第126話 遊び
放課後。
千歳に送ったラインを見ると、既読がついているけど返事はない。
この日は部活もトレーニングもないから、放課後はフリーだったんだけど、千歳のスケジュールがわからない。
『千歳、今日なんか予定あるのかな? あのゲーセンなら、英雄さんにボコられないで行けると思ったんだけどなぁ…』
急ぎ足で公園の先に行くと、ゆっくりと遠く離れていく千歳の後ろ姿が視界に飛び込んだ。
慌てて千歳を追いかけ、千歳に近づくと、千歳は歩きながら振り返った。
「待ってるってラインしたのに、先に帰ってんじゃねぇよ」
「す… すっかり忘れてた! ごめん!」
不貞腐れながら言うと、千歳は苦笑いを浮かべながらそう言い切ってくる。
千歳の笑顔を見れたことにホッとし、顔を綻ばせながら千歳に切り出した。
「これから暇?」
「今日はトレーニングもバイトもないけど…」
「じゃあ、遊びに行こうぜ。 着替えたら家に行くよ。 自宅の方な」
「遊びに? 奏介の家じゃなくて?」
千歳の言葉に驚きながらも、耳元で囁くように切り出す。
「家の方がいい?」
「外! 外がいい!!」
真っ赤な顔をし、慌てたように言ってくる千歳が可愛すぎて、千歳の頭に手を乗せた。
「迎えに行くな」
千歳をおじいさんの家まで送り届けた後、急いで自宅に向かって駆け出していた。
自宅に駆け込んだ後、急いで着替え、自宅を出ようとドアを開けると、自宅の前に春香が立っている。
完全に見て見ぬふりをし、鍵を閉めた後にその場を後にしようとすると、春香は俺の腕をつかんできた。
「待って。 これ…」
春香はそう言いながら、カバンからバンテージを差し出してくる。
「いらない」
「あの… でも…」
「必要ないって言ってるんですよ。 聞こえないんですか?」
「…どこ行くの?」
「千歳とデートです!」
はっきりとそう言った後、その場を飛び出し、走って千歳の家に向かっていた。
『胸糞悪ぃ… マジでなんなんだよ… いい加減にしてくれっつーの』
勢いよく走り続け、息を切らせながら自宅のインターホンを鳴らすと、英雄さんがドアを開け、普段と変わらない様子で切り出してきた。
「よぉ。 今日は休みだろ?」
「はい。 駅前のゲーセンで、反射神経ゲーム見つけたんですよ。 青いボタンが光ったら押すやつです。 この前、みんなで行ってやってみたんですけど、千歳がいなかったんで、どうかなって思ったんです。 英雄さんも一緒に行きませんか?」
「行きたいけど、これから智也たちが来るからなぁ… ちーだけ連れてって、結果教えてくれな?」
「わかりました! 今度、一緒に行きましょう!」
「おう! 帰り、うちで飯食ってけな」
英雄さんは俺の肩をポンポンと叩き、鼻歌交じりでジムに向かう。
『あ、機嫌良くなったかも…』
密かにほっと胸を撫でおろしながら、2階から降りてきた千歳とともに、駅前のゲーセンに向かっていた。
駅前にあるゲームセンターに着き、反射神経ゲームの前で千歳に切り出す。
「これで勝負しようぜ!」
いくつもあるボタンが青く光ったときに、次々に押していくだけのゲームなんだけど、千歳は背が低いことを気にしているのか、一番上の段にあるボタンを押すときに、毎回小さくジャンプをしている。
『飛ばなくても押せるんじゃ…?』
そう思いながらもゲームを終え、結果を見ると、俺が241点だったのに対し、千歳は192点。
千歳は結果を見て、悔しそうに切り出した。
「もう一回!!」
「上等~」
続く2戦目で、千歳はジャンプではなく、背伸びをし続け203点。
俺は慣れてきたのもあるせいか、246点だったんだけど、千歳は不貞腐れた表情をするばかり。
その後、パンチングマシーンをやったんだけど、俺が256だったのに、千歳はたったの21。
「んな訳ないじゃん。 800はあるよ。 俺吹っ飛んだし」
落ち込んだ表情を見せる千歳に言ったんだけど、千歳は結果がショックだったようで、ボーっとし続けていた。
その後、キックマシーンもやってみたんだけど、俺が468だったのに対し、千歳は19。
「…ベルト返上する?」
思わず真顔で聞いてみると、千歳は黙ったまま俯いてしまった。
「冗談だよ冗談! 遊びなんだし、マジに受けるなって!」
結果を笑い飛ばすように言ったんだけど、千歳は不貞腐れたように口を尖らせる。
千歳の尖らせた唇を見た途端、触れたい衝動に襲われてしまい、ポケットの中で拳を握りしめていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます