第3話 7人の超越者
「青山のおっちゃん!! 早く早くっ!!」
甥に引きずられるようにして日本武道館へと辿り着いた青山達。
2階の観客席から中央の試合会場を眺める3人。
既に武道館では開会式が終了しており、選手達が雄叫びを上げながら相手に挑みかかっているのが見える。
「……ここに来るのも久々だな」
「久々……飛鳥さんは昔、監督などをされていたのですか?」
「ん? あー……ちょっとオリンピックに出ただけなんで」
「へー……オリンピック……オリンピック!?」
「そんなに驚かないで……昔から
「いけいけ!! ……何やってんだよっ!! おい聞いてんのか!?」
「そんな
「あー……なるほど……」
「勝てば学校の名を広めることが出来るし、補助金も沢山貰えるからね。柔皇が残した教育プログラムのおかげで。最近はそれ目当てで勝つ手段を選ばなくなってきたりしてるし……人体実験のニュースって知ってるかい?」
「はい、以前ニュースで拝見しました」
「子供が白熱する分にはまだ可愛げがあっていいんだけどさ……周囲の大人達の方が白熱してさ……正直見るに堪えないよね」
「ごもっともですね……」
「翼君だったかな? 彼には柔道を嫌いにならないで欲しいよ。こんな
「……」
「アレ? おっちゃんにおじさん、そんな所で何してんのさ!! 蒼海の人達の試合が始まっちゃうよ、急いでっ!!」
「分かったから翼……ちょっと待ってな!!」
「はーい」
「お子さんはもう小学校に入学されたのですか?」
「いえ、入学は来年ですね」
「そう……なら柔英書房が発行する本もまだって感じかな?」
「そうですねぇ……」
「いい機会だし、今日ちょっとだけ教えてあげよっか。翼君、ちょっといいかな」
「な~に~おじさん?」
「
「うん、昔いた
「彼が開発した100の技についても」
「うん、
「おーよく知ってるね」
「……おい翼、お前なんでそこまで知ってんだ?」
「え~? おっちゃんの机にあった教科書をを盗み見したからだよ~」
「……は?」
「はっはっは!! 中々
「え? 属性? それは知らないよ!! ちょっと教えてよ~」
「……翼、蒼海の選手の試合が始まるぞ」
「うわ本当だ!! 属性……?ってのは今度ね今度!!」
興味をそそられるワードに心が揺れ動くも、今はそれ以上に関心のあるものに目を移す。
青龍と呼ばれる男、青桐龍夜の試合である。
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審判の合図によって、白いテープの前まで歩みを進める青桐。
相手は福岡でも戦ったことのある選手であり、青桐程の実力者なら一切苦戦することはないだろ。
いつもは委縮して浮かない顔をしていた相手選手。
だが今回は少し様子が違う。
時折不敵な笑みを浮かべており、以前までの自信の無さが見られない。
「へっへっへ……!!」
「……」
(なんだアイツ……ヘラヘラしやがって……何か策でもあんのか?)
全身の細胞が引き締められる。
心臓の鼓動がいつもより早い。
審判の右腕が振り下ろされると同時に、試合の開始が告げられる。
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高校生ランク3位「
VS
高校生ランク5273位「
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「
「こぉ"ぉ"ぉ"ぉ"い!!」
「しゃぁ"あ"!! ……あ"ぁ"!?」
青桐は目を疑う。
彼と戦ったのは1か月前。
手始めにと言わんばかりに、以前の彼では使用できなかった
自分の関節を外すことで、伸縮性抜群のゴムのように腕を一時的に伸ばす技。
No.3―――
「
「
畳3枚分、3間程の長さまで伸びた右腕が、青桐の横襟を掴みにかかる。
もちろんタダで組ませる青桐ではない。
迫りくる腕をいなし続け、相手に有利な大勢を取らせようとしない。
だが、右腕だけに飽き足らず左腕をも伸ばし始めた相手の猛攻に、じわりじわりと押され始める。
「はっ……!! はっ……!! はぁぁぁ!!」
(やべぇ……俺もしかして青桐に勝てるんじゃね!?
以前までは歯牙にも掛からなかった自分が、将来有望な青桐を追い詰めている。
その事実に、自然と笑みがこぼれてしまう。
強さがもたらす極上の美酒に、酔いしれ溺れていく。
思わず試合中に歯を見せる彼。
そんな姿が、
「……おい」
「あぁ!? んだよ何か―――」
「殺すぞテメェ……!!」
混じり気のない殺意をぶつける青桐。
直後に
技の射程に入った青桐。
左足を相手の右足の外側に踏み込み、組際に大きく右足を振り上げると、振り子のように敵の右足を刈り取る大外刈りを繰り出し、相手の状態を大きく崩す。
「お"ら"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」
「ぐ……このが……っ!?」
(雲……?
体を反らし、なんとか大勢を整えようとするも、彼の目には次の技の始動が目に入る。
青桐の周囲に漂う白雲。
大気中の水分から作り出した雲によって足の軌道を隠し、目視が困難な子外刈りを繰り出す。
N0.14―――
「
怒涛の追撃の最後の〆。
柔皇の技の次に繰り出した技。
右手で掴む横襟を手放し、左手を後方へ引きつけ、体を反時計回りに回転させ行う投げ技。
彼が一番使ってきた技である一本背負いで、相手を畳へと投げ飛ばす。
審判の右手が天へと上がり、青桐の勝利が告げられる。
「はぁー……踏み台野郎がよ……」
「ば、ばばばばかな……!? なんで、全然通じてねぇんだよっ!? なんで……
「あぁ? ……黒い柔道着? なんだそ……」
ぶつぶつと独り言を呟く彼が、意味深に発した言葉。
風塵に紛れて姿を現す7人の集団。
ストレートの長髪は天色、青汁を飲む小柄な美男子。
ボサボサの短髪は黄蘗色、穏和な怪物の如き大男。
外は黒、インナーカラーは白緑色、黄色い歓声に答える優男。
天然パーマ―は深紅色、その目は好戦的に燃える男。
艶のある黒い長髪にメッシュの色は白藍色、男と女の2つの心を持つスラリとした長身の男。
猛獣のような毛並みは伽羅色、異国の言葉と共に雄叫びを上げる精悍な大男。
荒れ狂う毛は銀色、全てを束ねあげる最強の男。
会場全ての視線を浴びる彼らは、各々言葉を発していく。
「ちゅー……
「オデ、頑張ル!!」
「ふ~……モテ気到来だね✰」
「へっへっへ……
「あらあら、血の気が盛んねぇ~男子ぃ~♡」
「BAHAHA!! いくぞ獅子皇っ!!」
「今宵、
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