2
一日と少しの船旅で私たち『禿鷹挺身隊』はついに敵地、同盟海外共同統治領最大の港町ブロンデンブルクに足を踏み入れる。
税関で手荷物の検査と旅券の確認を延々一時間もかけやられたが、特務機関自慢の偽造旅券は見破られることも無く、この段階では任務に必要なものは一切持ってないから幾ら荷物を調べられても何出てこないのは当たり前。
無事に最初の関門を突破し、港まで迎えに来ていた特務機関が同盟領内に設けた偽装会社『クロネール商会』の人々に接触、彼らの車でブロンデンブルク中央駅まで向かう。
道中の車窓から見る生まれて初めて訪れる異国の街は、石造りの建物もいかめしくどこか居心地が悪い。
軍事要塞の様な大仰な意匠の駅に着くと、列車に乗る前にここで今度は憲兵の調べを受ける。
税関の役人はまだお客さん相手という意識が有ったのか扱いは丁寧だったけど、憲兵はそうは行かない。
帝国の人間と見るや、まるで嫌がらせの様に
これはまだ我慢できたけど、よいよ我慢ならなかったのは赤ら顔の口臭の酷い憲兵軍曹が私の体を調べ始めた時だ。
明らかに触る必要のない個所もべたべたと念入りに触り、その時のスケベそうな顔の気持ち悪いのなんの!
我慢してなんとか問題なしと放免されたけど、この屈辱は死んでも忘れないからね!覚えときなさい!
案の定シスルも憲兵詰所から出て来た時は、こめかみに青筋立てて爆発寸前。
「あのデブ憲兵め、
憲兵から味わった燃え上がる様な不快感は、同盟自慢の弾丸超特急の豪華な一等客車で過ごすひと時でも癒されず、お詫びにと少佐からご馳走になった高級な
グローヌは西方が舞台のおとぎ話に出てくるような街、入植開始当初に原住民や帝国との戦いに備えて作られた石積みの城壁がいまだに残っている。
城壁の内側は木材と漆喰で出来た家々がちまちまと立ち並んだこれまたおとぎ話の様な風景で、街ち行く人々も西方人種と角を生やした原住民とが半々の割合に成って来る。
駅前広場に面した三階建ての建物の中に、特務機関の偽装会社『クロネール商会』のグローヌ支店があり、そこで先行して運び込まれた撮影機材一式が預けられていた。
頑丈そうな木箱に収められたそれを一個一個取り出し、電源を入れて状態を確認する。問題が無いと解るとまたファリクス文字で『医療用放射線撮影機・取扱注意』と書かれた木箱に治める。
翌日、
ここから私の偽の身の上は『まほらま人の商社の重役に囲われた原住民の若い女』から『真教系慈善団体の看護師』に切り替わり、少佐はその団体の医者、シスルは看護見習いに変身。衣装もオシャレな外套や
都会的な素敵な
けど、せっかく国民の血税で贖い、ユイレンさんに選んでもらった衣装一式は少佐の計らいで梱包され船便で月桃館に送ることに事にしてもらった。
無事任務を遂行すればまた着るんだ!
シスルは私と同じ
けど、これの方が看護師としては実用的じゃない?と思い、登山用に持ってきた羊毛の股引を履いてみると、これが暖かくて実によろしい感じ。
結局、看護師役をしている間は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます