第13話 認識
ハクト達の話によると、結界は魔獣を倒すと崩れ落ちるものだという。
それを聞いた少年は、不可解としか思えなかった。
今までオートは幾度も繰り返し繰り返し、次元の中で魔獣を始末してきた。なのに一度も風景が変化した試しは無い上に、時間が経つとまた同じように魔獣は現れる。
敢えてオートは、その情報をハクト達には伝えなかった。これがキッカケで、ノイリに危害が及ぶような気がしたせいだった。
あるいは、結界と次元は違うものなのか。
少年はその考えを打ち消した。オートは次元の中でクジラの魔獣に吹き飛ばされて、ハクト達や魔法少女と出会った。
あくまでも結界というのは彼らの呼称であって、次元というのが正式名称だ。
ならば何故ハクト達と一緒に居ると、東京都という妙な場所に飛ばされるのだろうか。
ハクトと紺色は元々人間で、魔獣に変えられた存在だという。
オートも同じだといった。そうなると魔法少女の力によって、東京都という謎の異次元に召喚されてしまうのか。
少年からしても、彼女達の存在は異質だった。人間なのに魔法を使い、オマケに自分達と違って空まで飛べる。
普通の人間が魔法の国からの使者によって魔力を与えられた、とオートは聞いている。この辺りが何かしら、ノイリと関係しているのか分からない。
少年は頭を抱えた。今までは魔獣に精通しているノイリが居たお陰で、考えずに済む場面が多かっただけ。
オートは痛感した。彼女と離れてしまった今、どうしたって思考が必要となる機会が多くなりすぎている。頭を使うと痛くなるが、そうなっても代わりに考えてくれる者はもういない。
ハクト達も魔法少女も、ノイリもオートも次元でやることは同じ。違うのは目的だった。
魔法少女達は人間どもを救うため、ノイリの場合はソサリウムを集めて魔力を回復させるため。
そこまで考えたところで、オートは一つ感づいた。魔法少女が狩っただけ、ノイリの取り分が減ってしまうのか。
しかし魔法少女達の場合は、人助けという名目がある。
結果としてソサリウムは得ているのかもしれないが、彼女達の方がやっていることは正しい。とはいえノイリが間違っているかというと、決してそういう訳ではない。
改めて考えてみると、オートは彼女が何で魔力を回復したいのか、思い出すことが出来なかった。もともと何か目的があって次元に居た筈なのに、理由は忘却の彼方へと吹き飛んでしまっていた。
少年は悲観した。そのうちノイリの存在すらも、記憶の奥底へ沈めてしまうのではないか。
これから先、もしかしたらハクト達と、行動を共にしないといけないのかもしれない。彼らはオートを、仲間として扱ってしまっているのかもしれない。
しかし少年は、自らが囚われの身であるように感じている。
この認識の違いは、今までの境遇の違いによって生じたものであり。決して誰もが間違った考えなど、持っていないのであった。
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