第10話  日々日常  野外活動 Ⅰ

「あーやっぱり外って気持ちいいわぁ、ねぇトリシャ、今頃きっと爺様ってばカンカンになって茹でダコみたいに真っ赤っかになっているわよ、きっと」


 でもあんまり頭にきて血管切れなきゃいいけれど……。

 ふふふ、と笑えば横でトリシャが一言――――。


「心配なされるのでしたら協会長様ドゥクス・マギカのお言い付けを少しでもお守りになられればよろしいのでは?」


 相変わらず何時もながらにバッサリだわ。

 でも仕方がないじゃない、正装あんなのを着たら絶対に走れないし……。


「走らなくて結構です」


 そ、それに重いし、歩くのもやっとだし……。


「静かにお淑やかにして頂くのが一番です」


 ――――っておいおい、黙って心の声を読まないでっっ。

 嫌だと言わんばかりに首をブルブルと思いっきり左右へ振っている私を彼女は冷たく、ええそれはめっちゃ凍れる視線で以って一瞥すると……。


「何時もの事です。思考がワンパターンなのですよ姫様は!!」


 痛恨のカウンターパンチ頂きました。


「でもね、おトイレへ行くのも大変なの!!」


 そう、これは本当に大変であり切実なる事情なのである。

 お腹がキュ〰〰〰〰っとなってエマージェンシー発令なんてものをした瞬間頭……いや、心かな?


 もう救急車がお腹がピーポー状態なのにっ、とは言え服は異様に重いし走れないし、だからと言って歩くのも結構お腹に力なんか入れたらその瞬間肛門警戒レベル最上級だし、そういう時に限って大きな催しの最中に毎度毎度何回となく、あー私の精神死んだかな?って言うのをどれだけ繰り返してきた事かっっ!!!


「大体男はそういう時って楽なもんなのよ!! ねぇどうして女性だけなのっっ。 トリシャぁ、黙ってないで答えてよ!! !!!」

「ひ、姫様っ!? それ以上は〰〰〰〰っ!!」

「フェティーっ、お願いだから女の子が街ん中で、然も声を大にして叫んでいい話じゃないよっ!!」


 トリシャとサムはもう、何と言うかもう茹で蛸さんみたく全身を真っ赤にさせながら叫んでいた。

 私はと言えば……。


 ぜーはーぜーはーと肩で大きく息をしながら思いの丈を叫んだ所為せいなのだろうか。

 何だかめっちゃ開放感に包まれていたりする。


 言ってやった!!

 言っちゃったぁ、ついに言っちゃったもんねーっ。

 あーもうスッキリ、爽快いい気分。


 アゲアゲの気分だよぉ……とにんまり。


 うんやっぱり人間は何時までもお腹中に思っている事を溜め込むって良くないもんね。

 何だかそうハ~レ~ル~ヤ~って声を出して歌いたい気分。


 でもこの一瞬の後トリシャの一言が私にとって今日最初の地獄行き~を告げたのだ。



「-120……点です、姫様」


 えっ、何で……すってトリシャさんっ!?


「ええ、ええ、-120点だと申し上げました」


 きりっとした口調でおまけに鬼の様な形相でめっちゃ怖い〰〰〰〰⁉

 それってもう主従関係ぶっ壊れていませんか、トリシャさん??


 -120……って、それってもしかしなくても〰〰〰〰っっ????


「はい、――――です」


 一言で言う?

 お肉様、私が一番大好きな食べ物なのに、そんな残酷な事ってっっ!!


「トリシャ〰〰〰〰、お願いだからっ、せめて一口でもいいから〰〰〰〰私からお肉を奪わないでぇぇっ!!」


 昔からトリシャは一度決めた事は絶対にやり抜くんだ。

 初志貫徹って奴を〰〰〰〰っっ。


 うっく、自分でも情けないとは思うんだよ。

 でも余程お肉を食べずに死んじゃった前世が影響しているのかはわかんないんだけれど、何故かお肉が食べれないだけでこんなにも悲しい。


 だからお肉の為なら――――ささやか過ぎる誇りプライドも捨てられるわって、ちょっとだけ……ね。

 うーん十分誇りを捨てている感も否めないけれど、それより元からそれを持っていたと言うのか、誇りを⁉


 そんな私の恥ずかしい過ぎる様子を見たトリシャは、深く深呼吸をしてからの溜息を一つ。


「……仕方のない御方ですね、今回だけですよ。ちゃんとお仕事をされているかはチェックさせて頂きますからね。その出来によってお夕食のお肉……をご用意致します」


 あ、やっぱ一口だけなんだ。

 でも、その一口だけでも食べられるから良かったぁ。


 まあ仕事次第だけれどそれは大丈夫よね。

 うん、何処の世界においても働かざる者食うべからず……ですよ。


 さてさてキリキリとお仕事でも始めましょうか。

 お肉様の為……じゅるっ、つ、唾がっ、いやいやいやいやここは……だよ。

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