BreaKing the World

渋谷かな

第1話 BKW1

「今日は魔法の授業を行います。」

「はい!」

 小学生に入る頃。魔法の授業は必須科目だった。

 魔法だけではない。剣とスキルの授業もある。代わりに国語や数学、英語などの生きるために必要ではない教科は消え去った。

「それでは佐藤。おまえ、火の魔法を使ってみろ。」

「はい。」

 佐藤渉は、7才の小学一年生。渋谷小学校に通っている。

「蒼の名のもとに命じる! 全てを燃やし尽くせ! 火の魔法! ファイア!」

 大袈裟なフリのくせにポッと、小さな火が出る。

「ワッハッハー!」

 それを見ていたクラスメイトに笑われる。

「あれ? おかしいな。想像ではできたつもりなんだけどな?」

 不器用な佐藤渉は魔法が苦手だった。

「渉はお子様だから仕方がないわね。」

「何を!? なら希は魔法が使えるのかよ?」

 鈴木希は渉の幼馴染でお隣さん。

「もちろん。」

 ボボボボボッ! っと火をつけてみせる。

 パチパチパチパチ! 他の生徒たちから拍手してくれる。

「おお! さすが鈴木だ。」

 優秀な希の魔法に高橋先生も大満足である。


「どうせ俺なんか。」

「大丈夫よ。きっと渉も強くなれるよ。剣も魔法を使えるようになるよ。」

 いじける渉を慰める愛。

「強くなられたら困るんだよ。」

 その時、変な男が現れる。

「なんですか!? あなたは!?」

「俺は魔王ノストラ様の配下ダムスだ! 将来、強くなるかもしれない子供たちを皆殺しにしろという魔王様のお告げだ!」

「なんだって!?」

 現れたのは魔王の使い魔のダムスだった。

「死ね! 幼気な子供たち! いでよ! 魔物たち! 魔物召喚!」

「魔物だ!?」

 ダムスはスライムやゴブリンなどの魔物たちを呼び出していく。


「みんな! 逃げて! 子供たちには手出しさせません! 火の魔法! ファイア!」

 先生の高橋が必死に魔物を倒そうとする。

「スラスラ。」

「ゴブゴブ。」

「カーカー。」

 しかし魔物の数が多くて先生一人ではどうにもならない。

「ウワアアアアア!? 死ぬ!?」

 渉にも可愛いスライムが襲い掛かってくる。

「ファイア!」

「愛!?」

 愛が魔法でスライムを倒し渉のピンチを救う。

「ありがとう。愛。」

「渉一人くらい私が守ってみせるわよ。」

 頼もしい愛。

「それはどうかな? ケッケッケ。」

 ダムスが現れる。

「先生!?」

「そんな!?」

 既に高橋先生は殺されていた。

「先生の死を悲しむな。今からおまえたちも大好きな先生の元にいかせてやる。火の魔法! ファイア!」

 ダムスが魔法で攻撃を仕掛けてくる。

「キャアアアアアアー!?」

 渉と愛は炎に包まれる。

「これで未来の勇者を育成する学校も終わりだ。火の魔法! ファイア! レベル10!」

 強大な火が学校を燃やしていく。

「さあ、魔物ども。次の学校に向かうぞ。」

 魔物たちは学校から去って行った。


「愛!? 大丈夫か!? 愛!?」

 愛は火の魔法に火の魔法でバリアを作り出し、魔物にバレない様に火の中で生きていた。

「わ・・・・・・渉・・・・・・一人くらい・・・・・・私が・・・・・・守るって・・・・・・言ったでしょ。」

 しかし渉を守る為に小学生で魔法力を使いすぎた愛の命は尽きようとしていた。

「愛!? しっかりしろ!? 死ぬな!? なんで俺なんかを守るんだよ!?」

「渉・・・・・・大好きだよ・・・・・・。」

 そう言うと愛は笑顔で瞳を閉じた。

「愛!? 愛!? 愛ー!?」

 弱い渉は泣き叫ぶしかできなかった。


「行ってきます。」

 そして月日は流れ、渉は16才の高校一年生になった。まだ世界は魔王と激しい戦闘を繰り広げていた。

(俺は愛の仇を取るんだ。)

 あれから9年間、今までと違い渉は剣と魔法の訓練を真面目に行ってきた。

「スラスラ。」

「ゴブゴブ。」

「カーカー。」

 通学路にスライム、ゴブリン、カラスの魔物の群れが現れる。

「でやあー!」

 まずスライムを剣で一撃で倒す。

「剣術スキル! 二連斬り!」

 縄跳びの二重飛びのように速いスピードで二回攻撃を繰り出しゴブリンを倒す。

「火の魔法! ファイア!」

 空飛ぶカラスは魔法で丸焼きにして倒した。

(俺は強くなったんだ。)

 弱虫な小学生の渉の面影はなく、立派な少年に成長していた。

(クスクスクスッ。)

 そして渉を見守る女の子の霊があった。

 つづく。

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