第五話 さあ、吐けよ!
美原美子との吐血を吐血せずに制した田中血太郎こと僕は、何故か日本代表として復帰することになった。
恐ろしい。
ただただ恐ろしい。
なんせ、結局のところ僕はほとんど吐血できていないからだ。
必至に練習はしてる。身体は吐血の天才である田中血太郎なわけだから、吐血に関するセンスは抜群のはずだ。
でも中身が僕だから、吐血なんて無理なんだ。
ドエライ世界に転生してしまった。いっそエルフやドワーフだらけのいかにもな異世界に転生したかった。
ため息が止まらない。
そんな僕を見て、吐血日本代表監督であるアブラーンが声をかけてくる。
「×××○○○△△△」
スペイン人であるアブラーンの言葉は一切合切理解できない。
スペインはヨーロッパでも吐血の強豪国らしく、吐血ワールドカップの常連国だ。
アブラーン自身も現役時代は相当な名手だったらしい。
田中血太郎は、いつも通訳をつけずにアブラーンと話していたらしいが、僕はスペイン語なんて一切わからないんだから通訳が欲しい。
でも怪しまれると嫌だし、何を言われてもまだ本調子が戻ってないんだ僕は顔をして返事をうやむやにしている。いかにも言葉が響いてる顔もしてる。
アブラーンは、確実に何か伝わってるといった満足顔をしてる。
伝わってないし、何も響いてないんだ……! ごめん、アブラーン。
っていうか、明日から西日暮里新聞杯が始まる。
西日暮里新聞杯というのは、西日暮里の新聞社がスポンサーの日本代表戦だ。
まあ日本代表としての練習試合みたいなものだ。
西日暮里新聞という、えらいピンポイントな新聞が世界戦のスポンサーできるんだな。知らないけど。
試合形式は勝ち抜き戦。僕は大将になった。
明日、僕はどうなってしまうんだろうか……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます