第8話 魔王の欲望


「まお・・・、いや、ヨコシマさま。国を富ませると言われたのが、これ程凄まじい事になるとは思いもよりませんでしたぞ」


「王よ。お前達はいつになったら俺を魔王と呼ばなくなるのだ?影で俺の事を大魔王と呼んでいるだろう?」


「はい。魔王さま。流石何でも知っていらっしゃる」


「だがらっ・・・。魔王と呼ぶな」


「そう言われましても・・・。人の口に戸は立てられませんので・・・。隣国を滅ぼしたばかりでなく、ヨコシマさまが各国にはびこっていた悪徳業者を徹底的に叩きのめしたのは有名ですし、僅かな慈悲さえ与えぬその非道さに各国民は恐れおののいたのですぞ」


 言われてみれば、確かにそんな事もあったが、アレは勝手に勢いに乗った王の家臣達がやった事だ。

 俺は一言も命令などしていないが、少しばかり心当たりがない事もない。

 

(隣国は、ご愁傷様と言うしかないが、もう一つは私利私欲のために、数多くの他人を不幸にしていたあの商人一族か・・・懐かしいな。今後の見せしめのために、悪徳商人の屋敷を徹底的に破壊して更地にし、一族の死体を人前に晒しただけだが・・・)


「それにほんの数年前までただ広いばかりの弱小国が、今や軍隊と富という巨大な力を持っているのですから・・・。周辺の国々も我が国に食料などを依存しており、属国扱いですからね。それは魔王様のお力と言われても仕方がない事かと思います」


「いや、俺は国を富ませて俺の贅沢なハーレムを作りたいだけだが・・・」


「それは、ヨコシマさまが時折呟いておりますので誰もが知っている事です。魔王様の欲望なら、国民みんなが知っております」


「俺の欲望とは?何で広まったのだ?」


「魔王様は、どこでも構わず仰っているじゃありませんか。いつもこんな感じで」


 それから王は、俺の真似をした。


「ウヘヘヘッ。このまま行けば、この世界中の女は選び放題だ。若い女だけでなく熟女も捨てがたい。獣人のモフモフや、天使を侍らすのもいいなぁ。他にも魅力的な女がいるかも知れない。そして、あと数年もすれば国も安定するから、そしたらハーレムだなっ。そうなれば、アンな事や、コンな事も・・・。ウヒヒヒ・・・・」


 (・・・・・・はっ、恥ずかしい)


 俺の考えはいつも口をついて出ているので、我が欲望はダダ漏れだったらしい。

 召喚されて以来の俺は、国の発展に全力を注いできた。

 確かにその見返りとして、俺は女と贅沢な暮らしを得るのが目的だ。

 しかし、俺のこの欲望をこの国の人達は受け入れたのか?









 

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