赤ん坊は語る

 契機は、単純だ。

 其れは、ふとした事が動機になった。

 実験中に起こった事だ。

 

 被告人は、無罪に処する。

 此れ迄、栄一郎は、爆破事件の犯人と疑われてきたが、あの、赤ん坊からの、証拠で、何とか、身の潔白を晴らす事が叶った。

 「危なかった。結果、あの、赤ん坊の言う通りに、成ったが、此れで、刑務所行きは、避けられそうだ。」

 まさか、あの赤ん坊の言っている事が、云わんとしている事が、私の推理と一致するのならば、飛んでもない事だ。

 栄一郎は、此の、事件の重大性質に気が付いていた。

 「隣の国じゃあ、もう、完全な監視社会だぜ。もはや、息の付ける場所もない。コンピュータに完全に管理されつつある、まるで、七十年代のハードボイルド作品のような、世界だぜ。バカもいたもんだ。」

 この国、日輪国にちりんこくは、海に囲まれた、小さな島国だ。隣には、巨大な大陸国家がある。史畏莫国しいなだ。

 史畏莫国は、近年急速に、国力を付けていた。情報産業、再生医学において、研究が進み、生命と、機械の一体化が、非倫理的に行われていた。

 その、極秘研究ファイルを持っているのは、限られた人間だけだ。朱羽和志研究所の、諜報部隊が、命懸で入手した情報しか、栄一郎は知りえては居なかった。

 国の情報は、シャットアウトされているのだ。

 ネット鎖国でもいおうか。

 なんであれ、史畏莫国と、対を成す、世界の、盟主である、巨大国家 アルダア自由平和移民国家は、奴らを許すはずは無い。

 どうであれ、この辺りの国際情勢が、此の、事件に関わっている事だけは明確だ。敵は誰なのか。

 狙われているのは、孰れも、特定の国とのパイプを持っている、疑いのある、売国者だ。

 そして、事件を知った者も、滅殺されて居るようだ。

 

 「お前、栄一郎、何か隠しているだろ。俺たちにも教えろよ。」

 羽子が、勘づいている。

 そうだ。私は、この事件の重大な箇所に気が付いた。

 其れは、あの部屋で、あの、液体に入っていた、あの赤ん坊を目撃した、三人しか、分からない事だ。竹本 廉一郎れんいちろうは、気づいているのだろうか。いいや、気付けまい。

 気づくのには、あの、赤ん坊が、喋れる事や、智識が並外れている事を知らなければ、此の解答を得る事は不可能だからだ。

 秘密を知っているのは、死んだとされている、朱音と、私だけだ。

 羽子は、私が、口を割らないのだと、たかをくくって、捜査を始めた。

 あの、少年の異常さには、羽子も、和香も、志郎もとっくに気が付いているだろう。何にせよ、あのような、爆弾装置、や、記憶消去薬、催眠ガスを発明していたのだから。

 

 七月 三十一日が過ぎた。真夏の日差しの暑さに、皮膚が焦げるようだ。気温は、三十五度を超えていた。真夏日だ。

 裁判が、あったのが、二時間前だ。今は、三時五十二分。

 裁判では、証言人として、岩村や、紙賀幸かみがさち、探偵団の人間迄もが、私の無実を信じ、訴えてくれた。そして、問題の、証拠を示すと、事態は一変し、見事無実を勝ち取ることが出来た。

 私を、嵌めたのは、誰だ?。其れは、分からない。只、あの赤ん坊は、持っていた、しかし、共犯者の素性も、どうして命をねらったのかさえ、分からない。

 奴の狙いは何だ。

 海外でも、同様の事件が起こっている。国家の重要人物が次々と、殺害されているのだ。

 史畏莫国の、独裁政党の、長を殺され、其の関係者も、次々と、葬られている。アルダーにしてもそうだ。更に、西のヨルーダ連合の方でも、同様の事件が起きている。イリマエル地方の様な、自由民主国家に対して、反発的な、抗戦的な勢力圏でさえ、こういった、一部の権力者が無惨に殺されている始末だ。

 「分かっている、此れは多人数による犯行だ。」

 しかし、尻尾が掴めない。

 敵は、何を狙って・・・。まさか。

 「敵は、世界を塗り替えようとしている。」

 其れは、分からなかった。死んだ人間を見てみると、どれも、重要な思想の持主であった。全てを無に帰そうというのだろうか。

 なんで、あれども、敵が敵だとは限らない。もしかすると、味方なのかも知れない。馬鹿正直な一般人、民間人にとっては・・・。考え過ぎか。

 近頃の物騒さと言えば、もう、戦争時の時のようだ。

 死なないように、注意しましょうだなんていってやがる。テレビニュースでも、呼びかけている。安全な世界が、今では、何時死ぬか分からない、危険な世相を反映した世の中になった、此れは、私が望んでいた事だが・・・。いざ、此の危険を目のあたりにすれば、平和だった世が懐かしい。

 世界戦争だなんて、バカな話迄、噂され始めた頃には、もはや、国は、国の意味を失っていた。

 世界中が国を失いつつあった。

 にもかかわらず、権力者は、確かに、其の財力と人脈で、・・・。まさか・・・。な、この仮説が正しければ、敵は・・・だ。・・・が、私達の敵で、味方こそが、此の殺人集団ではないのか・・・。

 どちらの正義が正しいか、など分かるものでは、ない。

 いずれにせよ、人殺しは、間違っている。

 

 あの、赤ん坊だ。

 見つけて終った。

 散歩中だった。

 羽子は、散歩をしていた。可乃子町を散歩していると、彼はいた。

 目が白目をむいていて奇妙だった。

 そして譫言の様に、何かを言いながら歩いている。

「核兵器の友達

 水素爆弾ちゃん、が落ちました。 

 原子爆弾の兄弟姉妹は、ネプツリウムと、ウラン、プルトン、ワイワイガヤガヤ、爆発音頭のメルトダウン、あそれ。」

 なんの歌でしょうか。

 聴いた事のない、歌に踊りです。

 「吾其れ。吾其れ。海に流れ出る、トリチウム。汚染!!!。ワイや、ワイやどっこいしょおおお!!!。」

 気味が悪くて見て居られませんでした。

 「核融合の希望の果てと、その闇、化石燃料の狂気、石油祭りの終焉、石炭の終わり、メタンハイドレードの夢、、、。希望の果て、希望の果て。エネルギー、エネルギー、限りなく続く、エネルギー。」

 曲調が変わりました。何処か、暗い曲調でした。感情の起伏が激しいのでしょうか。

 急に、歌うのをやめて、自殺でもしそうな雰囲気に成りました。

 「無限のエネルギー!!!!!。だあああああああああ。」

 と思うと、叫び始めます。躁病患者でしょうか。

 

 其の赤ん坊は、其処で倒れてしまいました。

 「大丈夫?。」

 話掛けます。

 「馬鹿め、空襲がくるぞ。其れから爆弾が降ってくるぞ。呑気にしていていいのか!!!!。」

 怒鳴りつけられました。

 怖い

 怖い

 まるで、赤ん坊とは思われない剣幕です。

 と、空から、雨が降り始めました。

 なんだ、雨か。

 「死の雨だ。」

 赤ん坊は、そう言って、傘を差しました。

 「濡れたら即死だぞ。」

 赤ん坊は、云うのです。其れも、真剣に。

 私は、つい、笑ってしまいました。

 「そんな、バカなあああ、ははははは。」

 赤ん坊は、身体が溶けて、無くなりそうだ。層やら、私は、核汚染物質だったらしい。とか、なんとか、と、訳の分からない事を、うわつきながら、意識を失いました。

 

 僕は、羽子の話を聞いて、遂に、あの、赤ん坊、彼迄もが、狂ってしまったかと、驚愕した、彼を抜きにしては、全く此れからの世界の在り方が変わってくるのだ。

 赤ん坊は、目を醒ますと、話始めた。この家は、羽子の家だ。家には、いつもの四人で集まっている。そして、赤ん坊が一人いる。

 「うーむ。何か、恐ろしい、夢でも見ていたような、そんな、気がするのだが・・・。まあ、よい。」

 流暢な、日輪語であった。

 「貴様ら、儂の正体が分かったか?。」

 赤ん坊。雨傘 あまがさ あいは、訊ねます。

 「貴方は、あの高校生ですよな。あの部屋で自殺していた・・・、高校生男子・・・。」

 あの、液体カプセルの中で、造られた、此の赤ん坊と、その異常なまでの知識を見ればすぐに分かった。

 「さあねえ。其れは内緒ですぞ。儂は、只の赤ん坊じゃ。軽井沢 朱未に拾われ、育てられたなあ。」

 「嘘だ。朱未は、実験した。自らの身体をも、実験に差し出した。彼女は気づいていたんだ。貴方の正体に。」

 「さっぱりだねえ。何を言っているのだか・・・。まあ、よい。貴様らには、真実の一端を、お話しようと思う。事は、あの高校生男子の自殺事件から、始まる。アレが、転換期でも呼べばよいだろう。其れ迄、世界は、量子コンピュータと、脳の結合を、核融合炉の夢の果てを、奇怪な、生命進化の果てを知らなかった。」

 「何を言っているのか、さっぱりわからない。」

 一同は困惑していた。一体何の事を言っているのか。

 「貴様らは、世界によって彼が消されたのを知っているか。彼、三日月 ノヨラは、殺された。あれは自殺などでは無かった。」

 「と言う事は、敵は・・・。」

 「敵など、この際どうでも、よい。ようは、何者かが、ノヨラの科学技術を狙って、ノヨラを暗殺したという事じゃ。その犯人は未だに逮捕されておらん。何処の組織が、国が、あれらの技術を独占しておるのかも、分からんのじゃ。近年の世界情勢の危ういのは、此の為じゃ。」

 

 未だ、二話目だ。其れなのに、もう、種明かしを行ってしまっていいのだろうか。推理小説を書く上で、非常に、苦悩したが、此処で此の事柄を記すのには、明確な意味が或る、其れは、この黒池 霊しか知りえない事だ。何故ならば、私は、クイーン問題で、いう所の、第三者、云わば、事件を見ていた、そして生き残った人間の一人に過ぎないのだから。

  

 羽子は、皧の告白を受け、理解し、納得した。そういう訳かと。

 栄一郎も納得した、他の二人も、すっかり、此の赤ん坊の、云う事を真実だと鵜呑みにしてしまった。

 其れが、悪い訳では無いのだが、人の言葉には、必ず偽りが混じるものであるが、どうも、彼の言葉には、嘘偽りがないように思われたのである。

 「其れで、結局の処、この事件の犯人は、誰なんだ?。」

 栄一郎は、皧を見る。小さいやつだ。太もも辺りまでしか、身長がない。

 「犯人?。そりゃ。其れが君たちの仕事じゃないか。犯人捜しは、警察と、探偵のお仕事でしょうが。」

 たしかにそうだ。

 其れに、朱未は、恐らく・・・。

 「その通りだな。犯人捜しは、私達の仕事だ、私達で、何とかする。」

 栄一郎は、事件の手掛かりを探しに、事件現場へ向かった。

  

 まずは、百円ショップ爆破事件が、起きた、杏間あんま市の百円ショップ爆破跡地を、訪れた。相当の爆発だったのだろう、建物は、完全に損壊し、其処は、焼け野原となっていた。

 この辺りの近辺では、有名な、店だったらしい。この事件で、三十名程の人間が死亡した。

 店長の、新谷 加助は、史畏莫国より、の考えを持っていおり、其の為に、自由日輪党の連中から、目の敵にされてきたらしい。危険な思想だと、考えられていたのだ。

 爆弾の破片が、保管されている、場所で、その爆弾の鑑定結果を見ると、其れは、C4爆弾のようなプラスチック爆弾であったが威力はその二倍はあった、其れを遠隔操作で、爆発するようにセットできるのだ。

 凡そ百の爆弾が設置されていたとされているが、果たして、どの様に、客にバレず、店員にバレず、監視カメラの目をかいくぐり、これ等の爆弾を設置する事ができたのであろうか。監視カメラは二十四時間稼働しているのに。

 

 東雲街の町長殺人事件についても、不可解だ。銃殺であったが、一体どのように、あのような護衛が付いている中で殺害される、場面があったのだろうか。あの町長は、恐らく史畏莫国の人間か、スパイに殺されたのだろう、何故って、彼は、生前から、史畏莫国のやり方に反対していたからだ。史畏莫国の、政府を軽んじた発言をしていたからだ。史畏莫国は、日輪国の領土を買収し、其処に、密かに軍事拠点、活動拠点をつくっている、そして、其れに反対した、東雲街の町長 名坂 三春は、殺害されたのだ。腕利きのスナイパーがいたのか。どうして、犯人を捕らえるとこが出来なかったのか。何でも、消えるように、犯人の跡が追えなくなったのだと、云っていた。

 

 マーマレード通りは、皇族と、別の国の王族が通る道で、其処を歩く儀式が此の日輪国では、或るのだが、其の、お披露目の最中に、急に、皇族の 稀胤皇女と、機器波皇太子が、口から泡を吐いて死んだのだ。

 これにより、日輪国の国民は、大きく憤り、怒り、犯人には、厳重な処罰が必要だ。国に対する反逆行為だと。云って、大きな、運動を生んだ。

 

 そして、続く、総理大臣、殺害事件だ。此れで、日輪国は、国民が総出で、犯人を探す様になった。そういった法律も出来た程だ。しかし、未だに犯人は見つかっていないのだ。

 

 そして、マレイン国の大王が、暗殺され、ご存じの通り、アルダー国、大統領候補の死亡と、史畏莫国 独裁政党長の、殺害、其の、関係者の殺害、不可解な死が、契機と成り、世界的な問題に派生した。ヨルーダ、イリマエルにしても、其の影響があった。次々と、各国の重要人物、中でも権力者が立て続けに、殺されているのだ。

 犯人の素性は、未だ分かっておらず、集団による、計画的なテロ行為、犯罪だと、国際政府は、そう、位置づけているようだが、実態はつかめていない。世界の信用が大きく揺らいでいるのだ。

 

 「次のニュースです。」

 テレビが何か報道している。

 「世界を今、揺るがせている、反世界政府組織の、リーダ格だという、性別不明の人間が、インターネットサイトにて、世界中の人々に、注意を呼びかけました。」

 仮面をつけた、ふざけた奴が、カメラには映っていた。

 ガスマスクの様な物を付けていた。目も、口も鼻も解らない。人相も解らない。完璧に姿を隠している。手には、手袋を、皮膚が見えないように、完全に、光を通さない布で、覆われている。

 「私は、組織のリーダだ。君たちは、近頃、物騒な殺人事件や、爆発事件による、テロ行為が多発しているのを知っているだろう。我々は、善良なる一般市民には危害は加えるつもりは、ない。此の世界を、裏で操ろうとしている、暗黒に対してのみ、鉄槌を与えているのだ。我々の後を追い、捜査を進める、警察諸君、やめて置け、返り討ちにされるだけだ。此れ迄、計千もの勇敢なる警官の命が無くなっている。我々、こそ、世界を救うものだ。」

 ふざけた、ガスマスクの、輩は、云い終えると、画面が消えた。

 「以上が、ネットで、公開された動画です。此れから、専門家の意見を交えて、議論していきます。」

 コマーシャルに切り替わった。

 テレビでは、誰かの悪戯だ。とか、最近こういった逆張りみたいなのが増えていて、とか、何とかと、専門家が言っていた、其れに、大して、番組のレギュラーや、アナウンサーが相槌を打ち答え、何か、発言する。

 本当に、悪戯なのだろうか。

 聞くところによれば、此のネットに投稿された動画。全く投稿元の素性が知れないようだ。強固な、コンピュータや、ネットの知識があるのだろう。

 羽子に電話を掛ける。

 「もしもし、羽子、今回のあの動画、率直に言ってどう思う?。」

 電話番号を見て、毅からだと、分かる。毅は、物理数学者だ。

 「あれは、本物だね。間違いない。本物か、其れに命令された誰かだ。」

 「どうして、そう思う?。」

 「そりゃ、あの、男の喋り方に嘘が無い事、其れから、テレビでは報道していないようだが・・・。」

 「ああ、知っている。あの動画ネットでは閲覧禁止になってんだろ。」

 おそらく、世界政府が、隠蔽しなくてはならない、情報が、流されていたのだろう。

 「あの、動画、をfullで、見られたのは、投稿されてから、たったの三十秒。閲覧数は、本の百件程度。しかし、直ぐに、消去され、別の動画が、投稿された。恐らく、政府のカモフラジュだ。編集しなおして、都合の悪い部分だけ切り取ってある。其れ以来、其れに関する動画が投稿されれば、すぐさま消去される始末だ。」

 「間違いなく、思想統制が行われているね。」

 しかし、あの組織が殺人や、爆破で、罪のない人々の命を奪っているのも事実だ。

 奴らは、味方なのか。

 「其れで、元の動画ってのを持っている人間は見つかったのか?。」

 毅は、其れが気になっていた。

 「いいや。一人もいない。そもそも、が拡散出来ないように、規制が掛かっている。もはや、ネット上にあるありとあらゆる、アプリケーションの中で、其の事件に関する原本を見つけられると、消される。勢いさ。」

 勿論、テレビには、圧力がかかっているために、何処の報道局も報道はしない。

 新聞も同様だ。

  世界中でたったの百人しか、閲覧していないのだ。

  まともに見ていた人など、どれだけいただろうか。

  そして、何をいっていたのだろうか。恐らく録画していたものなど、一人もいないだろう。

  其れ等の事件については、語ろうとするだけで、規制がかかるのだから。

 

 七月三十一日 午後四時 ヨルーダ地方の女の回想

 私は、秘密を知っている。知っているのは、あの動画を見ていた百人だけだ。しかし、リスクが余りにも多き過ぎる、あの動画の内容が、果たして出鱈目なのか、どうかは分からない。テレビでは、そういった炎上商法だ、と言っていたが、其の実は、真実なのかもしれない。

 私は、北ヨールダ地方に住む、女だ。髪の色が赤毛で、三つ編みの、目の色が、青い女だ。

 どうして、あのような、動画を見て終ったのかが、悔やまれてならない。私の中の正義の心が、此のことを打ち明けて終おうか、と葛藤を続けている。

 誰一人として、あのような事を、世間に広めようとするものはいないだろう。静かにしておけば、何も起こさなければ、死ぬことはない。狙われる事も、殺される事もないのだから。

 私は、弁護士で、あり、この、正義の心に従って、迷いを生じる。

 あのような、殺人を、許してよいのか。

 あのような、爆殺を、許してよいのか。

 法律の力はいずこへいったのか。

 圧倒的な暴力は、戦闘力は、紙に書かれた誓約なんぞ、簡単に壊してしまう物なのかと。しかし、此れは、確証の持てない事実なばかりでは無く、そもそも、は、呆けたヨタ話だ。真の犯人が見つかればきっと、世界は、元通り平和に戻る、そう、信じたい、世界政府が悪だなどと、そんな恐ろしい事は、考えるのも、鬱だった。

 

 「其れで、毅は、此れから如何すんだ、犯人捜しに参加するのか?。」

 「いいや。僕は、数学と物理の研究さえできればそれに越したことはないよ。」

 結局、動画のデータは得られなかった。

 よし。完璧だ。

 私は、政府に云われ、あのデータを消去した。

 一般国民に流通しないように・・・。

 政府は、私を消そうとしている。其れか、監禁している。

 監視されている。

 私の頭脳を使って、反政府の組織から、情報を引き出そうとしている。

 く・・・。

 今は、鳥籠の中だ。

 何とか、連絡を取れたはいいが、不信な言動があれば、速殺される。

 暗号を考えたが、全く、其れ等を、通信する手立ても無かった。

 特定の周波数を、文字に置き換え、暗号を送る。

 きっと、気が付かないだろう。

 そして、私は殺されるのだ。

 さようなら・・・。

 

 彼が行く方不明になったのは、其れから、二週間後の事だ。

 其れ迄の間、栄一郎は、事件について調べて居た。そして、何とか、尾行を続けていた。あの後、八月三日に起こった、商店街での不可解な死亡事故である。其れの犯人らしき怪しい、人を追っていた。黒いジャケットに、ニットを被った、マスクの男だ。

 尾行に成功したのは、張り込みの効果だった。

 次に殺害されるであろう、人物、時影 梓の後を追っていたのだ。案の上だった。彼女は、暴力組織の幹部で、ウランや、トリチウム、テクネチウム、などの放射性物質の密貿易を行い利益を得ていた。

 彼女に眼を付けたのは、其れだけが理由ではない。彼女は、アルダー国からのスパイの容疑にかけられていた。更には、史畏莫国の、情報を売っているらしかった。

 だから、だ。此の事件の裏には、この史畏莫国の影が或る事分かっていた。大抵、彼等の思想に反対した、権力者が居れば、殺されているのだ。

 組織は、史畏莫国を敵視しているらしかった。

 バーン!!!。

 彼女の歩いている、交差点で、トラックが急に爆発を起こす。

 その時、を見逃さなかった。

 あの怪しげな、男は、誰だ。何か、投げていたような・・・。

 「待てーーーー!!!!。」

 

 

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