ラストケース 魔女のいた占い館


 「確かこの辺って聞いたんだけどなぁ」


 一眼レフカメラを手にとある青年が裏路地をキョロキョロしながら歩いている。

 

「何だかこの街は最近変だ、当たり前のように男が女装して女が男装するようになっている、しかも男同士、女同士、果ては複数人で恋愛を楽しむという乱れた風潮が広がっているらしい

 男の母親や女装者と女性の夫婦もいると聞く……これは何かしらの不思議な力が働いているに違いない、それには噂に名高い魔女のいる占い館ってのが関わっているらしい……ジャーナリスト魂が漲るぜ」


 彼はフリーのルポライターであった。

 一般的なニュースには興味がなく、どちらかと言うと都市伝説やオカルト関係の記事を好んで執筆する。

 しかしその裏サイトなどで話題沸騰の魔女のいる占い館の記事を書こうと勇んでやって来たこの裏路地だが肝心の建物が見つからない。


「仕方がない、近くのお店に聞き込みをしよう」


 丁度目の前に喫茶店がある、店名はエトランゼ、彼はここに聞き込みの為に入った。


「ごめんなさいね、うちは男性一人はお断りしているんですよ」


 店員の言う通り入り口から店内を見る限りカップルか女の子同士のグループ客しかいない様に見える。

 実は女装した男だけのグループもいたのだが店員も気づいていないのである。


「あっ済みませんちょっとお聞きしたいことがあるんですけどいいですか?」


「はい?」


「この裏路地に、相談した人が必ず幸せになる魔女のいる占い館ってありませんか?」


 その話題が出た途端、店員の表情が曇る。


「そんなの知りません、客じゃないなら出て行ってください!!」


 ルポライターは追い返され店から締め出されてしまった。


「何だよ……でも今の慌てようは普通じゃないな」


 その後も路地の人がいる建物には全て当たってみたが誰も占い館について口を開く者はいなかった。


「おかしいな、これじゃあ記事が書けないじゃないか……」


 とぼとぼと退散するルポライターは背後からとんがり帽子の魔女がじっと見ていた事を知らない。


「悪いけど悩みを解決して幸せになりたいと思う人しか私の占い館を見つけ出す事は出来ないのよ……一昨日おとといいらっしゃいな坊や」


 アンジェリーナはウインクをし路地の角を曲がると、いつの間にか彼女の姿は消えていた。


 そこは魔女のいる占い館……相談に訪れた者は必ず幸せになるという。




END

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魔女のいる秘密の占い館 美作美琴 @mikoto

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