ユタカくん 1
エイプリルフールなどという、嘘みたいな日に生まれた。
昼休みになると、クラスメイトたちは色とりどりのお弁当や美味しそうな購買のパンを食べていた。初めの一日二日はその輪の中でお喋りをしていたけれど、物が食べられない僕の前で食べることに、どうやらみんな少しずつ躊躇しているようだった。お菓子の袋を持ち寄って食べる時なんかは特に。何故か食べた事のないそれらの味が分かるだけに、少しツラいのも事実である。
三日目から先は適当な理由を付けて、昼休みをひとりで過ごすようになった。毎日四限目の授業が終わると、誰もいない屋上の、厳重に閉ざされた扉の前でうだうだと時間を過ごしていた。せめてこの扉が開けば、爽やかな空の下で日向ぼっこでも出来ただろうけれど、今時の学校では開放されていることの方が珍しいだろう。この
とはいえ、太陽光で塗装剥げやら退色やら、とにかく劣化しやすいこの身体。高校三年間の間であったとしても、毎日日向ぼっこなんてしていれば肌荒れは免れないだろう。海が近いから潮風もひどく、自転車は新品でも数日でサビだらけになってしまう土地柄だ。そう考えれば、まあ、この陰気で薄ら寒い階段の踊り場というのも悪くないのかもしれない。金属のパーツもあるし。なんて自虐的に思いながら、今日もいつも通り、スマホのタイマーを昼休みが終わる五分前にセットした。ひとりでいるのは、割と苦痛ではないのは救いかもしれない。アプリのログインボーナスを回収しながら、僕はいつも通り、かばんを枕にして寝転がった。
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