第127話 変
ゲームセンターで千歳と遊び、千歳の家に行くと、お母さんが俺を家に招き入れ、一緒に夕食を食べていた。
ゲームセンターで出た記録の事を言うと、英雄さんは眉間にしわを寄せて聞き返してきた。
「ちーのキック力が19? パンチが21? 壊れてんじゃないのか?」
「やっぱそう思いますよね! 絶対おかしいですよ!」
千歳が不貞腐れた表情を見せる中、夕食を食べ終え、英雄さんとお母さんの3人で話していると、話の途中でカズさんが帰宅してきた。
「奏介、もう帰るか?」
「はい。 そろそろ帰ります」
「用事あるから送ってってやるよ。 すぐ行くぞ」
カズさんに急かされ、お礼を言った後に家を飛び出した。
バイクの後ろに乗せてもらい、アパートの前へ。
バイクを降り、カズさんにお礼を言うと、カズさんが切り出してきた。
「夕方過ぎに、田中がこっちに向かおうとしてるのを見たんだけど、会ったか?」
「…マジっすか。 実はうちに来たんすよね… そのくらいの時間に…」
「親父に話したか?」
「いえ… でも大丈夫っす! ありがとうございます!」
「そっか。 なんかあったらすぐに電話しろよ?」
カズさんはそう言い切った後、バイクのエンジンをかけ、颯爽と走り去った。
『やべぇ… 超絶かっこいいんすけど… マジであんな兄貴、欲しかったなぁ…』
そう思いながら家に入り、すぐにシャワーを浴びていた。
シャワーを浴びた後、ストレッチをしていると、スマホが点滅していることに気が付いた。
『まさかな…』
半信半疑のままにスマホを手に取ると、千歳からラインが来ている。
【今日はありがと。 今度お礼するね】
短いメッセージを見ただけで、すごく嬉しくなり、思わず笑みが零れたまま、千歳に返事をしていた。
〈気にしなくていいよ。 また遊びに行こうぜ〉
【んじゃ、その時お礼していい? 今日全部出してもらっちゃったし】
〈お礼なんかいらないって。 俺が誘ったんだし、気にすることないよ〉
【悪いから! MVP貰ったし、今度、お礼する!!】
そのままラインで会話をしていたんだけど、会話をすればするほど会いたくなってしまう。
ついさっきまで会っていたのに、ラインをすればするほど、会いたい気持ちが強くなってしまう。
【もう寝る!】
千歳のメッセージでラインを終えた後、気持ちを誤魔化すように筋トレを始めていたんだけど、窓の向こうに長い髪をした人影がチラチラ映っていた。
チラチラ映る人影は、インターホンを押すことも、ドアをノックすることもなかったんだけど、時々、中の様子を窺うように、曇りガラスの向こうにぴったりとくっつき、俺の気を引くように、小さな物音を立て始める。
まるでホラー映画のような光景だったんだけど、人影の正体の想像がつき、恐怖心よりもうんざりする気持ちが大きかった。
気にしないままに寝ようとしたんだけど、寝付きそうになるたびに、物音が聞こえ、目が覚めてしまう。
結局、ほとんど眠れないまま朝を迎え、目覚ましで起きたんだけど、まさかの2度寝をしてしまい、学校に着いたのが時間ギリギリ。
教室移動が多かったせいで、千歳を見かけることもなく、昼休みを迎えていた。
昼休みになると同時に、弁当を食べ、ボクシング場に行ったんだけど、縄跳びをしている千歳の姿がない。
千歳が居た場所で、縄跳びをしながら待っていたんだけど、千歳は姿を現すことなく、チャイムが鳴り響いていた。
部活を終えた後、ジムに向かったんだけど、桜さんとカズさん、凌の3人がトレーニングをしているだけ。
『ここにもいないか…』
軽く落ち込みながら準備をしていると、英雄さんが切り出してきた。
「奏介、お前今日部活だったろ? 無理して来なくてもいいぞ?」
「スパーリングが残ってるんですよ」
「そうか。 凌、お前もスパー残ってるだろ? 奏介とスパーしろ」
急いで準備をした後、リングに上がり、凌とスパーリングをしていたんだけど、スパーの途中で凌が手を止め、いきなり切り出してきた。
「お前今日変。 集中できないなら休めよ」
「…ごめん。 けど大丈夫」
「大丈夫じゃない! とにかく疲れてるなら休め!」
凌に怒鳴られてしまい、ガッカリとしながらリングを降りていた。
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