第9話 勇者達なしで2

 割れ目から、マエミチ達が突入すると、魔族の兵士が次々に立ち塞がった。それを次々なぎ倒していく。

「無理するな。しばらくは、私の傍で俺を支援する程度でいいから、体を休めろ。」

「うん❤。」

 甘えるようにマエミチに寄り添うガミュに、ギュアナとマルバがキッと睨んだが、

「2人は、城壁を占拠して、外に知らせろ!」

 少し不満そうな顔をした2人だったが、直ぐに城壁を駆け上り始めた。その間も次々押し寄せる魔族達をマエミチは斬撃で次々なき倒した。それを、ガミュが魔法で支援する。後ろから大きな魔法攻撃が来た。2人の前の魔族が倒れて山になった。流石にそれを見て、魔族の兵が退き始めた。ウァレアだった。

「疲れたぞ。」

「まあ、体力を温存しろ。」

「は~い。❤」

とこれまた、彼に寄り添った。依りそう2人は、互いににらみあった。城壁が占拠されたたことが分かると、攻城軍が進んで来た。彼らが開け、確保した突入口から次々入ってきた。

「離れずにいろ。進むぞ。」

 突入してくる兵の橋頭堡を確保し、城門も開け放すことに成功した。大挙して兵が乱入してきた。こうなると、沈みがちだった士気は、赤丸急上昇。これが、全軍に感染するのに時間は、さほどかからなかった。降り注ぐ投石や矢のなどの数も倍増したように思われるほどになった。それと反比例するかのように、魔軍の士気は、見た目にも落ちているように思われた。さらに、突入した兵は、勇気も勢いも倍増といった風だった。勢いというか、何時もなら追い立てられる兵力差でも、逆に魔族の側を追い立てていた。

 しかし、彼らにも精鋭が残っているはずだった。彼らの反撃で、総崩れする可能性もある。其奴らを事前に叩いておく必要がある。

「あら、お疲れなんでしょう?後方で休んでおられては?」

「ご主人と、私達3人で十分ですから。」

「もう、回復した。お前らこそ、休んでいてよいのだぞ。」

「珍しくいいこと言いましたわね。そう、足手まといはいりません。」

 言い争う4人を従えて、兵らをを追った。案の定、曲がりくねった、攻めるに難しい、守りの要の場所で彼らは待ち構えていた。

 待ち構える彼らに、想定外の数の火球、雷球、光弾などが降り注ぐ。防御結界も、壁も大穴があき、そこから5人の男女が飛び込んできた。

「返り討ちだ!」

「取り囲んで仕留めろ!」

 そのうち、

「馬鹿!ここで、そんな魔法攻撃をしたら、味方まで全滅しかねないぞ!」

「そんなこと言っている場合かよ!」

となった。

「やったか?」

 その魔法攻撃の余波を何とか受け止めて、何とか立っていた魔族の女戦士の1人が呟いた。彼女の目の前に、部隊随一の魔道士が立っていた。褒めてやろうかとも思い、近づこうとした時、血を噴き出して彼が倒れた。

 その後ろに男が一人、いつの間にか立っていた。

「おまえは耐えたか?褒めてやるよ。」

 彼女は、悪態の一つも言う前に倒れた。マエミチは、渋い顔をした。

「この程度の女は、資格はありませんわ。」

“そちらの方ではなかったんだが。”彼は、しかし、責めなかった。

「前に進むぞ!」

“大したことではないからな。”

 砦はその日のうちに落ちた。砦の主将は、少数の護衛と取り残された。主将は女だった。魔界のダークエルフ、ただし、いわゆるダークエルフには見えなかった。魔族の中にいなければ、いわゆるハイエルフにしか見えない。かなりの強さで、撃ち取って手柄にしようとする猛者達を、魔道士達を次々と倒して、強行突破しようとしていた。ガミュが立ち塞がった。両者共に、かなり力を消耗していたから、闘いは膠着状態になった。ヨツユキが代わった。彼女は、渾身の魔法攻撃にかけた。特大の雷電球を飛ばしてきたのだ。それは彼の前で消滅し、素早く動いた彼の一撃を受けて彼女は倒れた。

「我は、本来の魔王じゃ。」

 捕らえた彼女を訊問し、彼女の地位を質問したら、返ってきた返事だった。将軍達には、勿論秘密裏に彼女には止めを刺さずに捕らえたのである。その後、誰にも気がつかれないようにして運んだのである。少し離れたところに作った天幕の中で縛り付けて、ソクラテスを監視につけていた。

「それがどうして?あの程度の砦の総大将だったんだ?地位をより強い者が現れて取って代わられたのか?」

 この言葉に怒ったように睨みつけたが、

「あの2人のせいだ。」

 憎々しげに言った。

 2人の女の邪神が降臨し、魔王、彼女だが、を追いつめていた勇者と女神を殺し、連れて来た男を魔王に据えたのだ。勇者に倒されかけていた彼女には、どうしようもなく、降格され、囮の役を背負わされるなど、屈辱的な扱いを受けてきたのだと言った。

 ちなみに新たな魔王は、勇者の血を飲み、勇者の血を受けた魔剣などを身に付けて、そこそこの魔王としての実力は持っているという。

「まともにやれば、我の方が上だ。」

 それは、本来の魔剣やらを持っていればでの話しではあるが。

“あの2人が、いつまでも共闘していられるかな?”

「その2人の邪神だが、仲…というか、上手く協力し合っているのか?」

 元魔王は、少し考えてから、

「分からん。前線でこき使われていたから、見ておらんしな…。ところで、我を如何するつもりだ。ひと思いに殺したらどうだ?それとも、弄んでから殺すつもりなのか?」

 最後は、心なしか、声が小さくなっていた。背中に、痛い視線が幾つも感じた。

「提案がある。乗るか、死ぬからはお前次第だが。」

「?」





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