第3話 あの願いはかなうかも…

「女神ヘル様に会って、礼を言いたい。」

“礼って、まさか?”先程の要求から、“礼”の意味が悪い意味ではないかと勘ぐったが、すぐに、

「違う、違う。」

と手のひらを振って、

「最初だったから、色々世話をかけた。だから、あらためて感謝をしたいだけだ。久しぶりに話もしたい、それだけだ。懐かしいからな。」

 まっとう過ぎて驚いたが、

「召喚した神以外に、会わせることは出来ないのよ。」

 神界と無闇に接触させないことになっているのだ。その後も、

「フェンリル様と話したい。」

「ミッドガルド様ならどうだ?」

「女神リバイアサン様は?」

 彼の表情は、どれも懐かしい、昔話やら現状を話したいとかいうように思えた。まっとうな願いではあったが、

「何度言ったて、どう言おうとも駄目なものは駄目なのよ。いい加減、理解しなさいよ!」

と言わざるを得なかった。彼は流石に残念そうな顔になったが、それには少し好感が持てた。

「じゃあ、三つ、褒美を考えておいてくれ。私も考えておく。出来る範囲で構わない。」

“この~。”とまた、彼に対する評価を下げたが、そうそう、自分を召喚した神を悪く思ってないことが分かった。“余程、あの二人が酷かったのね。”と思い、謂うべきではないことを言ってしまった。

「あのね、…最初のことだけど、成功報酬としては出来ないけど、…結果としては、あなたの使命を果たすと、あの二人を倒すということになるかというか…。」

 しばらく怪訝そうに見つめていたが、納得した、分かったという風に大きく首をたてにふり、

「あの二人が、しかも同じ世界にいて…、何となく想像がつくな。アガレサ、バサガ…ここまで馬鹿だと、同情してしまうな。」

 呆れたという顔になっていた。

“余程、二人にはひどい目に会ったのね。”と少し同情した。慰めの言葉が出る前に、

「まあ、とりあえず、この世界のことから、ゆっくり教えてもらおうかな。」

“ギクリ!”

「そんなところか。ところで、あの2人は、この世界にどう関わっているんだ?」

 この世界のことを、時々、彼の質問に冷や汗を流したが、大体の現状説明が終わると、彼は大きな溜息をついてから言った。

「あの2人は、あなたをどう扱ったの?」

「現地の勇者が、イケメンだったので気に入ってしまったんだ。俺は、彼のための引き立て役にされて、俺にあたえられるはずの聖剣も、その他聖具も彼に渡すわ、俺にはそれなしに危険なことをさせる、囮にする、最後は魔王を倒したのは俺なのに、奴の名誉にしてしまって、俺は魔王を倒した直後に、暗殺のようにされて、そのまま元の世界に飛ばされた。2人とも同じだったよ、大体そんな感じで。」

「そう、酷いわね。」

“あの2人ならね、やりかねないわね。”つくづく思った。

「それで、なにをやらかしたんだい?この世界であいつら2人でやったとか?いや、あの2人が協力するとは思えないが。それに、単に自分の管轄で何かやっても、俺がどうしてもいいということにはならないからな。他の女神の管轄に干渉したか、そうするとその女神を殺して、あるいは彼女の勇者に横恋慕、いや、それなら2人が入ってこないか、他の世界の魔王か、準勇者を連れて来て、女神共々勇者を殺してか、そうでなければ、勇者として俺を召喚するはずがないか。2人で、魔王を仕立てて、可愛いイケメン男子達を魔王軍のトップにしているというあたりかな。」

「もう…。大体、その通りよ。」

 表情を歪めて答えた。

「まさか、本当にか?あの馬鹿者共が。」

“あれ?”憎しみが入っていないようだったので、違和感を感じた。

「とにかく、まずは必要な情報や必要なアイテムについて、たぷっプリと教えてもらおうかな。」

「わ、分かっているわよ。」

“どうしようか。詳しいこと、詳しいことと…。”女神パエラは、自分の知識を必死に、重箱の隅を突くようにほじくり返すのだった。


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