第一話 ほら、吐いたら楽になるってよ
僕が、田中血太郎へと転生して一週間が過ぎた。
東京都杉並区民だったようで、杉並区ライフを満喫している。
僕が元居た世界とほぼ同じこの世界。
歴史だって、世界情勢だって、アメリカの大統領だって変わらない。
ただ圧倒的に違うのは、一番人気のあるスポーツが、サッカーでも野球でもバスケットでもクリケットでもなく、吐血ってことだけだ。
田中血太郎、まあ今の僕なわけだが、この一週間でわかったことはここ3年ほど全国吐血王選手権という、日本で一番大きい吐血の大会の優勝者であり、日本の吐血界のヒーロー、スーパースターってことだ。
そして杉並区には、吐血スタジアムがあり、その近くに大きなマンションを借りている。
ちなみに貯金がとんでもない金額であり、さすが大人気スポーツのエースともなると超絶お金持ちになれるんだなと思いつつ、余りの金額にちょっと引いた。
そしてもっと引いてることがある。
来週、なんと吐血のアジア大会があり、勿論だが田中血太郎は日本代表に選ばれているのだ。つまり、僕は日本代表になったということだ。
どえらいことである。
これは、どえらいことである。
なにせ、僕は、吐血なんてできないんだから。
吐血なんて、イメージでは結構な深手を負った兵士とかがゲボって出すものだろう?
さらに困ったことがある。
色んな吐血界の大人達が揉めに揉めた結果、田中血太郎は吐血中に死にかけた(吐血してりゃ死ぬだろうと思いつつ)ので、体の調子を見るために三日後、テストをするという。
吐血の。
死にかけたことで、吐血が怖くなったフリをしてなんとか切り抜けないかと考えた。吐血のイップスだ。野球選手が、球とかを真っすぐ投げられなくなったりするやつと一緒のやつだ。
でも、それも失敗に終わった。失敗っていうか、田中血太郎は僕が思っているよりもスーパースターかつナイスガイで、病院訪問とかして、かなり重い病気にかかってる子供たちを勇気づけたりしてる。
余命宣告されてるようなヘビーな子供に対して、「君よりも吐血してる僕が生きてるんだ。君は死なない」とか「桜が散ったら君は死ぬ? 僕が吐血を撒き散らしても、君は死なない」とか言って勇気づけてる。
二つ目の勇気づけ方に関しては、全く意味不明だから、ちょっとエキセントリックな人だったのかもしれない。
ともかく、沢山のファンが田中血太郎の吐血を待ち望んでいる。
そんなもん関係あるかド畜生が! と思わなくもないが、それを無下にするほど僕はハートが強くないのだ。
とりあえず、自分の部屋を散策してみると、まさかの田中血太郎が書いてある吐血のハウツー本があった。
「ほら、吐いたら楽になる~吐血入門~」
読書感想をするならば……
ちょっと汚い話になるから申し訳ないが、、、
ゲロを吐く時の感じでいけばいいらしい。
いや、わからん。無理だ……。
僕は、僕は、どうすればいいんだ……。
三日後のテスト、僕は切り抜けることができるんだろうか。
吐いたら、楽になるんだろうか……。
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