第7話 VS黒衣の武人
「やぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」
蒼天に響く猛々しい声。
黒い衣に袖を通す3人の若者の試合が終わりを告げる。
既に試合の出番が無くなっている周囲の選手達は、場外へと退いていく彼らを尻目に、先ほどの試合について語り合っている。
「……なあ、リヴォルツィオーネの相手の高校って、去年の県大会準優勝の選手達だよな?」
「ああ」
「合計の試合時間何秒だ?」
「……10秒切ってるな……」
「おいおいおい……!! そんな、相手は
驚愕と諦念に打ちひしがれる周囲の選手達。
彼らをよそに、リヴォルツィオーネの3人は試合の反省会を開いていた。
「順調、コノママ、決勝モ勝ツ」
「当然ですよ。このくらいの相手に負けてしまっては、帰った時に何て言われるか分かりませんから。いや、
「ソレナラ、心配イラナイ。次ハ蒼海ノ人間。青桐ガ居ル高校、
「なるほど……それは
「……」
「西村君?」
「……ッ!!
「西村君、
「オッスッ!!
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『さぁ~始まりました決勝戦っ!! 実況はこの私、
太陽が一番高く昇る時間。
大濠公園の敷地内で行われる大会は、最後の試合を迎えようとしている。
福岡で有数の柔道の名門校である蒼海大学付属高等学院と、謎の集団リヴォルツィオーネとの決戦。
先鋒は青桐。
対する相手は
マネージャーから教えてもらった情報を頭で整理しながら、青桐は場内の白いテープの前まで進む。
試合の実況に来ていたアナウンサーも、言葉に熱が入っており、肌寒い10月とは思えない熱気が満ちていた。
「ふー……ん?」
「…………」
『おぉ~っと!? どうした西村選手っ!? その場から動こうとしないぞっ!?』
青桐の対戦相手である西村。
芝生のような金髪に、鼻にテーピングを張り、瞳を閉じ続ける彼が、一向に場内に入ってこようとしない。
ざわつき始める周囲の人間。
審判が痺れを切らし、注意をしようとしたその瞬間、彼は猛獣のようにその場で叫ぶ。
「オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ッ!! 力戦奮闘、オッスッ!! 誰であろうと
「……
「青桐っ!! 相手のペースに飲まれるなっ!!」
「……
ただならぬ殺気を放つ相手だが、それは青桐も同様。
1か月前、黒い柔道着の集団に無様に敗北した青桐にとっては、予想外のリベンジマッチともなるこの試合。
体を冷やさないように着込んでいたシャツを脱ぎ、互いに柔道着の上着を羽織り直す。
その際に覗かせた、青痣だらけの鋼の肉体をちらつかせる2人。
臨戦態勢に入る両者は、光のない人殺しの目を敵へと向けている。
「青龍……青桐龍夜ッ!! 最強への踏み台にさせてもらうッ!!」
「あ"ぁ"? ……この前と一緒にしてんじゃねぇぞ拡声器野郎が……!!
静まり返る会場。
物音1つでも立ててしまえば、途端に殺意を自分へと向けられる。
息の詰まるこの場所で、審判は試合開始の言葉を発する。
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高校生ランク21位「
VS
高校生ランク14位「
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「
「しゃぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」
「オォ"ォ"ォ"ォ"スッ!!」
とうとう始まった決勝戦、先鋒同士の戦い。
互いに自分の形に持ち込むため、激しい組手争いをおこなう両者。
横襟を掴まれては払い飛ばし、奥袖を持たれては少ない動作で切っていく中、意図的に後ろへ飛んだ西村。
彼の両足に雷が迸ると、目にも止まらぬ高速移動で一気に距離を詰めていく。
「ンンンッ!! 先手ッ……必勝ォ"ォ"ォ"ッ!!」
「……ちっ!!」
(ちょろまかしやがってっ!! コイツ……カナちゃんが言っていた通り雷属性みたいだな……さっきのはNo.6の
「うぉ……!? んだぁ"っ!?」
横襟と前袖を掴む相四つの状態になった両者。
体勢を切り崩しにかかろうと技を繰り出そうとする青桐。
それを察した西村は、その剛腕と体全体を駆使し、動きに緩急をつけて青桐を振り回しにかかる。
「ぬぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ッ!!」
「……!!」
(この野郎、
「
場内を縦横無尽に動き回る西村。
引きずられ続ける青桐は、西村の進行方向を先読みし、足首が覆われる程の水の球体をトラップのように畳の上に設置する。
まんまと水の球体に足を捕らわれた西村。
それにより揃ってしまった両足を、青桐は撫でるように左足で刈り取りにいく。
送り足払いの強化形態。
No.23―――
「
推進力が働く方向に足払いを行った青桐。
西村は体勢を立て直そうと、咄嗟に畳を踏ん張ろうとするも、追撃の手を緩めない青髪の青年。
彼の周囲には、夏に現れる入道雲のように分厚い白雲が出現し、雲の中に潜む青き龍の右足が、正常なバランスを取り戻そうとする西村の右足を刈り取りに行く。
No.14―――
「
猛攻から逃れようと一旦両手を離そうとする西村。
だが、彼の周りを巨大なシャボン玉のような泡が包み込んでおり、水の屈折率によって外の景色を歪められ、判断が一瞬狂わされる。
距離感が狂ったその僅かな時間に、青桐の左足は西村の膝の部分を狙う。
組んだ手はハンドルをきるように反時計回りに回転させ、円運動の要領で足を刈り取る膝車の強化技。
No.32―――
「
柔皇の技を3連続で食らった西村。
堪らず体勢を大きく崩してしまい、ガードががら空きになってしまう。
それを見逃さない青桐。
水のように流れる足さばきにより、〆の技、内股をかけにいこうとする。
西村の左足の内側から、右足で天へと払い上げる青桐だったが、技の手応えがないことに違和感を覚える。
それもそのはず。
防戦一方だった西村は、雷の速さで内股を回避し、カウンターを仕掛けようとしていた。
相手の内股を透かし、払い上げる足を追随するように、西村の左足は青桐の右足の軌道を追っていく。
天から地へと落ちた雷を、再び天へと返す仕草から生まれたカウンター技。
内股返しの強化技。
No.15―――
「
2人の両足が畳から離れる。
宙を舞う両者は技の勢いそのままに、畳へと背を叩きつけていく。
審判が下した判定は―――
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