第13話 日々日常 野外活動 Ⅳ
「マリエンヌ準備はいいかしら?」
「はい、フェティー様何時でもお願い致します」
マリエンヌは微笑むとそう返事をしてくれた。
「では、いきますかっ」
お肉様がかかっいてるもんねっ、手を抜いた瞬間後ろでは既に閻魔様と化しているだろうトリシャさんはここぞとばかりに容赦なく肉なしご飯……にしてくるもんねっ。
だからしてここは絶対に良い所を見せないと。
ふふ、もしかしたら頑張ればお肉が一口から二口くらいになるかも知れないやん!!
な~んて私は甘い期待を胸に……とは言えだ。
幾ら何でもそこは
ちゃんとそこは患者さんと何時でも真摯に向き合う。
私は袖を軽くを捲って両手をマリエンヌの前にそっと翳す。
サムもエイミーも直接この術を見るのは初めての筈だから、めっちゃ食い入るように見ているよ。
ほんと可愛いなぁ……二人共。
では――――。
「
呪文を唱えた瞬間マリエンヌへ翳した手の周りからキラキラと光る水珠、そうねシャボン玉の中に水が入ってキラキラと光り輝きながら浮いている感じかな。
その水珠が時間経過と共に幾つもの大小様々といった様に現れる。
先ず最初にマリエンヌの病の源となる右上腹部……肝臓へゆっくりと一際大きな水珠が入っていく。
その次に小さな水珠達はマリエンヌの身体中へ浸透していく様に静かに入っていき、暫くの間彼女自身の身体はキラキラと眩く光っていたんだけれど30分もすればその光は徐々に小さくなり、さいごには静かに消えてなくなっていった。
ふぅ……成功だわ。
「どぉ、マリエンヌ?」
彼女はゆっくりと上体を起こしていく。
「どぉ……と申されましても、あのう今日は何時もの治療と少し違います……よね? それに、先程まで熱の
うんうん。
「……フェティー様っ、これって治療魔法でも高位でっ、確か大技の最終形態ではっっ!?」
私はまだ一度も見た事がないです――――っと、エイミーは若干?
いやいやめっちゃ前のめり且つ興奮状態で質問してくる。
こういう所がめっちゃ可愛いんだよね、この娘ってばさ。
「うん、俺も見た事はない。うん、やっぱりフェティーって凄いねっ」
サムもやっぱり興奮している。
うんうん可愛いやっちゃっ。
私は翳していた手を下ろし傍にある椅子へ座ってマリエンヌに告げる。
「よく頑張ったわねマリエンヌ」
「はぁ、でも頑張られたのは姫様ですよ、私はただ横になっていただけですから……」
マリエンヌは笑って答えるけれどでも……。
「これは私の力だけじゃないわよ。私の魔法はマリエンヌの中で眠っているだろう自己治癒力を引き出す為のモノだよ。マリエンヌの気持ちが沢山頑張ってくれたから出来ただけの事よ」
「……そう、なのですか?」
うーん、どうやら今一つ彼女はわかってないらしい。
でも、病気って何処のどんな世界でもよ。
治療する側がめっちゃ頑張ったとしても、また良いお薬があるからと言ってもね。
そこに本人が本当に治りたい若しくは元気になりたいって強く思ってくれなければどんなに名医であろうと優れた医療チームであっても100%以上の力は引き出せない。
だって本人が諦めちゃったら、そこで全ては終わりになっちゃうもん。
「そうだよ、マリエンヌが沢山頑張ったから治療は今日でお終い」
「えっ、姫様、それでは――――っっ!?」
マリエンヌ、涙目……て言うかもう泣いちゃっているよ。
「うん、病気はもう治ったよ。ちゃんと立派に元気な身体へ戻ったよ」
「あ、有難う御座いますっ、フェティー様っ!!」
「お母さんっ、良かった、本当に良かったね。有難う御座いますフェティー様っ」
私はそっと席を立てばその場をエイミーへと譲る。
二人は抱き合いながらめっちゃ喜んでいた。
前世でも今でも変わらずこういう時って、この仕事をしていて良かったぁーって思える瞬間。
ちょっと魔力を沢山消費したけれど、でも心地のいい疲れだ。
それに何と言っても今日のお肉の為っ、トリシャへ良い所も見せておかないといけないしっ。
ほんと、この感動場面でも私ってつくづく食欲に塗れているなぁ。
でもさ、人間は欲ってものがないと進化もしないしねって何気に言い訳がましいけれど……。
「じゃあマリエンヌ私はこれで。それからお仕事復帰とお酒は後……一ヶ月は先ね。そこはちゃんと母様にも言っておくから、生活費も心配しなくても休業補償で出るから安心していいよ。じゃあね」
「有難う御座いますフェティー様」
ん?
ちょっと笑顔が何気に引き攣っているよ、マリエンヌ?
ちゃんと言い付け守ってね。
本当にお酒……飲まないでよ。
その為に一ヶ月後に復帰って診断出したんだからさ。
では次へと行きますかぁ。
「トリシャ、あのうお肉の件は?」
呪文唱える前に小声でお伺いを立ててみる。
「――――半口確定です、ね」
ちらっと私を見れば何ほざいているんだこの姫は……ってあからさまに呆れた顔をしたトリシャは溜息一つ吐いた後そう告げたのだ。
「けちぃ……」
絶対絶――――っ対お肉一口ゲットぉって思ったからキラッキラの瞳で以ってわくわくどきどきしながら聞いたのに半口って1/2口だよっ、あれだけ大量に魔力を使ったのにこの妖怪ケチケチお婆ぁぁ。
「ではカウント0で宜しいですか?」
「ぴぃっ、い、いえいえっ、半口ですねっ、はい半口いいですね~」
げげげ――――っ何で何時も私の心の声を確実に聞くんだろう。
嗚呼ぁ、なんて可哀想な私。
でもこれ以上悪口雑言なんて言えばその半口のお肉様さえも口に出来なくなる事だけは絶対に避けなければ!!
私の可哀想過ぎる心情とは関係なくサムは私とトリシャの密やかに交わしているやり取りを聞いては声を殺して爆笑しているしっ。
あぁもうっ限りなく惨めだ。
こうなればもうさっさと次へ行こう。
不満タラタラな私はまた扉に手を触れて呪文を唱える。
「
扉が開き次の目的地へ足を踏み入れる瞬間、ふと振り向けば笑顔のマリエンヌとエイミーがこっちを見ていた。
やっぱりちゃんと病気が治って良かったね。
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