壊滅

 紛争に巻き込まれているだろう。私の部下たちは、私の子分たちは。

 工藤一家の特殊諜報部隊 隊長 射瑠間 縁は、其の頃、現場で、紛争の様子を見ていた。

 この辺りは、もはや、戦車による、ミサイル攻撃や、火炎放射機による、爆撃、毒ガスで、もはや、生き地獄の様になっている。

 森は、森としての機能を無くし、焼け野原となっていた、その中に、堅固な、屋敷が建っている。其処は、まるで難攻不落の城の様に見える。

 人々の叫び声や、悲鳴が耳について離れないのだ。

 何処かしら、誰かが叫んでいるのが聞える。

 もう、うんざりだ。

 縁は、さび付いた心で、如何にか、組織の目的と、此の戦いの行方を探ろうと、其の、屋敷の入り口を目指す。

 屋敷の四か所の入り口では、孰れの場所でも、必死の攻防戦が繰り広げられていた。

 両陣営は、此処で、強固な門を開けられずに、戸惑っていた、空襲は全てミサイルにより撃ち落とされ、門には、防衛システムが搭載された、爆撃戦闘ロボと、特殊合成高分子、炭素素材で、出来た、壁により、強固に守られていた。

 肉体を極限にまで極めた、私の様な、人体の限界を越えた者で、なければ、此の爆弾の飛び交う、戦場では、爆弾に当たり、直ぐに死んでしまうだろう。

 縁は、その鍛えられ研ぎ澄まされた超感覚と、その。人間離れした俊敏性で、其れ等の爆撃を躱し、戦場を駆け巡るのである。

 

 「撃てーーー!!!。」

 ガナーの、戦闘隊長 紅 色覇の、号令が聞える。

 其の指令の後、爆撃が辺り一面に轟く。

 其の景色を眺める。

 「花火のようだ。」

 思わず見とれていた。

 目の前で、バタバタ、と跡形も無く、罪のない人が、撃たれ、皮膚が爛れ、動けない身体で、熱い熱いと、呻いている。

 「爆弾の熱風に耐えられる肉体を得るのに、どれだけの時間が必要だったことか・・・。」

 縁は、修行の日々を懐古していた。

 其の肉体は強靭であった、鍛え抜かれた鋼の肉体。

 服は、アラミド繊維で出来た、熱耐性の或る、服を着ている。

 忍者服である。黒色である。

 紅 色覇は、戦闘隊の指揮を執り、遂に、西の門を爆弾と、ミサイルで、こじ開けたようだ。強固に閉ざされていた門が無惨にも、破壊され、其処から、ガナーの戦闘員が流れ込んでいた。

 しかし、バーダの戦闘員は、其れ等は想定内だったかのように、中から、入り口の奥から、滝出していた、兵が、百、二百、千と、次から次に出て来ては、ガナー兵の行く手を阻んだ。

 紅 色覇 は、男だ。綺麗な端正な芸能人や、タレント、モデルの中にいる様な、綺麗な男だ。髪色は、生まれつき赤色らしい。目鼻立ちがスッキリしている。身長は、百五十センチメートルだ。

 門は、真っ黒な、漆黒の扉だ、其の扉を囲うように、レンガが造りに、特殊合成分子化合物の、レンガが積まれ十メートル以上の壁に成っている。

 上からの攻撃は、其処から十キロ程離れた場所にある、砲台から、ミサイルで、防いでいるようだ。

 バーダ側も、戦闘機を出撃させ空中戦を展開している。

 射瑠間 縁は、其の凄まじい戦争の中、金色の髪をたなびかせ、其の、細長い目を更に細長くし、口をㇸの字に曲げて、ガナーの兵士に変装し、バーダの要塞の奥に進む、黒い帽子を被っており、其処から、肩までの長髪だ。

 要塞内部では、死人が続出している。バーダ兵は、要塞内部に入れまいと必死だ。其れを、ガナー兵は、破らんとしている、刀を持った兵士が殺し合い、後から銃撃され、大砲や、手榴弾で、一帯が吹き飛び、其れを、ガードする、盾で防がれ、防ぎ合い、攻防が続いていた。

 「これじゃあ、埒が明かない。和睦になりそうだ。」

 ガナー兵の一人が言った。

 名を、日 明姫と言った。ガナー兵の、少佐らしかった。

 「あんた、見ない奴だな。何処の所属だ。」

 射瑠間 縁は、一瞬ドキリとしたが・・・。

 「西側 陸上隊で御座います。」

 「ほう、そうか。云い返事だ。名は、何という。」 

 「谷岡 太郎 兵で御座います。」

 「ほう。聞いた事の名だ。」

 ギロリと、明姫は、縁の目を見た。

 「まあ、よい。いい目をしておる。儂に取っては、こんな戦争、暇つぶしにすぎんしな。ガナー兵になったのも、刺激がちょっと必要だっただけだ。」

 こちらを見る。

 「おい。爆弾が飛んで来るぞ。じゃがめ!!!.」

 爆風で、辺りの者は、火傷を負っている。

 「ほう、鍛えられておるな。この程度では、焼けんか・・・。」

 「はい。」

 「何か、訳アリのようだな。何処かのスパイか。」

 「ちょっと、調べに来ていましてね、調査って奴です、工藤家の者です。」

 「あの、工藤一家のスパイ忍者か。聞いた事はあるな。まさか、紛れて、おったとはな。こんな機密を言ってよかったのか?。」

 「兎に角生き残ってから、その話はしましょう。私は、上層部の人間が何を考えて居るのか、何を企んでいるのかを、調査しに来たのです。」

 「其れは、面白そうだ。俺も混ぜろ、協力して、やらん事もない、これでも、少佐だ。」

 

 其の、ガナー兵の、日 明姫と言う、男は、中将と、幾らかの、人脈があるらしい。

 「村松中将から、は、上の、事について幾らか聞いてみたが、全く、何も、教えて、呉れなかったし、如何やら、中将でさえ、大半の事は、教えて、貰っていないようで、彼も、上層部の動向を探っているようだった。」

 「そりゃ、極秘事項だろうからな。」

 西の門の最前線は、日と、射瑠間のいる、場所である。村松中将は、其の後で、軍配を振っている。指揮官だ。

 陸軍中将は、五人いて、東西南北をそれぞれが、攻めているのだ。

 そして、その、中に中将総大将がおり、彼が、それらの指示に支持を出している。

 空軍では、其れから、爆撃を落とし、戦っている。彼等の中にも、中将クラスの人間は、三人いる。

 そして、大将が、三人いて、その上に、総隊長である、紅 色覇が、いるのだ。

 色覇は、隊長なのに、常に最前線で戦っている。そして、突破口を開いている。相当、戦闘能力が高いのだ。あれは、人間のレベルを超えている。恐らく、強化人間なのだろう。

 「色覇さん。は、怪物だよ。戦闘部隊の誰もが、彼に憧れしびれている。隊長でありながら、常に先頭で、軍を引っ張っていくんだ。」

 日は、紅 色覇を称えていた。

 しかし、戦線は膠着状態であった。

 ベーダの軍は、相当鍛えられているし、屋敷の中は、多くの仕掛けで、行く手を阻んでくる。機械と、人工知能による、ロボット兵が、階段の中や、床下、壁、天井に隠れている、そして、ガナー兵が近づくと、矢を放ち、鉄砲玉を放ち、手榴弾を投げ飛ばし、ダイナマイトを爆発させるのだ。

 其処を通ると、道の四方八方から、矢が飛んで来る、廊下や、階段がある。

 岩が転がってくる、細長い通路、地面が抜けて、落ちると、針地獄に成っている、床。

 そういった、仕掛けが施されている。

 そのために、ガナー軍は、苦戦を強いられていた。

 空での戦いも、陸での、戦車を使った戦いも、両者一歩も、譲らず、情報戦においても、高度な、情報戦争による、ハッキングの掛け合いが、止まなかった。

 

 「っく。べーダ軍の中には、相当な策士が居るようだ。このような、仕掛けに、情報攻撃、そして、兵統率された、陣形・・・。一筋縄ではいかぬか。」

 紅 色覇は、剣を前に突き刺した。

 「お前等、この先は、危険だ。矢が飛んで来る仕掛けが、ある、手榴弾で、道を爆破してから、進むぞ。ロボット兵には、電磁波による、電磁爆弾で、動きを鈍らせて、その隙に前に進むのだ。」

 的確な、采配で、ガナー軍は。徐々に形勢を、建て直しつつあった。

 

 しかし・・・。其の頃、ガナー軍の本陣のある、焼け野原となった、森の入り口付近の、岩の城には、ベーダ軍の歩兵隊が、迫りつつあった。

 戦車が、其れを倒そうと、ミサイルを放つが、其のミサイルを、ベーダ軍のミサイルが、打ち返す。

 本陣の守護を任されていた、副隊長の悪摘 蓮華は、隊長の不在に、嘆いていた。

 「何時もの、事だ。隊長は、直ぐに前に出たがる、そして、前線で、引っ張りたがる、隊長が死んで終えば元も子も無いのに。」

 やつれた様子で、心労している、様子だ。

 隊長のした事の、尻拭いは、何時も此の、悪摘 蓮華が、行っているのである。

 「副隊長の私の身にもなってもらえないものか。」

 と、嘆息しつつ、向かってくる、バーダの軍勢を迎え撃つための、迎撃装置を準備する様に、部下に命じた。

 「あれを、出せ。巨大レーザ 焼け野原だ。あれで、一掃しよう。:

 「あ、あれを今、此処でですか・・・。分かりました。」

 このタイミングが、いい。

 此れから、ますます、バーダの軍勢は、本陣へ向かってくるだろう。大将のいない今が好機なのだ。其処の虚を突いて、秘密兵器で、バッサリと戦意を喪失させてやるのだ。

 情報によれば、敵は、此の戦車による、ミサイル爆撃と、電磁爆弾、レーザー抗戦銃による、陸軍兵隊が、三千人程度と、聞いている。其れも、大半は、ロボット兵や、クローン兵らしいが。

 可哀そうなものだ。

 奴ら、べーダの奴らは、クローンや、ロボットを人と、思っていない、どうしてあのような、恐ろしい、計画に賛同したのか、悪魔に魂を売るとは此のことなのかも知れない。

 我々が制裁を下さなくてはならないのだ。

 クローン製造工場なんて、間違っている。

 其の、工場では、人間をつくっていた。政治や、戦争の道具として、従順で、逆らわない、戦闘人間を作り出しているのだ。

 x社が、造り始めて、其れが、今では、世界の裏側で、売買されている。一般人は知りえない情報だ。x社の、恐ろしい、クローン工場の現状を。

 孰れにせよ、我々、ガナーは、其れ等の考えには、常に敵対してきた。しかし、売国のバーダは、労働力不足改善に、そういった、働くだけの、改造をつくり出し、非人道的な研究をしている、X社に加担しているようで、其の支援を受けている。

 「奴らに、この国を乗っ取られて成るものか。」

 悪摘 蓮華は、拳を強く握った。

 

 巨大レーザーの発射によって、バーダの、兵は、崩れた。

 怖ろしい威嚇射撃である。当たった、兵は、見る影もなくなる程、木っ端微塵に砕け散るのだ。

 レーザの幅は、横、十メートル、縦、十メートルだ。距離は、十キロ先まで其のレーザは、届くので、ある。

 そのような、レーザが、レーザ砲から、発射され、人工知能による、追跡機能により、人を追跡し、何時までも、狙い撃ちしてくるのだ。

 バーダの兵は、腰を抜かしていた。

 改造された、クローン兵は、其の光に当たり、粉々に砕けた。其れを見て、一般兵は、脅え、戦意を喪失している。

 

 その様な、戦争の様子を、モニター越しに、爪を噛み、神経質そうに、見ているのは、ベーダの組長、織部黒矢である。

 屋敷の、真ん中に円型に、縁どられた部屋の地下五階に、組長の、天守がある。そこが、云わば、ベーダの、最も、上座なのだ。

 其処には、モニターがある。そして、机、椅子、モニター、黒板と、其れに張り付けられた、世界地図、書きかけの宇宙地図、此の森周辺の地図と、戦略を記した、ボードがある。

 「っく。此の儘では、、私が出るのも、時間の、問題か。おのれ・・・。」

 「未だ、速いです。私が、出撃しましょう。」

 戦闘部隊長の、中川 洋子 が、進言する。

 「中川戦闘隊長、君がでるのかね。君の実力は、此の組の誰もが、認める処のモノではあるが・・・。」

 「必ず、奴を仕留めてみせますよ、紅 色覇をね。」

 織部は、中川の、強さを、知っていた。

 戦闘隊長、諜報部隊長、特別暗殺部隊隊長、科学技術部隊長、孰れの機関に対しても、我が組は、世界で最高の人材が集まっている。

 「ガナーの本陣に対しても、相当な、手練れが居ると見える。完全にレーザ光線で、我が軍は押されている。其れに対してどうしたものか。戦闘部隊副隊長 新井 真司君をよんでくれないか、彼に、ガナー本陣を責めさせる。」

 「新井、ですか・・・。彼は、有能ですが、少々、性格に難があります・・・。」

 「この際、その様な事は、いいのじゃ、兎に角、レーザにより、戦意を喪失した、此処から一キロ南の、敵本陣を落とすのだ。」

 「分かりました。直ぐに、応援に掛け付ける、よう指令を出しましょう。」

 「新井、此れから、御前の好きな戦争だ。南のガナー本陣を攻め落とせとの、命令が組長から御前に下だったようだ。」

 「そうですか・・・。そうですか・・・。わかりました。」

 静かに、冷静に、新井は、了承の返事をした。

 

 ガナーの組長 天の川 謙介は、此処から、数十キロ離れた処に陣を構え、モニターで敵の動きを観察していた。

 此処まで、バーダの軍勢が、来る事は無い。

 こちら側から、攻めているのだ。

 戦闘機の燃料補給場所、についても、敵に分がある。 

 戦闘部隊本陣から、の連絡で、レーザ砲により、敵の攻撃を撃退したとの、報告はあったが、油断はならないのだ。

 「油断せずに、的確に敵を阻むのだ。今は、紅 色覇が、不在だ。彼は、最前線で、戦っている。」

 「はっ。」

 悪摘 蓮華は、云われなくとも、既に、完全な防衛網を周囲に設置し始めていた。

 地雷である。

 そして、空からの、空襲から身を守るための、壁と、屋根である。

 「空からの、爆撃をも、防ぐ、新素材の、盾を、隊の者に配り、ました。そして、いま、塀の小さな穴から、銃撃をさせて、防備を固めております。」

 「流石は、黒摘だ。抜かりがないな。」

 「ありがたき、御言葉にござりまする。」

  

 射瑠間と、日は、紅の率いる、軍の猛進の後に続いていた。

 「やあ、紅、元気にしてたかい?」

 「お前は・・・。」

 水色の目をした、青色の髪の女。手には、巨大な、鎌を持っている。身体には、武装が施してある、其れがまるで体の一部か、のように。

 「中川。其の身体は、本気なんだな。」」

 其の、魚の鱗が生えたような、鮮やかの、防具が、身体に張り付いている。水色の深い青深色の、鱗。

 そして、天女の様に、その、周りを巻く、水滴を象った円。布。

 「私は、もう、人間じゃあ、ないわ。貴方もでしょう。獄炎の呪を受けた、化け物さん。」

 中川は、ある日、死んだ。

 海で溺れて死んだ。

 死のう、海の深い深い処迄、泳いで、死んだ。 

 深い水が、包んだ。

 森の中だった。

 水に沈む遠い記憶が呼び覚まされたかの様な、感覚になった。

 此れが、生命の祖先???。

 違う、水の中を泳いでいる、脊椎動物

 魚。

 私は、海の生き物だったんだ。

 地上では、核爆弾の音や、恐ろしい、トリチウムが深海に迄、汚染を広めていた。

 ありがとう。

 生命。

 火山の噴火で世界は滅びる。

 隕石の衝突で世界は滅びる。

 この星が氷つき、生命は、滅びる、そして、蘇る、悠久の、遺伝子を、DNAを、進化の軌跡がくれる。

 「御前、実験を受けたな。」

 「違うわ、海で溺れたのよ、すると、身体が、分解されていったわ。あの海、危険な物質で溢れていた、人類も知らない、危険な、物質よ。其れが、生命の進化を加速させるのよ。」

 それで、この体に、放射能の効かない、細胞になった、放射能に免疫を付けた。そして、身体は鋼の様に、堅い鱗に覆われている。そして、変身によって姿を変えられる。

 其のような、奇妙な、進化を遂げたのか。

 「知っているわよ。あなたも、なんでしょう。人間を超えた、身体能力程度ならば、誰にだって、努力で、身につけられる。けれど、貴方は、それ以上の力を持っている、細胞の進化しか、考えられないわ。あれは、生物のスペックが変わる感覚よ。コンピューダがバージョンアップするようにねえ。」

 「っち。やはり、貴様もだったか。俺様の進化を他人に見せるのは、御前が、此れで、二人目だ。一人は、組長、天の川 謙介、そして、次がお前になる。」

 ぎゃあああああああああああああ。

 すると、どうでしょうか。

 此の、紅の背中から、火山が爆発する。背中に甲羅が出てくる。蛇の尻尾が生えてくる。

 「玄武。超進化。」

 其れは、亀の甲羅だ。其れが、火山の様になっている、身体からは、熱気が出ている。

 「其れは、、、。」

 すると、だんだんと、其の熱を収束させていく。

 体の内に溜めている様に。

 「此れは、細胞が熱を作り出す。そして、火山の噴火を起こす。丁度、石油の原料が微生物なのと、同じ仕組みさ。身体の中で、可燃性の液体を造り、エネルギーにする。人間爆弾の原理さ。僕の体は、其れを、自分の意志で出来る、つまり、こういう事だ。」

 紅が、目に見えぬ速さで、飛んだ。

 此れは、紅が、一瞬で、身体中のエネルギーを放出し、其れにより、移動したためである。熱エネルギーを変換したのだ。

 「水の壁 ウオーターウオール。」

 じゃああああああああ。

 紅の、高速な、突進からの、攻撃を予測し、中川は。水の壁を咄嗟につくる。

 「いい判断だ。だが、私の噴火による、落石は、御前の壁を貫く。」

 焼けた灼熱の石が、空中から落下する、其のスピードは、どんどんと、加速していく。

 「何処から、石が!!!。」

 「引き寄せさ。石を引き寄せたんだ。御前も、此れくらいの事は出来るだろう。」

 水の壁も、引き寄せなのだ。

 自分の属性の、物質を引き寄せられるのだ。

 

 「何て、戦いだ。」

 水と、焔が、ひしめき合っている。

 何て、凄い戦いなんだ。

 射瑠間は、其の戦いに、目を開け、感嘆していた。

 「凄いだろ、此れが、隊長クラスの戦いなんだ。」

 日は言った。

 「この調子で、行くと、三日は決着がつかないだろうぜ。」

 「どうしてわかるの。」

 「見た処二人の実力は、互角だ。そして、紅さんは、三日三晩寝ずに戦えるからだ。」

 三日三晩寝ずに、あのような、死闘を繰り広げられるのか、何て、怪物的な人なんだろうか。

 「あの二人が、戦っている内に、此の屋敷を探索しよう。」

 「そうだな。」

 二人は、屋敷を探索した。

 探索して、地下に繋がる、隠し通路を、見つけた。

 通路の、出入り口には、扉があり、其処を履けると、下に続く階段が連なっている。

 其の階段は、螺旋階段に成っており、壁に、地下五階までの案内がある事から、五階まであるようだ。

 壁には、鏡や、本、宝石や、絵が飾り付けられている。其の螺旋階段を下りると、地下一階に降りる。

 広さは、三百坪程度で、其れが、五つあるようだ。

 地下には、人が住んでいて、一階には、工場があった。何かをつくっているのであろう。

 「何の工場だろう。中に入ってみよう。」

 射瑠間は、日を、見た。

 日は、うなづいて、工場の方へ、忍び足で進んだ。

 「此れは・・・。」

 工場では、食品がつくられていた。

 人類の食糧問題を解決するための、化学物質による栄養製作工場。第一プラント。

 虫をエネルギー源とする為の、蟲エネルギーによる大量発電技術の開発所。

 パワードスーツの制作工場LLL

 水の化学的な構造について、水柱の研究。状態変化研究室。

 「テクノロジーの塊だな。しかも・・・。どれも聞いたとこのない、企業のマークがついてやがる。」

 Xと言う文字。何処の、工場にも、其のXの文字のロゴが、刻まれている。

 「何の会社なんだ。」

 「中では、ロボットと、研究者が共同で、研究、開発、製造を行っているようだが・・・。」

 これ以上近づくと、危ないのだ。 

 更に下の階へと、降りていく。

 腕の移植技術工場。

 義足、義手、テクノロジー。

 マスクによる、完全な、ウイルス防御。

 ウイルス防御眼鏡、コンタクト。

 放射能、防御服。

 DNAの構造を利用した、再生する、家の製造。

 三階

 テロメアの再生技術科学工場。

 癌医療技術特効薬センター。

 筋委縮神経回路解明センター。

 アナフィラキシーショック解明センター。

 DNAサイクルを利用した、人体に影響を与えない、治療。

 四階

 宇宙科学工業

 宇宙医療

 無重力科学

 クローン製造工場

 生命製作工場

 化石復元工場

 絶滅種復元工場

 ハイブリット生命作成工場

 マイクロ生命製作工場

 ナノマシーンによる、生体環境保持装置の製作工場

 

 「何だか、気味の悪いテクノロジーだな。」

 射瑠間は、行き過ぎた、テクノロジーの、暴走を危惧していた。もしかすれば、あらゆる争いの火種は、これ等のテクノロジーを巡って、行われているの、と言う、事迄、考える事ができた。

 「こんな、研究が秘密裏に行われていただなんて、其れも、これ等の研究は、恐らくこの、X社にとって、本の一部に過ぎないのだろう。日輪国にある、基地だけでも、此れだけだ。ベーダと、何かしら、の繋がりがある事は確かだ。」

 これじゃあ、まるで、映画や、漫画の世界だな。

 此の、ガナーの兵として、ベーダの基地に潜り込めたが・・・。まさか、此処までの、研究が、秘密裏に進められていたとは・・・。この日輪国のモノではない。恐らく、外国から、脅されているのであろう。日輪国の少子化問題は、現在も進んでいる。今では、人口は、五千万人となった、外国人移民を受け入れるのを、阻んだ政治家は、外国からの何かしらの圧力で、全員、殺されている。表向きには、原因不明の死や、事故、病気と成っているが、明らかなる、攻撃だ。

 問題は、此の日輪国のみ、に留まらないのだ。

 史畏莫、アルダー国、ロリーダの国、間での、利害争いが、此の問題には、ある。

 史畏莫国の蝙蝠の免疫を使った、ウイルス開発の失敗で、世界中の人口が、三分の一減ったのは、七十年前の話だ。

 戦争は、爆弾や、戦闘機、戦車、や鉄砲、剣で、殺し合う事だけでは、何のだと、世界中の人達が目をさましたのだ。

 戦争は、新技術により形を変えて襲ってくるのだ。

 「平和の為に利用されればいいが・・・。」

 射瑠間は、呟く。

 「恐らく、其れは無いね。此れは、独占されてる。一部の金持ちだけが享受できる、産物さ。」

 「そうだろうね。」 

 「しかし、このLLLと言う、団体だ。この団体が、間違いなく、ベーダと、何かしらの取引をしている。あらゆる工場に其のマークがある。」

  

 地下五階に降りると、其処は、堅い扉と、壁で、囲まれていた。

 「どうやって、中に入ればいいのだ、其れに・・・、此の先に、本部があるのか。バレれば、即死だ。防犯カメラや、レーダに捉えられてもな。」

 射瑠間、は、四階から、五階へ行く螺旋階段の途上で、警戒し、忍び足で、移動している。其の後を、日が、追いかける。

 「その通りだ。此処から、先は、余りに危険すぎる。」

 日は、ポケットから、盗聴器を取り出した。

 「此奴で、聞くんだ。レーダにも、感知されない、優れものだ。」

 「これで、ベーダの秘密を暴こうっていうんだな。さすがだ。」

 壁に、盗聴器を仕掛ける。

 「バレれば、爆発する。仕掛けに成っている。そして証拠は隠滅される。」

 そして、四階と、五階の間の階段で、座って、警戒し、盗聴をする。

 「どうだ。何か、聞こえるか。」

 「ああ、聞こえる。誰の声だろう。しわがれた声だ。」

 

 中川洋子は、生まれた時、人間では、無かった。ずっと海の底で、生まれた。

 自分が、人魚だなんて、彼女は、気が付かなかった。はじめて地上に出た時、自分と容姿の似た、けれど、二本の脚がある処だけ、違う奇怪な、生き物が多数いる事に驚いた。人魚の寿命は、約千年、其の生き物に迫害され、鉄砲で、撃たれ、何度も、何度も殺されかけてが、其の生命力と、再生能力で、生き逃れてきた。

 人魚である事、を隠して、人間の振りをしてまで、一人ぼっちは寂しかったのだ。

 彼女は、足をつくった。

 そして、其れを付けた。

 元は、魚のような鰭であった。

 仲間は一人もいなかった。

 そういった伝説は、残っているが、誰も、彼女の仲間は居なかった。

 海の動物は、言葉を話さなかった。

 けれど、彼女には、言葉があった。

 どうして、人間の言葉がわかるのか。

 其れは、彼女の知能が高かったからだ。

 人間とコミュニケーションを取ろうとしても、化け物と言われ、初めに覚えた言葉は、化け物だった。

 けれど、物好きの優しい、人間にであった。

 おこがましい事に、悲惨な事に、洋子は、彼に恋をした。

 二人は、結ばれたが、人間の寿命は余りにも短かった。

 彼女を残して、彼は、戦争で死んで終った。

 二十二歳でしんだ。

 其れに、人魚と、人間では、子供は出来なかった。

 永遠の孤独を味わった気分であった。

 あれから、三百年程の年月が過ぎて、彼女は、自分がこの世界の生き物では無い事に気が付いた。

 別の世界から、何らかの要因で、云わば、飛ばされたのだと知った。

 そういった事が、あるらしかった。

 彼女の知り合いに、同じような化け物がいた。

 其の人は、龍の様な姿をしていたが、人間に擬態しているらしい。

 「故郷に帰れないかなあ。」

 彼はいつもそう言っていた。元の世界の記憶があるらしい。其の世界では、龍が、云わば、世界の中で、繁栄している世界らしい。その中でも、最も知能の高い種族だったらしい。

 世界には、こういった特異な生命が私以外にもいて、暮らしている事を知ったのは、私が四百歳に成ってからだった。世界中を歩き回り、泳ぎまわり、様々な、化け物と出会って来た。

 そのうちに、世界は、何度も戦争をした。

 そして、人間は、恐ろしい、武器や、兵器を造りだし、生命を破壊した。

 其れが、悪い事だとは、思わない。寧ろ、同だっていい。私からすれば、そんな事は、同だってよかった。ただ、愚かしいと、苦笑するだけだった。

 私は、学生になった事があるし、社会人として働いた事もある、染め物の仕事をしていた事がある、確かあの時代、日輪国は鎖国していた、世界は、蒸気機関を発明して、活気づいていたと、同時に、戦争はだんだんと、破壊性を増していった。

 私が、生まれる以前から、人間の事は理解できなかった。

 人権が認められていなかった時代は、人間は家畜を飼い始めていた、其処から、バカで愚かな考えを発展させて、遂には、人間が人間を所有しようとし始めた、結果、奴隷制が出来た。かつて、人間は、奴隷を公認していたのだ。

 そして、権力者に盾を衝けば、処刑された。

 訳の分からない宗教上の考えの弾圧と、異端派の処刑に、何万人もの、人間が死んだ。

 私には、分からなかった。

 そうして、考え方の違いで、命までかけて、戦うのかが、意味のない戦いをするのかが、分からなかった。

 其れは、きっと、私が人間ではないからなのだろう。

 私には、死ぬ事が想像できない。人間は、人魚である、私に比べて繊細で、脆く、直ぐに崩れた終うのだ。

 いる筈の無い神を崇め信じ、其れを他人に強要し、広め、結束を強めなければ、其の、脆い心は、直ぐに砕け散ってしまうのだ。

 一人で、生きて行ける、人魚の様な、化け物とは、違うのである。

 なぜか、そんな事を考えて居た。

 私の目の前には、化け物が居る。私とは、違う世界から来た者かも、知れないが、此奴も、間違いなく、人間では、無い。何かしらの、特異なDNA、生命の設計図により、強大な力を得た、化け物だ。

 其れが、私には、直ぐに分かった。

 あの甲羅。間違いなく、生き物だ。そして、火山を引き起こす、サイコキネシスだ。

 只、考えが違うだけなのに、殺し合う。

 ああ、こういう事だったのか。

 私は、史畏莫国の、人間を守る。そう決めている。

 ベーダは、史畏莫国に加担している。密約している。史畏莫国は、アルダー国に、制裁を受けている。経済でも、軍事でも、行く場はない。何時もアルダー国が、史畏莫国をやっつけようとする。

 私の友達は、アルダー国の、制裁を受けて、死んだ。アルダー国は、其れを知らないふりをした、世界の秩序を守る為だといった。ヨルダーンや、イルマエルにしたってそうだ。自分が、あの戦争でも、この戦争でも、勝利したからと、世界のリーダのつもりでいる。

 私だってわかっている。史畏莫国は決していい国では、無い。アルダーに比べれば、最低の国だ。自由も平等も、人権も、三権分立も。無い、残念な国だ。

 けれど、私は、二千年前の此の国を知っている。

 そして、その、悠大な、歴史を知っている。

 あの頃の、史畏莫国が好きだった。

 このように、残念な国では無かった。

 私は、史畏莫国を変えるのが、目的だ。

 腐った史畏莫国を、正すのだ。其れが、目標であった。

 「おい。洋子、大丈夫か。」

 紅は、心配そうに、此方を覗き込んだ。

 頭が・・・、頭が・・・。

 痛い。

 痛いんだ・・・。

 洋子のおでこから、チップの様な物が、浮き出る。

 「俺だ。紅だ。御前の友達の・・・。」

 痛い。痛い。痛い。

 「今、助けてやる。」

 洋子の奴に一体何をしたんだ。洋子は、特定の集団に、所属するようなやつじゃない。其れなのに、ベーダの、戦闘部隊隊長をしているだなんて、おかしいとは、思っていたんだ。

 「炎。」

 洋子のおでこの、、チップが燃えて無くなった。」

 洋子は、意識を失って倒れ込んだ。

 「大丈夫、か。」

 「貴方は、誰?。私は誰?。此処は何処?。」

 洋子・・・。

 洋子・・・。

 まさか!!!。

 記憶を、消されている。

 何処迄、腐ってんだ。史畏莫国の人間どもはよお其れに手を貸す、ベーダも、LLLコーポレーションの研究者たちも・・・。

 LLLコーポレーション。

 世界中の有能な研究者が、史畏莫国の莫大な研究費で、自由に研究を、極秘で、する、会社。此処で、どれだけの、成果が上げられ、そして、悪用されてきた事か。

 「人を、人とも、思ってねえ。命を馬鹿にしている。」

 クローン奴隷計画。による、無数のクローンを、此の戦争にも、導入している。

 体格容姿、が、全く同じ、其のクローンが、何万と此の戦いで、死んだ。

 「許さねえ・・・。許さねえぞ!!!。」

 

 織部は、中川が、メモリで、操作されている事を知らなかった。

 まさか、あの、最強の、不老不死の中川が、上の人間に、チップを埋め込まれていて、其れに操られていただなんて、完全無欠の、あの、女が。

 なんだか、気分がいい。

 あの、女が、実は、化け物で、チップによって動かされていた。其れが分かって、気分がいい。道理で、人間らしくなかった訳だ。

 ま、そんな事より、如何してくれたものか、中川抜きで、ガナー相手に勝てるのか、勝算は、・・・。新兵器を使うしか、無い。あれを使えば、どれだけの犠牲を出る事か。

 追い詰められた、人間程、怖いもの、も無い。

 現に、あれを使おうとしている。

 私が居る。

 決して、使ってはならない。

 魔の兵器を。LLLコーポレーションが、遂に完成させた。破壊の反物質爆弾を。

 

 「世界ってのは、順番と、場所で、出来てるんだ。」

 男は、そう言っていた。

 「何もない処から、引き算をする事は出来ない、何かがあるから、引く事が出来る。」

 何を、言っているのだろう。 

 「つまり、世界の始まりは、何処にだってあるって話さ。後は、無数の起点があって、其処から、順番に、場所が出来ていった。その結果、時間が生まれ空間が生まれ、重力が出来、四つの力が生まれた・・・。分かるか。」

 男は、量子力学と、情報工学の天才だった。

 「この世界は、一つの世界に過ぎない。世界は、無数に存在する。が、其れが交わる事は滅多にない。理由は・・・。世界ができて終ったからだ。」

 男は、透明なケースの中に入っている、黒い物質を見せた。

 「此れは、何です。何だか、凄く違和感があるような、普通でないような・・・。」

 「そりゃ。そうだ。此れは、違う世界の物質だ。其れが、この世界の物質に触れればどうなると思う。」

 「どうなるのでしょう・・・。」

 「そら。ね。恐ろしい事に成るのだよ。世界を丸ごと吹き飛ばす程の威力だよ。かつて、世界は、干渉し合い、そして、干渉できなくなった。粉々に砕け散って、バラバラになった。其れが、ビッグバンさ、けれど、宇宙や世界は、それ以前から、あったんだ。虚数の世界でね。」

 

 あの、意味の分からない学者は、世界有数の賞を受賞していた。彼の理論を理解、できるものは、世界でも、指を数える位ならしい。

 あの学者の理論が、数百年たって理解され、そして、実用化にこぎつけた。

 強力な、破壊兵器。下手をすれば、世界が丸ごと亡くなって終う、巨大なエネルギーを生み出す、危険装置。

 LLLコーポレーションの、大発明の一つ。アレが、一発分用意してある。

 

 「おらあああああああ!!!!!!。」

 紅 色覇の叫び声だ。もう、其処迄来ている。

 地下への、通路を見つけて、追っかけてきたのだ。

 此の儘では、喰われる。

 奴に・・・。

 

 糸識 加代が、突然走り出す。

 そして、螺旋階段を駆け下りる。

 日と、射瑠間は、その様子を、観察する。

 糸識は、ベーダの副組長である。

 

 ちょっと、待て。今、糸識が、見えなかったか・・・。彼奴、紅、相手に、戦う気だ。あの、洋子がやられたってのに・・・。

 

 「あたし、あんたを、とめんよ。悪いがね。」

 「あんた、どうして、ベーダなんかに加担するんだ。」

 「なんで・・・。そりゃ・・・。この日輪国に未来は無いからだ。史畏莫国は、今や、アルダー国の、軍事力、科学力を凌駕しつつある、李 陳博士や、王 満平の様な、科学者が、人間製造工場や、魔のウイルス実験で、もはや、世界の覇権を握って終った。更にバットな事に、LLLコーポレーションは、反物質爆弾を製造している。もはや、この世界に、居場所は無いのだよ。史畏莫国に逆らった国に未来など・・・、無いのだよ・・・。」

 糸識は、彼の中で、国の事を想って、行動し、ベーダの副組長に迄上り詰め、この国を弱体化させ、史畏莫国の言いなりに成って来たのだ。そうしなければ、日輪国は、滅ぼされてしまうから。

 「っち。分かんねー奴だ。この国は、強い。立ち直れる。其れに、アルダーとの、安全保障条約がある。其れなのに、御前は・・・・。」

 「アルダーとの、安全保障・・・。わらわせるな。あんな条約。アルダーの犬が。バカみたいな話だ。敗戦国の負け犬が、よく吼える。」

 「確かに、何時までも、アルダーに守ってもらい、アルダーに対して、常に、弱腰だ。其れは、日輪国にとっても、バッドな事には違い無い。」

 「そうだろう。そうだろう。よく分かっているではないか。」

 「孰れは、独立するべきだ。あらゆる国家からも。」

 「しかし、其れでは、孤立し、国際社会から、追放される。そうなれば終いだ。」

 詰んでいるのだ。

 「なんであれ、もはや、終いだ。史畏莫国 暗黒部隊の人間が、来れば、こんな国直ぐに灰になる。この国の皇族も、大統領も、奴らにやられた。」

 糸識は、衝撃の告白をする。

 「そんな・・・。やはり、あの事件は・・・。」

 「しかし・・・。その後、世界中で、国家の重要人物が、殺害された。あれは、未だに犯人が分かっていない。私の知る情報では、あれは・・・・。やはり、あのネット配信は、本当だったのかも知れない。」

 紅は、考える。あのネット配信の事を、ふざけた野郎だと、思った。きっと、悪戯だろうと、思った、しかし、あれが真実だとすれば・・・。

 「内の解析班は、既に、あれを解析している。ほぼ百パーセントの確率で、あの動画が、何かしらの細工によって、真実を語っていない事が分かった。あの動画は、国や世界の都合のいいように、改変されている。」

 「そんな、、まさか。」

 確かに、そうかも知れない。内の、組長も、何やら、最近は、特殊諜報部隊の人間や、科学調査部隊の人間と、何やら、調査をしている様子であった。この件についてなのだろうか。

 「其れで、あんた、この先に行って、こっちの大将の首を取る気なんだろ?」

 「ああ。」

 「それだったら。こっから先は、通せねえ。組長は、おめえが、この先に行けば、反物質爆撃をするおつもりだ。あの方は、追い詰められれば、そういったとこをやりかねない、少なくとも、日輪国は世界から無くなるだろうがな。其のくらいの威力だ。其れでも、相当制御してある。制御を、緩めれば、世界を壊せる、星を丸ごと消せる威力だ。其れが、反物質による、対消滅の威力なんだ。」

 「わお。其れは、怖いねえ。如何したものか。」

 知っている。其のくらいの情報。ガナーの諜報部隊隊長 高浜 次郎 、特別暗殺部隊長 黙阿弥 飛 と、紅 色覇との、織部暗殺計画だ。此れは、極秘計画だと、天の川組長から、じきじきに命が下った事だ。

 今頃、忍者のように、誰にも悟られず、気づかれず、織部の首元を狙い、忍び寄っているはずだ。時期に、織部の死が分かるだろう。

 

 私は、織部 黒矢 八十七歳 細胞活性化手術で老いる事の無い身体を手に入れた。私の家庭は、代々、大工をしていた。私は、大工に成るのが厭だった。金持ちに成るのが、目標だった、私は、十八歳で起業した。IT産業だった。その後、利益を上げて、日輪国に貢献してきたが、ある時、黒い噂を知った、史畏莫国に、この国が買収されているという話だった。はじめはされ画許さなくて、私は、史畏莫国を憎んだ。しかし、今となっては分かる、史畏莫国は、今や世界中が手を焼いている、巨大国家だ、もはや誰も止める事は出来ない。

 この国を何とか、守ろうと、史畏莫国と、密約をかわそうと、其の窓口になろうと、私は、ベーダに加入し、組長に迄上り詰めた。

 アルダー国と、史畏莫国は仲が悪い。

 史畏莫国国内では、反日輪活動が盛んだ。かつて、戦争で、日輪国に負けたからだ。その屈辱から、何時までも日輪国を恨んでいる。そういった、プロパガンダで、史畏莫国は、日輪国を、嫌っている。

 そして、日輪国もしかりだ。

 しかし、史畏莫国は、日輪国の有能な学者を、LLLコーポレーションに引き入れた、アルダー国にしてもそうだ、世界各国から、その資金で、研究者を集約した。そして、魔の実験を始めた。研究者を拉致した。監禁し、研究させた。脳みそをデータ化し、幾つもの研究に従順な、クローン、ロボットを作った。

 思考のアルゴリズムをマッピングし、其れにより、更に、技術開発を加速化させた。非人道的な、研究で、アルダー国の科学技術や、軍事力を上回ろうとしている。

 「駄目だ。ガナーに、この国の行く末を委ねては、この国は亡びる・・・。」

 其の背後には、黙阿弥 飛がいるとも知らずに、織部は、この国の未来を考えて居た。

 ん???。何だか、身長が縮んだような、落下していくような・・・。

 !!!!???

 地面。

 血。

 血血血。地。

 床に転がっている・・・。首。ガラス越しに映る首。

 生首。

 ひぇ。

 此れは・・・。

 頭を掴まれる。にやりと、後で、黒い服に身を包んだ、仮面の男が、にやり、と笑った黒い仮面の男が、未だ意識のある、首から上を、片腕で、頭を握っている。

 「な・・・!!!。」

 ぎゅううううううううううううううううううう!!!!!!!。

 「スクイーズ。」

 頭が絞られる。

 まるで、果物のジュースをつくるように、林檎を片手で握り潰す様に。

 鏡には、飛び散った、血が目玉が・・・。

 

 「よし。遺体は、此のケースに入れてっと。」

 「しかし、やり過ぎだぞ。脳みそ迄無茶苦茶だ。此れじゃ、データが取れないぞ。」

 「すまん。な。つい、スクイーズし、なきゃ、と言う衝動に駆られてしまって、完全に息の根を止めないと、落ち着かねえんだ。」

 「わずかだが、断片は残ってる。遠国さん、だったら、何とか、復元してくれる、に違いない。良かったな。」

 「助かったでやんす。」

 「やんす。じゃねえよ。やんすじゃ。」

 困った、奴だ。

 高浜 次郎は、黙阿弥の、抜かりの無い殺しには、賛同していたが、遺体を残らないように、完全に処理する、其の癖に、疲れ切っていた、其れは、遺体は、実験の為に、持ち帰らなくては、成らないからである。

 「何だか、不安だぜええ。俺はよおお。未だ、殺し切れてねえよおおな気がするんだ。燃やして、焼いて、切り刻んで、灰にして、分解しないと、そいつは、死なないような、そんな気がするんだ。」

 「何言ってんだ。とっとと、帰るぞ。」

 

 階段を降りると、其処には、紅と、糸識が居た。

 「何やってんの二人とも。」

 黙阿弥は、話しかける。

 「組長は、やったか?。」

 「ああ、此奴の事?。」

 スーツケースの中から、脳みそと、粉々になった身体を取り出す。

 「でかしたぞ。さあ。此れで、御前に勝機は無くなったな。」

 「くくくくくく。」

 糸識は笑い出した。

 「くくくくくく。」

 「なんだ。何がおかしい。」

 「其れで、本当に、彼を殺せたと、お思いですか?。」

 ぐちゅあり、ぐにょり、ぐちょり。

 「なんだ。此の音は。」

 スーツケースが爆発した。そして、

 のちょり、ぶっさ、ぶっさぐちょり

 「お前は。」

 「はーい。私、織部 黒矢、八十七歳でーす。趣味は、再生でーす。直ぐに蘇りまーす。」

 バッツス!!!。

 「再生した処悪いな。」

 黙阿弥が、瞬で、織部の首を堕とす。そして、腕から、火を出す。彼の忍術だ、身体中の熱を一点に凝縮して、火を出すのだ。

 「あつちゅう!!!あっちゅう!!!!、あっちゅうっちゅう!!!。」

 織部の頭が燃える。

 じゅわ、じゅわ、じゅわ。

 「やったぞい。」

 高浜が手を上げてはしゃぐ。

 「まだだぞい。此奴は、此れでは死なないぞい。」

 黙阿弥は、ポケットから、小型核手榴弾を投げた。

 「放射能が危ないぞい。」

 其処に居た、織部を除いた全員が、其の場から駆け出し、四階へ、駆け出した。

 「やりやがったな、てめええ!!!!。」

 糸識は、魂消た様子、で、真っ青になっていた。まさか、核爆弾をあそこ迄小型化できる技術があるとは・・・。常識はずれなやつだ。織部は、死んだ。確実だ。あれを喰らえば、流石の、織部でも死んでしまっただろう。

 「不死身とは言え、あの、威力だ、放射線には、未だ完全に対応できる身体では無い、現在開発中だ。アレが完成するまで、放射線に免疫を持った、生き物は、未だ作れては居ない。」

 「その免疫機構が開発されれば、この世の終わりさ。世界が滅びても、其の免疫を持った人間だけが、生き残れるのだからね。魔のウイルスの時と全く同じじゃないか。限られた者だけが生き残れるんだ、箱舟の話とも、一緒だ。」

 紅は、目を細め、糸識を睨んだ。

 「おめえ、等。世界を滅ぼす気か!。」

 

 

 

 

  

 

  

 

 

 

 

 

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