第12話  日々日常  野外活動 Ⅲ

 私の患者さんマリエンヌ・テュルエン32歳はややぽっちゃりした感じの心の優しい女性。

 お酒が大好きで、母様付きの侍女と言う主従関係を超えて仲の良かった二人は兎にも角にもよく一緒に飲んでいたらしい。


 でもさ、母様ははっきり言ってザルだよ。

 あの華奢な身体にどんだけ~って思う程にね。

 そうしてマリエンヌは偶々定期の健康診断で初期の肝臓癌が見つかって、何時も母様がお世話になっているので私が担当する事にしたのだ。


 治療もそんなに難しくはない。

 一般の治療魔導師レメディウム・マギカでも出来るレベルなんだけれど、ラインフェルトでは賢者マギだかと言って偉い人しか診ないって事は絶対にしない。


 どんな人や動物達にでも分け隔てなく手を差し伸べるのを信条としている。


 万が一お金に目が眩んで患者さんをより好みした者は、協会から免状を抹消される。

 まぁ抹消されたからって魔力がなくなる訳ではないけれど、ただラインフェルトうちが白魔導の総本部みたいなもんだからね。

 各国の支部協会も当然入れてはくれなくなるし、そうすると大切な信頼がなくなってしまう。


 信頼がないと魔導師社会では生きていけない。

 そうなると違反した魔導師は生きる為に


 先ず一つは、二年間無償で働く事。


 勿論生きていく為の最低賃金は保証されるし、その二年を経過した時点でもう一度資格試験を受け合格すればまた協会への入会が認められる。


 でもそれに


 先代のクラウス・マギがよく言っていたっけ。


 人は誰しも過ちを犯す生き物。

 だが一度の過ちで全てを奪うのでなく、最後にもう一度だけ機会を与えるのですよ。

 その最後の機会をその者がどう活かすのかは己次第というモノです、よろしいですかフェティー……。


 そう、私もその考えは同感だから今もそうしている。


 魔がさす事は誰にでもある事。

 だからチャンスは一度だけ。


 そして二つ目は……私も詳しくは分かんないんだけれど裏社会でお金目的の為だけで生きていくらしい。

 まあそれも己の腕があったればこそ――――何だけれどね。


 でも今のところそんなややこしい魔導師問題児はいない。

 何と言っても魔導師達うちらは皆大切な仲間なんだからね。


 うん、仲間を信じないと何もやってはいけない。

 人間一人の力は小さくても皆で助け合えばそれは大きな力となり、何時しか世の中だって変えていけるかもしれないじゃない。


 それに私結構……このラインフェルトの皆が好き。

 のんびりとした、でもぐうたらじゃあない、働く時は一生懸命で遊ぶ時は全力で遊ぶ。

 この国民性が私には丁度いい。


「こんにちわ、マリエンヌ調子はどぉ?」


 私は手を振りながらベッドで寝ているマリエンヌへ声を掛ける。

 マリエンヌは私を見てさっと上体を起こそうとするのを私は制止した。


「寝てていいよ。今日は調子が良くないのかしら?」

「はい、昨夜から少し微熱があって……一日でも早くミラ様にお仕えしたいのですが……」


 マリエンヌは困ったとばかりにはぁぁと深い溜息を漏らす。


「何を言うかと思えば……。早く治りたいのであれば今は安静にしてね。ちゃんと治って復帰すればまた母様とお酒飲むのでしょう」


 笑いながら冗談で言ってみる。


「……そう、で御座います……わね」


 マリエンヌはちょっと悪びれながらも否定はしなかった。

 ――――って!!

 まーったく、しょうがないなぁ。

 こりゃ職場復帰した晩から二人で酒盛りでもしそうだわ。


 大人ってのはそんなにお酒が良いもんかねぇ。

 前世でもお酒が飲めなかったから今生こそは少しでも飲めるようになりたいと密かな願望を抱いている私としては、ちょっと複雑な心境だわ。


 さて……と、私は気持ちを切り替えてマリエンヌの前に立てば治療を始めていく。


 そうなのだ。

 この働きによっては

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