第228話 告白
右ストレートを放った瞬間、右頬に衝撃が走り、視界が真っ暗に。
『俺、何してんだろ? 年甲斐もなく熱くなって、奏介と殴り合って、おかしくね?』
カウントが増えていく中、ゆっくりと起き上がると、奏介はリングの上で大の字に。
震える足を抑えながら必死に立ち上がり、ゆっくりと起き上がる奏介の前で、ファイティングポーズを取った瞬間、試合終了のゴングが鳴り響いた。
オーナーたちが駆け寄ってくる中、奏介に歩み寄り、腕をつかんで立ち上がらせる。
「立てるか?」
「はい…」
「悪いな。 ケジメつけなきゃいけねぇんだ」
「ケジメ?」
チラッとだけ桜が座るほうに視線を移すと、奏介はクスッと笑いかけてきた。
「条件は同じだったんすね」
「いや、俺のほうが切羽詰まってる」
そう言った後、奏介から離れ、勝者宣言を受けていた。
数時間後。
タクシーに揺られながら、桜にラインを送っていた。
〈今、戻ってる途中。 店決めたか?〉
≪決めてない。 食えないし飲めないんだから、家でじっとしてなよ≫
〈了解〉
『了解』と打ちつつも、行き先を変更し、桜の家に向かっていた。
家のインターホンを鳴らすと、桜はドアを開け、驚いた表情で俺を見てくる。
「な、何? うち、食いもんないよ?」
「いらねぇよ。 ベルト取った報告しに来ただけ」
「会場に居たから知ってるし…」
俯き、呟くように言ってくる桜に、小さく笑った後、桜に切り出した。
「顔が見たかったって言ったら信じるか?」
「控室で会ったし…」
「それだけじゃ足りねぇんだよ。 毎日、桜の顔が見たい」
「…30過ぎのおっさんが何言ってんの?」
「三十路女に言われたくないな」
「うっさいな… 世界チャンプのじじい…」
この言葉にカチンと来てしまい、黙ったまま、桜の唇を唇で塞ぐ。
てっきり、殴りかかってくると思ったけど、桜は俺の背中に腕を回し、強く抱きしめてきた。
唇を離した後、桜を抱きしめながら切り出した。
「…俺、桜より強いか?」
「世界チャンプじゃん。 強いに決まってる」
「桜が男に求める条件って、自分より強い男じゃないとダメなんだよな? 俺じゃダメか?」
桜は驚いた表情で俺を見つめ、目を潤ませていた。
「ずっと桜のことが好きだった。 気付くのが遅かったけどな」
「…遅すぎんだよ。 バーカ」
桜は涙をこぼしながら微笑み、俺に唇を重ねてきた。
唇を重ねながら、桜のことを愛おしく思い、心が満たされていくのを感じていた。
『そっか… 俺、ずっと桜とこうしたかったんだ… 知り合ってから20年以上経って気が付いたけど、俺、ずっと前から桜のことが好きで好きで仕方なかったんだ…』
唇を重ねながら桜を抱きしめ、何もかもが桜のことでいっぱいになっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます