第153話 優越感
千歳とスパーした後、夕食を取り、千歳に言われたことを考えていた。
【『仲が良い』とか『友達』とか、そういうの忘れなよ】
『俺、友達としてしか見られてないのかな… なかなか星野とケリ付けないから、呆れたのかな…』
ため息を押し殺しながらゆっくりと立ち上がり、一人でロードワークに出始めた。
波の音を聞きながら、海沿いを走り続け、答えが出ないままに宿舎に戻ると、宿舎の横でしゃがみ込みながら、智也君と凌がコソコソと話しているのが視界に飛び込んだ。
不思議に思いながら二人に近づくと、二人はこっちを向いて人差し指を口に当て「シー!」と声を押し殺しながら言ってくる。
二人に静かに歩み寄り、声を押し殺しながら切り出した。
「どうしたんすか?」
「ちーと桜ちゃんが風呂入ってる」
智也君はそう言いながら、少しだけ空いている窓を指さし、凌は中を覗くように、ゆっくりと立ち上がろうとしている。
思わず息をひそめていたんだけど、どうしても凌と智也君に千歳の裸を見せたくなくて、二人の服を引っ張り、しゃがみ込ませた。
「なんだよ!」
「やめた方がいいって!」
「なんで?」
「だって… バレたら殺されるじゃん…」
声を押し殺しながら智也君と話していたんだけど、凌はゆっくりと確実に、窓に近づこうとしていた。
「何してんの?」
背後から聞こえた声に体が飛び跳ね、慌てて振り返ると、そこにはコンビニ袋をぶら下げた桜さんが立っている。
智也君は桜さんを見て、呆然としながら桜さんに切り出した。
「え? あ、あれ? 入浴されてたんじゃありません?」
「酒買いに行ってたよ?」
「え? んじゃ、今誰が入ってんの?」
「知らな~い。 つーかそれどこ情報よ?」
「あのやろ… また騙しやがった…」
智也君がそう言い切った瞬間、小さな窓が勢い良く閉まり、誰かがいることを物語っていたんだけど、誰が入っていたかはわからず。
『もしかして千歳? 見ればよかった…』
少しがっかりしながら中に入ると、千歳はベンチに座って薫と話し、それを見た智也君が切り出した。
「ちー、今風呂って空いてる?」
「ヨシ兄が入ってるよ」
「…自爆か」
智也君は呆れたようにそう言い切り、みんなと部屋に戻っていた。
部屋でみんなと話していると、かなり凹んだヨシ君が部屋に戻り、交代で浴場へ。
汗を流した後、部屋に戻ると、凌が切り出してきた。
「そういやさ、あのマネージャーって、星野京香だよね?」
「え? 知ってる?」
「うん。 同じ塾だったんだけど、あいつマジで性格悪くて超絶嫌われてたよ。 受験勉強してると『勉強なんて、社会に出たら何の役にも立たない』とか『バカだから勉強しないといけないんだ』とか見下しまくってたり、人の物を勝手に使ってパクったりとかさ。 バカにされまくった女の子が、悔しくて泣いちゃったんだけど、めっちゃ嬉しそうな顔して喜んでた」
「サイコパス?」
「そこまで賢くないよ。 たぶん、マウントとって、優越感に浸りたいだけ。 自分以外に興味無いし、そんなんだから友達もいないもん。 誰かの彼氏を寝取ったって話も聞いたことあるよ。 受験に失敗したって聞いたけど、奏介の学校に行ってたんだな」
智也君の質問に、凌は平然と答えていたんだけど、話を聞けば聞くほど不安になっていた。
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