第4話 召喚したのは・・・


「俺のことは魔王とは呼ばず、ヨコシマ。そう呼んでくれ」


「ハハーァ。わかりましてございまする」


 自分の名は覚えていないので、俺は少し考えて思いついた名前を語る。

 俺を呼び出した者の返事は何かおかしいが、スルーする事にした。


「それで?俺に何が望みだ?」


「我々は、地獄で1番の強さを誇る者を召喚したはずです。まお・・・、いえ、ヨコシマさまのそのお力で隣国を攻め滅ぼし、我々に繁栄と富をお与えください」


 この国自体が、どうやら隣国の侵略のために俺を呼び出したらしい。

 地獄で1番の強さかどうかは知らないが、俺の召喚の為に数多くの犠牲が払われたとも言っていた。

 だが俺としては、このまま黙って隣国への侵略に駆り出されるつもりは無い。


「馬鹿者っ、他人から奪っての繁栄などあるものかっ。恥を知れっ」


 俺はそんな事のために呼び出されて、また地獄の鬼に対するような痛い思いをしたくはないので、戦いを回避するために適当な正論を吐いておく。


「貴様ぁ、我が王を愚弄するか。我々が下手に出れば調子に乗りおって」


 そこに食いついて来た男達の集団。

 誰かの護衛だと思われる揃いの鎧を着込んだ騎士団風の者達だ。

 それに、俺を召喚し、先ほど話しかけて来たのはこの国の王らしい。


「馬鹿者をバカと言って何が悪いのだ?」


 俺は何となくこの男が気に入らないので反論した。


「召喚してもらったのに何を言っている。立場を知れっ、我々に役に立つつもりがないのならば消えてなくなれっ」


 それを合図に騎士団風の男達が剣を構えて斬り掛かってくるが、動きは緩慢だ。

 今までの死を賭けた地獄での鬼ごっこに比べると、生温い。

 コイツらは鬼達のように速くはないので、俺は適当にあしらう事にした。


「バゴッ」


 俺の一撃で、手近に居た男が鎧ごとペシャンコになると、その床に血溜まりが広がっていく。

 今では地獄の鬼を軽く始末できる俺にとって、敵対する者を殺さない程度に力の加減するなど難しいし、鎧ごと潰しても我が身に痛みはないから気にしない事にした。

 俺としては、一撃でこんなになるとは思いもよらなかったのだが・・・。


「カキンッ」


 他に居た騎士団の剣が、躱し損ねた俺の腕に当るが、俺の体はそれを簡単に跳ね返した。

 召喚された時に感じた俺の体の違和感は、その頑丈さだったらしい。


「ドガッ、バキッ」


「ウギャー」


 俺が反撃にでると、ものの数分でこの騎士団のような集まりは全滅し、争いに片がついた。

 俺としては殺すつもりは無かったのだが、薄暗い部屋のそこいら中に元騎士団の血と肉片が散らばっている。

 まあ、生かしていてもろくな事をしそうにないから結果オーライだろう。

 この人数になると、その血溜まりもまるで池のように凄まじい。

 鉄の匂いのような生臭い血の匂いが辺りに漂う。

 この部屋の中で俺に逆らう者は、もう誰も居ない。


「繁栄したいなら、奪うのではなく与えろっ。俺がやり方を教えてやる」


 それから、この国の王は俺の傀儡と化した。


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