第2話 地獄での日々


 あれから俺は何度蘇って、何度鬼に捕まったのだろう。

 その度に鬼に喰われてしまったはずだが、その時の痛みと苦しみの記憶だけが積み重なっていく。

 何よりも、全てが男の鬼であるのが気に入らない。


(何で、ここは男ばっかりなんだ・・・こうなれば、戦ってやる!)


 そう決心してからどのくらい時が過ぎたのだろうか。

 俺は、鬼に喰われながらも周りを調べていくうちに、鬼を落とすためにちょうどいい深さの穴を見つけた。

 あとは、逃げながら鬼をここに落として上から鬼にトドメを刺せばいい。


 それから何度も挑戦して、ついに鬼を穴に落とす事に成功した。


「この野郎。死ねっ。せめて女の鬼は居ないのかっ。女、女、おんなぁー」


 落ちた鬼に飛びかかり、欲望を力と共に拾った石を武器にして鬼の頭部へと殴りかかると、意外にも呆気なく鬼は絶命した。

 俺の性欲の勝ちである。


 そこで俺は油断していたために他の鬼に捕まった。

 期待するまでも無く今度も男の鬼である。

 後はいつものように激しい痛みで苦しみながら喰われるだけだ。





 俺が気がつくと、また何時も蘇る場所だった。

 鬼に喰われて何度蘇っても、同じことが繰り返されるので流石に鬼の動きも覚えている。

 案の定、俺が苦労して倒した鬼も蘇っていた。


 復活するたびに何度も鬼に喰われて繰り返される苦痛。

 俺は決まった繰り返しを覚え、俺を捕まえようとする鬼の腕を躱して逃げ、追いかけてくる鬼を穴に落として始末する。

 鬼を倒すその度に徐々に身体に力が付いてくるのがわかる。





「ほらほら、鬼さんコッチだよー」


 もう、何百回、いや、何千回かもわからないくらい鬼に喰われただろうか。

 数える事をやめてから、随分時間が経っているのだけがわかる。

 ここに時間の概念があるとすれば・・・。


 今では鬼を見つける度に鬼ゴッコをしながら逃げ回り、最後に落とし穴に落として鬼を始末するのが日課である。

 何十回と鬼を退治して得た力は、着実に俺の身についていた。

 鬼を倒す毎に動きも素早くなったし、力も強くなっていく。

 ここでの娯楽として鬼ゴッコをしても俺を責める者は居ない。

 相変わらず、俺以外の人間は鬼に喰われているのだが・・・。


 ここでは、地獄に落ちてきた他人を見つけてもお互い話ができないし、他にすることが無いのだから仕方がないのだ。

 たまに油断して、俺が鬼に捕まり喰われるまでこの作業が続く。





「待てー、鬼っ!ホラホラッ、捕まえちゃうぞー。アハハハ」


 あれから数十年は経っただろう。

 ほんのしばらく前までは逃げるしかなかったのだが、俺に力の付いた今では逃げ惑う鬼を追いかけ回して倒すのが日課になっていた。

 一撃で鬼を倒すのにも飽きたので、今は鬼を追いかけ回して日々過ごしている。


 これまでの経験値によるものか、俺の身体能力も上がり、鬼をマトモに追いかけるとすぐに追いついてしまうのが難点だ。

 これでは、鬼をすぐに捕まえても面白くないので、今では俺はいろんなパターンを楽しむ事にしている。

 今回は恋人バージョンで鬼を追いかけているところだ。

 相手は醜い男の鬼だが、妄想するのは構わないはずである。

 こうして、地獄での退屈な日々が過ぎていった。





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