計画と友人

 遺体は、彼の妹が保持している、その情報を得たのは、検察の竹山 廉一郎からの、情報による、廉一郎は、興ざめた様子で、その事の次第を話した。彼は、栄一郎とも、朱未とも、長い付き合いだった。そんな、友を二人も、立て続けに亡くしたのだ。

 其の、悲しみを考えると、あの消沈した表情の意味も分かった。が、今考えてみれば、あれ、二人が死んだ事で、次は自分が殺されるかも知らないという、恐怖からくる、驚愕の表情だったのかも知れない。

 渋沢 栄一郎の、妹は、彼とは打って変わって、自由な考え方の人間で、画家だった。それも結構有名な画家だった。

 画家で、夫は、架空の存在だった。何でも、苗字は前世の魔界人だった頃の名前だ、とか何とかで、史可乃子しかのこ 黒子という、ペンネームで活動していた。

 彼女の本名は、渋沢 珠湖たまこだ。けれど、彼女は自分の本名を嫌う癖があった。かっこ悪いらしい。神経質な女である。芸術家に多い気質である。 

 

 ごめんなさい。お兄さん。私、どうしても、耐えられなかったの。

 お兄様の、お兄様の、その憎らしいお顔を見ると、どうも、耐えられないの。だから、死んだお兄さんの肉体で、遊ぶの。ふふふ。

 黒子は、栄一郎の肉を、撫でた。そして、そっと、耳たぶを噛んだ。

 もう。お兄様は、私のもの・・・。ふふふ、ふふ。

 黒子の歪んだ表情を、其れを見て、吼える、飼い犬、デリーノ。

 お母さまを、殺したのは・・・。お兄様です。知っています。お兄様は、、、。人殺しだって事。知っているのは、私だけです、お父様を殺したのも、お兄様です。

 ふふふ。

 けれど、この、黒子。一度だって、お兄様を叱った事も、怒ったことだって、ありません、だって、お兄様が、お兄様が、大好きなんですもの。

 けれど、黒子。お兄様が、死んだと、聞いた時は、ホッとしてしまいましたの。それで、其の遺体を直ぐに、引き取りましたの。大好きだった、お兄様を、見て、インスピレーションが沸いて、来ましたの、こんな感覚は、初めてでしたわ。

 其れで、お兄様の、遺体をスケッチしている、最中に気が付きましたの。あの、お兄様が、あれ位の事で死にますか???。ってね。

 お兄様。あの、腕は、誰の腕で御座いますか。あの腕は、他の女の腕ですわよね。

 私、女の勘とでも、呼べばいいのでしょうか。確かに、お兄様、あの腕は、お兄様のではありませんわ。あのような、硝子の様に、透明で、脆そうで、そんな、繊細な、白い腕。

 何だか、気味が悪かったですわ。けれど、私の変態思考からすれば、美しい。美しいのですわ。ハイブリット。身体が、一つになる。合体する。そういった、愛の形を感じましたは、まるで赤子と、母親のような。そんな、奇妙な感覚を感じましたわ。

 あなたの、身体と、貴方でない、別の女の腕から。

 あなたは、腕を、貴方の体で、育てていたの?その栄養を、与えていたの。綺麗な腕だわ。けれど、貴方に全然似て居ない。腕の移植かしらねえ、けれど、此の腕だけは、生きているみたい。

 一体、何処に脳みそが、あるのかしらねえ。

 一体何処に。脳みそが・・・。

 此の腕に・・・。神経ニューロンが、偏桃体があるのかしらねえ。不思議な腕だわ。それ自体が意志を持って動くのですから、其れ以外の身体は、生命活動を終えているというのに。

 お兄様、一体、お兄様の身に何が起こったのです。

 この、黒子、其れが、気になって成りません。

 黒子は、とても、我儘なのですよ。お兄様の様に、立派な警察で、しっかりと、事件を取り締まるような柄ではありませんのよ。黒子は、興味があると、とことん調べるのです。其れが黒子で御座います。

 だから、お兄様、黒子が必ず、お兄様を殺した人間を料理して差し上げますわ。


 寂れた、人の気配の全くない、崖の淵に立つ、学校の跡地がある。其処に、史可乃子 黒子は、住んでいる。

 元は、私立学校のあった場所で、今は、廃校して、潰れた。其処を、黒子が、買い取ったのだ。

 黒子は、色々な、器具の残っていた、此の跡地を気にいった。工業やら、医療やら、服飾やら、デザインやら、其の学校には、色々残っていた。

 そういった、広々とした場所で、画家として、実験を重ねていた。

 体育館も、プールも或る。

 まるで、一人学校だ。黒板も、アナウンスもある。そんな場所で、過ごしている。調理室、理科室、物理部屋、化学部屋もある。そして、図書室もある。

 このような広い処に住んでいれば、掃除も大変だと、思われるかも知れない。

 黒子は、掃除係を雇っていた、学校で、好き勝手していいと言う条件と、少しの給料で、週に一、二回、掃除係と言う名目で、仕事をする人間を雇っていたのだ。 

 掃除係は、たったの五人だが、此れが意外に、ちゃんと、する。ちゃんとしないと、御金が出ないからだ。

 いい仕事だと、云って、その四人は、週に何度か、この屋敷にきて、掃除や、その他の雑用の手伝いをしてくれる。

 男二人に、女二人だ。

 其の、家には、入ってはならない部屋が存在する。何時も鍵が掛かっている、物理化学生物研究室だ。この部屋だけは、入れない。頑丈にロックされている。指紋認証やら、顏認証やら、暗証番号を答えないと、ドアが開かない仕組みの機械で、ロックされている。

 窓は、厳重に、閉められており、時折空気の入れ替えで、部屋中の小さな穴から空気を入れ替える。十台ある、換気扇を回すなど、している。

 更に、其の部屋の奥には、厳重な、管理体制にある。

 そんな。禁断の部屋がある。此処で、彼女は、画家として、作品を書いているらしかった。

 其の作品は、一つの作品で億するとか、で、そうして稼いだ、何百億の金を持て余している。

 そういう、訳で、此の学校跡地を買う事が出来たのである。

 

  

 九条羽子は、空を見上げる。八月十八日の晴れた日の朝である。

 此処は、史可乃子 黒子の邸宅だ。趣味の変わった画家だと思った。このような、辺境の場所に、たつ旧校舎に、住んでいるのだから、変わりもので或るのには、違いが、無かった。

 「ごめんくださーい。」

 羽子は、呼び出す。其の隣で、和香が、立って居る。

 中から、大学生位の男子が出てきた。

 「はて、何のようでしょう。」

 聞くところによると、黒子の、使いの者で、雇われているらしかった。

 「史可乃子 黒子さん、に話があってきまして・・・。」

 「ああ、彼女、なかなか、部屋から出て来てくれないよ。ずっと、何か研究か、絵を描くか、して、もう、ずっとだよ。」

 と、男は、いった。

 「中に入れませんでしょうか。」

 「研究中とか、描いている途中に、呼び出すと、首に成っちゃうんだよねー。自分で呼びに行くしか、ないですね。部屋は、六階の、科学物理生物研究室です。あすこの、扉の前で、呼び出してください。」

 「はい。分かりました・・・。」

 長い廊下と、階段を上り、六階まで昇る。不便だ、エレベータも、エスカレータも無いのである。

 「どうして、六階なんかに、住んでんのかね。一階の方が、楽なのに。」

 人の事情はわからない。

 此処か・・・。

 凄く厳重な、守りだ。部屋に入る事自体難しそうだ。防音室だろうか。外から中が一切見えないようになっている。

 「此れが、飛び出し、ベルね。。」

 「そうね。インターフォンよ。此処から話ができる。」

 ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。

 ギロリ。

 ギロリとした、目がモニターに映る。

 「何のようだい。」

 女は話す。

 「えと、栄一郎さん、の事で、捜査をしてまして、良ければ、詳しくお話できませんでしょうか。ご遺体につきましても、幾つか、確認する必要のある事がございまして。」

 女は、少し考え込んだ。

 「いいでしょう。」

 中に入ると、遺体の保管されている場所迄、案内された。

 栄一郎の遺体は、冷凍保存されていた。

 「まだ、細胞は、死んでませんよ。ふへへ。」

 黒子は、云った。

 「此れ、近くで見ていいですか。」

 「此れを付けな。てぶくろだよ。触ってもいい。」

 其の遺体は、とても綺麗だった。

 「其れで、あんた、此の遺体の、奇妙な点に気が付かないのかい。」

 奇妙な処・・・。はてな、一体奇妙な処とは、何処で御座いましょう。

 「ふーむ、分かりませぬなー。」

 しばらく観察していると、不可解な点に気が付いた。腕が、右手が、どうも、奇妙なのである。

 「右手が、移植されていますね。一体誰がしたのでしょう。」

 「其れだけじゃ、ないよ。ほれ、その腕に触ってみな。」

 羽子は、腕をつつく、と、其の腕が、蛇のように、にょろにょろと、動くのです。

 黒子は、にやり、と笑って言った。

 「こりゃ、事件ですぜ。探偵さん。」


 和香子さんは、云っていた。不可解な男の事を言っていた。黒い服を着た男。しかし、その男は、恐らく組織の使いぱしりだと、いう、結論に至ったのだった。

 その、黒服の名も知らない、下っ端の男が、栄一郎を殺害し、腕に、何か奇妙な手を移植したのか、それとも、この手は、何かの手違いで・・・。移植されてしまったのか。

 「黒子さんは、遺体の第一発見者ですよね?。」

 「そうですわねえ。栄一郎の様子が何だが気に成っちゃってねええ。栄一郎の携帯電話には、実は、云いにくいんだけれど、細工がしてありましてねえ、GPSで、直ぐに居場所が分かるようになっていますの、ふふふふふ。」

 変質的な、お兄ちゃんブラザーコンプレックスだった。

 「そりゃ、まあ、凄い。」

 「でしょーーーー!!!」

 愛の狂気を感じた。

 「しかし、其れでしたら、その時、栄一郎さんは、何処におられたんで?。」

 「汚いゴミ箱の中よ。捨てられていたみたいなのよ、此れが。」

 「捨てられていた?よく、分からないのですが、ごみ箱に、捨ててどうするのでしょうか。証拠は、隠滅できませんし・・・。山の奥だとか、海の底に沈めるだとかが、やはり、合理的では、ありませんか。」

 「恐らく、犯行した、男が素人だったのよ、人を殺した事なんて無かった素人よ。だから、きっと、焦ってた。焦って焦ってそして、へま、をやらかした、って処か、しらねえ。」

 黒子は、そう推理した。

 なるほど、彼女の推理は、濃厚だ。

 「その線は、濃厚だが、確証はない。何か引っかかる。此の手が引っ掛かるんだ。何か重大な事を見逃している気がするんだ。」

 顎に手を当てて、思考を巡らせる。

 そう言えば、検察の、竹山 廉一郎さんは、どうして、気が付かなかったんだろう。此の腕の変化に、そういえば、彼は、死んだような、恐怖に取りつかれたような、そんな、様子だった。あれは、一体何を意味していたのだろう。或るいは・・・。其処に、此の事件の手がかり《ひんと》があるのかもしれない。

 「この腕実は、取り外せるんです。と言うより、何か、意味もなく、突然、不可解に、動きだして、肩から抜け出してくるんです。そして、地面を這うようにして、何処かへ行こうとする事があるんですの。とっても、面白いのだけれど、此の腕に、逃げられるのも、癪だし。私は、絵を描くので忙しいから、その時は、紐で縛っているのだけれど、あなた、あの手が何処へ向かっているのか、腕に自由にさせてやって、追跡するのは、如何かしら。」

 と、黒子はその、奇妙な白い腕を撫でた。

 

 腕が、動きだし、肩から、外れ、地面を這う。実験室の奥の部屋のドアを開けて、実験室へと、向かっていく。

 「あ、また、動きだした。」

 黒子は、そう言って、其の腕の後を追った。

 「だけれど、残念だね、此処から出るには、私の指紋と暗証番号が必要なんだ。」

 手には、表情があった。感情があるように見えた。手は、その事を聞いて落胆したように見えた。黒く落胆したように見えた。

 言い忘れていたが、実験室の広さは、三十畳ほどの広さで、入り口は、北についている。南には、扉があり、其処から、さらに、十畳程の、標本置き場がある。其処に、栄一郎が冷凍保管されていた。

 西と、東には、二つ扉があるが、何があるのかは、未だ知らない。

 聞くところによると、西には、絵画部屋があり、東は、瞑想部屋があるそうだった。

 食事なんかは、此の実験室で、作って、実験室の机と、椅子に座って食べて居るらしかった。フライパンや、包丁、IHヒータが、ある。

 「で、どうする。この腕のあと、を追ってみるか?。」

 黒子は、腕を抱きかかえて、いる。

 「不安だ。この腕。ホラーの様に、先が分からない恐怖を、持っている。」

 「ほう、ホラーとなあ。」

 だって、腕が動く時点で気持ち悪いよ。

 羽子には、此の腕の、行く先が気になった、と言うのがあるが、其れと、竹本 廉一郎が、何か知っている、という確信から、彼と話をしなければと、考えた。

 「黒子さん。其の前に、竹本 廉一郎という、検察官に会いましたか?。」

 「ええ、お会いいたしましたよ。私が、栄一郎の遺体を発見した時折、彼が、現場に居ましてな。事件の捜査をしておりましたわ。其れで、栄一郎の遺体も或る程度、確認しておった。」

 「その、廉一郎が、何か知っているのでは、と、思うのです、理由はこうです。廉一郎は、或る事件、其れは、此処では申し上げられませんが、その事件で、機密情報を得た三人の中の一人だからです。栄一郎も、そして、朱未と言う、刑事も、其れで死にました。そう、その事件で、ある情報を得た人間は、やはり、殺されている。恐らく廉一郎氏は、此のことに気が付いている。そして、恐怖している。何か、秘密を知っているのだ。」

  黒子は、確かに、そうだ。と思った。確かに、あの、検察官には、少し、恐怖の色があった。そして、栄一郎の遺体を見るや、青ざめていた。はじめは其れが、友達の死による悲嘆からだと思っていたが・・・。何か裏がありそうだ。

 竹本とのビデオ通話をする事になった。

 通話を掛ける、五十インチ程の巨大なデスプレイが、其の実験室にある、其れに、パソコンを接続する。

 プルルルルルル。プルルルルルル。プルルルルルル・・・ 出るか・・・。

 ガチャ。

 「もしもし、竹本 廉一郎だ。」

 「ご無沙汰しております。九条 羽子です。」

 デスプレイに、白衣姿の、廉一郎が映る。

 「何のようだい?。」

 「そのですねえ。栄一郎の、遺体と、一年前の高校生自殺事件について、です。」

 ・・・。廉一郎は、ギクリ、とした。あの事件の事をどうして、羽子の奴が知っているんだ。あれは、あの真相を知っているのは、死んだ朱未と、栄一郎だけの筈だ。

 何処迄、羽子は知っているのか・・・。

 「ああ、その事件か、知っているよ。担当だったからねえ。」

 「あの、事件・・・。何か隠してますよね。死んだ二人も、あの事件に携わっていたと、聞いています。」

 なるほど、その程度しか、しらないのか。

 「あの、赤ん坊は、何ですか?。」

 「・・・。」

 だんまりだ。

 「まさか知らないとでも、云うのですか。あの赤ん坊は、白状しましたよ。あの事件で、明らかになった、強大な技術や、発見の事を。あの、赤ん坊が、自殺した高校生なのですか。?。」

 羽子の推理によれば、あの赤ん坊は、何らかの方法で、自分のデータを、別の身体、其れが、あの赤ん坊の体に、入れて、そして、捜査の手から逃れたのだ。自殺と見せかけた、トリック。何者か、から、殺される事を、分かって、命が狙われていたために・・・。

 「其れは、私には、分からん。只、朱未の奴が、奇妙な子供を、実験室で、拾った、その子供は、緑の液体の中で育っていた。赤ん坊が政府に実験されるのを、防ぐために、此のことは、あの赤ん坊を、最初に発見し、保護した、三人だけの、秘密だった。其れが、今は、私しか、この世には、もう・・・いない。」

 「私の推理では、ほぼ其れで間違いないと、思っていましたがね。しかし、貴方、他に何か隠している事が、あるんではないんですか。何か、重大な事を、」

 廉一郎は、恐怖した。

 「知らん。儂は、知らんぞ。分からんのじゃ。只間違いなく次に殺されるのは、儂じゃ。其れだけは、分かる。順序と言う奴だ。あんたも、これ以上、この事件には関わらん方がいいぞ。」

 廉一郎は、そう言って、電話を切った。

 確かに私は或る事柄を隠している、あの腕と、朱未、そして奇妙な赤ん坊に、見つけた、生体実験の実験ファイル。これ等を総合して考えれば、この事件の、もう一つの動きが見えてくる。おぞましい事だ。

 朱未、彼奴、確かに、おかしな、奴だった、悪魔に魂を売ったのだ、あの女。

 知っているのは、私だけだ。

 私しか、知らない事だ。栄一郎が死んだとすれば、この事実を知っているのは、私だけ。

 狙われている。

 殺される。

 だから、私は、恐ろしさに身体を振るわせていた。

 公安に入って、科学調査研究所の、研究員になった。其の後順調に出世し、専門技師に迄なった。其れが、あの事件を機に狂い始めた。秘密を知ってしまったがために、世界は歪んで見えるようになった。

 朱未は、ラべンダーの匂いのする女だった。銀の指輪を付けていた、彼奴とは、三年程度の付き合いしか無いが、何かと事件で縁があった。

 そして、親しくなった。事件には、大抵の場合栄一郎も居た、奴とは、もう、十年の付き合いだ。

 私達は、知らなかった。あの、事件が起こる迄は、世界の裏側を、その舞台裏を。

 政府は、税金を国民の為に使っていた。しかし、決して研究者の為には使わなかった。

 政府は、税金を不当に使っていた、表向きは、福利厚生に使っていたが、裏では、不正な取引が横行していた。そして、無駄な事に金を使い、本当に必要な、技術開発には、資金を回さなかった。

 結果、国は、衰退していっているかの、ように、思われている。し、事実だ。

 この国は、研究水準がだんだん、と、確実に落ちてきている、目先の利益に固執した、研究が増えたのだろう。その結果が、先進国で、ありながら、史畏莫国に、遅れをとりさらには、領土迄、奪われた惨状を見れば一目瞭然であった、しかし、未だに国民は、目覚めて居ない、偽りの、繁栄に、うんぞり帰り、少子化が進むのだ。

 此の現状を変えた。奇跡と、云えば、偶然と言えば、奇跡の子、あの高校生 三日月 ノヨラの隠れた研究であった。彼は、世界の先を行く研究結果を極秘に、していた。どうして、高校生が此処までの研究を成し遂げたのか、どの様にして、達成したのかは、未だに不明であるが、確かな、記録はあった。

 「あの、部屋で、見つけたんだ。あの、おぞましい、肉片が、人間に成っていく様を。」

 廉一郎は、恐怖した。

 わなわな、と震えた。

 何かある、直感で其れだけは、分かった。分かっていた。朱未の目は、輝いていた。そして、その緑色の液体の入ったカプセルの中から、其の赤ん坊を取り出して、頬擦りをした。

 「私が、育てるよ。」

 朱未は、そう言って、其の子を家に持ち帰った。あの後、朱未があの子をどのように育てたのかは分からない。アパート暮らしで、裕福でもない、彼女、年収は、六百万で、家賃に、月、二十万程、家族は、もう、誰もいない、死んで終ったらしい。

 寂しそうな、女だった、が、当人は、変わっていた。狂気があった。

 

 廉一郎は、思った。

 知っていた。

 きっと、朱未は・・・。そして、私は、朱未を・・・した奴に殺されるのだ。其れは、分かっていた。その事は、知っている。

 朱未を・・・。した奴は誰だ・・・。あの研究所には、一体誰が残っていたんだ。誰かが、あの研究所に居た、其処で、朱未と接触し、あの事件の計画が始まったと、しか、考えられない。

 それが、廉一郎の頭脳で、出来る最大限の、推理であった。

 廉一郎が、科学調査研究所で、或る事件の遺体を検視していた、最中、廉一郎は、背後に人の気配を感じた。

 振り返ると、誰も居なかった。

 背中に痛みを感じた。はじめは、何かで、打ったのだろうと、思った。

 地面に大量の血が流れていた。

 一体、誰の血なのだろう。

 気が付くとパタリと倒れていた。

 彼の背中には、刃物が刺さっていた。

 毒が塗られた刃物が。

 毒が回り、廉一郎は、倒れこむ。

 「さようなら。廉一郎君。」

 笑い声だ。啜り笑っている。

 犯人の姿を見なくては、一体誰が、こんな事を・・・。誰が、犯人は・・・。

 しかし、廉一郎は、息絶えた。

 

 電話が、切れた後、羽子、和香、黒子の三人は、当惑していた。

 「何か、怪しいよ。裏がありそうだにゃ。」

 和香は、訝しんだ。

 「確かにね、私達には、云えない秘密があるみたいだった。死ぬのが確実だ、といった風だったよ。」

 朱未が死に、栄一郎が死んだ、とすれば、次は、廉一郎が死ぬ、確かに其れは、明確な見立て事件であるが、果たして、あのような、惧れ方をするだろうか、何か重大な、おぞましい、事を知っていて、其れを畏れているかの様な、そんな反応だった。

 「実に不可解な事だけは、確かさ。一度、科学調査研究所に、行って、廉一郎に、会いに行こう。直接話を聞いた方がよさそうだ。」

 「・・・。そうかい。其れじゃ、廉一郎って奴から、話を聞いて、その後、この手の行く先を、見てやってくれ。」

 「はい。」

 胸騒ぎが、する。

 羽子は、胸騒ぎがしていた。栄一郎が死んだ時と、似た胸騒ぎであった。

 「急ごう、和香。」

 

 二人が、黒子の屋敷を出て、五時間、車で、行ったところに、日輪国の首都、神山がある、神山都である。

 神山都の町は、かつては、にぎやかだったが、皇族が殺害され、総理が殺害されて後、臨界体制で、あった。町の至る処に、軍の者が闊歩しており、、治安を守っている。爆破事件が此れまでに、十件は起こっているからだ。

 右翼の危険組織、ガナーの人間が、左翼の危険組織、ベーダ、と銃の撃ちあいをしているのが見える。其れを、見つけた、軍の人間が、止めに入るが、撃ち殺された。

 手榴弾を投げられ、家々が燃える。

 「此れが、神山なのか。これが。もう、此処まで、荒んでいたのか。」

 羽子は、酷くショックを受けた。

 暗躍しているのは、ガナーの組長 天の川 謙介と、ベーダの組長 織部 黒矢だ。

 国民の大半は、この街から、避難し、皇族は、この街から、別の場所へ皇居を移した。其の場所は、明らかに成っていない。暗殺を防ぐ為だという。

 国会の周辺や、公安の周辺は、特に警備が厳重で、最新も武器を装備した軍人が其処には、いた。

 「なんだか、危険だ。此処の近くで、誰かが殺し合っている。爆弾の音がうるさいにゃ。」

 「そうだな。だから、厭だったんだ。此処に来るのは・・・。只・・・。どうも、廉一郎の様子が気になる。」

 科学調査研究所へ向かう。

 道中に、危険に、遭遇しない事を祈り、向かう。

 「こんな、都会だってのに、人が全然いないぜ。異様な光景だなあ。」

 「確かにねえ。此れは、おかしいニャんね。」

 到着したは、いいが、果たして、中へ入れては、くれるだろうか。

 自動ドアの前には、軍人が五人程辺りを突っ立っていて、うろうろしている。

 「其処の二人組。一体何のようだね。避難命令が出ているだろう。」

 軍服を着た、男だ。呼び止められた。

 「私は、朱羽香志探偵所の、九条 羽子と言いまして、此方は、神林 和香と言います。其れで、科学技術研究所の、竹山 廉一郎氏に、事件の事について聞くべき事がございまして、此のような危険な状況の中来たのでございます。」

 男、は二人を交互に見回し、物色する。

 「何か、証明に成るものはないか。」

 「此れが、探偵事務所の許可証で、此れが保健所、そして、運転免許書です。」

 「ふむ。確かに、そのようだな。入ってよいぞ。くれぐれも、死なぬように、用心するのだぞ。この辺りは、非常に危険だからな。」

 まるで、この世の終わりの様に、思われます。

 受付の事務員に、要件を伝え、廉一郎の研究室に向かう。三階の、西階段を出て、右に、二、部屋の処に、廉一郎の実験室は或る。

 コン、コン。

 「廉一郎お。私だ。羽子だ。話の続きに来た。中に入れてくれ。」

 しかし、中からは、しばらく何の音もありませんでした。

 「おい。聞いているのか。」

 すると。

 「入れ。今開ける。」

 と、確かに、廉一郎は、そう言いました。

 「ああ。」

 ドアが開き二人は、部屋へ入ります。

 廉一郎は、遺体の検視をしているらしかった。親族からの許可の下りた遺体の解剖をしていた。

 「解剖中だったんでな。忙しんだ。」

 「うん。邪魔だったか?。」

 「いいや。もう、この遺体の解剖、検視は済んださ。其れで、何の話の続きだい。」

 「とぼけるな。途中で電話を切っただろ。御前は、何かを隠しているのでないんのか、と言う話だ。」

 「ああ、そんな話もありましたねえ。くだらない詮索ですよ。全く、私が、貴方に隠し事だなんて、ありませんよ。」

 羽子は、廉一郎の、其の冷静な落ち着き払った態度に、違和感を感じていた。此奴、何か、何時もの廉一郎と違う。

 「何か、雰囲気が変わったな。御前。」

 「ええそうでしょう。だって、そりゃ。こんな、紛争地帯に、いちゃ、おかしくもなる。」

 解剖していた、と言う、遺体を見てみる。どうも、奇妙で、奇怪な印象の遺体だ。

 「此れは、何の事件の遺体だ?。」

 「ちょっとした交通事故で死んだ、男の遺体でね。」

 「へええ。名前は?。」

 「神崎 載だよ。ニュースで、やってだろ。玉突きさ。」

 どうも、どうして、顏が潰されているのか、指紋が消されているのか。其れも、その傷が、どうも、最近付けられたものの様に思われた。

 「うーん。この遺体。何か、誰の遺体だか、分からなくなっているようだ。」

 「凄い、爆発事故でしたからねえ。」

 爆発に巻き込まれたとしても、このような、顏になるだろうか、どうして、指の指紋や、足の指紋の部分だけが、焼かれており、髪の毛は、燃え尽きているのだろうか。

 どうも、何か、怪しいのである。

 「DNA鑑定はしたのか。」

 「ええ、しましたよ、一致しました。」

 何か、嘘っぽいのだ。

 「其れで、御前、電話で話していた時は、酷く脅えていたようだが、もう、平気なのか。」

 「え?。そうでしたかな。そのような事もありましたな。ええ。はい。全く大丈夫ですよ、はい疲れて居ましたものですから、厭な夢でも見たんでしょうな。」

 どうも、嘘っぽい。

 「どんな、夢だ。」

 「殺される夢ですな。大きな鎌を持った、怪物に。」

 そんなはずは、ない。怖い夢程度の、脅え方では、無かった。現実に、何か恐ろしい者にでも、狙われているかのような、そんな脅え方だった。

 「残念だ。御前、廉一郎じゃないな。」

 「何を言っているんですか。私は、廉一郎ですよ。」

 「合言葉は?。」

 「・・・。」

 「忘れました。」

 「合言葉なんてないんだよ。御前、やはり、廉一郎じゃないな。」

 すると、其の男、窓から飛び出して、一目散に、逃げていきました。下には、車が用意してあり、其れに乗って全速力で、逃げていきます。

 「しまった・・・。」

 男を見失った。

 「追いますか?。」

 「駄目だ。追っても、見つからないよ。あの速度だ。もう、何処に行ったのかもわからない。今から三階まで、降りている間に、逃げられる。其れよりも、此の研究室に有る、物の中から、重要な資料が見つかるかも知れぬ。犯行現場だからな。恐らく、此の焼死体が、廉一郎なのだろう。遺体を偽造しているのだ。神崎 の死体も、あるかも知れぬ。」

 神崎の遺体を探す。

 冷凍庫があった。遺体が幾つか冷凍されている。

 この中から神崎の遺体を探すのは困難そうだ。奴の写真は確か、金髪に、一重の、唇の薄く、鼻の低い、身長百七十センチメートルの痩せた男だったな。

 探す。

 神崎らしき、遺体を見つけて、其れ等をDNA鑑定するのだ。

 そして、その二日後、案の定、神崎の遺体が、あの冷凍庫にあった遺体の中から見つかった。

 そして、あの解剖されていた焼死体が、竹山 廉一郎だと、言う事も判明した。

 研究室には、其れとは、別に置手紙が置いてあった。廉一郎は、己の死を悟っていたのだ。手紙は、今回の事件の犯人に悟られぬように、引き出しの中にしまってあった。

‘‘此れを呼んでいるのが、如何か、朱羽香志探偵所の人間で、ありますように。

 電話では、あえて、あのように切ったのです。そうする事で、完全に証拠を残さないようにする為です。もはや、電話は、インターネットは、安全なものでは無くなりました。全ての通信履歴は、残り、コンピュータにより監視されています。今から言う事を言えば、検挙され、貴達迄狙われる事となって終うでしょう、其の為に、此の手紙を残すのです。

 私は、朱未の遺体を見て居ました。

 その時に、朱未の遺体は、動き始めました。  

 朱未の遺体は、生きていたのです。理由は分かりません。

 顔面が、コロコロと転がりながら、移動するのです。千切れた腕が別々に動くのです。そして足、手までもが・・・。

 私は、その後、其の動く遺体の後を付けました。

 すると、其処には、おぞましい。おぞましい。クローン実験場がありました。工場のような場所で、其処は、無人島にありました。

 朱未が、何人も居ました。朱未のクローンらしいのですが・・・。其れ等が海外に売買されているらしいのです。此れが売れるらしく、世界中で売り買いされて居るのだとか、生体実験、臓器移植、様々な用途で、世界中の富豪が此の朱未のクローンを買います。朱未のクローンは男バージョンと女バージョンが或るらしく、其れ等が、製造されていました。

 そして、此の動く身体は、気色の悪い事に、見失ってしまいました。

 一体あれは、何のでしょうか、朱未なのでしょうか?。其れとも、朱未のクローンなのでしょうか。

 不可解な、事件でした。

 朱未は、恐らく自殺したのでしょう。あの発火事件は、人間爆弾の其れと同じ仕組みでしたし、手が突然千切れる現象や、千切れた体の一部が意志を持って動く奇妙な現象は未だに分かりませんが、此れは、朱未の意志だったのかも知れません。

 朱未は、あの赤ん坊に出会って後に、やはり、何かを知って終った。そして、実験に強力したのでしょう。

 黒鉄島です。

 其の島に行けば何かわかるかも知れません。

 私は、もう、駄目です。殺されるでしょう。はじめはガナーや、バーダの勢力による犯行だと思っていましたが、世界政府の要人や、反政府の連中、更には、其れ等の内部で、造られた、真の敵と思われる組織の存在と、政府や、国の役人を殺しまわって、市民の為に革命を起こそうとする、謎の組織の存在。

 私は、決されるのです。恐らく、其れは、あの、赤ん坊の存在が世に知れ渡ったからでしょう。

 あの、赤ん坊は、何か鍵を握っているのは、間違いないのです。

 栄一郎も、死にました。

 あいつは、何も知らない儘、死にました。

 そして、次は私なのです。

 どうか、この事件の真相を明らかにしくださいまし。

 手紙は、読んだ後、直ぐに燃やす事。

 竹山 廉一郎‘‘

 其の様な、置手紙であった。

 「此れは・・・。」

 「そういう事だったのかにゃ。」

 確かに、朱未の殺人事件は不可解な事が多かった。其の謎の一端が今、判明したのだ。そして、二つの組織についても、記録されていた。恐らく狙われていたのだろう。この様な、回りくどい方法で、しか、情報漏洩を防げないくらいに。

 廉一郎は、私達に、メッセージを残して、殺された。

 犯人は、その事に気が付いていないのだ。

 其の手紙を目撃したのちに、羽子と和香は、直ぐに、黒子のいる、屋敷に行った。

 此の事を知らせに行くので或る。

 

 「という事だ。」

 羽子は、事のあらましを述べる。

 黒子は、驚嘆の表情を示した。

 「まさか・・・。そのような実験が行われていたとは・・・。栄一郎はそのような大事件に巻き込まれていたのか!!!。」

 ショックを隠し切れない様子だった。

 黒子は、お気に入りの、熊さん人形を殴っていた。

 「どうしたんですか。」

 羽子が訪ねる。

 「いえいえ。お気になさらずに、感情が高ぶるとついね。其れで、腕は、其の黒鉄島とかいう島に向かっているんですわよね。」

 「そうです。恐らく、危険地帯でしょう、行けば死が待ち受けている事に違いありません。」

 「私は行きませんわよ。そりゃ、私は、画業で忙しいもの・・・。代わりに、行って来て頂戴ね。私も、最愛の兄が死なれてイライラしているのですからね。ウフフ。」

 「其れで、此の腕は、貴方たちに差し上げますわ。其れが何かの手がかりに成るかも知れませんし。」

 「凄く不気味ですが、ありがとうございます。助かりますわ。」

 「ありがとうにゃ。」

 美香子とも、協定を結んでいる仲だ、この情報は共有しておいた方が良かろうと、いう事で、美香子の屋敷に行く事になった。

 

 美香子の屋敷に行き、美香子に此の事を報告すると、美香子は、いい情報が、得られたわ。と、いった。

 

 私は、ガナーの組長。天の川 謙介だ、ガナーは、この国の主権を維持する為に、私が組織したのだ。

 日輪国は、目に見えない形で外国に支配されている。

 其れを、推進しているのが、バーダの勢力だ。

 あの勢力とは、近いうちに全面戦争になるだろう。其れにより、一般国民から犠牲者が出るかもしれぬ。兵器はもはや、世界を簡単に終わらせてしまう程の威力を持っているのだ。

 その様な脅威の中では、戦争など、という物は、そもそも、がありえないはずだった。

 今では、戦争は、暴力だけではなくなった。

 其処には、新技術のによる、戦争があった。

 情報による戦争が、医学による、脳の汚染が、外来生物による環境の侵略が、ウイルスによる、脅しが、核兵器による牽制が、特定の技術の独占が、戦争であった。

 国民を、権力者が支配しやすい世界になりつつあった。

 其れは、新技術の為であった。

 「私は、知っている。この国に未来はない。外国の企業や、外国の政府の言いなりに成っていては、此の国は・・・。税金は、研究開発に使い、国力を付けなくては、見えない形で、外国に、此の国は乗っ取られる。其れを推奨している、バーダの連中は頭がいかれている。外国は、史畏莫国は、バーダい裏で、多くの支援をしているらしい。此の儘では此の国は、史畏莫国に乗っ取られる。」

 決行の日時は、決まっている。

 首都戦争を行うのだ。

 此れで、バーダの勢力を黙らせるしか、方法はない。

 副組長の、山城 太一は、其の話を受けて、重い腰を上げた。

 「そうだの。潮時かもしれぬ。」

 「よもや、我慢ならぬわ。」

 戦闘部隊の隊長

 紅 色覇

 諜報部隊隊長

 高浜 次郎

 特別暗殺部隊長

 黙阿弥 飛

 研究部長

 遠国 零夜

 は、組長の演説を聞いていた。

 組長は、本気だ。

 本当に、戦争をやられるおつもりだ。

 國に反逆するおつもりだ。

 皇族殺しのバーダを、総理を暗殺したバーダを壊滅させるおつもりだ。

 其の覚悟の色は見て取れるのだ。

 総員は、理解した。

 「決行は、八月十五日 午後十二時半だ。場所は、バーダのアジトのある、北波府 丹崎市にあると、特定された、奴らのアジトだ。爆撃作戦を結構する。あすこに、新型の水素爆弾を投下する。」

 そんな事をすれば、周辺住民は只では済まない。

 其れに、そんな事をすれば・・・。もはや居場所はなくなる。

 「組長は、原爆は駄目ですぜ。絶対にダメですぜ。全てを、負にしますぜ。」

 科学研究班の、遠国は、進言する。

 「そうだ。分かっている。周辺住民を避難させる必要が或る。其れにあのあたりは、もう、人が住めなくなるだろうな。」

 「そうですぜ。原爆だけは、やめましょう。地球が持ちませんぜ。」

 「そうだの。やはり、空襲作戦に変更しよう。少し、頭に血が上っていたようだ。」

 「はいですぜ。」

 空から、爆弾で、奴らを叩き潰すしかないのだ。其れが、ルールだ。奴らも、流石に、原爆を使ってこないだろう。

 

 左翼の組長 織部黒矢は、右翼の動きに、勘づいていた。

 其の、諜報部隊隊長 遠山 加代率いる、スパイ忍者が、其の情報を得たのだ。

 「やはり奴ら・・・。儂らを潰す気か。」

 儂らとて、此の国を滅ぼうそうと、いう訳ではないのだ。只、此の国では、世界で、戦ってはいけない、外国の力を借りようというだけだ。其れを奴らは、売国者などと、糾弾し、此のように、滅ぼそうとしてくる。史畏莫国は私達を援助しているし、国土を彼等に売る事で、国は豊かに成っている、一体此れの何がいけないのだ。国民だけでは労働力が足りない為に、外国人を働かせるのだ、其れを、右翼の奴らは、外国人など、国に誘致するなと、攻撃してくる。売国と言ってい来る。

 わからん。

 実に分からんやつらだ。

 

 「爆撃来ます!!!。」

 戦闘部隊隊長 中川 洋子は、物見櫓の部隊員が、レーダで感知した、空襲報告を聞いていた。

 「聞いたか!!!。野郎ども。ガナーから、爆撃空襲の挨拶がくるぞ。撃ち落としの準備に入れ。ミサイル弾装填準備。」

 副組長の糸織 色波は、遂に始まったかと、感慨を覚えていた、今日が私の死に場所に、成るかも知れないからである。

 森の中に立つ、三千壺程度の、宮廷の様な、建物。隠れ家。巨大な岩かげの中に、ひっそりと、其の基地はあった。

 其処に、バーダは、組織されたのだ。バーダの本拠地で或る。

 バーダは、調べても出て来ない。

 そういった結社であったが恐らく、奴らの諜報部隊が優秀なのだろう、この場所をかぎつけたのだ、そして奇襲を仕掛けようとしたようだが、残念だったな、お前たちが奇襲を仕掛けてくる事は、此方側も十分承知していたのだから。

 空から、爆弾が降ってくる。

 其れを、十メートル程の砲台から、ミサイルで、撃ち落とす。

 激しい、爆撃の音が町中を恐怖へ引き釣り落とす、平和の時代の終焉を起こす。

 戦争を知る、老人の中には、あの戦争を思い出し、身震いし、泣き叫び、布団にくるまる者まで現れる。まるで、終わりが来たかのように。

 バーン!!。ドカーン!!。ドーン!!!。

 凄まじい爆風で、森の木が倒されていく。燃えていく。

 ガナーの戦闘員が、森から、基地を攻めに行く。

 上空から、は爆撃が落ち、下から戦車が、走り、大砲を撃っている。

 「ガスマスクを付けろーーー。」

 ガナーは、バーダの、アジトに、毒ガスを舞い散らす。

 バーナの罪なき、組員が、次から次に、爆撃に巻き込まれ、毒を吸い込み死んでいく、負傷者を、連れ込み治療する、医療班の人間は、其の様子に、絶句し、治療を必死にしている。

 「此れが、戦争。」

 戦争を知らない世代なのだ。

 彼等が、始めた戦争だ。

 始めての戦争に、狂気する者、悲しむ者、喜ぶ者、楽しむもの、いろんな危険な人物が、戦争を味わっている。

 天の川謙介は、思った、これほどの事をしなければ、成らない。此れは、世界の為なのだ。正義の為なのだ。と、自分を言い聞かせた。やった事に、悔いは、無かった。此れが、彼にとっての信念から、起こされた戦争なのだから。

 

 ある日の夜のニュース速報。

 北波府 丹波市の、森で、戦闘機による、爆撃攻撃。右翼勢力と左翼勢力の全面戦争か。政府の判断迫る。

 怖ろしいニュースである。

 「こんな、物騒な世の中になって、全く先人たちに顔向けできませんよ。」

 大物政治家はそのような事を言っている。

 「そうですね。戦争だけは、絶対にダメです。もう、戦争の時代は終わったのですから、あの戦争の反省を忘れては成りません。しかし、まさか、民間人の中の過激な人間同士で、戦闘機を使った戦争をやるとは、やはり、皇族殺人事件や、総理殺害も、彼等、彼女等が、起こしたものなのでしょうか。」

 番組のコメンテテーターが質問する。

 「そうかも、しれませんねえ。今は未だ、何とも言えませんが。国としては、軍隊を動員して、戦争を辞めさせなければならない状態も出てくるでしょう。」

 「そりゃ、大変だ。国民を巻き込まないように、祈るだけです。」

 今、北波府 丹波市きたなみふ たんばしには、危険警報が出ています。即座に、この街から逃げてください。

 繰り返します。

 報道されている。

 どのテレビ番組を付けても、此のことで持ち切りであるのだ。

 

 「大変な事になったなあー。」

 羽子は、其の頃、美香子の屋敷で、茶を飲んでいた。

 「そうだな。如何なんだ此れは、よお。この国はよおお。」

 美香子は、如何したものかと考えて居た。

 「内から、スパイを何人か、右翼にも、左翼にも送ってんだが、いい情報をリークできただろうか。死んでないといいけれど・・・。」

 

 

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