第3話 闇の儀式
この地獄で鬼を追いかけ回す退屈な日々にも飽きて来た。
そしてある時、俺の全身が怪しげな光に包まれる。
(これは?・・・そうだ、これはこの地獄に来た時に感じた光だ。また、何処かへ転送されるのか?それなら少し驚かしてやろう・・・)
俺はそう決心していた。
閉ざされた薄暗い地下空間の中で、たった一つのテーブルの上に縛り付けられた腰布以外は全裸の子供をとり囲んで、真っ赤な衣装に包まれた集団がいた。
その集団は、頭から被ったフードに覆われているので顔が見えない。
この集団が何か歌の様な呪文を唱え始めると、一部は怪しげな踊りを舞い始めた。
儀式はだんだんと盛り上がっていく。
呪文が張り上げる声で大きくなり、踊りは最高潮を迎える。
「ハアッ」
「ウギャァー」
突如、男の掛け声と共にテーブルに縛り付けられて動けない子供の胸に短剣が突き刺され、子供の断末魔の叫びと血飛沫が飛び散る中、男はその傷口を短剣で広げ、湧き出る血で覆われた傷口に手を突っ込んで取り出した心臓を頭上よりも高く掲げ、忌まわしき邪神の像が飾られた場所へと運んで行く。
そして、その心臓は祭壇へ捧げられた。
今、子供の体から切り取られたばかりの心臓が、ドクンドクンとまだ動いている。
生贄となった子供の亡骸には、痛みと恐怖で見開いた瞳が何かを訴えている。
子供は最期に何を見たのだろうか?
恐怖に染まるその瞳は、何も語らない・・・。
ここでまた集団の唱える呪文が大きくなり、一瞬ドス黒い闇が祭壇を包むと、集団の詠唱が止まった。
そこには、変なポーズを決めて立っているひとりの男が現れていた。
ほぼ全裸でありながら、完成度の低いマイケルジャクソンの決めポーズで現れたのは、かなりのインパクトである。
「呼ばれて飛び出て、ジャジャジャジャーン」
俺は、折角だからポーズを決めると同時に何処かの大魔王のような現れ方を演出してみた。
「・・・・・・・・」
辺りに静けさが訪れる。
(動かない。・・・ただの屍のようだ)
俺はそう思ったのだが違ったらしい。
そこは長い沈黙が支配していた。
「・・・・・・よっ、ようこそ、魔王さま」
再起動して彼はようやく気が付いたらしい。
どうやら掴みに失敗したらしいので、俺はとりあえず誤魔化す事にする。
「・・・・ここは?」
「魔王さま、我々の召喚に応じてくださりありがとうございます。どうかその力で我々をお救いください」
やはり、俺は召喚されたらしい。
何故だが自分の体に違和感があるのだが、そのうちに慣れるだろう。
俺の周りを囲むのは爺むさい男どもだが、その向こうには女達が数人居る。
俺はただ、久しぶりに女を見た事によるあまりの嬉しさで涙が出そうだった。
(女だぁー。我が願いを叶えてくださりありがとうございます。神さま、仏さま、悪魔さまー)
俺は思いつく限りのあらゆる物に感謝した。
それにしても、俺は魔王と呼ばれるような存在じゃ無いはずだ。
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