。
「其れで、その、配信って奴は、どんな風であったんですか?。」
「ああ、まあ、録画は、していなかったんです。だから、誰も取り合っては、くれませんでした。戯言だ、といって、信用してくれないのです。」
確かに、胡散臭いのだ。
しかし、聞いてみる価値は、ある。
「一般に公開されている、内容とは、程遠い内容でしたよ。全く、政府は、隠蔽しているようです。この事実を。」
「ほう。」
政府とは、世界政府の事であろう。
「人類は、危機にあると、いうのに、呑気なものです。」
「其れで、その内容とは、どんな、内容だったんですか?。」
女は、鞄から、資料を取り出した。
「これ、まとめて来たんです。」
其れは、その、配信の内容について。まとめた、資料だった。パソコンで、作ったのだろう。見やすくまとめられている。
「へええ、凄いねえ。」
「いえ、此れでも、検事ですからね。」
ボロボロに、なった、検事手帳を見せた。
なかなか、やり手らしい。
「ま、取り合って貰えてよかったです。」
アンは、その後、ゆっくりと、話、始めた。
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