死の影
その戦争の事を、耳にしたのは、朱未が、蘇った、八月十九日の事であった。
あの日、史畏莫国が、アルダー国に、戦争を仕掛け、戦争になったと、知ったのである。
「射瑠間と、久里ヶ幸の事が、心配だ。」
工藤 美香子は、心配そうに、遠くを見つめた。
「如何するんです。美香子さん。」
羽子が、気を使って、訊いてみる。
「彼奴ら、ならば、大丈夫の筈だ。私も、その工場と、やらに、ついていくよ。」
美香子は、そう言って、笑ってみせた。
大丈夫なのだろうか。あの二カ国間での、戦争と、ならば、其れは、世界大戦と、呼んでも差し支えの無いものに、違いは、無かった。
「物騒な、世の中に、なったものだにゃ。」
和香が、迷惑そうに言った。
「こうなってくると、残念だが、この国も危ういだろうな。その戦争の影響を幾らかは、受ける事に成るはずだ。アルダー国とは、条約があるからな。史畏莫国が、この国の領土を狙って、攻め入ってくる事も、考えられるだろう。」
冷静に、朱未が、分析を交え、意見を述べる。
「そんなの、厭だニャーー。戦争は、嫌いだにゃああ。」
「残念だね。其れが、事実さ。」
其れを見上げる。
「あ、空襲だ。」
町は、灼け始めた。
「西の都、金山市の方角だ。あそこの日輪国軍基地を狙った攻撃だ。あそこには、原子力発電所もある。」
どうした、訳か、羽子は、笑っていた。
「どうしたんだよ。御前。」
朱未が、心配そうに、その、顏を覗くが、その彼女の、顏も、笑っていた。
「二人して、気持ちわるいにゃ。」
羽子は、思った。戦争は、いけない事だ。けれど、彼女の心の中には、日常的な、毎日に飽き飽きし、こういった非日常を求めている、愚かな、自分が、存在する事に、此れ迄気が付かなかった。あの、空に飛ぶ、史畏莫国の戦闘機や、その戦闘機から、投下され、恐らく街を焼いている、その爆発音を聞くと、どうしようもなく、心が、踊ってしまうのだ。
「いかれてる、にゃ。この二人。」
朱未にも、その様な、気色の悪い性質があるのだ。
「世界の終わりみたいで、こういうの、いいよねー。」
朱未は、衝撃の言葉を放った。
「厭だなー。冗談だよ。冗談。」
にゃははははははははあはあは。
何をやってんだか。
正気に戻った、羽子は、自らの行いに、酷く、落胆し、気を取り戻した。
「取り乱して済まなかった。人間は、非日常的な、事象に遭遇すると、時折、正常な心理を、保てなくなり、おかしくなるものだ。」
と、真面目に言っていた。
「ん、此れ。」
羽子は、防護服をアタッシュケースから、取り出して、渡した。
「メルトダウンするかも、知れないでしょ。」
「確かにね。」
朱未は、そう言って、防護服を、受け取った。
「史畏莫国も、容赦ないわね。」
ネットでの、情報によると、もう、首都は、壊滅状態で、占拠され、そのほかにも、三つの軍事拠点が、占領された、らしい。
「こんな、時だが、私達は、あすこへ、いかなくちゃならない。」
現在占領されているという、雨黙都の、西奥の鳥市にある 自然文化遺産である 魔鏡の森。その、奥に、ある、工場。
雨黙都は、日輪国の首都だ。占領されているとの、情報だが、あの森は、どうだろうか、その奥の工場は、どうだろうか。
此処から、歩いて三日、車で、半日の処に、黙雨都は、ある。
黙雨都につくと、其処は、焼け野原となり、果てていた。
八月二十一日の事である。
アルダー兵と、日輪国兵が、史畏莫国の兵と闘っている。軍事基地からの、戦車が、撃ち合っている。
「うるせええなあ。」
朱未は、その、騒がしさに、思わず、耳を塞いだ。
爆弾の音やら、戦車からの、大砲や、ミサイルの、爆撃音で、耳が潰れそうだ。そして、頭をくらくら、させる。
国会議事堂では、未だ攻防戦が、行われていた。
皇居の辺りでは、戦闘部隊が、重装部隊で、守りを固めていた。
「陛下は、疎開、成されたようだ。」
美香子は、辺りを見渡して、言った。
陛下だけでは、無かった。都の者は、その、殆どが、田舎へ、避難が、進み、都に残っている者は、軍人と、人工知能による、機械兵団、逃げ遅れた、一般市民の他は無かった。
「にしても、酷い有様だな。」
羽子は、呟く。
「まるで、映画の世界のようだ、其れが、まさか、現実のものとなるだなんて。」
朱未は、口を押え、思わず、吐き気を催す。
「こうなって、終っては、引き下がりようも、ないな。」
美香子は、腰に手を当て、西奥の鳥の方を見た。
「あそこに、本当に、森なんて、あるのか。」
「ありますよ、きっと、あの森は、確か、自然遺産でしたよ。」
「聞いた事ないぞ。」
四人は、其処へ行くと、其処は、只の、住宅街で、あった。
「何も、ないぞ。」
美香子は、辺りを見渡す。
「此の、柵公園の、奥です。」
羽子は、奥へ奥へと、進んでく。
獣道の様な、細い、道があった。其処を、ずっと、進んでいくのだ。
「こんな、通路、知ってるやつの方が珍しいぞ。」
其処は、コンクリートで、囲まれた、壁の、隙間であった。
其処を抜けると、森がある。森の入り口には、立ち入り禁止の、看板が、掛けてある。
「あった。この看板だ。」
看板には、天然自然遺産 魔鏡の森 立ち入り禁止。
と、書かれた、看板が、立ててある。
「なんか、危険だぜ。」
美香子は、言った。
「何か、感じるのか。」
羽子は、訊き返した。
「ああ、とても、不気味な、何かを、感じるんだ。」
馬鹿な話だ。あの美香子とも、あろう、ものが、訳の分からぬ、雰囲気に、飲み込まれるとは、と、言っても、この看板、そして、誰かに観られているかの様な、気味の悪さは、確かにあった。其れは、恐らく監視カメラによるものなのだろう。
町の方から、爆撃の音が轟いており、更に、恐怖心を煽らせる。
その様な、中であれ、四人は、森の中を進んでいく。
「危険だと、分かっていても、知らなくては、ならない事が、ある、にゃ。」
和香の発言に、朱未は、
「そうだね。けれど、私は、こういうのわくわく、するよ。」
その変人染みた、朱未の性格では、寧ろ、其れを一種のスリルと、して、楽しんでいるよう、であった。
森の中は、霧が、立ち込めていた。
「そう言えば、昨日に比べて、今日は、冷え込む。」
羽子が、身体を震わせる。
「そう言えば、寒冷前線が、この辺りに近づいている、と、天気予報で、言っていたよ。」
朱未は、昨日見た、天気予報を思い出す。
前線霧である。
「辺りが、よく見えないにゃあ。」
和香は、はぐれないように、しっかり、ついていく。
「此の森、不思議な、樹々が立っているね。見た事の、無い樹だ。」
其れは、不思議な、オレンジ色の、葉っぱや、紫色の葉っぱ、虹色の、葉を付けた、広葉樹や、針葉樹で、あった。
「此れは、桐の、ように、見えるけれども、葉っぱの色が、紫だ。此れは、桧に見えるけれども、葉っぱの色が、赤と青だ。此れは・・・。」
其処は、不思議な、森であった。
「危険な、毒を盛った動物が、いないか、心配だな。」
美香子は、そう言って、身構えた。
「其れは、私も、分からない。獰猛な、猛禽獣の、様な、動物や、毒をもった、蟲が、いるの、かもしれない。な。」
そのような、獰猛な生物に襲われる。
四人は、蛇の尻尾のついた、ライオン、キマイラや、羽の生えた象、大蛇、猛毒を、持った、巨大な、蚊、蛙、蟷螂、蟻、飛蝗に、出くわした。
朱未は、飛蝗に喰われ、羽子は、キマイラの餌食となり、美香子は、大蛇にやられ、和香は、蛙に喰われていたのだが、その時、和香は、異変に、気が付いた。其れは、感覚的で、直感的なもの、であったが、現実と、は、違う何か、なのだと、気が付いた。
「何かが、おかしいにゃ。」
和香は、其の異変に、気が付くと、喰われていたはずの蛇や、辺り一面にあった、景色が、只の森となり、森の樹々は、緑色をしていた。
そもそも、虹色の色とりどりの色の、葉っぱの樹が或るはずが、ないのだ。そして、見ている、この、動植物、生物群たちは、只の、幻想だったのである。
幻想。
其れは、見せられていたのだ。此の霧と、何者かに。
其れが、誰なのかは、分からない。
どうして、和香だけが、その、幻術に掛かっていないのかも、分からない。
和香を除いた、三人は、幻覚に捉われ、脳を精神汚染物質にやられて、いた。廃人となり、譫言を言っている。見えないものに、捉われ、脳内伝達系が、その物質に犯され、最早、其れは、人としての機能を失い、完全に、空っぽの、虚ろな、目をしている。
「大丈夫か?。羽子、朱未、美香子さん。」
何の反応も、ない、夢を見ているのだ。
強制的に、見させられているのだ。
そして、醒めない、夢なのだ。悪い夢だ。
時計の針の音が、ガンガンと成り響くような、頭痛の夢だ。
起きそうで起きれない、あの目覚まし時計の音だ。
そして、いる筈の無い、生物の名を口にし、食べられるだとか、ひゃああああああ、と、叫んで、走りだすのだ。
「まるで、精神病患者のようだ。」
その様子を見て、和香は、絶句し、思わず涙した。
「どうして、こんな事に・・・。絶対、助けてやるからな。」
この先の工場に、何か、あるはずだ。
分からない。この空中を漂う、霧と、空中に蔓延している、この、紫色の粉が、原因だろう。
朱未は、地面を這うように、動きだした。羽子は、足を高らかに上げ、軍隊のように、行進し、ゼブラは、世界征服をする。と、泣きわめいている。美香子は、凄い熱で、倒れ込んで、いる。
「くっ。」
魔鏡の森を、一人で、進んでいく。
欅の樹が、立ち並ぶ、楓、松、杉、芥子、柴、楢、山毛欅、多種多様な、樹々が、青々と、生い茂っている。
その木々の隙間からの、木洩れ日を浴びつつ、森を進んでいくと、小さな小屋が、見えた。
小屋に入ってみると、壁は、デスプレイで、埋め尽くされており、其処には、監視カメラからの映像が、映し出されていた。
「何なんだ、にゃ。此処は。」
小屋には、誰も居なかったが、カメラの映像は、人工知能により、識別され、管理されているようであった。
不気味であった。一体何の為の、監視カメラなのだろう。
更に奥へ、進んでいくと、滝が、あった。巨大な、滝であった。
「何だにゃ。この滝は。」
水が、飛び散る滝であった。
其の滝を通り過ぎると、小石が、散らばった、地面の上に、ぽつりを建つ、1000坪ほどの、工場が、あった。
工場は、シャッターが、閉められていた。シャッターは、東西南北に、四か所ある。外装の、壁は、青色だ。その裏には、フェンスがあり、森が、続いている。
「此の工場か・・・。」
工場の中に、入るには、シャッターを開けて入るか、窓から侵入するほかに、は無かった。
危険すぎる。
工場の、周りは、小石のちりばむ、300キロメートル平米は、ある敷地で、原子力発電所や、核融合炉、巨大な、塔が、見える。
「どうして、外からは、見えないのだろう。」
其れ等の、巨大な、施設は、外からは、何も見えない。人間の、目には、映らない、加工が、してあるのだろうか。
その地下、には、巨大な、量子加速機が、昼夜を問わず、稼働しているという。新たな、粒子発見の実験をしているのだ。
青い壁の工場の、シャッターは、閉まっている、近づいて見ると、黒い、サンペロットを着た少年が、シャボン玉を飛ばしていた。
「何をしているの?。」
怪訝に思って訊いてみると、少年は、穏やかな、口調、で言った。
「宇宙を、創っているんだよ。おねえさん。此処の人じゃ、ないね。はじめてみた人だ。」
「友達と、来たんだけれど、その友達は、森の中で、倒れて、精神を汚染されて、大変な事になっているんだ。」
「ふーん。其れは、御気の毒だね。お姉さん、この外から、来た人なんだね。外から、来た人は、病気に掛かって、もう、一生施設の実験体にされるはずなんだけどね。僕は、適合者だったらしくて、自我を保てているけれど、どうやら、おねいさんも、そうみたいだね。」
少年の言っている意味が分からなかった。
「私の友達は、助かるのでしょうか。」
少年は、心底興味が、なさそうに、さあね。と悪態をついた。
「其れは、分からないね。中にいる、研究者が、其の気に成れば、治療薬なんて、直ぐに出来るさ。もともと、あの、中にいる奴らが、つくった、生命実験の、人工機械ウイルスなんだ。その他ナノロボット、だとか、キメラだとか、もう、散々だよ。」
少年、は、服の裾をまくり上げて、火傷後の様な、酷い、腕を見せた。
「実験の後遺症だよ。ほんと、酷いよね。おねえさん。見つからないうちに、かえった方がいいよ。こんな処、糞だ。」
少年は、そう言って、また、しゃぼん玉を飛ばし始めた。
工場の中に入ろうと、近くの樹木を集めて、簡易的な、梯子を、造り、東のシャッターのある、壁の窓に、梯子をかけた。
「よし、登るか。」
梯子を登り、窓から、中を覗きますと、中は、人型機械と思われます、者が、居りまして、作業をしておりますでは、ありませんか、中には、白衣を着た研究者も、おられます。
四角い建物だった、のですが、中の中央には、丸い円柱状の壁がありまして、其処を中心に、各実験室が割り当てられているよう、です。
この窓の下は、第七実験室のある場所らしく、その実験室の屋根の上に窓が付いている。
立派な、建物だ。
此れだけの、人と、機械が居れば、なかに、入れば即、バレ、実験体にされるであろう、と考えた。そして、ゾッとした。
「どうすれば。」
黒い猫が、窓から、工場の中に入っているのが、見えた。
その、後姿をずっと、見ていた。
私は、誰だ。
此処は、何処だ。
分からない、けれど、私は、猫。黒い、毛並みをした猫だ。この工場の、窓から、入り込んだ。猫だ。
工場からは、様々な、喋り声、噂話が、聞こえる。機械の動く音が聞こえる。
ある、研究者の、話し声が、聞えた。
この、一連の工場は、qiaと、言う、人物が、作り出した夢であり、qiaは、私達を作り出した、張本人でもある、と、言う事が、分かった。
qiaは、意識を、具現化する、装置で、夢を見続けているのだという。その、意識の狭間で、この森が、生まれ、土地が生まれ、其処に、工場が建ち、発電所が建ち、高速粒子加速器ができたのだと、いう。
訳のわからない話だ。其れに、私自体、どうして、此処にいるのかも分からなかった。
「そもそも、意識を具現化するってどういう事だよ。」
青い作業服姿の、おっさんは、物知りであろう、眼鏡の、青い作業服の、目の切れ長の、髪のもじゃもじゃの、研究者に、訊いた。
「僕自身、僕が、何者であったのか、忘れて終った。」
「忘れたって、おめえさんは、あのqiaの夢じゃ、無かったので?。」
「わからないのだ。どうして、我が存在するのかが。何時からか、其れが、当たり前になっていた。」
qiaは、誰なのか。
おっさんは、目から涙を流していた。そして、切れ長の目の、男も涙を流していた。
しかし、次の瞬間、男は、正気に戻っていた。
そして、言った。
「此れは、本当に夢なのか。」
と。
更に、工場は、探検していると、第一記録復元装置実験所。と、言う、パネルが、ある、場所に出てきた。其処では、物質から、その、過去を映像として、復元すると、いう技術で、あらゆる物質の、過去が、分かるのだという。その過去を辿ると、辿り切れなくなる、場所が、存在する事を、突き止めた、その記録の事を、科学者は、暗黒時代と、呼んでいるらしい。
その暗黒時代は、物質の誕生だ。あらゆる物質は、結合し、その形、構造と、なった。その構造が、出来る、その前に、何処かに居たのだ。其れが何処だったのか、私は、知らない。
第二宇宙研究所には、巨大な、球状の、膜があった。宇宙の模型なのだという。その模型は、宇宙で、外側には、無限が広がっているのだという。宇宙に穴が開くと、ブラックホールが、出来るのだと、言っていた。つまり、この宇宙は、途轍の無くゼロに近く小さいのでる、其れに対して、外は、果てしなく広い、膜に穴が開くと、ブラックホールが、出来、其処に、落ちてしまうのだ。
第三研究所には、茸が、あった、其の茸は、正確には、茸では、ない。茸の形をした、精神汚染物質製造機械だった。此れは、機械で、出来た、ミクロ、ナノの、粉末を、散らばらし、其れを吸った人間の心身を汚染し、操る、技術であった。恐ろしい。その実験室には、治療薬も、置いてあった、私は、念の為に、治療薬を、口にくわえて、運ぼうとした。袋を身体に巻き付けて、その袋の中に、治療薬を入れ、第四の研究所に、向かった。
第四の研究所では、人が、実験台にされ、非倫理的な、実験が行われていた。
人間を、作り出す技術の、開発で作られた、人間は、人間では、無かった。人間の形をした、生き物では、あるのだ。
「怪物か。」
研究者は、そう言っていた。
その、自らが、作り出した、人間を見て、驚いていた。
「私は、母でもあり、父でもあるのだ。」
と、バカな事をほざいていた。
その、人造人間は、生まれて三秒で死んだ。
研究者は、泣きわめき言った。
「失敗か、次の子をつくればいい。」
何度も、何度も、失敗を重ね、其れを作り出した。其れが、qiaだと、言った。
其処では、無数のqiaがつくられていた。何体も、何体も作られていた。
「キアは、泣いている。」
キアは、霧を捲いた、真実を隠す為の霧だ。彼の世界は、何千年も前から、あった。紡がれてきた。
qiaとは、誰なのか、何に使われるのか。
「qia、御前は、必要な、監視カメラだ。」
研究者は、そう言って、qiaの肩を叩き、励ました。
qiaは、全てを知っていたかの、ように、研究者を睨みつけた。
「お前等に、云われなくとも、知っている。我らは、意識を共有しているのだから。」
qiaは、そういうと、姿を、変えて、何処かへ、消えてしまった。
「おお、猫じゃ、ないか。こんな、処に、また、迷い込んだのかい。」
男は、そう言って、見た。
「にゃー。」
鳴いてみると、男は、言った。
「あまり、煩いと、機械人形や、他の研究者に、つまみ出されるよ、とっとと、帰る事だね。」
そう、忠告すると、試験管にいれた、物質を熱したり、光学顕微鏡で、覗いたりと、実験を、再開した。
私は、その忠告を無視して、更に、別の研究所へと、進んだのだ。
第五研究所には、霧の研究が、あった。霧は、人間の認識を、惑わし、狂人にするの、だと、いう、其れは、神経の研究であり、生命研究の進化の、研究だと、言っていた。
「此の霧に、耐えられた、生命は、人間の次の、進化の、前触れ、ざます。」
茶髪の女研究者は、そう言って、霧を製造する、装置を、触った。
霧には、細胞の進化を促進する、ガスが、入っているの、だと、いう。
生命には、細胞があり、細胞には、その祖先が、あるのだと、言う、その、生命の祖先は、あらゆる、生命の細胞の中で眠っているのだ、祖先の細胞に、刺激を与えると、進化するのだ、その進化を作為的に起こす、実験、其れが、此の霧に、よる、実験なのだ。
進化は、その人間の望みから、起こされ、その、形へと、細胞組織が、変化する。
「望んだ、形に進化する、細胞。其れが、発言するのは、数千年に、一個体。だ。」
女博士は、そう言って、高笑いした。
第六研究室には、人工的に、作り出した、神経が、あった。様々な、生物の神経系を、解読し、其れを、疑似的に、作り出しす、研究だ。生命の認識を、作り出す、研究だと、も、言った。その、機械は、蟲や、鳥、人、鯨、鮫、有りと、あらゆる、動植物の認識を、神経から、コピーし、学習した、究極の、機械だ。
その機械は、夢を見ていた。
長い長い、神経の夢を見ていた。
第七研究室には、量子コンピュータの設計図と、エリダ星へ、行くのに、必要な、宇宙舟の設計図が、あった。反物質が、カプセルの中に、閉じ込められている。
開けるな。危険の文字が、ある。
カプセルから、取り出せば、爆発し、この星は、半分が、粉々になるのだと、いう。
中央にある、円状の円柱の壁、の処に来る、其処に、入る為の、扉は、閉まっている。
その扉の横には、モニターと、数字と、エルミア文字が、キーボードとなって、配列されている。暗号なのだろう、此処に、暗証番号を、入力すれば、開くのだ。
円を描くような、廊下は、七つの研究室に向かって、七つの廊下に繋がっている、その道の中の、第一研究所の道の方から、二人の研究者が、歩いて來るのが見える、その後ろから、一人の、研究者が、本を片手に、読みつつ、前も見ず、大変な、集中力で、読みつつ、あるいて、この中央の、円柱の建物に、近づいてくる。
「中央研究所の、被検体の、検査だとよ。」
一人の、髪が長く、身長が、180センチは、ある、ひょろながの、スーツ姿の、目の下のクマの出来た、幼い容姿の、男が、話始めた。
「ああ、らしいね。アレが、完成してから、というもの、この世界は、あれの、手の平さ。」
オレンジ色の髪をした、背の低い、少年のような、白い博士服を着た、男が、返事をした。
黒髪の、身長160センチちょっとの、男は、本を読みつつ、歩いている。
「それじゃ、行きますかあ。」
ピピピピパポ。
話を聞くところによると、ひょろながの男は、
二人が、中へ入っていったのち、黒髪の眼光の鋭い、男は、本を読むのをやめて此方をみた。
「猫か。」
しばらく、考えた後、男は、言った。
「そういう事か。俺は、ノヨラこの名前をよく覚えて置く事だね。ま、忘れるだろうけれど。中に入るといいよ、付いてきな。」
ノヨラは、不思議な、男であった、ドアのロックを解くと、男は、中に入っていった。その後を追いかけるように、私は、その、研究所へ、入っていった。
中には、誰か、分からない、綺麗な、白い人、が白い光の、透明な、液体の入った膜の中に、膝を抱えて、入れられていた。
なんて、綺麗な人。
けれど、その人には、性別はないのだという。
細胞が、生み出した、光の子供なのだと、いう。
「彼がqiaさ。」
ノヨラは、そう言って、本を閉じた。そして、qiaに、近づき、その膜を制御しているであろう、コンピュータに、プログラムを書き始めた。
「ノヨラ様、どうでしょうか。大丈夫でしょうか。」
集まった、研究者たちが、その男の事を、慕っていた。まるで、何でもできる、天才のように、尊敬の眼差しを向けていた。
ノヨラは、周りの音も聞こえないように、プログラムを続ける。
「この子は、未だ、胎児だ。膜の中で、眠っている。世界中のqiaの得た情報を見ながらね。その夢が、この、場所を守ってくれている。我らが組織、QIAのね。」
その後、猫は、意識を失って、しまった。
和香は、梯子の下に落っこちていた。
「痛たた。ここどこだ。何が、随分と、長い夢でも、見ていたような・・・。此れは、何だ。」
腰には、袋が、巻き付けられていた。何だ、この袋は、袋の中には、治療薬が、入っていた。
誰が、こんな事をしたのだろう。
和香は、親切な人が、薬を袋に入れてくれたのだろうか。と思った。この薬の安全性は、分からなかった。
S3171薬。薬の、ラベルには、そう書かれていた。説明書には、この森の霧や、特殊粉末、機械ウイルスに効く、万能薬ならしい。
どうしてかは、分からないが、偽物では、なさそうだ。説明書を読む限りでは、その様に、感じられた。
その近くでは、未だに、あの少年は、シャボン玉を飛ばしていた。
「ねえ、少年。この、薬が、本物か、分かるかい。」
少年は、其の薬をみると、目を丸くした。
「中に入ったのかい。よく、生きて帰って来られてね。」
と、言った。
「違うよ、誰かが、置いて行ってくれたんだ。」
「其れは、本物だよ。其れで治療された人を見た事がある。確かに、その薬だった。」
少年は、そう言って、ポケットから、機械を取り出して、薬の成分を調べ始めた。
「うん。間違いない。此れは、S3171薬だ。」
「ありがとう。」
「礼を言われる筋合いは、ないよ。」
「あなた、何ていう名前なの。」
「新月 ノヨラ。」
「ノヨラ・・・。」
三日月 ノヨラと、同じ名前だ。
「へええ。いい名前だね。」
「どうも。」
和香は、研究所を、後にすると、森で、狂人化し、最早、もぬけの殻と、なってしまった、三人を救うために、魔鏡の森の、三人の場所に、急ぐ。
「此れが、薬だ。さあ、飲むんだ。」
和香は、其れ等の薬を、三人に呑ませた。
その三時間後、効果が、出始めたのか、初めに美香子が、正気に戻った、その後、羽子と、朱未も、正気に戻り、遂に、目覚めた。
「ありがとう、和香。」
美香子は、礼をいうと、悔しそうに、唇を噛んで、工藤家の当主であろうものが、このような、失態を、と、自戒していた。
朱未と、羽子は、この霧や、不可思議な、粉末、機械ウイルスのサンプルを持ち帰るのだと、箱の中に、その、空気を入れた。
「にしても、変だ。この先に、その研究所ってのは、あんのか?。」
羽子は、唐突に、質問を始めた。
「ああ、確かにあったにゃ。けれど、中には、到底、入れそうになかったにゃ。」
なるほど、何かが引っ掛かる。
どうして、和香だけ、が、助かったのか、そして、何より、も、誰が、治療薬を、置いていったのか、あの、少年は、誰なのかと、いう点だ。
「その話は、本当なんだろうな?。」
「本当さ。」
此れから、その少年に話を聞きに、行くか。と、羽子は、考えた。
「如何する、先に、進むか?」
黙って、考えていた。
「行ってみよう。」
美香子は、言った。
「そうだね。其れは、いいと思うよ。」
朱未は、この先に行く事に賛成のようだ。
しかし、羽子は、何か、胸騒ぎがしていた、厭な予感がしていた。其れは、かつてここに来たことが、ある、からかも知れなかった。
「何か、厭な予感が、する、私は、反対だ。」
その時には、もう遅かった。
美香子の姿が、見当たらなくなっていた。
「美香子。美香子お。」
名前を呼ぶが、返事は、ない。
血の気が引くのを覚えた。
どうして、美香子が。こんな目に。
朱未は、言った。
「さっき、人影を見たわ。目深に、フードを被った、男だったわ。ガッシリと、した体格のね。何処かで、見た事のある、ような、体格だったわ。」
「そいつが、美香子さんを、連れ去ったのか?。」
「恐らく、そうなんじゃないの。」
あ、終わった。なんて事だ。
如何か、生きていてくれ。
その頃、美香子は、その男に、捕らえられていた。その男は、誰もが知る、あの人であった。
「どうして、貴方が、私は、初対面だけれどね。」
男は、何も語らない。
黒い影のように、何も語らない。
「あんた、が、黒幕ってわけ。」
男は、変声期を使っている。
太く、低い声だ。
「そうだが、なんだね。どの道、君は、此れから殺されるんだ。」
「残酷ね。此れで、私の人生終わり?。厭に成っちゃうわ。私これでも、工藤家の棟梁なのよ。」
「其れが、問題なのだ。貴様らは危険だ。この後、工藤家の連中も潰しにいくつもりだ。」
「酷い事、いうじゃない。」
なんて、手ごわい女だ。此処まで、我を、手古摺らせる《てこづらせる》とは。ヌンチャクを使った、古武術か。何か分からんが、此奴は、人間の域を超えていた。しかし、勉強になった。あのような、戦い方があったのだな。ふふふ。
最期の刀、の技は、恐らく人類の中でも、最上級の技であっただろう、天地を砕く、程の斬撃。この土地が、真っ二つに割れる程のな。さすがは、工藤といった処か。
男は、遺体を見て、死んだのを確認した、のち、其の場から、立ち去った。
どうか、美香子さんが、無事で、ありますように。
羽子、朱未、和香は、必死になって捜索した。
工場の辺りでは、相変わらず、ノヨラという、少年が、シャボン玉を、飛ばしている。
その少年に、何を、訊いても、返ってくる、答えは、知らない、だった。少年は、三日月 ノヨラを知らなかった。美香子の行方も知らなかった。
工場は、厳重に警備されており、入れそうにない。
「美香子は、実験体になったのだろうか?。」
羽子は、不安に成って、声が震えていた。
「其れは、分からない。けれど・・・。」
朱未は、森の方を見て、目を見開いた。
「森が、真っ二つに、斬れてる。」
其れは、天変地異だった。森が、斬れていた。真っ二つに、斬れていた。
地上に、ひび割れが、出来ていた。
「一体何が、起こっているんだ・・・。」
羽子は、何がなんだか、分からなくなって、困惑していた。
「兎に角、行ってみるにゃ。」
和香が、能天気に、そんな事を口走っていた。
「お前は、何時でも気楽で、いいね。」
「失礼だニャ。三人を助けたのは、私だ、にゃ。」
「そうだった、そうだった、悪かったよ、ごめんね。」
「謝る必要は、ないにゃ。私は、一人ぼっちは、嫌いだニャ。」
朱未は、その会話を微笑ましく、思っていた。
三人は、魔鏡の森に、入ると、その、斬撃の、跡に、震えあがった。
地割れだ。自然災害だろうか、それとも、人為的な、何かか。
三人で、三角形に、陣形を組み、警戒しつつ、地割れのある方へと、進んでいく。
周りの、樹々は、青々しい、緑で、覆われている、鳥の鳴き声や、鹿の、鳴き声が、聞こえる。あの時は、これ等の樹木が、色とりどりに、見え、いないはずの怪物に襲われ、正気を失っていたのだ。
しかし、この地割れは、本物だ。見間違いようがなく、真実だ。三キロ先まで、続く、巨大な、地割れ、その深さは、推定でも、十キロメートルは、ありそうだ。
あたりの雲が消え、晴れ晴れとしている。
「この辺りか・・・。」
その斬撃の、発生元に近づいてくる。
「何だよ、こりゃああ、よおおおお。」
羽子は、思わず叫んだ。
血血血血血血血血
あたり一面、真っ赤な、血のカーペット。
森の木々は、焼け焦げ、跡形も無く、平地になっていた。
「熱い、この辺りだけ、熱気が凄まじいぜ。」
その辺りだけは、凄まじい、オーラが、流れていた。
朱未は、その雰囲気を感じ取り、戦争を想い浮かべた。
「何か、戦いがあったあとかも知れぬ。この血なまぐさい匂いと、血。」
おぞましい。霊感が働き、神経が痺れる。
黒く、重い、空気だ。
「なんだ、こりゃ。ヌンチャクが、落ちていた。」
ヌンチャクには、黒い血がべっとりと、くっついていた。人のモノとは、思えない程に、黒い、血だ。
樹が倒れていた。
その樹の影に、人影が、見える。
「誰だ。」
羽子が、其れを見つけて、問いかける。
その影は、チラリと、此方を見ると、目にも止まらぬ速さで、消えた。
「なっ、消えただとおおおお!!!。」
朱未は、其れを見て、驚嘆し、畏怖した。
「なっ、私と、あろうものが、怖くて、身体が、震えてきやがったぜ。」
羽子は、そんな朱未を見て、思った。
あれは、生物と、して、完全に、人間の其れを、超越しているのだと、そして、其れは、美香子にとってどれほど、不利であったのかを、示していた。
「大丈夫だろうか、美香子は。」
「仮に、先ほどの、得体の知れない、化け物に、襲われていたとすれば、絶望的だろうな。」
如何か、無事で、あってくれ、祈りつつ、厭な予感を感じつつ、その場所へ向かう。
斬撃の始まったで、あろう、場所には、足跡が、付いていた。其処を中心に、深い穴が開いてゐる。地面を、削る程の、斬撃であったのだ。
しかし、其処に、美香子は、いなかった。
「辺りを探せ、何処か、に、いるのかも知れない。」
朱未は、辺りを探す。
「美香子さあああああん!!!。」
羽子は、美香子の名前を呼び叫び、返事が或るのを信じて、探す。
しかし、無慈悲にも、何の反応もないのだ。
その時、ふと、羽子の脳裏に、さっきの、黒い影を纏った、フードを深くかぶった男を思い出した。
あの、時、あの樹の処で、あの男は、何をしていたのか・・・。もしかすると。
「さっきの、あの樹の、場所にいるのかもしれない。」
羽子の言葉に、朱未は、
「私も、、、そう、思っていたいた処よ。」
急いで、今来た道を戻り、大きな樹の倒れている、処の、妙に、樹々の生い茂った、場所に、其れは、あった。
「そ、そんなあああああああああああああ!!!!!。」
羽子は、言葉を失った。
朱未は、口を押え、思わず、嘔吐した。
和香は、真っ赤な血肉を見て、絶句し、固まっている。
そう、その樹には、美香子が、倒れかかっていた。
「死んでいるのか。」
血だらけだった。
其れは、何かに、爪で、引っ掛かれたような、跡があった。右腕は、如何した訳か、氷、左腕は、酷い火傷で、焼き切れそうになっていた。心臓には、穴が開いてゐる。
「酷い。こんな・・・。一体誰が・・・。」
羽子は、犯人が、あの男だとは、分かっていたが、其れが、一体誰なのかは、分からなかった。
「あの、男は、誰なんだ。」
朱未は、あの、フードの男が、誰なのか、思案するが、どうにも、心当たりは、無かった。
美香子をのぞき込むと、目がくりぬかれていた。
「美香子さんが、死んだ。」
「工藤一家の棟梁が、死んだんだぞ、世界的な大ニュースになる。どう、工藤一家の連中に説明すればいいのか。」
羽子は、真っ青になっていた。
「如何しようも、ないさ。分かってるだろ。これ等の、事件の犯人を見つけ捕まえるんだ。」
「ああ、分かっている。分かっているさ。」
その遺体を、背負って、運ぶ。
「死亡届は、如何する?。」
朱未は、言った。
「隠蔽した方が、よかろう。」
羽子は、その遺体を眺め、思った。工藤家の人間は、恐らく隠蔽するだろう、絶大な、主君として、一家をまとめ上げてきた、棟梁の死を知り、工藤一家は、怒り狂う事だろう。その犯人が、誰なのか、其れが、分からない儘に、は、終わらせられないのだ。
「如何するんだろうね。全く、大変な事を、しでかしてくれたもんだよ。」
森を抜けて、工藤家に着いた頃には、その、一家の惨憺たる有様に絶句した。
八月二十三日 午前四時過ぎの事である
あの工藤家が、燃えていた。
ぼうぼうと、火を上げて燃えていた。
「工藤家が、こんな事になるなんてええ。」
羽子は、嗚咽した。
工藤家に入ると、其処は、焼け跡になっていた、死体となった、茅野 葦夜が、焼け野原の中で、倒れ込んでいた。
「フードを被った男にやられた。」
葦夜は、もう、死の寸前であった。
泣いていた。嗚咽していた。
「美香子さん。ごめん。俺、約束したのに、工藤家守れなかったよ。なあ。ごめんなあ、くどうさああん。」
そうして、葦夜は、死んで終った。
死んで終った葦夜を、埋めてやる。
その他にも、多くの、工藤家の者が、戦死していた。
工藤家の生き残りの者がいた。そいつは、言った。
「地下に、隠し部屋が、ある。葦夜さん、や、その他の戦闘員は、必死に戦い、一部のものを地下に逃がした12名の、工藤家の者は、生き残っている。」
地下に行くと、メリーナが、いた。
メリーナは、三人を見て、言った。
「美香子様は?。美香子様は、如何したのですか?。」
不穏な空気が、漂った。
「え・・・。何です。何なんですか。何かあったんですか。ねえ。ねえってばあ。」
「残念ながら、私達が、見つけた時には、もう・・・。」
工藤 美香子の入った棺を見せる。
「なんでよお。何で、美香子様が、こんな目に。」
メリーナは、錯乱し、羽子に殴り掛かった。
「なんで、なんでよ、探偵さん。犯人は、誰なのねえ。ねえってばああ。」
「この屋敷を襲った、男と、同一人物だと、思われます。」
「そ、そんな。あの化け物に、・・・。」
メリーナは、口を押えた。真っ青な、様子を見ると、その男は、それ程までに、恐ろしい、何かを持っているのだと、分かった。
工藤家の生き残りの中の一人、工藤 眞鍋 玄は、言った。
「工藤家は、此れからバラバラになっちまうかも、しれねえ。此れ迄は、美香子さんや、葦夜さんの、圧倒的なカリスマ性に、支えられてきた。しかし、彼奴が帰ってこれば、工藤家を仕切って、くれるかもしれねえ。遠山
工藤家の残党は、そうだ。そうだ。自分たちも、亡くなったお頭に恥じぬように、工藤家を、続けなくてはならない。と、言っていた。
が、残念な事に、其れは、できないだろう。工藤家は、様々な、極道と手を結び、密約し、危険物を扱い、月兎人と、交流し、てきた、其れが出来たのは、工藤家に、工藤 美香子という、強力な、力があったからなのだ。
メリーナは、言った。
「もう、工藤家は、終わりよ。どの道、道はないわ。それぞれ、好きな道を進む事ね。」
工藤家には誰も残らなかった。
残ったのは、メリーナだけだった。
「こんな、ものよ。美香子さんに、依存し過ぎていたのね。この一家も。」
メリーナは、焼き払われた、屋敷を見て、欠伸をした。
「何だか、眠くなっちゃった。」
その場所に倒れ込み、寝込んでしまった。
「あーあ。寝ちゃったよ。」
「遠山 桂里奈って誰だよ。」
「さあね。此処で新しい、キャラクターが、登場か、眞鍋 玄は、工藤家を裏切って、自分の一家を興したが、ありゃ、失敗するだろうね。」
「そりゃあねえ。あの男は、器じゃあ、ねえのよ。」
朱未は、そう言って、眞鍋の阿保、な髭面を思い浮かべた。
「碌なのが、生き残ってねえな。」
優秀な、家臣は、戦いの中に死んだのだ。
「勇敢な、一家だぜ。全くよ。」
葬式を上げないとな。
お墓を造り追悼していた。
メリーナは、やつれた様子で、ありがとうございます。とお礼を言っていた。
「いいや、いいんだよ。そんな。」
羽子、朱未、和香は、恐縮して、工藤一家の戦死者の霊を、祀り、祈った。
「そう言えば、史畏莫国に、遠征に行っていた、射瑠間さん、は、どうなったのだろう。」
ふと、考えた。
「さあ、連絡が付きませんからねえ。無事を祈る事位しか、出来ませんわ。」
メリーナは、そう言って、遠い異国に、思考を巡らせる。
そう言えば、史畏莫国と、アルダー国の、戦争は、アルダー国の、勝利に終わったらしい。しかし、アルダー国では、大統領が、暗殺され、新たに、パラス・ダイムリー・ヒルトが就任したらしい。
史畏莫国の、暴走を止める事が、アルダー国の、戦争目的で、あったらしく、危険科学技術の、縮小と、倫理面に、問題のある、実験の禁止にたいする、条約を結ばせ、史畏莫国を、強制的に、弱体化させる、戦略らしい。
しかし、その実態を調べてみれば、分かるが、史畏那国は、アルダー国の、傀儡と、なったのである。
羽子、朱未、和香は、其の後、赤羽和志探偵事務所に、戻ってきた。8月22日、の朝の事であった。ニュースで、ヒルトが、エノール平和賞を受賞したと、大体的に報道していた。
事務所には、アテリー国に、調査に、出かけていた、神崎 志郎の奴が、調査から、帰って来ていた。
「無事だったかあ。志郎う!!!。」
羽子は、飛びついた。
「ああ、何とかね。この国も、大変だったみたいだな。」
「大変だったにゃあ。それに・・・。」
あった事を、一通り、話終えると、志郎は、頷いて、話始めた。
「ザンボラは、相変わらず、治安の悪い国だったぜ。もはや、地上にある、地獄の悪夢のようさ。子供の命が、まるで、ごみの様に、扱われ、政治的、国と国とのいざこざ、利害関係から、来る、戦争に、人民が、利用されているんだ。」
「そりゃ、テレビニュースや、新聞記事、ネットニュースに、乗っている事だね。其れで、何か、この一連の事件の手がかりは、掴めたのかい?。」
「いいや、しかし、アル遺跡を見つけた、イルマエル地方の、アルテ、サエルの地にある、聖地の、隠された場所、其処にある、遺跡だ。」
「遺跡?。それが、何か、この事件の真相と繋がりがあるのか?。」
「わからん。が、かつて、滅びた遺跡だそうだ。」
「滅びた?。」
「ああ、現地の学者が言っていた、かつて、人以外の、知的な生命体が、この星に、住んでいたのでは、ないのか、ってね。」
「其れが、どうしたって、いうんだい。月兎人とか、八咫烏の事だろ。」
羽子は、志郎が、何を考えて居るのかが分からなかった。
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