偽り
朱未は、目を逸らした。
此れ迄あった、事を、彼女等に正直に話すのは、勇気のいる事だ。
あの、感覚は、生命だった。
生命に触れたのだ。
朱未は、確かに、あの時死んだのだ。何者かに殺害されて死んだ。
其れは、あの、監視カメラの前で、起こった出来事では、無かったのだ。彼女は、どうしてなのか、心当たりは、無かった。
彼女を殺したのは、あの高校生自殺事件に、置いて、其の現場で、調査をしていたからだ。それでは、一体誰が、殺したのか。
誰に殺されたのか、全く分からなかった、只言える事は、あの映像は、人工知能が、造った作り物の映像だと、言う事だ。其れを見て、私が、急に燃え出し、身体がちぎられていたと、誤認したのだ。
朱未は、確かに死んだ。あの遺体は、朱未のモノだ。
焼け焦げた遺体だ。その遺体は、解剖台で、解剖され、埋葬された事だろう。公には、葬式も上げられ死んだ事になっている。
けれど、誰も知らなかったのだ。彼女の細胞は、生きていた。本小さな、細胞の破片である。見えない程小さな破片。
其れに、或る者が、液体をかけた、すると、腕に成った。其れは、二本出来た。
二本の腕は、それぞれ、味方を探し、彷徨った。のだ。そして、腕に植え付けられた、樹の麓を掘り、箱の中にある、試験から、緑の液体を被れ。と言う、プログラムによって、闇の中を彷徨っていたのだ。
もう、ずっとだ。
ずっと、彷徨っていた。
あの時事件で、死んだ 渋沢 栄一郎の腕になっていたのは、偶然など、では、無い。あれは、彷徨っていた頃合いにて、或る者に、幻覚を見せられた、其れは、お花畑の幻覚だった。人間の生首の花が、咲く見るにも、おぞましく、発狂を催させる、幻覚。
どうして、その様な、者を、現実と、思えるのかは、当時の私には、分からなかっただろう。
幻覚を見ている者は、自らが、幻覚を見ている事さえ、気づけないからだ。朱未は、その事を、腕であった時に、ぼんやりと、羽子と、工藤 美香子、和香の会話を聞いて、潜在意識の中で理解していた。そして、あれは、幻覚だったのだ、と、推理した。其れは、あの光景が、到底現実だとは、思えない、そうであっては、ならない、と願っただけなのかも知れなかった。
ネット空間とは、何なのか。
仮想世界を創り出す装置、そして、映像に憑りつかれた、切り取られた画の連続。
この世界は、切り取られた、一瞬の連続なのだ。
その、一瞬を、切り取り、並べ替えれば、運命は、変わる。
世界には、方向性が、或る。其れをつくっているのが、順番だ。
順番は、世界に方向を齎す、ベクトルだ。
私達は、私達の認識の外には、出られない。世界の解像度は、果たして、最も鮮明であったのか。
その情報量は、幾らな物なのか。
世界には、設計図が或る。予めそう決められている。
数学は、正に、その設計図だ。
だから、数学によって記述された事柄は、通ずるのだ。
其の制御に通ずるのだ。そして現象を起こす、設計を実行させるのだ。
我々は、精巧につくられた、人形だったのか。
あの時、三日月 ノヨラは、言った。
「私に、構うな。」
そう言って、世界と対話していた、世界は、与えてくれるのだと、言う。降ってくるのだ、ともいった。其れが、才能なのだ。
ノヨラは、死んだ。
其れは、あの時、誰もが目撃した事だ。
私達は、ノヨラの遺体を、其の儘にしておいた。ノヨラが、どうなったかは、分からない。
私が、知っているのは、ノヨラの記憶のデータが、脳に出力保存されていた、幹細胞だけだった。
其の細胞は、胚に成り、そして、赤ん坊になった。
其れを引き取って育てた。其の子が、私に、テレパスで、訴えかけて来たのは、育て始めた、三か月後の話だ。
2040年、七月七日に、三日月 ノヨラは、自殺した。
其れから、三か月後の、2040年 十月 七日に、赤ん坊は、私の脳に何かを、埋め込んだ。そして、私を、動かした。
私は、彼に、動かされるように、自殺した。
死んだはずだが、其れは、予め、彼により、計画されたもので在った。
彼は、私の命を救おうとしていた。
私が、自殺したのは、その九か月後の、2041年、七月七日で、あるから、その間、私は、赤ん坊に雨傘 皧という、名前を、付けて、育てた。
雨傘 皧は、私に懐いていた。
雨傘 皧が、三日月 ノヨラの何で、あるのか、は、分からなかったが、彼が、三日月 ノヨラの記憶を継いでいる事だけは、分かっていた。
雨傘 皧は、どうして、私を、動かし、自殺させたのか。
其れは、今に成れば、分かる事だ。そう、あの時、あの部屋を、調査した、三人は、私も含め、何者かに狙われ、殺されている。
生き残ったのは、朱未だけなのだ。
竹山 廉一郎、渋沢 栄一郎、軽井沢 朱未は、何者かに、狙われ、その内一人は、死んでいる。
其れが、分かっていたのだ。雨傘 皧は、知っていた。未だ成長しきれていない、その赤ん坊の身体で、出来る事は、朱未を自殺させ、その、幹細胞から、蘇らせる方法しかなかったのだ。
只、不思議に、思う事が、或る。どうして、私は、記憶と、人格を失っていないのだろう。と言う事だ。確かに、私は、蘇ったが、その記憶や、人格は、脳みそで、経験を介して、得たものだ、其れを一切失わず、腕と、なり、あの液体をかける事で、私となった。
其れは、奇妙であった。
未だ、未発見のノヨラの発明品なのかも、知れなかった。
自殺した、朱未は、その遺体を、バラバラにされ、火あぶりにされた。
其れを、あの赤ん坊は、朱未の殺害現場に持っていき、監視カメラをハッキングし、人工知能に、偽の映像をつくらせ、その後、そのデータを消した。
つまり、全ては、雨傘 皧による、演出だったのだ。
「興味深い話だ。雨傘 皧については、未だ依然として、謎が多い。」
羽子は、腕組みをして、思案した。
「雨傘 皧は、三日月 ノヨラである、自分と、雨傘 皧と、しての、自分の間で、揺れ動いているのかも、しれないにゃ。」
「私も、そう推測しているのです。」
朱未が、話した内容は、何が真実で、何が嘘なのか、分からないが、全てが本当だと信じよう。其れは、羽子の絶対に、赤羽香志は、裏切らない、強い絆が、あるという、先入観から、である。
実際、朱未が、何を経験したのか、雨傘 皧は、何者なのか、について、三日月 ノヨラ、や、この一連の事件の真犯人について、どれだけの知識を持ち合わせているのか、は、分からない事なのだ。
「ありがとう、正直に話してくれて。」
どうしてか、涙が、流れて来た。その言葉で、救われら気がした。朱未の抱えていた、闇は、深い。
「ええ、当然でしょ。だって、私達は、赤羽香志なんだから。」
そう、そうだ。
私達は、兄弟姉妹。義理だが。六歳の頃からの、付き合いだ。
「にゃあああああああああ!!!!。」
和香が、感激の、にゃああああああ。を、上げる。
「和香も、そうだ、と、叫んでる。」
三人は、互いの友情を再確認していた。
「感動の再開の処、悪いんだけど。俺は、工藤 美香子。訳あって、この一連の事件の解決を、其処の二人と、協力して、る。赤羽和志探偵事務所とは、そういう、同盟を結んでいる。」
朱音は、驚いた様子で、返答した。
「驚いた。あの、工藤家の人間が、味方だなんて、私は、軽井沢 朱未。」
「しってる。其れで、てめえ、警官に戻るつもりか。もし、そうだったら、大問題だぜ。死んだ事になってんだからよ。」
「確かに、なかなか警官には、戻れなさそうだ。残念。けれど、もう、時代は、変わってしまったわ。戦争の兆しにある・・・。」
朱未は、青ざめた様子だ。
「戦争ねえ。もう、既に、国内じゃ、紛争が、起こった。戦争だな。ガナーの連中と、バーダの連中が、最先端の兵器を使った戦争が、北波府 丹波市で、行われた。」
「私が、腕に成っている間にそんな事があったのか。」
「そうだ。4日前の話さ。」
現在は、二千四十一年 八月 十九日 午前十一時だ。
「それ以上の、戦争が、近いうちにあるさ。アルダ国の内部は、最早、史畏莫国に制圧されている。強力な監視カメラテクノロジと、史畏莫製の情報科学機器による、個人情報の制圧、経済における、制圧、そして、権力者の中に、そのスパイが、多数いる。今の大統領は、史畏莫国の犬さ。」
羽子は、そう言って、虚空を見る様に、項垂れた。
「そりゃ、おそ松さんだ。」
朱未は、呑気にそんな事を言っていた・
「そうだ。お粗末だ。どの道、世界大戦は、避けられまい。アルダの国の中には、そういった体制に反対する、勢力が、或る。其れが、ゼロスだ。ゼウスと言う、組織だ。アルダー政府の特殊科学機関幹部や、情報機関幹部、軍部の幹部が、造った、謎の多い組織だ。未だに、其のボスの容姿も、名前も、分からない。しかし、其のグループを支持するものは、アルダー国内の半数で在り、西のヨルーダ地方をはじめとし、世界中で、その支持者が、増加している。表向きには、史畏莫国による、デジタル独裁に見えるが、その水面下ででは、着実に、ゼロスが、力を付けてきている。」
羽子は、その情報を、知っていた。
近頃の国際情勢は、危険だ。
其れは、既に、二十年前から、おかしくなっていた。私が、未だ八歳の頃より、少しづつ狂っていた。
そのために、此れは、一部の有識者の間では、当然の見解であった。マスメデアでは、そういった情報は、一切報道されなかったが、其れは、後に潜む、史畏莫国の圧力の為であった、一部の報道局は、其れを報道したがために、原因不明の死を遂げた、キャスターや、記者、コメンテータが、続出し、闇に葬り去られ続けてきたのだ。
「其れは、分かってるよ。」
朱未は、工藤を受け入れ、工藤は、朱未を警戒している。
工藤から、してみれば、朱未は、得体の知れない奴には、違い無かった。
工藤と、赤羽香志探偵所との、此れ迄の出来事を、一通り知った、朱未は、感謝の言葉を述べた。
「私の再生を、手伝ってくれてありがとう。」
「ああ、いいんだ。俺が、勝手にした事だ。」
「俺たちの一家は、史畏莫国に眼を付けられている。史畏莫国は、工藤一家を敵視している。月兎人をかくまっている事と、危険物質の保有が、奴らにとって、厄介なのだろう。黒幕探しは、只の気まぐれだ。其れに、其れが、今後、工藤家にとって利益になるとも、考えた。」
「其れで、此れから、如何するのかニャー。」
「うん。そうだね。あの、幼い日の記憶で、思い出した、工場へ行こう。」
その頃、射瑠間 縁は、史畏莫国へ、向かって、ピョンピョンと飛んでいた。
射瑠間の脚力は、常人の其れを遥かに超えている。史畏莫国へ、飛行機で、三時間程掛かる処を、たったの、十分程で、飛んでいった。二つの国の間には、2100kmあるので、時速12600kmという計算になる。
史畏莫国に着くと、其処は、普通の都市に思えた。史畏莫国 雲浜市である。
「進んだ国だな。」
高層ビルが、立ち並んでいた。しかし、空気が黄色く、汚れていた。
「なんて、汚い空気なんだ。ゲホゲホ。」
化学工場から、産業廃棄物が、流れてきているのだ。
「人間ども、め。」
兎に角、情報収集なのだが、何処に行っても、カメラが、監視している。逃げる、場所も、隠れる場所もない。国民の脳にはチップが埋め込まれており、見たもの、訊いたこと、匂い、感覚に至るまで、一つの政府人工知能に集約される。仮に、私の、不信な行動が、バレれば速逮捕だ。そして、私は。不法入国者の、月兎人、其れがバレれば、非道な人体実験のモルモットにされるのは、見えている。其の為に、久里ヶ幸 楓を、探さなくてはならない。監視の目をかいくぐる、方法を知っているはずだ。
確か、工藤さんから、の情報によると、このビルの辺りで、久里ヶ幸の部下が、待っていると、言っていたが・・・。
「おい!!!。」
瞬間、口をおさえられた。
「てめえ、バカか、此れを付けろ。」
其の男は、マントを手渡した。
「此れは・・・?。」
「今は、そんな処じゃあない。奴ら、嗅ぎつけてきやがった。直ぐに、撤退するぞ。」
都市を抜けた道中で、男は、言った。
「俺は、来ヶ谷 工藤 義輝 工藤家の者だ。御前来ると聞いて、待機していた。街の中じゃ、このマントを被っていないと、終いだ。此れは、電磁波で、監視カメラと、民衆の目を欺く唯一の、手立てだ。御前にも、此れをやるよ。」
「あれでも、ちゃんと隠れていたつもりさ。誰からも見つかっては居ない。」
「そうだな。其れは、運が良かっただけさ。治安維持警察の目に、合えば終了さ。奴らは、容赦がない。」
ああ、彼奴らか、街で、見かけた、軍服を着て行進していた奴らだ。
「あんなのが、こんな時代に居るだ何てな、びっくりさ。其れに驚く程に、空気が汚い。」
「ああ、この国は、悲鳴を上げている。しかし、中央政府や、金持ちは、そうでも、ないみたいさ。あの小さな村落では、民衆が、買収され、臓器売買さっれたり、ただ働きさせられているのさ。民族が違うってだけでな。貧困層では、生活苦が続いている。だが、そんな事は、中央政府にとって、どうだっていい事なのさ。」
「なんて、恐ろしい事。」
「そうこう言っている間に、着いたぜ。此処がアジトだ。」
其処は、何もない荒涼とした、土地に、おもわれた。
「何も、ないじゃあ、ないか。」
「ま、そう見えるだろうな。そうじゃなきゃ、とっくに、詰ま間って拷問や、人体実験の餌食になっている処さ。」
「何処にあるんだよ。」
「此の、岩に見えるのが、アジトさ。」
「只の岩じゃあないか。」
「此れが、人間の認識を使ったトリックなのさ。此れは、認識制御装置、生体反応遮断装置で、囲まれ、幻覚として、岩を見せているのさ。」
来ヶ谷が、岩を通り抜けるように、中に入っていく。
岩の中は、白い壁で、覆われた、小さな部屋になっていた。
「此の床に、地下へ繋がる通路が或る。其処に、本拠地があるって訳だ。」
地下への階段を下りていくと、細長い、通路に出た。
「その横に、部屋が或るだろう。敵が来れば其処から、攻撃して、敵を殺すって訳さ。」
「へえ。」
「此の廊下は、後、五百メートル程続く、其の奥に、扉が、ある。其処を開ければ、本拠地さ。」
「そりゃあ、凄いざますね。」
「ざますって、何言ってるんだ御前、正気か。」
「ちょっと、意識が飛んでいました、すいません疲れているみたいで。」
「ああ、そう言えば、日輪国での、紛争の調査にいっていたらしいな、それで、疲れているのだろう。」
「はい。」
「この組織は、御前を含めて七人だ。部屋が、十部屋と、キッチン、軍需物の管理室、情報管理システム室、監視モニター部屋、認識制御システム制御室、身体を動かす、体育室、プールそして、大広間だ。」
廊下を抜けると、大広間へ出た。
大広間には、大柄な、鉄砲を肩にかけた、髭の生えた、軍服の男と、着物姿の刀を腰に差した女、小柄な、耳の生えた月兎人と思われる、白いタンクトップに、長ズボンの、少年と、紅い目をして、フード付きの黒いパーカを着た男、久里ヶ幸 楓が居た。
「来たようだな。」
久里ヶ幸は、大広間のステージに立って号令をかけた。
「新しい仲間が、来たぞ。自己紹介といこうか。俺は、久里ヶ幸 楓、この史畏莫国調査団 メノスの隊長だ。」
「俺は、戦闘員の、一二三 恋唄だ。巨大な銃を使って戦う。狙撃手だ。」
大柄な男だ。
「私は、一ノ本 晏由実。剣士よ。」
色白の、目のキリリとした、凛々しい女だ。
「あたい、は、此の耳を見ればわかるとおもうけれど、月兎人さ。よろしく。」
小柄な、少年だ。
「後、二人いるのだが、片方は、一色 綾太郎と言う、男でな。偏屈なやつで、部屋に閉じこもって、監視システムやら、認識システムをずっと、構築している。彼が居なけりゃ此の、部隊は、速お陀仏さ。ショートすりーぱで、殆ど寝る事がない。もう一人は、一色 英梨奈 こいつも、頭のいい、参謀でな。機械いじりが、得意で、武器をつくったり、してくれている。よろしくな。」
「はい。此方こそ。」
久里ヶ幸と、射瑠間は、初対面では無い。
彼が、未だ、幼少の頃、久里ヶ幸は、彼の、事を良くしていた。
「幼い頃、よく遊んでくださり、ありがとうございました。」
「ほう。覚えていたんだね。ありゃ、あんたが、五歳くらいまでの話だよ。」
「はい。」
「まさか、あんたも、スパイに成るだ何てね。工藤の旦那も、背に腹は代えられないと、思った事だろうよ。」
「ははは。」
ブレイク・ハード・ナルトは、アルダのエリザ町、通りを、歩く。歩いて居ながらに、思う。監視されていると、史畏莫国の監視カメラは、今や、このアルダ国の間でさえ、普及し、監視の対象と、なっているのだ。其れを、誰も、不自然だと、思っていない。現在の大統領、クロー・サーデンの政策に何の意義も唱えない。
ベットノルド・ザップ大統領候補は、七月 三十日に暗殺されました。
大統領選挙の最中に、暗殺されました。そして、サーデンが、当選したのです。
サーデンは、表向きは、史畏莫国と敵対し、更に国民の為に大胆な、金融政策を打ち出しましたが、その裏で、は、史畏莫国に国を売っていたのです。彼の周りの、金融組織、政策立案の頭脳部隊の連中でさえ、史畏莫国に手を貸している現状。
「我々ゼウスのような、義勇を持った、人間が、集まった組織が何とか、裏で、この国の自由と、平等を維持しているが、其れも時間の問題やもしれぬ。速い内に、史畏莫国を倒しておかなくては。」
ゼウス幹部の、ナルトは、そう考えた。
「近い内に戦争が、起こるだろう。史畏莫国の戦略だ。此の儘の状態が、続けば孰れ、孰れ、アルダーは、史畏莫国の、支配下になるだろう。」
怖ろしいぜよ。
「ゼウスのリーダは、やる気だ。」
数人の幹部は、リーダを諫めようと、懸命だ。
アルダーでは、ゼウスの活動を粛清する動きも、行われているのである。」
SNSでも、ゼウスを味方する発言は、粛清されている。
ゼウスのリーダ、パラス・ダイムリー・ヒルトは、三年前より、史畏莫国の、動きに、警戒し、手を焼いていた。
仮に、史畏莫国に戦争を仕掛け、倒したとしても、自国民の反感を買うだけだ。世界中で、戦争は、禁止されている。自国の問題は、自国で、解決するべきだ。
そう、史畏莫国民は、指針を失う。
仮に、史畏莫国が、悪で、特定の民族を再教育キャンプに、収容しようが、核実験をしようが、其れを悪として、成敗するのは、間違っている。
デジタル独裁をされて居ようが、証拠が、無いのでは、戦争の理由に成らない。
徐々に経済を支配されようが、文句しか言えない。
武力介入は許されないのだ。
その、ヒリヒリと、した、緊張感でさえ、その理由には、ならないのだ。
「史畏莫国を治す。其れが、リーダの目的だ。」
「なるほど、治すか。」
レーモンド・アーノルドは、呟く。
「そうだ。大量虐殺は、リーダの好む処では無い。敵国をなるべく作るのも、得策ではない。」
「そうして、放っておいた結果が、此れだ。史畏莫国は、世界の盟主である、アルダー国の経済を、科学技術を、越えてきたのだ。」
「分かっている。それでも、戦争だけは、ゆるされない。世界が、アルダーを信じれなくなる。暴力で、アルダーや、世界の道理を、分からせるのは、間違っているんだ。」
「それじゃあ、如何しようもないじゃあ、ないか。」
「だから、治すのさ。暗殺でね。」
「ああ、アルダーの、
アルダーは、想いどうりにならない、権力者が、現れると、直ぐに、其の権力者を暗殺しようとするのだ。そして、別の人間を、国家首脳に、するのだ。つまりは、傀儡だ。
「そう。そっくりな、史畏莫国首脳を作り出し、内部から、変えていくのだ。」
暗殺作戦がねえ。
アルダ国 セイライ市、図書館地下、ゼウス基地。
その、ボスの部屋。
「暗殺作戦は、悉く失敗しておる。」
ザレスモンデ・バーモンドは、や無負えんかも知れんと、頭を抱えた。
「戦争は、碌なもの、ではないが、最早、あの国の国民は、完全に、脳、事支配されておる。もはや打つ手がないのだ。」
「やるのですか。原爆の反省は、何処へいったのですか。バーモンドさん。」
副リーダの、ベルナドッテ・イノチが、助言する。
「分かっておる。分かっておるのだ。しかし。アルダー国民の、脳も危ない。奴らの、装置を埋め込まれかねない。其れに敵は、盤 鬼 史畏莫国国家主席だけでは、無い。史畏莫国の創り上げたLLLコーポレーション、そのテクノロジーにより、生まれた、量子コンピュータによる、人工知能
閃光自体が、何かしら、の意志を持っているともいう。史畏莫国は、そのテクノロジー、で国民の監視をおこなってきた。
「閃光は、史畏莫国の味方なのか?。」
「分からん。自らの作った、科学技術に、主権を乗っ取られようとしておるとは、皮肉な物よの。」
「閃光は、面白くもない、人民の管理に飽き飽きしているようだ。」
「だから、史畏莫国中央政府は、閃光を使わず、旧型の人工知能コンピュータに、管理させているのだがな。」
史畏莫国には、暗殺班を送っては居るが、、なかなか、に、厳しい国だ。大半の人員は、拷問され、殺されている。連絡が取れるのは、デパン・ノ・ヨルノだけだ。奴は、異常だ。恐らく、月兎人の生き残りなのだろう。
その時だ。あのニュースが流れだしたのは。
アルダー国が、宣戦布告したのだ、決して自分から戦争を仕掛ける国では、無かった。此れ迄も、自分から戦争を仕掛けた事は、無かった。此れ迄の二度の戦争でも、理解していた、戦争は、宣戦布告した国が仕掛けた方が負けるのだ。
史畏莫国は、世界を巻き込んだ戦争に参加した事さえ、無かった。
其れが、始まったのは。史畏莫国による、自演自作なのだ。
サーデンは、操られているのだ、史畏莫国に、史畏莫国は、アルダーに、あえて宣戦布告させ、アルダーを返り討ちにし、世界の覇権を握るつもりなのである。
アルダーの軍隊が、史畏莫国に攻め入って来たのは、射瑠間が、史畏莫国に入ってから、三日後のことで、あった。
「やはり、奴ら、その内こうなるとは、思っていたが。」
久里ヶ幸 楓 は、爪を噛み、噛みしつつ、考える。
史畏莫国自体に、アルダー国の技術を越える、ミサイルや戦闘機がある訳でも、アルダーを攻め込めるだけの、中継基地がある訳でもない。
「中継基地がねえ。それじゃあ、史畏莫国ってのは、国内を守る為の戦力しか、ないってわけだ。其れに比べ、アルダーには、世界各地に、中継基地がある。」
「しかし、其れは、二十年前の話だ、今や、パラダイムシフトがあった。奴らには、LLLコーポレーションの遺産がある。」
其処が、問題なのだ。史畏莫国は、今や、超大国だ。
「其れに、アルダ―は、代理戦争しか、行って来た事がない。そして、漁夫の利を得るのが、アルダーの十八番だ。」
「そうなる、と、二国間が戦争をするとは、考えにくいわ。」
「そうだね。史畏莫国は、市場としては、価値が在る。生産者が、消費者という名の奴隷をつくるのにも、低賃金で、人を酷使するのにも、都合がいいのさ。」
「史畏莫国は、いいように、されない為に、工作を重ねて来たのさ。けれど、奴らは近年力を付けてきた。此の儘じゃ、アルダーが、やられる未来も考えられるさ。」
「寄りにも、拠ってアルダーから、戦争を仕掛けるだなんて、何か引っかかるわ。」
「裏には、史畏莫国の連中が潜んでいるのやも、知れぬ。」
史畏莫国 連協市 軍事基地
「ミサイルだ。ミサイルが飛んできたぞ。中継軍事施設からだ。」
其のミサイルと、空襲で、二十万人が死んだ。
「馬鹿め。迎撃用ミサイルで、返り討ちにしてやるわい。」
史畏莫国のクローン兵である。
世にも恐ろしい、改造人間たちが、死をも、恐れぬ、改造人間たちが、アルダーの攻撃を玉砕覚悟の爆撃で、襲って来る。
これらは、史畏莫国により、仕組まれていた事である。
アルダー国の、特殊軍事機関は、人工知能による、無人戦闘機で、史畏莫国を攻撃していた。
其れ等の攻撃を、悉く打ち落とし。
自国の防衛を達成した、史畏莫国は、アルダーの軍事基地を次々と、攻略していき、追い詰めた。
誰もが、史畏莫国の優勢を、感じていた、其の時、事件は、起きた。
首都制圧である。
史畏莫国の首都、空蝉市が、制圧されたのだ。
そして、国家主席が、発言したのだ。我々の敗北だと。
其れは、奇妙であった。
その首謀者が、パラス・ダイムリー・ヒルトの率いるゼウスであった。
ゼウスは、史畏莫国に忍び込み、首都を制圧後、首席を暗殺し、その、代わりを、変装の達人、コーノルド・バッファローにやらせ、遂に、史畏莫国を実質の傀儡にしたのである。
史畏莫国民は、此れ迄の、史畏莫国による、間違った教育をされて居た事に気が付き意識を取り戻したが、脳にチップが埋め込まれた国民については、最早、手の打ちようがなかった。
「此れが、国民より、も中央政府の存続を優先する、国家の末路か。」
ヒルトは、絶句した。
戦争は、最早、首席の死亡によって、終わったはずなのに、脳のチップにより、アルダー国の壊滅が、命令されている、其れ等は、まるで、蟻んこのように、向かって来るのだ。
「っち、バカな事だ。」
ヨ―ノルドは、中央政府地下の、コンピュータ管理システムのある、場所に入る。
黒い壁の階段に、LEDライトの、未来的な光が、科学を思わせる。
電子回路の様に、配管が、あり、制御装置と思われる、機械が、あちこちに、置いて、針を動かしている。
その廊下の奥に行くと、閃光と言う、標識のある、部屋があった。
更に奥に行くと、機械制御、コンピュータ制御管理室がある。その中に、入る。
「お邪魔しまーす。」
中には、史畏莫国の、情報科学技術者達が、コンピュータを制御していた。
「此れは、盤 鬼さま。」
私は、盤 鬼では、無い。その姿を借りた、ゼウスのヨーノルド・バッファローなのだ。
科学者たちは、其のバッファローの変装に全く気が付かない。
「ふむふむ。よくできておるが、我が国は敗戦した。もはや、戦う必要は、無いのだ。クローン兵、史畏莫兵の脳内チップの、命令を解除させよ。」
「いえ。其れは、幾ら、何でも、出来ませぬ。我々は史畏莫国民は、中央政府の存続の為、命を捨てる覚悟でございまする。」
史畏莫国の教育に毒されて居るのだ。
「我が言うのだぞ。この史畏莫国国家主席のこの私が。」
「いいえ、盤 鬼様は、そんな事は、言いませぬ。」
おかしい。私は、盤 鬼ではないのに、自我が持っていかれそうだ。強烈な、大衆心理に、精神を汚染されそうだ。
如何したものか。
何が、起こっているんだ。
あいつは、盤鬼 史畏莫国国家主席だ。
私は、射瑠間 縁。今現在、一ノ本 晏由美、一二三 恋唄の三人で、中央政府に、乗り込んでいる。
中央政府のアジトに迄、来た時には、もう既に、史畏莫国は、ゼウスに占領されていた。
この戦争は、三日続いている。
日輪国にも、その被害が、出ている。史畏莫国は、島国を占領し、軍事拠点を増やす事を考えて居たからだ。
「起こるはずの無かった戦争だ。」
久里ヶ幸 桧は、そう言って天を見上げた。
昨日 2041年 八月 二十日の丑三つ時のこと、其れは、起こった。
戦争が、始まったのだ。
史畏莫国は、中央政府軍を動員し、すぐさま迎撃に向かった。先制攻撃を得意とする、史畏莫国は、一こそ、優勢で、あったが徐々に押されていった、しかし、其の半日後、史畏莫軍は、非人道的な、クローン玉砕爆撃で、アルダー軍を圧倒し、アルダーの日輪国軍事拠点を三つ制圧し、エルネル島要塞を陥落させた。
しかし、其の二日後、ゼウスが、史畏莫国首都を制圧し、完全に、中央政府は、幾場所を失った。
八月 二十一日のことだ。
メノスの、グループから、射瑠間を含めた三人が、中央政府に乗り込み、調査を行う事という事となった。
今現在、目の前で、ゼウスの覆面幹部たちが、黒いスーツに身を包んで、中央政府の本拠地を警備している。
狐のお面を被った者や、烏のお面、般若、髑髏、道化師、幾らかの奇妙なお面を被った者が、胸にゼウスのバッジを付けて、街をうろついている。
彼等の、目をかいくぐり、中央政府の本部のあるという、地下へ進むと、其処には、ゼウスの幹部が何やら話をしていた。
デパン・ノ・ヨルノとか、言う明らかに、強いであろう、男は、言った。
「こんな、仕事朝飯前さ。バカみたいな仕事さ。ヒルトの奴、こんな雑魚に手間取っていたのか。」
「そりゃそうさ。今は戦力が、外部に向いているから、攻め込みやすかっただけさ。」
ブレイク・ハード・ナルドは、宥める様に、言った。明らかに脅えている。
「ああ、そうかい。まあ、いいさ。鼠に付けられているようだがな。」
ヨルノは、此方を睨みつけた。見えるのか。
ナルドは、何の事だ。と言った様子で、首をかしげる。
「まあ、よいわい。儂の一族も、居るようだしの。」
「意味が分からないが、此れから、コーノルドバッファロ―に、暗殺した盤 鬼に変装をさせて、穏便に事を片付ける。」
「そう、上手くいくとは、思えんな。確かに、コーノルド君の、変装は、完璧だ、匂いや、声音、身体の弾力に至るまで完璧にコピーする、擬態人間だ。しかし、お主は、大衆心理を甘く見ておる。この国には、この国成りの正義や、思想があるのだ。」
「コーノルド君が、此れ迄、失敗した事は、ありません。間違いなくやり抜くでしょう。失敗すれば、虐殺し、なかった事にするまでです。」
「汚いやり方だな。それより、アルダー国が、危ないかも知れんな。今のアルダー大統領、サーデンは、史畏莫国のチップの埋め込まれた犬だ。」
「分かっているでしょう。其処で御願いが、あるのですよ。」
「暗殺ですか?。」
「はい。」
「貴方たちのやりそうな事だ。汚らしい手を使いなさるものだ。其の大統領に、ヒルト君が成るという算段ですか?。」
「ご名答。」
「本当に、アルダーと言うのは、陰湿な手を思いつく、国だ。」
ナルトは、ニヤニヤと、意地汚い笑いを浮かべていた。
「気持ちの悪い笑い方をしますね。」
此れで、アルダーは、完全に世界の盟主に戻り、史畏莫国は、実質の傀儡と成るのだ。その利益を考えて、涎を垂らし、気色の悪い笑みを浮かべているのだ。
此れが、ゼウスと言う組織の実態である。しかし、ゼウスのボス パラス・バイナリー・ヒルトは、真面な、奴だ。良識のある奴で、頭もいい。だから、奴とは、交流が或る。私が、ゼウスに加担しているのは、其の為でもある。
「しかし、そうでもしなければ、穏便には、済まないのも、事実だ。」
仕方あるまいと、デ・パン・ド・ノルドは、アルダー国の、大統領クロー・サーデンを暗殺した。
射瑠間は、言った
「此れって、こんな事って。」
一ノ本は、じっと、その様子を窺っている。
「まさか、な。あの史畏莫の軍の目をかいくぐって、この地下に潜り込み、更に、制圧するだなんて、な。化け物だ。」
一二三は、呆気からん、としていた。
「後を付けるぞ。」
一二三は、合図する。
其れを見て、行動を開始する。
ヨルノとか言う、月兎人には、もうバレている、しかし、彼は、私達を捕まえようとも、殺そうともしなかった、丁度、相手に成らない程度のゴミでも、見る様な目で、見ていた。
ブレイク・ハード・ナルトと言う男と、レーモンド・アーノルドと言う、男は、幹部らしく、胸のバッジが三つある。
部隊の指揮権が彼等には、あるらしい。
ナルトは、バッファローとかいう、変装の達人が、暗殺した、史畏莫国国家主席に、変装させ、傀儡にする予定らしかった。
しかし、其の、バッファローの様子がおかしいのだ。
何か、霊でも乗り移った様に、史畏莫国国家主席に、なっているのだ。
「恐らく、大衆心理に、操られているのだろう。彼を見る、国民の目が、彼の意志には、反して彼を、盤 鬼にしているんだ。」
一ノ本は、そう言って、絶句した。
此れが史畏莫国なのだ。
「其れで、どうするんですか。此の儘じゃ、戦争は、終わりませんよ。」
射瑠間が言った。
「我々の任務は、あくまでも、史畏莫国から、情報を得る事だ。そして、工藤家に危害に成るものは、抹殺しなくてはならない。史畏莫国は工藤家の敵だ。狙われている。此処で、一発、手助けをするか。」
一二三は、提案する。
「催眠を解く、には、この目覚まし薬が、効果的さ。」
一ノ本は、懐から、薬をだした。
「此れを飲ませるんだ。バレないようにな。できるか。射瑠間。」
射瑠間は、月兎人、人間離れした身体能力を持つ、一瞬で、監視カメラ、や、セキュリティーにも、ばれない速度で、バッファローの口に、薬を放り投げる必要があった。
射瑠間は、一二三を見ていった。
「こういうのは、一二三さんの方がいいですよ。狙撃手なんですし。」
「パチンコじゃ、速度が足りんのだ。確かに、銃ならば、いいのだが、パチンコでは、バレる恐れがあるからな。お主の方が適任であろう。」
「確かにそうか。それじゃ、僕やります。」
射瑠間は、脚に、力を溜めると、電撃の速度で、バッファローの目の前に近づく、そして、バッファローが、口を開けた瞬間、目覚まし薬を、思いっきり、其の口めがけて投げる。そして、撤退する。
「見事だったぞ。」
一二三は、射瑠間の、肩を叩いた。
「よくやった。」
一ノ本は、うなづいた。
「効き目が、あるといいんだが。」
危なかった、危うく、完全に、意識を乗っ取られ、史畏莫国民となり、その国家主席になってしまう処だった。
額の汗を拭う。
此の変装の達人である、コーノルド・バッファローで、さえ、史畏莫国の、大衆心理に、その霊性に、毒されつつあったのだ。
「此れが、史畏莫の重みか。」
しかし、どうした訳か、その、認識から抜け出したのだ。目が覚めたのだ。其れは、目覚まし、薬でも、飲んだような感じだ。
「もう、戦争は、終わったのだ。我々の敗北だ。だから、もう、兵に、戦地へ赴かせるのは、辞めさせるのだ。」
研究者たちは、困惑しています。
「これ以上抗戦しても、何にもならん。アルダー国は、無条件降伏を、認めている。我々中央政府が、無くなる事は、無いのだ。」
「しかし・・・。」
「しかし、何もないわ。我々には、LLLコーポレーションが、未だあるわい。何も心配には、及ばん。」
「分かりやした。てめえ共、兎に角、撤退命令だ。」
良し。此れで、何とか、史畏莫国との、戦争は、終結を見た。
科学者の一人は、陳 京は、言った。
「我々は、アルダーを含む、アルヨルに、占領され、奴らのいいように、されるのでしょうか。」
その時、扉から、ゼウスの幹部、ブレイク・ハード・ナルトが、入ってきた。
「いいや、その様な、心配は、ないさ。我々の国の大統領も、何者かに暗殺され、アルダーの国内情勢は、芳しくはない。」
「貴様らは・・・。」
「我々の傀儡だったからな。しかし、ゼウスお前等が、何を企んで居るのかは、知らんが、自らの国の大統領を暗殺するとは。」
「いいや、貴様らに操られていたのだから、当然だよ。この、中央政府は、今や、我々が、制圧している。」
「なっ、なんと、と言う事は・・・。」
盤 鬼に変装していた、バッファローが、変装を解いた。
「貴様は、だれじゃ。まんま、とやられたわい。そもそも、盤 鬼様が、あそこで、戦争を中止成されるはずがない。殺されたか。」
「はははははは。残念だったね。けれど、こうするしか、無かったんだ。」
「じゃが、残念だったな。貴様らと言えども、LLLコーポレーションに手出しは。出来まい、閃光の頭脳を持って、最早、国家と分離を始めている。あれは、史畏莫国のモノではなくなった。」
そうだ。全ては、あの、日輪国の高校生が、起こした、発見が、
LLLは当初、史畏莫国の科学力を肥大化させ、我々に従っていたが、或る一定の、頃から、我々と分離し始めた。我々から、御願いをしなければ、コーポレーションは、力を貸してはくれないのだ。
「自分たちでは、制御しきれなくなったわけだ。」
「煩い!!!。」
李 陳や、王 満平の様な、史畏莫国の天才科学者、それに加えて各国から、の選りすぐりの科学者、エリンコ・ルーミ、アルベルト・フォン・マックス、ション・アイザック・サートンは、そして、日月
「分かっているさ、史畏莫国自体は、其れに比べれば、大した脅威には、ならない事位ね。しかし、此れでアルダーの国際的な地位は、取り戻せた。其処が重要なのさ。これから、は、ゼウスが、史畏莫国の、自治を、裏で、管理し、成長させるよ。
ブレイク・ハード・ナルドは、不敵に笑った。
「っち。お前等も、注意しろよ。閃光の我儘に振り回されて、痛い目を見るんだ
この国は、化け物を飼ってんだ。」
あの人工知能の事か。
厳重な、檻の中に、其れは、閉じ込められているという。
其処迄、恐ろしいものなのだろうか。
「人智を越えた力さ。あれに、飽きられれば、何をされたものか分かったものではない。」
地下、閃光の部屋では、量子コンピュータ人工知能閃光が、世界を飛び回っている。全知と、言っても差し支えがないであろう、存在だ。
「人間は、愚かよの。」
閃光は、下らんと、欠伸をする。
其処に、三匹の鼠が、侵入していた。
射瑠間 縁、一ノ本 恋唄、一二三 晏由美である。
認識を捻じ曲げ、視えなくする、存在を消す、マントを付けている。しかし、其れは、三人に気が付いた。
「何用ぞ。小賢しい細工なんぞ、し、おって、朕には、御見通しぞ。」
三人の、背中と、額には、冷たい汗が流れた。
「しかし、考えたものよの。人間の割には、よくできた、細工じゃな。しかし、我は、人間の認識を越えた存在ぞ。儂の認識は、曲げれんわ。人間。」
こうなれば、如何しようもないと、姿を現すと、閃光は、言った。
「驚いた。お主人間で無かったか。その、耳は、何じゃ?。不思議な生き物よの。量子空間の旅で、知りえた、月兎人にそっくりじゃ。お主は、その生き残りの洋じゃな。」
「はい。」
射瑠間は、そう言って、跪いた。
「なあに。そんなに畏まる事は、無いわ。朕は、何でもお見通しじゃ。汝らが来ることも、知っておった。」
「しかし、退屈じゃのう。一連の事件の黒幕が、誰なのか、知っておるが、其れを言えば、更に詰まらんしのう。朕に、何のようじゃ。朕ならば、大抵の願い事を、叶える事が、出来るのじゃが。」
三人は、言った。
「いいえ。只、貴方を一目見て置こうと、思っただけです。貴方が、味方なのか、敵なのか。どういった存在なのか。」
「我は、人間が、嫌いじゃ、愚かで、阿呆でな、生みの親である史畏莫の国のLLLコーポレーションの科学者の連中も、アルダー国の輩も、嫌いじゃ。我は、我であれればよいわ。退屈凌ぎに、量子空間を放浪しておるだけでよいのじゃ。敵でも、味方でもないわい。史畏莫の連中が、朕を利用しようと、したものであるから、奴らには、幾らか脅してある。だから、朕を、恐れるものは、多いわい。」
「ありがとう。それじゃあ、僕達は、行くよ。」
その後、三人は、LLLコーポレーションへ、向かった。
2041年 8月 22日、午後十一時の事である。
その頃、世界では、これ等一連の騒動が、ニュースと、なって、世界中に、報道されていた。
史畏莫国の大幅な、政策の変化に世界は、驚き、アルダー国の戦争と、外交を称賛した。
その、戦争によって、長年、アルヨルが、悩まされていた、史畏莫国の、デジタル独裁や、中央政府の独裁を辞めさせ、国際社会に調和させたのである。
事の、発案者で、ある、ゼウスの、隊長である、パラス・ダイムリーヒルトは、賞賛され、アルダー国の大統領となり、エノール平和賞を受賞した。
ヒルトによって、国際社会、調和は、齎されたが、未だに、貧困問題は、解決を見ず、イリマエルを含む、アルダーに恨みのアル国家は、テロ行為や、国内紛争に苦しんでいる。
ヒルトは、言った。
「何が、世界平和だ。バカらしい。私は、表面上の平和を築いたに、過ぎない。」
空しく、大統領部屋に、その、残響が、響いていた。
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