残酷な探偵
無常アイ情
容疑者の奇怪な部屋
消えた、都市があった。かつては、其処は、栄えていた。どうして、消えたのか。其れは、未だ調査段階だ。
「明確だよ。彼奴が、殺したんだ。」
其の、男は、右手に銃を握って死んでいた。誰もが自殺だと、云った。
脳天がぶちまけられていた。
幼い頃から、殺人が好きだった。誰にも分らないように、悟られないように、完全犯罪を成し遂げる事ばかり、考えてきた。
「どうして、人を殺すと、いけないのか。殺される奴らが間抜けなのだ。」
幼い頃から、そう思っていた。
自衛のために、何時も、ズボンの裏に、ナイフを隠し持ち歩いていた。其れは、彼が、小学校に入学してからの日課であった。
親は、ごく普通のありふれた、一般人なのに、此の、男は、異常者だった。
人間の中には、生まれつき、彼の様な、異常者がいるのだ。
彼にしてみれば、命など、軽いものだといった。
死ぬなんて、よくある事だ。
交通事故が、この辺りで、あり。同じ学校の、同じクラスの、女子生徒が死んだらしい、軽トラックにはねられたのだという。
馬鹿な話だ。
轢かれた奴も悪いのだ。警戒心の無い、女だったのだろうな。と思った。殺した、運転手の男は、懲役二十年だといった。
其の、男の事などどうでもよかった。
学校では、其の、噂話で、持ち切りだった。めでたい頭をした奴らだ。その間に、勉強でもしたらどうなのだろうか。友達と青春を謳歌したらどうなのだろうか。スポーツをしているのならば、イメージトレーニングでもしてはどうなのだろうか。
お前たちは、幸運だっただけだ、何時、死ぬのかなど誰にも分らない。
聞くところに、よれば、あの女は、医者の娘だったらしい。成績も優秀で、将来は有望されて居た。と言ってもまだ、小学三年生だったのだが。その頃、私は小学一年生で、嫌いだった奴のポケットに、麻薬を入れて、逮捕させてやったのを覚えている。
あの、数学教師は、教員免許をはく奪されて、其の後、路頭に迷ったとか、言ってたな、ははは、いい気味だ。
こんな、僕の独白を聞いて、如何思った?。
道徳、倫理にかける、人間だと思ったか。
と言うより、僕は、一体全体誰に向かって、語り掛けているのだろう。そうだった、思い出した、僕は、小説家だ。人を楽しませるのが、僕の仕事だった。
床下に散らばるのは、男の、血肉だ。
其れを、見て、刑事は、鼻水を垂らした。
「ううううううんっむ。鼻水があああ。」
女刑事だ。此の刑事は、謎の症状に悩まされているようだ、人の遺体を見ると、如何やら鼻水が止まらなくなるらしい。目からは涙が流れている。鼻が痛いのだろう。
「お前、捜査中だぞ。こんな時に、又、鼻水か。」
男刑事は、女を見て、落胆する。
自殺だろうか、それにしても、よくも、高校生が、拳銃なんか手に入れられたものだな・・・。
男は、仰向けになって、倒れている。床下には、何やら、絵や、文字、何かの機械の設計図や、機械の部品が散らばっていた。
「へえ、此奴は、すげえや。」
検察は、目を見張った。
其処には、3dプリンターで作った、武器が、保管されている、物置の様な部屋があった。
「よく、此れだけのものを、学生がつくれたものだな・・・。」
更に、奥の部屋に入ると、其処には、放射性物質である、ウランや、麻薬、マスタードガス、何処から仕入れたのかは、分からないが、誰かの人間の臓器があった。
紅海月、プラナリアの様に、成るには、如何すればいいのか。
そんな、訳の分からない事が、壁に、大きな文字で書かれていた。
其の部屋には、紅海月、や、プラナリアが、ホルマリン漬けになって、保存されていた。
紹介が遅れたが、この捜査には、三人で来た。
女刑事の 軽井沢 朱未 君と、警部補の渋沢 栄一郎君、そして、検察官の、竹山 廉一郎だ。
廉一郎は、緑の培養液の、入った巨大なカプセルを見つけた。
「何でしょうか、此れは・・・。」
朱未が、怪訝に其れを指さす。
何か、真ん中に、液体の中に、細胞か。気色の悪い、肉片が入っている事だけは確かだ。
「あああああ!!!!。」
隣で、呻くような声がした。栄一郎だ。
「如何した?。」
「みっ見てください。此れです。此れ!!!。」
其の、肉片が、動いていくのだ。そして、足が生え始める、頭が出てくる。手が生えてくる。臍が出来てくる・・・。
「此奴は・・・。一体・・・。」
人間を、造っているのか???。
其れから、一年。
事件は未だに解決を見なかった。
あの部屋にあった、数々の発明品や、学問的な物の価値は、世界が認める事となり、あの、自殺したかと、思われる、少年は、驚異の子として、広く知られるようになった。
あの、胚は、成長し、一人の小さな、赤ん坊になった。
育て親は居ない。
が・・・・。
何か、明確な意思があるように、思われた。
其の、子には、知性があるように思われた。未だ、生まれて、一年だ。人間がお腹で成長し、出てくるには、妊娠期間が居る、其れを、一年だと仮定、すると、其れは、生まれて直ぐに知性を、持っているという事に成るので、奇怪な事実だった。
しかし、その子が、言葉を話す事は、無かった。
そして、その成長も、並の様に、思われた。
おかしいな。確かに、此の雰囲気は、間違いなく、大人の其れ、いや、それ以上の何かを感じるのだが・・・。
其の数日後、女刑事は、死んだ。変死体で、見つかった。
不思議な死に方だった。
手足が、ちぎられていた。
顔面は、歪んでいた。
胸がはぎとられていた。
彼女の、同僚の、大本 道子は、其の姿を見て、彼女だとは、分からなかったし、今では、警部となった渋沢 栄一郎でさえ、誰なのか、分からなかった。検察は、この遺体を解剖、解体したが、身元が掴めなかった。
唯一、彼女だと、決定打になったのは、防犯カメラがとらえていた映像だった。
女が、急に、燃えだしたのだ。そして、急に、手足が吹き飛び、胸が、溶けだしたのだ。
そして、女は死んだ。
「奇怪な事件だ。」
刑事は、其の女の遺体を、見ながら、検察官の竹山 廉一郎を目を移す。
「奇怪か。確かに奇怪だ。身体中が灼けている、更に、どうして手足が飛び、胸が溶け始めたのか。」
「糸の様な、物。透明な糸の様な物で、切断したのでは、ないのか?。」
刑事は、推測で言ってみた。
「うん。その線は、濃厚だが・・・。そんな、手足の切断できる糸が何処にある?。」
「うーん。わからん。監視カメラに映らずに、殺害する方法なんてあるのだろうか。しかも、どうして犯人は、わざわざ、監視カメラの付けられている場所を狙って、犯行に及んだのか。」
「単に、朱未の部屋に監視カメラがある事に気が付かなかっただけでは、無いのか。」
如何も、分からない。あの、子はどうなっただろうか。朱未が、あの気味の悪い部屋から、連れ出して、育てる事にしたとかいう、気色の悪い、子供だ。
彼女の事を捜査しよう。
聞き込み調査だ。
事件当日の 七月七日について、聞き込み、調査を行った。
聞く話によれば、その日、朱未さんは、午前九時に警察署に入り、午後五時迄働き、其の後、帰宅したという。
連版笠警察署の所長による証言で或る。髭の生えた、中年の男だ。
その後、の彼女の同行につきましては
六時頃に帰宅したとか、何とか
彼女が家に帰って来たのは、そうですね、六時過ぎだったかと、記憶しております、彼女の使っていた、アパートの隣に住む、中年の女性は、云います。不幸そうな、髪の乱れた女性でした。
事件の最中、物音だとか、何か、変わった事は、在りませんでしたか。と聞くと、其の女、いいえ、全く、何時も通りだったと、記憶していますが、すいません、全く力に成れそうにありませんわ。と返す。
最期に
「あ、そういえば、彼女の子供は、何処に行ったか知りませんか?」
其の女性は、はてな、と言った風に
「子供、なんて、あの人におりましたかな。うーん。独り暮らしなものとばかり思っていましたよ。」
うーん。如何したものか。此れと言った、情報を得られず、人知れず、公園のベンチにでも座って、ホットコーヒなんぞを飲もう、とその近くの、車坂公園に立ち寄る。其処で、男、あの、子供にあう。ブランコに座って揺ら揺ら、幽霊のように、其の子供、揺れている。
「如何したの。僕・・・。」
言葉は、分かるだろうか。恐らく未だ、一歳だ。
何か、情報は得られないかと言う、想いもあったし、其れより、この子が、どうして、こんな公園に居るのか、死んだ、朱未さんの事を知っているのか、如何も、気味が悪かった。
其の、子供、は、栄一郎を見ると、笑った。どうも、気色の悪い、子供らしくない笑い方だった。
もぞもぞ、と何かを言っている。聞こえづらいから、彼の口元に耳を近づけると。
「きめえんだよ。死ねや。」
んっ。聴き間違いかな。
其の子を見ると、栄一郎の事を指さして、驚愕の表情を浮かべていた。一体どうしたというのだろうか。
気が付かなかった。手には、拳銃が握られていた。ポケットには、リモコンが、入っていた。
ん。何だこれ。
公園に来た、人々が、後指を指していた。大人が、一歳くらいの子供相手に拳銃を向けているのだ。全く身に覚えがない。しかし、如何した訳か握っていた。
警察が来た。私自身も警察なのだが、誰かが通報したのだろう。ついてない。
身元を調べられている時、恐ろしい事にジャンバーの中から、危険な薬品が見つかったり、ポケットから、何かの装置のリモコンが見つかったり、した。身に覚えが無いため、彼は、知りません、どうしてこんなものが・・・。きっと誰かが、入れたのでしょう。
此れでも、警部だ。立場は上で或る。
しかし、そのリモコンは、恐ろしいものだった。爆弾のリモコンだった。リモコンのボタンを押すと、菓子波区の住宅街に設置されていたという、爆弾が爆発し、人が十人死んだ。
其れにより、栄一郎は逮捕された。
一体、誰がこんな事を。私に罪を擦り付けて楽しいか。
苛立ちのあまり、涙も出なかった。
刑務所にだけは、入れない。栄一郎は、弁護士を雇って、何とか、身の潔白を証明しようとしたが、証拠がなかった。確かに、所持していたのは事実なのだ、誰かに、勝手に、持たされていたとしても、そして、其れによって、十人の人が死んだ。器物破損をした。建物を壊した。
っく。一体、何時だ。
思考を巡らせる。
あの時、あの気色悪い子供に銃を向けた辺りからおかしくなった。其れに、どうして、銃を握っていたんだ?。
其処がどうしてもわからない。
部下の岩村 健刑事や、先輩の紙賀幸 峰警部が様子を見に来た。
「私、達は、濡れぎぬだと、分かっている、きっと何者かの、嫌がらせだ。」
「人を殺して、その罪を他人に擦り付けた奴がいるよ。」
二人は、私を庇ってくれた。いい、仲間を持ったと思った。
しかし、打開策は、見当たらなかった。弁護士も、アリバイ探しに、苦戦していた。
そんな、時、あの子供の姿が、浮かんだ。
あの子供、生きて行けているだろうか。住む家は、朱未の家しかないはずなのだ。彼が朱未に育てられている事を知っているのは、あの時、あの部屋を最初に捜査した、三人だけだった。
そういえば、朱未は、意味の分からない思想の持主だった。急に彼女との、或る話が思い起こされた。彼女がどうして、警官になったのかだ、彼女は、云った、警察は、正義という名の暴力を振るう事が、法律により正当化された職業だからだといった。彼女によると、警察は、暴力を正当化した組織ならしい。
其れだったら、軍隊に入ればよいのに、と言うと、彼女は言った。
今の時代じゃ、軍隊は、力を持たない。戦争をしない事が、ルールに成っているからねえ。其れに、警察の方がありがたがられてる、だからこそ、警察は、多少の暴力が許される、国民に対して、軍隊は、許されない。
だか、なんだか、と言って、いたのを思い出した。変わった女だったが、根はいい奴だった。
捜査をして、犯人の素性や、目的を考える思考ゲームが好きらしく、もともと、こういった、殺人や犯罪行為が好きだったらしい。僕は、推理小説家にでもなれるのではないかと、思ったほどに、彼女の、事件に対する、柔軟さ、や発想は、面白かった。
そんな、彼女があっさりと、殺された。
原因不明の発火と、両手両足の切断・・・。
朱未が、あの子を引き取ったのは、あの子が実験台送りにされるのを、恐れたからだ、あの子には、戸籍も無ければ、何もない。学校は如何するのだろうか。
あの子の、事が、気に掛かった。何かを知っているような気がしたのだ。
考えた。探偵事務所で、私立探偵ごっこをしていた、小学生時代からの、同級生だった。朱未が、殺されたのだ。
朱未の、拾った子供。あの子供の事が・・・。頭にこびりついて離れない。あの子は一体だれ?。
九条 羽子は、探偵だ。探偵を目指し始めたのは、小学生の頃からだった。
其の時からの、仲間に、奥村 和香と、神崎 志郎が居る。朱未は、警官になった。
羽子は、朱未の死を受け、すぐさま、捜査を開始した。一体彼女の、身に何があったのか・・・。
調べて居る、中で、分かってって来た事は、七月七日の、死亡事故の、翌日、彼女の同僚の、警部である、渋沢 栄一郎の、謎めいた、子供に対する脅迫事件と、爆弾爆破事件だった。ネットニュース、テレビで、も散々騒がれていた事件だ。
「其れにしても、あの警部に限って、あのような、爆破事件を起こすとは、到底考えられない。」
神崎は、不可解そうに、怪訝に、朱未の見ている、事件ファイルを映してある、パソコンのデイスプレイを見る。
「そうだにゃあ。あの刑事は、確かに、そんな、他人に迷惑の掛かるような犯罪をするような人じゃあないにゃ。」
奥村 和香は、何時頃だったからかは、分からないが、語尾に、にゃ、と付ける事に御執心のようで、この調子だ。
「そうだ。その通りだ。栄一郎警部の事については、私達も、一定の交流が或るからな・・・。其の様子を見ていると、到底、彼は、あのような、事をしでかす、人間だとは・・・、思えない。」
羽子は、渋い色を示した。
あの、警部とは、様々な、事件で、協力してきた。探偵事務所に対して、捜査に参加させてもらえるのは、ひとえに、彼からの評価が高い為でもあった。
「ふーむ。如何も臭い。あの警部と、朱未は、仲が良かった、其れに部署も同じだ。何かの事件に巻き込まれたのだろうか。」
羽子は、首をかしげる。
「一概には、云えないがな。そう考えるのが、妥当だろうな。」
其の後の話で、此れから、七月九日 午前十時頃、栄一郎に、会って話を聞きに行くことになった。
栄一郎は、公園のベンチで、頭を抱えていた。そんな時、知り合いの、探偵から、連絡が掛かった。
此れから、事件についての話を聞かせてくれとの事らしい。
朱羽香志探偵事務所の連中が来るらしい。喧しい奴らだ。正直、そんな処では無かったが、彼女達と、彼等には、借りがあった、此れ迄、数多くの難事件を、解決に、導いたのは、紛れもなく、あの探偵事務所の九条 羽子に違いなかった。
「よう。栄一郎、災難だったなあ。」
羽子は、相変わらず、人を馬鹿にしたような、見下したような、自分以外の人間は、下で或るかの様な、そんな、何もかもを、抱擁したような、目で、此方を見た。
「その様子じゃあ、濡れ衣でも、掛けられちまったあ、ようだなあ。がハハハハハ。」
豪快に笑う奴だ。何が面白いのか、分からない。
「そうだよ。私は、何もしてない。気が付いたら、拳銃を握っていたんだ。其れで、気が付けば、ポケットにリモコンがあった、不思議に思ってボタンを押してみれば、あの、事件の通りさ、テレビでも、新聞でもネットニュースでも騒がれてんだろ。」
ふーむ。和香は、柱に身を隠しながら、伏し目がちに、栄一郎の方を見ている。
その、後には、神崎の奴が、仏頂面で、突っ立っている。
「ふーん。僕が、推理してあげるよ。困っているんだろう。其れで、其の時、其処に誰かいたのかい?。」
「ああ、いた。だがあれは、未だ一歳の、赤ん坊だ。」
「ああ・・・。あの奇妙な、子か。確か、朱未が捨てられていたから拾って来たとか言っていた・・・。」
「そうだ。そして・・・。気が付いた時には、彼に向けて、拳銃を向けていた。その様子を、誰かに見られて通報された。その時、公園は、午後四時くらいで、学校帰りの、生徒だとか、子供連れの大人とかでにぎわっていたな。そんな、時だった。」
「へええ。なるほどねえ。朱未の奴が、死んだから、落ち込んで、公園で、ボーとしてたんだろうなあ。」
図星、だった。此奴は、如何やら、他人の心が読めるらしい。冗談だが。
「ふーん。其の子供が、怪しいねえ。どうも、この事件は、あの子が、鍵を握っているような気がしてならないんだよ。そう思わないかいかい?。和香?」
「にゃ!。そうだにゃ。あの、子供は、おかしいにゃ。普通じゃないにゃ。一歳の子供が、親なしで生きて行けるはずがないにゃ。」
「私も、そう思います。」
と、神崎が、同意する。
屈強な、男だ。身長は、百八十センチは、或る。黒髪で、髪の短い男だ、目は、釣り目だが、優しい目をしている、口をㇸの字に曲げて、何時もぶっきらぼうにしている。
「じゃ、此処については、四人全員で、一致してるって訳だ。しかし、彼が犯人と、決めつけるのには、証拠が足りない。」
羽子は、考え込む。こういった時、彼女は、思考の世界に入り込んで、出て来ない。
んーーーー。やはり、其の子が、ばれないように、ポケットに、リモコンを入れ、片手に拳銃を持たせたとしか、考えられないな・・・。しかし、其の子は、一歳児で、身長は、未だ、七十センチ程度・・・。そんな子が、大人の手に銃を握らせられるのか???。また、ポケットにリモコンなど入れられるのか。そもそも、がそのような知性が、一歳児の子供に果たしてあるのか・・・。謎は深まるばかりだ。
ブランコ・・・。
栄一郎の身長は、百六十センチ。仮に、ブランコに座っている、其の子にしゃがんで、話しかけていたとすればどうだろう・・・。
羽子は、目を開けて言う。
「今の段階じゃ、恐らく、其の子がブランコに座っているか、ベンチに座っている時に、栄一郎は、しゃがんで目線を合わせて話始めた、其の最中に、犯行に至ったとしか、推理できないな。」
「流石、は、名探偵だ。そうだ。確かに、あの時、私は、ブランコに揺れている、彼にしゃがみこんで話掛けていた。何だか、あの子の事が気になったんだ。如何した訳か、此の公園に居てね。」
「もしかすると、其の子は、他人の視線を誘導して、操作する、ミスデレクションの達人なのかも知れないな。」
「まっさか。一歳だぞ。」
「わからん。突然変異かもしれん」
とある、男の供述。
私は、あの事件の犯人です。
あの時、私は、脅されて居ました。拉致監禁が始まったのは、今から、丁度、七日前の七月一日。
其の人は、私に爆弾を取り付けました、そして、云う事を聞かなかったら爆破すると言いました。どの道逃げ道など無いのです。
警察に連絡するような、動きが有れば、間違いなく、首につけられた此の爆弾が爆発する事でしょう。連絡手段はそもそもありませんでした。
そして、その日がやってきました。小型カメラを、取り付けられており、不穏な事を少しでもすれば、爆弾が爆発し、殺されるのです。
私は、恐怖しました。
どうして、私が選ばれたのか。
其れが、私には、分かりませんでした。
あの、男が、飲んでいるコーヒに、薬を入れました。何でも、記憶を一時的に消去する薬で、M857薬と言う、新薬だそうです。
過去に辛い事のあった記憶から逃れられない、患者を救う為に、造るのが目的だったらしいです。こんな薬、今の世の中には出回っていません。一体何者なのでしょうか。
私は、其れを彼の、渋沢 栄一郎の目を盗んで、入れました。
すると、栄一郎は、倒れ込みました。
後ろに、其の、私を脅迫している、男が居ました。
「よくやった。」
「はい。」
私は、彼のポケットの中に爆弾装置のリモコンを入れました。
「うん。それじゃ、此奴が起きた時に、思考を鈍らせる催眠ガスを出すように・・・・。」
「はい。」
そして、栄一郎が目を醒ましました。
ブランコの方に居る、赤ん坊?。の処迄いって話掛けます。
何をしているのでしょうか。私の目には、その赤ん坊は、異様に思われました。
昨晩の、軽井沢 朱未の殺人と、何か、関連があるのでしょうか?。
脅迫者の言っていたように、催眠ガスを、栄一郎に嗅がせる様に、後の木影から、出します。透明なガスです。
其れが、栄一郎の鼻に口に入り、全身を巡っています。
栄一郎は気が付いていないみたいでしたが、後から、回り込み、拳銃を手に持たせ、云われた通り、其の場から立ち去りました。指紋や、証拠残らないように、手袋をし、髪の毛が、散らばらないように、帽子を被っていました。
興味深い、叙述でした。
警察は、此の男を、狂人者の妄言だと、相手には、しませんでした。
しかし、朱羽香志探偵事務所の人間たちは、興味深そうに私の叙述を聞いていました。
「聞いた事のない薬だな。」
羽子は、其の薬の名前をメモした。
「うん、其れで、其のガスは何だったか、分かるかい?。」
「分かりません。C361だとか、なんだとか・・・。んー思い出せません。」
「いずれにせよ、君の証言が正しいとすれば、犯人は、相当な手練れ、其れも、最先端技術を持っているとなる。厄介な相手だ。」
渋沢 栄一郎は、其の女の方を見た。此の女にまんまと、薬を飲まされ、催眠ガスで、思考を鈍らされ、リモコンを握らされていたというのか、バカバカしい。
「それで、君を脅迫した男は、どんな、体格をしていた。」
「身長百七十センチ程の、黒い服に、黒い帽子、黒いマスク、黒いサングラスを付けた男でした。」
「ほう。」
「けれど、分かりません。別行動をとっている時は、服装などは、変えていたのかもしれません。街中で、あのような黒づくめは、目立ちますから。」
「ふんふん。」
堂本 春さん。二十三歳。社会人一年目。大学を卒業し、就職をし、働き始めたばかりだという。
しかし、此れで、あの子が、犯人の線は、無くなった。
「しかし、あの子、赤ん坊は、奇妙でした。」
春奈は、そう言って、その時の事を思い返す。
「赤ん坊が、どうして、あのように、平然としていられあたのでしょう・・・。」
変だった。
「そりゃ、あれは・・・。」
と、栄一郎は、言いかけて、口を濁した。
此の事は、三人だけの秘密だ。あの子が・・・。人工的に創られた、人間だ、などと言う事は、・・・。知られれば、実験に使われるだろう。
「分からない。奇妙だ。」
其処にいた、四人は彼の首を見た。
「此の首に、爆弾が?。」
「はい。」
凄い技術だ。そんな爆弾は、そんな小型爆弾がつくれる技術が此の、世の何処にあるのだろうか。
「どのようにして、逃れてきたんです?。」
「其れが・・・。脅迫者は、間抜けをしたのです。首の爆弾を外す、鍵を置いて、何処かに出かけました、その内に、鍵で首の爆弾を取り、逃げました。警察にねえ。監視カメラも其の首についていましたから・・・。」
其の、逃げている間に、捕まれば、即死では無いのか。と思った。
「よく、思い切りましたねえ。」
「これ以上、犯罪に加担するのが、怖かったっていうのと、何だが、大丈夫な気がしたのです。今日は、誰にも見張られていないような、そん感じが、あったのです。」
どうやら、嘘はないらしい。
百円ショップ爆破事件。
七月九日。
東雲街 町長殺害事件。
七月九日 午後三時。
マーマレード通りの、皇族殺人事件。
七月十日 午前十時過ぎ。
内閣総理大臣殺害。
七月十一日 午後二時 三分
マレイン大王 殺害
・・・。
「近頃は、物騒だなあ。」
栄一郎は、近頃の物騒な犯人不明の国家反逆レベルの犯罪が連日しておきている。
不可解だ。
あの、朱羽香志探偵団が、調べて居るらしい、国家の特殊警察部隊の人間でさえ、事件の真相には辿り着けていないという。
羽子からの情報だ。
「なあにを、しておるんだ。はやく犯人を捕まえんか。」
国務大臣 安藤 喜朗は、焦る。
此の儘では、此の儘では、世界の秩序が崩れかねない。
どうにかしなければ、国民は脅えている。
未曽有の出来事だ、此れ迄は、犯人を直ぐに裁けた。犯罪者を捕まえられた。其れが、国の象徴なのだ。国家への反逆者がいる。其れを早く、捕まえなければならない。
そうしなければ・・・。
総理は、言っておられた。
国家間である条約が結ばれたと、云っていた。
あれは、何の事だったのか、此の儂にも、打ち明けては呉れなかった。
事件の真相を知るものはおらんのか。
あの、一年前の事件。
自殺した、高校生の部屋には、此れから何百年も先の、技術が詰まっていた。
あれで、国際情勢が、がらりと変わった。
あの事件が、その他の、国家反逆レベルの犯罪事件の多発に繋がっているのか・・・。
其れは、私には、測りかねるが、私の命も危ういかも知れぬ。犯人は、あの高校生の関係者を狙って殺している様に思われる。この私も例外ではない。
念の為にボデーガードを付けているし、十分に警戒しているつもりだが・・・。
「んっ。ぐはっ。誰だ貴様。」
背中から、ナイフで、刺された。
やはり、か、不穏な動きは察知していた。
内部に迄、反乱因子が、現れ始めているらしい。
官僚内部でも、一部の者は・・・。
儂は、死ねん。この事実を、残さなくては・・・。
「何してるんですかあ?。」
男は、私の腕を踏みつける。
「駄目じゃないですかあ。はやく、死んだ方が楽ですよおお。証拠を残されると厄介だ。」
「ふふふ。」
「何がおかしい。」
「お前の言動は、ネットに流れている。ふふふふふ。声を変声機で変えているのが、残念だが。此れで、世界に内部闘争が行われている事が、明るみになる。ふふふふ。此の、安藤 喜朗只では、死なんぞ。」
バン!!!
「死んだか・・・。っち。てこづらせやがって。此の此の・・・。」
死体を蹴りつける。
こんな、事をしている場合では、無い。
証拠を隠滅しなくては・・・。
奴が上げた音声動画を消して、奴の遺体を処理する。死亡推定時間を分からなくする為に、遺体を冷やし、手足をバラバラにしておく、更に、顏を潰し、指の指紋を焼いて潰す。
コンコン!。
誰かが、部屋に入ろうとしている。
「山田 次郎です。お話があって、参りました。」
「ああ、次郎君、ちょっと、今は、離せない用事があって、安藤大臣は、篠村町の軍事施設にお出かけになったよ。今さっきだ。」
「ええ、そうですか。」
変声期を使って、アリバイをつくる。
遺体を山に持っていき、埋める。
「っち、面倒臭い作業だぜ。」
穴に入った、遺体の上から硫酸を掛けて、骨を溶かしておいた。
篠村街の山の奥に、遺体を埋めておいた、其処に来るまでの経路、は、安藤大臣に変装し、安藤大臣の車を使って移動した。
念の為、安藤大臣の指紋を取っておいて、鍵やドア、ハンドルにつけておいた。
車を乗り捨て、山のトイレで、変装を解き、予め用意、しておいた別の車で逃亡する。
このような、田舎の山の奥では、何日か、車を止めっぱなしにしても、誰も気が付かない。
ナンバープレートも外してある。
外してあった、ナンバープレートを張り直し、集合場所に急ぐ。
安藤大臣と、其の側近の行く方不明を受け、国会や、国の大臣、国家政治家、裁判官、は、警戒した。
其の後次々と、彼らは、殺害されていった。
計画的な、犯行なのは言うまでも無かった。
国家転覆を企てている、何者かが、いる、そんなニュースが、朝から晩まで流れているのだ。
犯人を見つけ次第、通報を。
世界中が、犯人捜しをしていた、にも関わらず、未だにその素性は明らかにはならなかった。
そんな中、着着ろ、渋沢 栄一郎の、裁判を近づいていた。明確な証拠の一つも見つけられない儘。
羽子は、云った。この問題は、もはや、君だけの問題ではないのかも知れない。此れは、世界規模で、大事件に成る予感がすると。
羽子は、気になる事が或ると、捜査に出かけた切り、もう、一週間は、会っていない。
裁判の日付は、七月三十一日、あと二週間だ。
其れから、一週間、此れといった情報を使えない儘、証拠探しに、苦心していた。
あの事件を知ってから、私は、不可解な事に気が付いていた。
まず第一に、犯行には、人手が必要だという事は明確で、恐らく十人程度の協力者がいるであろうと、見た。
更に。あの子供が、あらゆる事件場所で目撃された。私は、見張っていた。あの子供を、気づかれないのも無理はない。気に留めなければ気が付けないのだ。あらゆる犯罪にあの子供が、何かしら関与している。
そして、殺されているのは、全員、国民にばれてはならないような、法律では裁けない犯罪まがいの行為を行っている者であった。この辺りの事は、探偵で或る、私ならば容易に情報が集まった。
そして、七月 十二日に、ネットで、配信されたという、大臣の殺されるシーンの音声動画、あれは悪戯だったのだろうか。
私達は、不思議な赤ん坊と、話す事になった。
彼は、直ぐに、いなくなる。
見逃す。
見張っていても、急にいなくなる。
話掛けようと、したときには、もう、見失っているのだ。
けれど、最近はずっと、交代で見張っている、如何にかして、彼から情報を引き出さなくてはならない。この事件のキーパーソンで或る事は疑いようがなかった。
事件の起こった処、起こった処に現れては姿をくらます。
そんな、ある日、其の子が、事件現場で、刃物に刺されて傷を負った。
私は、其れを見て、この子が、犯人ではないのか?。と、不信に思った。或いは・・・。自作自演の工作かとも思った。
彼は、被害者の様子で、いたが、またすぐに姿をくらませた。
一体、あの、赤ん坊は何がしたいのだろうか。
結局、二週間に及ぶ、張り込み調査で、分かった事は、無かった。
只、あの赤ん坊が異常だと。言う事だけだった。
しかし、余り、この事件に深入りすると、命が危ういかもしれない。この事件に関係したものは、少なからず死んでいる。
其れは、此れ迄の被害者から、容易に想像できる。
警察関係者は、多く死んだ。
国の公安からも死者が出ている。
狙って殺されているのだろう。
次は自分かもしれない。
七月 二十一日、久方ぶりに、探偵団の奴らと、会った。奴らは、例の赤ん坊の調査をしているという。
幾らかの目撃と、事件との接点として、事件後必ず、其の現場周辺にいる事が、分かったらしいが、それ以上の情報は得られなかった。
「どの道、あんたは刑務所行きかもねえ。警察も、国もあんたを疑ってる。」
羽子は、そう言って、背中をつついた。
「状況は絶望的か・・・。」
「ま、そだね。今の儘じゃ、間違いなく刑務所送りだ。」
「誰か一人でも、証言人が居ればいいんだけれど、堂本 春しか、味方がいない。彼の発言は、ある種の、アリバイになるんだろうけれど、彼の発言を信じる者がいるかどうか。何か、決定的な証拠がないと・・・。」
せめても、あの時に、持っていた、其のC361だとかいう、睡眠ガスや、M857とかいう、薬があれば、証拠になるのだが・・・。
「駄目だ、如何も、駄目だ。酷く駄目だ。此の儘では、君は間違いなく刑務所送りだね。」
羽子はそう言って、和香を見た。
「にゃにゃにゃにゃにゃ。」
まるで他人事のように、にゃあにゃあ、と鳴いている。
「あんたは、気楽でいいね。」
羽子は、和香の頭を撫でた。
「羽子 そういえば・・・、今日、羽川 遥祐の事件簿の最新刊の発売日だぜ。」
神崎は、羽子を見て、本の入ったビニール袋を差し出す。
「あー。そうだった。そうだった。わたしとあろうものが、今日が発売日だってことをすっかり忘れてしまっていたよ。この事件の捜査が面白くってねえ。」
不謹慎な奴らだ。人が死んでいるのに、事件が起きると面白そうにするのだ。
「がはははははは。」
羽子が、豪快に笑っている。
もう、いい大人が、買って来た推理小説を読んで笑っている。
「子供みたいなやつだな。」
栄一郎は、神崎を見て小声で話す。
「あれでこそ、羽子さんですよ。天才はやはり、何処かおかしい。」
「まあ、ねえ。」
羽子さん。急に滑り台を滑り出して、ブランコを漕ぎ始める。そして、気が付く。
あの、赤ん坊は、あえて、私達に分かる形で現れては消えているのではないのかと言う事に。
まさか・・・。事件の起きた場所で、彼が現れた場所を巡っていく。
すると、其処には・・・。
「そうしたんですか?。急に、出かけるだなんて言って。」
神崎は、分かっていた。羽子が何かを閃いたのだと。
「暗号だ。」
其処には、暗号が書かれた、粘土板が、置いてあった。
「事件の起きた場所場所に、此の粘度版が、隠されている。」
その後、事件の起きた十の場所で、十個の粘度版を見つけ、回収した。
粘度版には、造られたオリジナルの象形文字で、文字数は五十五音あった。其れを、解読した。
最初の粘土板に、アルファベットと、其れに合わせた、象形文字の読み方が書いてあった、そして、次に、其れ等は、私達の国、日輪国の言葉で、書かれている事が分かった。
「此の暗号が、一体、何を意味するのか・・・。」
解析班もお手上げの暗号であった。
「うーん。此の暗号、何か途轍も無く、重要な事が書かれている気がするんだが・・・。」
あの赤ん坊?。
一体誰の事だ。
私が、誰なのか?。そんな事は、とっくに、忘れて終った。
私が、何処に住んでいる人間で、何が夢で、希望で、どういった人格で、何を考えて居て、どの様な特技があったのか、さえ、覚えてはいない。
どうして、私の身体は・・・、こんなに縮んでいるのだ。
そもそもが、誰だ?。
何だか、変な心地がする。そして重要な事を忘れてしまっているようなそんな感覚が、する。
ぽわぽわ、と其の記憶が抜けているような、そんな感覚がする。
殺人事件?。国家反逆罪?。何の事だ。一体誰が、こんな事を・・・。
分からない。
どうして、殺さなくてはならないのかが。
因縁?。
不満?。
世界の為?。
己の正義の為に、成らば、人は殺してもいいのか?。
分からない、けれど、そうせざる終えなかった。
家族を守るために、友人を助ける為に、転覆すべき国家があった。寧ろ・・・、国が敵だったのだ。国というよりも、国の政治家と、政府か。そして、皇族だ。
日輪国は、何時の頃からか、おかしくなった。
此の国に未来など、とっくのとうに、無かった。
願わくば、如何か、気づいてくれ。
私の悲鳴を、そして、これ等の技術は、決して、国の人間の手に渡ってはいけない。民間人の者でなければならない。
最期に、前を向いて歩くんだ。
自信を持つんだ。
胸を張って生きるんだ。
私の、願いは、其れだ。私の末裔よ。兄弟姉妹よ、孫よ。どうか、間違えないでくれ。
そのために私は、この技術を開発した。
此れらが、善良な、精神を持った者に、渡り、平和の為に、信念を持った人間にわたり
有効に使われる事を、信じている。祈りに近しいものだ。
「其れで、あの公園に行けば、あの赤ん坊にあえるのだな。」
「此の暗号によりますと、その通りでございますわ。」
解析班の、暗号少女はそう言って、羽子の方をみた。相変わらず、美しいお方だ。彼女、湊川 抗 は、羽子に、憧れて、朱羽香志探偵事務所に入った。優秀な言語学者の娘で、其の知識は、中学一年生にして、未解読文字 D文字を解読した程だ。
「分かった。其れでは、公園へいこう。群青ヶ原公園へ、行こう。」
群青ヶ原公園の近くには、巨大な湖 阿多蒲原湖がある。その周辺に、は、釣り堀や、小型船が停泊している。遊具や、ベンチ、小さな小屋のある、公園。
そこで、湖の波を音をきいて、静かに、砂浜で、其の波を見ている、赤ん坊がいた。
「君は・・・。」
「やあ。来たか。待ちくたびれたぞ。お前等。」
「赤ん坊がしゃべったああああ!!!。」
何かあるかと、は思っていたが驚いた此れはどういった事なのだろうか。
和香は、びっくりして、にゃあにゃあと煩い。
志郎は、へえ、といった様子で、別段驚いているようでは無かった。
「ま、僕は、身体がこうなだけで、実際の年齢は、もっと上だからね。ある実験で、こうなっているだけさ。」
「お前、朱未は、どうなったんだ。御前が殺したのか?。」
「朱未君かあ、彼女は、・・・。そうだね。トリックがある。君たちは、探偵だ。推理を聞かせて貰おう。」
羽子は、思案し、推理を語り始めた。
「私の、推理は、こうだ。朱未君は、殺されている。そして、その遺体。焼死体や、腕は、別の人間の遺体だ。恐らく、カモフラージュの為に、誰か別の人間を殺し、朱未の遺体は、別の場所に棄てられている。只此処で疑問が、生じる。犯人はどうして、朱未を殺す必要があったのかだ。」
「ほう。ほう。」
「恐らく、何か。知ってはならない事を知って終ったのだろう。朱未は勘の鋭い奴だ。」
「うん。うん。かなり、いい推理だが・・・。少し、惜しいかな。彼女は、確かに、僕の正体に気が付いた。其れに、僕の正体は、少し考えれば、誰にだってわかるものだ。」
「誰にだってわかるだと・・・!。」
「そうだ。しかし、数々のトリックで、其れが、隠されているだけだ。」
「まず、どうして、朱未が死んだのか。。殺されたのか。あのような殺され方をされたのかについては、全く、其の死体のカモフラ―ジュで、正解、だ変死体を持っていき、監視カメラには、映像を流した、あのような、不自然な死の映像を監視カメラに流した。大型デイスプレイを使ってなあ。」
「なるほど、やはりそうだったか。」
「実に計算された、映像だった。アレが、映像だとは、気が付かなかっただろうな。警察の奴らも。」
「問題は、朱未が死んだ理由だ。彼奴は、死を望んでいた。いいや。自ら進んで、其の研究の対象となった。」
「一体、どういう・・・・。」
栄一郎は、恐怖した。まさか、と思った。
「その、まさかだよ。」
栄一郎を見て、男は微笑んだ。
「そうだ。其の驚愕の表情。朱未の顔とそっくりだ。」
羽子は、云う。
「何だ。御前、分かったのか。・・・。一体・・・。だんまりか・・・。私に隠し事があるのか。」
「知っているのは、三人・・・。いいや四人だけだ。」
真実は、何処にもない。
もはや、あれは、四人の中だけにしか、無い真実だ。いいや、しかし、まさか。
「実に愉快だ。そして、痛快ではないか?。」
「何処がだ。朱未が望んでそんな事をするはずがない。根っこはいい奴だったんだ。」
「君の為だ。裁判があるんだろう。此れを持っていけばいい。」
赤ん坊は、手袋を履いた手から、C361ガス と、M867薬を渡した。
「此れが証拠に成るはずだ。どの道、栄一郎君は、告発しないはずだ。其れが、朱未君の為にもなるんだからねえ。」
そんな。バカなことがあって貯まるものか。
栄一郎は、彼の手をはじいた。
「要らん!!!。自分の手で真相を突き止める。」
強情な奴だ。と、その赤ん坊はいった。
「僕の、名前は、雨傘 皧 この名前は・・・。軽井沢 朱未 が、私に と。つけた名前なんだ。本当の名前は、違うけれどね。」
「そうだろうな。」
「じゃあね。さようなら。」
彼は、そう言って、公園から、立ち去ろうとした。
「待て!。未だ話は続いているぞ。」
「話って?。もう、御終いだよ。君は、此れで、犯罪者の濡れ衣からは、逃れられた。そして真相も知れた。」
けれど、未だ、納得できていない。
「如何にか、成らないのか。此れが、雨傘 皧 の望んだ事なのか。」
「さあね、こうするしかなかったんだ。それほどまでに、敵は強大だ。逃げ場などなかった。」
栄一郎は虚空を見上げた。
俺にもっと力があれば・・・。
何か、いい手は、無いのか。
絶望の様な、そんな、消失感に襲われた。
後ろで、ボーとしている、私の名前を呼ぶ声が聞える。
何だよ。煩いな。もう、放っておいてくれよ。
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