第14話 魔王城まで後一歩

 魔王城へむけて進撃する人間亜人の軍が、ピタリと動きが止まった。

「これが奥の手か。」

 メタルテックなドラゴンをはじめとする魔獣の一団が視界に入った。見慣れているものより、二回りは大きく、感じる魔力は半端ではないように思われた。怯む将兵を叱咤して、四勇者達が挑んでいった。渾身の必殺の一撃で、致命傷を与えたように思われた。が、見ている間に傷跡は、再生してしまった。

「どうだ?」

「少し時間をかけてダメージを与えながら、最後に一気に再生が間に合わないくらいに攻撃を畳みかけて、倒すというところね。」

「珍しくいいことを言うね。全然同意だよ。」

「ああ、我も依存はない。」

「力が外部から供給されておるようだ。マスターの言っていたことはこれかの?まず、結界でそれを遮断する。」

 マエミチは、大きく首を縦に振った。

 「ウァレア。手伝ってくれ、遮断するのを。しなくてもいいが、相次いできたら、楽しみ甲斐がないからな。それができたら、五人でつぶすぞ。ああ、女神様は、結界が崩されそうになったら、維持しておいてくれ。」

“また、ついで扱いで、その上面倒ごとを。”

「勇者達はどうするの?」

「ここは引き受けるから、先に行って、魔王を倒してくれと言えばいいさ。では、遮断するぞ!できたな、ではゆくぞ!」

 五人は飛び出した。

「勇者様方!あの雑魚は我らにまかせて、魔王を倒して下さい!我々は、こいつらを倒してから、後を追いますから。」

 彼の言葉が頭の中で響きわたった。“ダメ押しをしてやるか。”

「勇者達よ!あなた方の義務、使命を思い出しなさい!」

と彼らの頭に自分の声を響きわたらせた。躊躇した者も、これで踏ん切りをつけたように、前へ進んでいった。

“流石に、あの馬鹿女神が造っただろうことはあるな。それに、この数は、あいつは。この力は、つなげているのか。干からびていたら、困るが。”

 そんなことを考えながら、まずは一番強そうなメタルドラゴンを、重力剣で切り裂いた。再生しないように、

「大進火!」

 高熱で炭にした。だが、まだまだ数はいる。“何とか余裕が持てているな。あいつらはと?”4人の戦いぶりを、襲いかかる新たなメタルドラゴンを片付けながら、見ようと周囲を見渡した。4人は危ないというほどではなかったが、苦戦していた。“手助けしないといけないな。”

「もう、次から次と。」

 ウァレアは、もう嫌だ、というように呟いていた。毒気のようなものを纏った昆虫のような群れを浄化結界を拡げて消滅させていたが、その結界を破る目的の奴も紛れており、結界を複層にし、壊し虫を見つけては潰していたが、これも小さく、数は多く面倒くさかった。

「これが、仮にも、元天上神が作り出したものなのか?」

 元地神の彼女は、悪態をつきたかった。その虫達の援護にドラゴンが現れた。“一寸面倒になるわね。”ドラゴンの毒気混じりの火焔が彼女に直撃する直前に、彼女の防御結界で無効化された。その一方で、毒虫達への浄化結界を維持しながら、壊し虫達を潰してゆく。“これをやりながら、ドラゴンを倒すのは一寸面倒ね。”と思った矢先、ドラゴンが悲鳴のように吠え、血を吹き出し、それから火に包まれて落ちていった。そして、浄化結界に迫ってきた毒虫や壊し虫が火に包まれた。直ぐに後続が来たがこれも霧状の中で消滅した。まだまだだが、少し余裕が出来た。

「大丈夫か?ウァレア?」

 マエミチだった。彼は、彼女の前にやって来て、心配そうに自分を見ているのが分かった。

「余計なことをするな。」

とか、

「我一人で大丈夫だ。」

或いは、

「余計な手をだすな。」

と言いかけたが、幾つもの視線を感じたので、“素直になるか?”

「助かった~。疲れたよ。」

と、彼に抱きついた。彼も優しく抱き締め返してくれた。

「何をしている!」

「抜け駆けするな!」

「いい加減になさい!」

”3人とも、こちらを見て文句を言う余裕があるようだ。“とマエミチは少し安心した。

“だが、加勢に行ってやるか。”しっかりとウァレアを抱き締めてから、

「奴らにも加勢してくるからな。後は頑張ってくれ。頼むぞ。だが、本当に危なくなったら、逃げてくれよ。」

「大丈夫だ。お前の期待を裏切ることも、寂しい思いもさせんから。」

と言ってから素早く唇を重ねた。

「全く、イチャイチャと、あんな貧乏神と。別に我一人で十分だ、か…う、う、…どうして早く来てくれなかった!」

 ガミュは、即時抱きついてきた。そうしつつ、迫ってきたゴーレムを一体、衝撃魔法で破壊した。

 それに続く数体が、マエミチの放った雹魂で砕け散った。

「二人で、周辺を一掃するか?」

「そうだのう。あの頃を思い出すな。二人で、互いを背にして戦って、後はくたくたになって、しゃがみ込んだものだったな。」

“あの時は、二人っきりだった。”と言う気持は言葉には出さなかった。ガミュが差し出した手をマエミチは握った、いかにも自然な感じで。

「行くか?」

「おう!」

 二人は、並んでゴーレムの群れに向かって駆け出した。ほとんどあたるを幸いに、ゴーレムを崩してまわった。

「大退水!」

 崩れたゴーレムの破片が、波動で生じた風に舞って、小さく削られて見えなくなっていった。

「相変わらずだな、さすがだ。」

と唇を重ねた。それに合わせて、舌を絡ませてきたので、彼女はうっとりとして、彼女は、体を彼に預けた。その唇と体を離すと、「あと二人も助けないとな。」

と言って、メタル魔獣達を相手にする元勇者達の所へ飛んだ。

 ギュアナ、マルバは直ぐにマエミチの両脇に立った。

「次々に出てくる来て、切りがないのよ!」

「ドデカイ長距離の火炎攻撃やら放ってくる奴ら、小型の素早い奴ら、鈍重だけどデカくて頑丈な奴ら、結構連係がとれているのよ。」

 二人は、そう言いながらも、確実に倒し続けているようだった。

「とりあえず、目の前のデカ物をなぎ倒す。長距離からの攻撃は防御するから、素早い奴らの対応を頼む。」

「分かったわ。」

「了解。」

 二人はニコッと笑った。この辺は連係がいい。

 彼の張った結界に攻撃が弾かれ、正面のデカ物達が衝撃魔法で体を四散される、躍り込んだ彼に切り刻まれる。小型の素早い奴らは、二人が瞬く間に倒していった。ドカーンとダウ音響で、後方で長距離攻撃していた魔獣の一画で爆裂が生じて、空白が出来た。

「一気に蹴散らすぞ!」

 3人は躍り込んだ。相手は、仲間のことも気にすることなく、攻撃をしかけてくるが、それを巧みに倒してゆく。

「こうやって戦ったものね。」

「まあ、そうだったか?」

「そして、隙を見て、私の胸を揉んで、唇を重ねるの。」

「あんた、なに言ってるの!」

 彼は小さく溜息をついて、二人を抱き締めた。二人の顔をくっつけて、同時に二人の唇を奪った。

「後は頼むぞ。私は、後方に飛ぶ。」

 一気に突っ切った先に、バサガがいた。

「お久しぶり。」

と一応言ったが、半ば焦り、半ば怒り、半ば驚いている彼女は、

「何者よ!」

“覚えていないか、やっぱり。”

「バサガ。もう、観念なさい!」

 いつの間にか、女神バエラが空中にいた。

「このクソチンピラ女神が。」

 槍で攻撃しようとしたところを、マエミチが押さえた。すかさずバエラは彼の後ろに隠れた。

 二人は、槍での攻防戦となった。彼女の繰り出す槍を軽く受け流し、繰り出しながら放つ火球や電撃を外して、槍を叩きつけ、衝撃弾を逆にぶちこんだ。次第に追いつめられた彼女は、残った魔獣を呼び出しバエラを襲いかかるように向けた。それを察して、マエミチがバエラを守っている間に、バサガは逃げ出していた。

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