第5話 召喚国の真実


 国を富ませる為とはいえ、何から手をつけようか。

 だが、先ずは食事だろう。

 腹が減ってはナントやら・・・とも言うしな。

 それに共に食事をする事で、この者達に親近感も芽生えるだろう。

 そう言えばこんな事を同じ釜の飯を食う・・・とか言っていたな。

 昔の自分の名前とかは忘れたが、こんな事を覚えている分、俺は頭が良いのかもしれないぞ。


「オイッ、そこの者達。腹が減ったから共に食事を取るぞ、準備を頼む」


 俺がそう言っただけで、そこに居た皆んながキビキビと動き出し、直ぐに食堂に案内された。

 テーブルの上には沢山の食物が並んでいる。

 皿の上には得体の知れない物体も有るし、何だか全体的に新鮮さが足りないが、まぁいいだろう。

 俺の隣には当然のように国王が座った。

 俺にとっては、何十年、いや、何百年かの食事だろうか。

 召喚されて俺は体を得たのだが、無くても地獄では似たようなものだった。


 用意された金属製のスプーンを持つと、グニャッと曲がってしまったが気にしない事にした。

 どうやら力加減を誤ったらしいが、それだけで俺の周りの者達に周りに緊張がみなぎる。

 俺が食事をとり始めると、王の緊張も解けてきたようだ。


「まおっ、いえ、ヨコシマさま。国を富ませると仰るのですが、どうするのですか?まさか?魔法でドバッと・・・な訳は無いですよね」


 この王は、意外にフレンドリーに話を振ってきた。

 慣れとは怖い物である。


「初めは農業からかな?それと流通の為の道の整備だ。おいっ国王。この国の特産品は何だ?」


「はい?特産品とは?」


 この国の王なのに自国の特産品も知らないらしい。

 全く使えない奴だ。


「この国特有の自慢できる物の事だぞ」


「・・・・ありません」


「この辺りの珍しい物は?」


「・・・・ありません」


「それなら、この国の美味しい食べ物は?」


「・・・・ありません」


「何か・・・・」


「・・・・ありません」


「馬鹿者っ」


「・・・・ありません」


(コリャ、ダメだ)


 俺は、初めて敗北を認めた。

 だが、無ければ作ればいい。

 だが、状況を知る限りではこの国の国民は貧乏だ。

 今まで国を富ませる為の国策をする事も無く、ただ住民から巻き上げてそれを消費する事が当たり前に行われて来たのが実情らしい。

 だからこそ、隣国を侵略する事にしたのだろう。




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