第4話 経緯


 そこから三つ編みの少女、つむぎは自分達のことを話し始めた。


 信用を得るには各々の事情を分かって貰う必要があるから、と彼女は口にした。


 わざわざ胸の内を晒すような言葉を使う必要が無いような気がしたが、それも向こうの一つの手段だというのをオートは知る由もなかった。


 こことは異なる時空には、この世界とは違う場所があって、魔法と妖精が平和に暮らす国だとかいう説明だった。


 その国には表と裏があり、裏の世界には恐ろしい魔獣という生き物が存在している。


 いままで魔法の国のお姫様が、裏から出ないように抑えていた。それが別の出入り口を作って、人間の世界に侵入できるようになってしまった。


 偶然にもその出入り口が、この街の何処かだとか。


 魔獣を倒す力はお姫様しか持って無い上に、人間界に簡単に出入りが出来ない。


 そこでお姫様は、自分の力を使える者を探させて、見つかったのが彼女達だったのだ。


 魔法少女達の経緯を聞いた上で、オートは何やら形容し難い違和感を覚えた。


 かつてノイリの言っていた話と微妙に食い違っている。


 魔法の国の裏世界とは、魔獣の国のことなのか。彼女達は普通の人間だろうが、その知識をつけたのは魔法の世界の者なのか。それは本当に、正しいものなのだろうか。


 彼がそう思ってしまったのは、自分の感情の奥底にあった何かのせいだった。


 オートは心の底からノイリを信用していて、間違いや誤認識を植え付ける筈が無いと考えていた。つむぎの話を聞いた少年は、キナ臭さを覚えて仕方ない。


「お前らが魔獣を始末するのは、魔法の国の為なのか?」


 オートの台詞に、つむぎは首を振って三つ編みを揺らした。


「……違う、魔獣は人間を襲うから」


 そこはノイリから聞いていた話と同じだった。人間の世界に魔獣を送りこむ輩が居て、そこでソサリウムを集めているというものだ。


 死ぬ瞬間に大量に出るのであれば、どんどん人間を襲ってソサリウムを得ることが出来る。ノイリは次元に送られた魔獣を始末して、人間界への被害を防いでいた筈だった。


 だとすると魔法少女達って、一体なんなんだ。オートは彼女達の存在に疑問を持った。


 ノイリが次元で魔獣を抑えていた筈なのに、それと同じようなことを彼女たちもやっている。


 オートは彼女から、魔法少女という言葉を耳にした試しが無い。ノイリの知らないところで、自分達と同じように魔獣を始末していた者が居るなんて有り得るのだろうか。


 そこまで考えたところで、オートの頭に痛みが走った。少し頭を使い過ぎたせいだった。


「だ、だいじょうぶ?」


 頭痛を察せられてしまったのだろう、ハクトの台詞にオートは頷いて答えた。


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